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力率とは?「ビールの泡」でイメージする
力率は、ジョッキ全体(皮相電力)のうち、飲めるビール(有効電力)が何割かを表す数字です。
| ビールでいうと | 電気では | 単位 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 飲めるビール(液体) | 有効電力 P | W(ワット) | 熱・光・回転などの仕事になる電力 |
| 泡 | 無効電力 Q | var(バール) | 電源と機器のあいだを行き来するだけで仕事をしない電力 |
| ジョッキ全体 | 皮相電力 S | VA(ボルトアンペア) | 電圧×電流。電源や電線が運ばなければならない量 |
力率0.8なら、ジョッキの容量の8割ぶんだけが仕事をする(ビールになる)状態です。ただし泡(無効電力)の量は、残りの2割ではありません。電気では、仕事をする分と行き来するだけの分が直角に足される(下の電力三角形)ので、1,000VA・800W なら無効電力は600var、ジョッキの6割にあたります(800²+600²=1,000²)。泡(無効電力)は飲めませんが、ジョッキの容量はふさぎます。電気でも、無効電力は仕事をしないのに電線を流れる電流を増やします。
有効・無効・皮相電力の違いをもっとくわしく

並列回路の力率の計算は、インピーダンスの逆数「アドミタンス」を使うとぐっと楽になります。
並列回路の計算が楽になる「逆数」の考え方
なぜ「cosθ」なのか?電力三角形で理解する
有効電力P・無効電力Q・皮相電力Sは直角三角形(電力三角形)をつくり、底辺Pと斜辺Sの比がちょうどcosθになるからです。
底辺が有効電力P、高さが無効電力Q、斜辺が皮相電力Sです。三角関数のcosは「底辺÷斜辺」なので、P÷Sがそのままcosθになります。3つのうち2つがわかれば、残りの1つは三平方の定理で求められます。
抵抗RとリアクタンスXの直列回路では、インピーダンスZも同じ形の三角形(インピーダンス三角形)になり、cosθ=R÷Zでも力率を求められます。
インピーダンスZの三角形と求め方

θ(位相角)の正体と、遅れ力率・進み力率
θは電圧と電流の波のずれ(位相差)で、ずれがなければ力率1、ずれが大きいほど力率は下がります。
電気ストーブのような抵抗だけの負荷では、電圧と電流が同じタイミングで上がり下がりするので、θ=0°、cos0°=1です。モーターのようにコイルを含む負荷では、コイルが電流の変化をいやがるため、電流が電圧より遅れます。
| 種類 | 原因 | 電流のようす | よくある場面 |
|---|---|---|---|
| 遅れ力率 | コイル(L) | 電圧より遅れる | モーター・変圧器の多い工場。ほとんどがこちら |
| 進み力率 | コンデンサ(C) | 電圧より進む | 負荷が軽いのに進相コンデンサを入れたままのとき |
電験三種の問題で「遅れ」「進み」の指定がないときは、遅れ力率として考えることがほとんどです。力率の値だけでは遅れか進みかはわからないので、「力率0.8(遅れ)」のように書きます。
位相と位相差、進み・遅れをベクトル図で

力率の求め方|単相・三相の公式と例題
力率は、有効電力Pを「電圧×電流」で割って求めます。三相では電圧×電流に√3をかけます。
| わかっている値 | 力率の求め方 |
|---|---|
| P と S | cosθ = P ÷ S |
| P と Q | S = √(P²+Q²) を出してから P ÷ S |
| 単相の V・I・P | cosθ = P ÷ (V×I) |
| 三相の V(線間)・I・P | cosθ = P ÷ (√3×V×I) |
| 直列回路の R と Z | cosθ = R ÷ Z |
例題1|PとQから力率を求める
有効電力P=300W、無効電力Q=400varの負荷の力率は?
S=√(300²+400²)=√250000=500VA、cosθ=300÷500=0.6。3:4:5の直角三角形は電験三種でよく出ます。5:12:13、8:15:17も覚えておくと、電卓なしで解けます。
例題2|三相のモーターの力率を求める
三相200Vのモーターに50Aが流れ、有効電力が13.86kWのときの力率は?
S=√3×200×50=約17,320VA、cosθ=13,860÷17,320=約0.80。√3を忘れると0.80ではなく1.39になり、1を超えてしまいます。1を超えたら、式のどこかが間違っている合図です。
三相電力P=√3VIcosθの√3はどこから来る?
力率の計算ツール
はじめから入っている数字は、例題2と、下の「改善の効果」の例です。入力した数字は画面の中で計算するだけで、どこにも送信されません。
P・Q・Sの計算パターンを電力三角形で

力率が悪いと何が困る?3つの理由
同じ仕事(同じ有効電力)でも、力率が悪いほど大きな電流が必要になり、損失・設備・料金の3つで損をします。
有効電力が同じなら、電流は力率に反比例します。800Wの仕事をするのに、力率1なら800VA分の電流で済みますが、力率0.8なら1,000VA分の電流が要ります。ビールなら、泡が多いほど大きなジョッキが必要になるのと同じです。
| 困ること | 理由 |
|---|---|
| ① 電線の損失が増える | 損失は I²R で、電流の2乗に比例する。力率0.8を1.0にすると、電流は20%減り、損失は36%減る |
| ② 設備が大きくなる | 変圧器や電線は皮相電力(kVA)と電流で選ぶので、力率が悪いと太い電線や大きな変圧器が要る。電圧降下も大きくなる |
| ③ 基本料金が上がる | 高圧で受電する工場などの契約では、力率85%を基準に、よければ基本料金を割り引き、悪ければ割り増す制度が一般的(くわしくは契約の約款で確かめる) |
送電線の電圧降下と電力損失の計算

力率改善のしくみ|進相コンデンサで「泡」を消す
負荷と並列にコンデンサ(進相コンデンサ)をつなぐと、コイルの遅れ電流をコンデンサの進み電流が打ち消し、無効電力Qが減って力率が上がります。
電力三角形で見ると、有効電力Pはそのままで、高さQだけが縮みます。すると斜辺Sが短くなり、電源から流れる電流が減ります。必要なコンデンサの容量は次の式で求めます。
たとえば有効電力100kWの負荷を、力率0.7から0.95に改善する場合、tanθ₁=約1.020、tanθ₂=約0.329なので、Qc=100×(1.020−0.329)=約69kvarです。皮相電力は約143kVAから約105kVAになり、電線を流れる電流は約26%、電線の損失は約46%減ります(上の計算ツール②で確かめられます)。
進み力率で電圧が上がる?フェランチ効果と調相設備

電験三種 法規の力率改善の計算|過去問の3つのパターン
電験三種の法規では、力率改善の計算が B問題(計算問題)で繰り返し出題されています。出題は「コンデンサの容量」「直列リアクトル付きのコンデンサの容量」「電圧降下の変化」の3パターンで、どれも「有効電力Pはそのまま、無効電力Qだけが減る」という同じ考え方で解けます。
| パターン | 何を求める? | 出題(電験三種 法規) |
|---|---|---|
| 1. コンデンサの容量 | 改善前と改善後の無効電力の差 Qc | 令和元年度 問12(b)(令和5年度下期・令和6年度上期の問12で再出題) |
| 2. 直列リアクトル付き | コンデンサの端子電圧と、コンデンサ本体の容量 | 令和元年度 問12(a)(b)(同上) |
| 3. 電圧降下 | コンデンサを入れたあとの電圧降下、必要な容量 | 平成24年度 問12、令和6年度上期 問11(平成15年度 問12の再出題) |
どのパターンでも、最初にやることは同じです。「力率が変わっても有効電力Pは変わらない」と決めて、改善前と改善後の無効電力 Q=P×tanθ を求めます。
パターン1:コンデンサの容量を求める(令和元年度 問12)
問題の条件:三相の高圧電路(線間電圧6,600V)に、有効電力300kW・遅れ力率0.6の負荷がある。力率を遅れ0.8に改善するとき、コンデンサが受け持つ無効電力は?
これは上の公式 Qc=P×(tanθ₁-tanθ₂) と同じ計算です。tanθ₁=0.8÷0.6≒1.333、tanθ₂=0.6÷0.8=0.75 なので、300×(1.333-0.75)≒175kvar になります。この記事の計算ツール②でも確かめられます。
パターン2:直列リアクトルが付いたコンデンサ(令和元年度 問12)
実際の進相コンデンサには、高調波(50Hzや60Hzの何倍もの周波数の電流)を抑えるために、直列リアクトル(コイル)を直列に入れます。同じ問題では、直列リアクトルのリアクタンス XL がコンデンサのリアクタンス XC の6%のとき、(a) コンデンサの端子電圧と、(b) コンデンサ本体に必要な容量を問われました。
(a) コンデンサの端子電圧は電路の電圧より高くなる
コイルとコンデンサの電圧は向きが逆なので、直列にすると打ち消し合い、全体のリアクタンスは XC-XL=XC-0.06XC=0.94XC になります。電路の電圧6,600Vは、この0.94XC にかかる電圧です。コンデンサだけにかかる電圧は、リアクタンスの比で決まります。
(b) コンデンサ本体の容量は、受け持つ無効電力の 1÷0.94 倍
設備全体として電路に出す無効電力は、パターン1で求めた175kvarです。同じ電流 I が直列リアクトルとコンデンサの両方を流れるので、設備全体の無効電力は I²×0.94XC、コンデンサ本体の無効電力は I²×XC です。比をとると、コンデンサ本体の容量は設備全体の 1÷0.94 倍になります。
パターン3:電圧降下から考える(平成24年度 問12・令和6年度上期 問11)
力率を改善すると電流が減り、配電線の電圧降下も小さくなります。三相3線式の電圧降下の近似式 ε=√3×I×(R cosθ+X sinθ) の両辺に電圧 V をかけると、P=√3VIcosθ、Q=√3VIsinθ なので、次の形に変えられます。
V:受電端の線間電圧[V]、ε:電圧降下[V]、R・X:電線1条あたりの抵抗とリアクタンス[Ω]、P:有効電力[W]、Q:無効電力[var]。電流を求めなくてよいので、計算がぐっと短くなります。
令和6年度上期 問11:電圧降下は何%になる?
問題の条件:電線1条あたり抵抗3Ω・リアクタンス5Ω、需要家の電力8,000kW・遅れ力率0.8、受電電圧20kV。(a) 変電所の送り出し電圧は? (b) 力率を0.95に改善したら、電圧降下は改善前の何%?
平成24年度 問12:電圧を保つのに必要なコンデンサは?
問題の条件:送り出し電圧6,600Vの三相3線式の配電線(電線1条あたり抵抗0.5Ω・リアクタンス1Ω)で、2,000kW・遅れ力率0.6の工場に送る。受電電圧を6,300Vにするには、何kvarのコンデンサが要る?
電圧降下の近似式と電力損失の計算パターンを、図で確かめられます
問題文は電験王(denken-ou.com)の各年度の問題ページで確かめ、数字はこの記事で計算し直しています。
三相の電力 P=√3VIcosθ の「√3」がどこから来るのかは、次の記事で導いています。
√3 はどこから来るのか、導出過程を図解
力率でよくある間違い
| よくある間違い | 正しい考え方 |
|---|---|
| 力率=効率 | 効率は「入力のうち出力になった割合」。力率は「送った電力のうち仕事をする電力の割合」で、別のもの |
| 無効電力は熱になって消える | 無効電力そのものは行き来するだけ。損をするのは、それで増えた電流が電線で熱になる分 |
| 三相でもP÷(V×I)で求める | 三相は √3×V×I で割る。答えが1を超えたら見直す |
| 力率は1に近づけるほどよい | 入れすぎると進み力率で電圧が上がる。0.95前後が目安 |
| コンデンサは直列につなぐ | 力率改善の進相コンデンサは、負荷と並列につなぐ |

よくある質問


