- 上司に「不良原因と工程の対応関係を整理して」と言われたけど、どうまとめればいいかわからない
- 客先の要求品質と、自社の品質特性が本当に対応しているか一覧で確認したい
- QC検定で「新QC7つ道具」が出題範囲だけど、マトリックス図法の使い分けがピンとこない
- マトリックス図法の定義と「なぜ必要か」
- L型・T型・Y型・X型・C型の5つの型の違い
- 実務で使えるマトリックス図の作り方5ステップ
- QFD(品質機能展開)との関係
- QC検定での出題ポイント
「不良モードと工程の対応を整理してほしい」「要求品質と品質特性の関係をまとめて」——品質保証の仕事をしていると、こうした「2つの要素の関係を見える化してほしい」という依頼がよく来ますよね。
頭の中では「この不良はあの工程が原因だろうな」とぼんやりわかっている。でも、それを誰が見ても一目でわかる形にまとめるのは意外と難しい。箇条書きにすると関係性が見えないし、文章で書くと長くなりすぎる。
そんなときに使うのがマトリックス図法です。2つの要素を行と列に並べて、交点に「◎(強い関係)」「○(関係あり)」「△(やや関係あり)」と記号を打つだけ。たったこれだけで、複雑な関係が一枚の表に整理されます。
この記事では、マトリックス図法の基本から5つの型の使い分け、実務での作り方まで、図解で徹底的に解説します。
目次
マトリックス図法とは?
マトリックス図法とは、2つ以上の要素を行と列に配置し、交点に記号を記入することで、要素間の関係の有無・強さを「一覧表」として見える化する手法です。
マトリックス図法は新QC7つ道具(N7)の一つです。英語では「Matrix Diagram」と呼ばれます。
一言でいうと、「2つのリストを縦と横に並べて、交点に◎○△を打つだけ」の手法です。シンプルですが、これが驚くほど強力です。
「出席簿」をイメージしてください
マトリックス図を難しく考える必要はありません。あなたが小学校の頃に見た「出席簿」を思い出してください。
| 名前 \ 日付 | 4/1 | 4/2 | 4/3 |
|---|---|---|---|
| 田中さん | ○ | ○ | × |
| 鈴木さん | ○ | × | ○ |
| 佐藤さん | ○ | ○ | ○ |
行に「人」、列に「日付」を並べて、交点に「出席○/欠席×」を記入する。これがまさにマトリックス図の発想です。
品質管理では、「人」と「日付」の代わりに「不良モード」と「工程」、「要求品質」と「品質特性」などを行と列に配置し、交点に関係の強さ(◎○△)を記入します。
マトリックス図法の本質は「2つの要素の関係を、交点で一覧表にする」こと。出席簿も、Excelのピボットテーブルも、突き詰めるとマトリックス図と同じ発想です。

なぜマトリックス図法が必要なのか?
「2つの要素の関係を整理するなら、文章で書けばいいのでは?」と思うかもしれません。でも、文章で書くと「関係の全体像」が見えないのです。
文章 vs マトリックス図|情報の見え方が激変する
文章で整理した場合
「寸法不良はプレス工程と溶接工程に関係がある。外観不良は塗装工程と組立工程に関係が強い。機能不良は組立工程に強く関係し、検査工程にもやや関係がある…」
→ 要素が5個を超えると、どれとどれが関係しているか一読で把握できない。
マトリックス図で整理した場合
| 不良\工程 | プレス | 溶接 | 塗装 | 組立 |
|---|---|---|---|---|
| 寸法不良 | ◎ | ○ | ||
| 外観不良 | ◎ | ○ | ||
| 機能不良 | △ | ◎ |
→ 一目で「どの不良がどの工程と関係しているか」がわかる。空欄のセルから「関係がない組み合わせ」もすぐ判別できる。
マトリックス図法の最大のメリットは、「関係の全体像を一枚の表で俯瞰できる」ことです。関係の「有無」だけでなく、記号の分布パターンから「偏り」や「抜け漏れ」も発見できます。
新QC7つ道具の中での立ち位置
マトリックス図法は、新QC7つ道具の中で「整理・対応づけ」を担当する手法です。他の手法との使い分けを把握しておきましょう。
| 手法 | 役割 | ひとこと |
|---|---|---|
| 親和図法 | グルーピング | バラバラな意見を仲間分けする |
| 連関図法 | 因果関係の把握 | 原因と結果を矢印でつなぐ |
| 系統図法 | 手段の展開 | 目的→手段をツリーで展開 |
| ⭐ マトリックス図法 | 対応づけ・整理 | 2つの要素の関係を一覧表にする |
| アローダイアグラム | 日程管理 | 作業の順序と所要時間を矢印で表す |
| PDPC法 | リスク対策 | 「もしこうなったら?」の事前対策 |
| マトリックスデータ解析法 | 数値データの解析 | マトリックス図の数値版(主成分分析) |
連関図法は「原因と結果のつながり」を見える化し、系統図法は「目的と手段の展開」を見える化します。マトリックス図法は「2つの要素群の対応関係」を一覧表で見える化する。役割が違うので、組み合わせて使うのが基本です。

交点に打つ記号の意味|◎○△の使い分け
マトリックス図のキモは、交点に打つ記号です。記号によって「関係の強さ」を3段階(または4段階)で表現します。
代表的な記号と配点
| 記号 | 意味 | 配点(重み) |
|---|---|---|
| ◎ | 強い関係がある | 5点(または9点) |
| ○ | 関係がある | 3点 |
| △ | やや関係がある(弱い関係) | 1点 |
| (空欄) | 関係なし | 0点 |
配点は「5・3・1」が一般的ですが、QFD(品質機能展開)では「9・3・1」を使うこともあります。配点を付けるのは、行や列ごとに合計点を算出して「重要度」を数値化するためです。
記号の意味と配点は、チーム内で事前に統一しておくことが重要です。人によって「◎の基準」が違うと、マトリックス図の信頼性が崩壊します。記入前に「◎は直接的な因果関係がある場合」「○は間接的に影響する場合」のように定義を明文化しましょう。
合計点で「重要度」を数値化する
交点の記号に配点を与えると、行ごと・列ごとに合計点が計算できます。この合計点が高い要素ほど「多くの相手と強い関係を持っている」=重要な要素ということになります。
| 不良\工程 | プレス | 溶接 | 塗装 | 組立 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 寸法不良 | ◎(5) | ○(3) | △(1) | 9 | |
| 外観不良 | ◎(5) | ○(3) | 8 | ||
| 機能不良 | △(1) | ◎(5) | 6 | ||
| 列合計 | 5 | 4 | 5 | 9 |
この例では、列合計が最も高い「組立工程(9点)」が、最も多くの不良モードに関係していることがわかります。つまり「重点的に管理すべき工程」です。同様に、行合計が最も高い「寸法不良(9点)」は、最も多くの工程に関係している「厄介な不良」だとわかります。
客先監査で「この不良はどの工程が原因ですか?」と聞かれたとき、マトリックス図を見せれば一目で説明できます。「データに基づいて管理している」というエビデンスにもなるので、品質保証部の武器になります。

マトリックス図の5つの型|L型・T型・Y型・X型・C型
マトリックス図には、扱う要素群の数と組み合わせ方によって5つの型があります。QC検定では「どの型が何要素を扱うか」が問われます。
① L型マトリックス図(最も基本)
2つの要素群を行と列に配置する、最もシンプルな形です。アルファベットの「L」の形に見えることからこの名前がついています。実務で使うマトリックス図の約8割がL型です。
🔷 L型の構造イメージ
| 要素B₁ | 要素B₂ | 要素B₃ | |
| 要素A₁ | ◎ | ○ | |
| 要素A₂ | ◎ | △ |
要素群A × 要素群B の関係を見る
使用例:「不良モード × 工程」「要求品質 × 品質特性」「故障モード × 原因」
② T型マトリックス図
3つの要素群を扱います。中央に共通の要素群Aを置き、その上にB、左にCを配置する形です。「T」の字の形に見えます。AとBの関係、AとCの関係を同時に一枚で比較できます。
🔷 T型の構造イメージ
| A₁ | A₂ | A₃ | |
| C₁ | ○ | ◎ | |
| C₂ | △ | ◎ |
上のL型に加え、上部にもう一つのL型(A×B)が組み合わさっている形
A×B と A×C の関係を同時に見る(BとCの直接比較はしない)
使用例:「要求品質(A) × 品質特性(B) × 製造工程(C)」——要求品質と品質特性の関係、要求品質と製造工程の関係を同時に一覧化。
③ Y型マトリックス図
3つの要素群のうち、すべてのペアの関係を見ます。A×B、B×C、C×Aの3つのL型マトリックスを組み合わせた形です。
使用例:「不良モード(A) × 原因(B) × 対策(C)」——不良と原因の関係、原因と対策の関係、対策と不良の関係をすべて一覧化。
④ X型マトリックス図・⑤ C型マトリックス図
X型は4つの要素群を扱い、隣り合う要素群同士の関係を見ます。C型は3つの要素群の三次元的な関係を見る特殊な型です。
X型・C型は実務で使われることはほとんどありませんが、QC検定では「何型が何要素群を扱うか」が選択肢として出るため、下の比較表で整理しておきましょう。
5つの型を一覧比較
| 型 | 要素群の数 | 見える関係 | 使用頻度 |
|---|---|---|---|
| L型 | 2 | A × B | ★★★(最頻出) |
| T型 | 3 | A×B、A×C | ★★ |
| Y型 | 3 | A×B、B×C、C×A | ★ |
| X型 | 4 | 隣り合う要素群同士 | 稀 |
| C型 | 3 | A×B×Cの三次元的関係 | 極めて稀 |
QC検定では「L型は2要素群」「T型は3要素群(中央の要素群が共通)」「Y型は3要素群(すべてのペア)」の区別が問われます。T型とY型の違いが最頻出です。T型は「Aを中心に、BとCの関係は直接見ない」、Y型は「すべてのペアの関係を見る」と覚えましょう。

マトリックス図の作り方|5ステップ
ここからは、実務で最も使うL型マトリックス図の作り方を5ステップで解説します。製造業の品質保証で「不良モードと工程の関係を整理する」例で進めます。
目的を明確にする
「何と何の関係を明らかにしたいのか?」を最初に決めます。目的が曖昧なまま作り始めると、要素の粒度がバラバラになります。
例:「主要な不良モードと、それが発生する工程の対応関係を明確にし、重点管理工程を特定する」
行と列の要素をリストアップする
行(縦)と列(横)に配置する要素を洗い出します。このとき、特性要因図や系統図で整理した結果を使うと漏れが防げます。
例:行=不良モード(寸法不良、外観不良、機能不良、気密不良)/列=工程(プレス、溶接、塗装、組立、検査)
記号のルールを決める
交点に記入する記号と、その定義・配点をチーム内で統一します。
例:◎(5点)=「この工程が直接的な発生原因」/○(3点)=「間接的に影響」/△(1点)=「条件によっては影響あり」/空欄=「関係なし」
交点に記号を記入する
一つひとつの交点について、関係の有無と強さを判定して記号を打ちます。この作業は必ず複数人で行ってください。一人で判断すると偏りが出ます。品質会議やDR(デザインレビュー)の場で、関係者全員の知見を集約して記入するのが理想です。
合計点を算出し、重点項目を特定する
行ごと・列ごとに配点の合計を計算し、スコアが高い要素を重点管理対象として抽出します。必要に応じて、パレート図で上位項目を可視化するとさらに効果的です。

実務での活用例|品質保証の現場で使う3つの場面
活用例①|不良モード × 工程(原因特定)
最も基本的な使い方です。過去の不良データをもとに、「どの不良がどの工程で発生しやすいか」を一覧表にします。客先監査で「御社はどの工程を重点管理しているのか」と問われたときに、このマトリックス図を提示できると説得力があります。
活用例②|要求品質 × 品質特性(QFDの入口)
客先の「要求品質」(例:「軽い」「壊れにくい」「静かに動く」)と、自社で管理する「品質特性」(例:「重量」「衝撃強度」「騒音レベル」)の対応関係を整理します。これがそのままQFD(品質機能展開)の品質表の基礎になります。
活用例③|FMEA項目 × 管理工程(コントロールプランとの連携)
FMEAで抽出した故障モードと、それを管理する工程・検査方法の対応関係を一覧表にします。IATF16949の監査では「FMEAとコントロールプランの整合性」を確認されるため、マトリックス図で「漏れ」がないことを証明するのに使えます。
IATF16949の監査員が最もチェックするのは「FMEAとコントロールプランの紐づけに漏れがないか」です。マトリックス図でFMEAの故障モードと管理工程の対応を一覧化しておくと、監査当日にスムーズに説明できます。実際、監査指摘ゼロで乗り切ったチームがこの手法を使っていました。

QFD(品質機能展開)との関係|「品質の家」の正体はマトリックス図
マトリックス図法と聞いて、品質管理に詳しい人がまず思い浮かべるのがQFD(Quality Function Deployment:品質機能展開)です。QFDの中核ツールである「品質の家(House of Quality)」は、まさにマトリックス図の応用そのものです。
品質の家の構造
| 🏠 屋根:品質特性同士の相関 | |
| 左壁: 要求品質 (顧客の声) |
中央: 関係マトリックス (◎○△で対応づけ) ← ここがマトリックス図! |
| 床:品質特性の目標値・重要度 | |
品質の家の中央部分は、「要求品質(行)× 品質特性(列)」のL型マトリックス図です。つまり、QFDの根幹はマトリックス図法なのです。マトリックス図法を理解していれば、QFDの品質表もスムーズに作成できます。

マトリックスデータ解析法との違い
新QC7つ道具の中に「マトリックスデータ解析法」という、名前がよく似た手法があります。QC検定ではこの2つの違いが問われるため、ここで整理しておきます。
マトリックス図法
| データの種類:記号(◎○△)=定性的 |
| 目的:要素間の関係を「見える化」する |
| 数学的手法:不要(記号を打つだけ) |
| 特徴:誰でも直感的に使える |
マトリックスデータ解析法
| データの種類:数値データ=定量的 |
| 目的:多変量データの構造を分析する |
| 数学的手法:主成分分析(PCA) |
| 特徴:新QC7つ道具で唯一の数値解析手法 |
マトリックス「図」法は「図(記号)」で関係を見る。マトリックス「データ解析」法は「数値データ」を解析する。名前に「データ解析」が入っているほうが数値を使う、と覚えましょう。

QC検定での出題ポイント|押さえるべき3つの論点
マトリックス図法はQC検定2級・3級の「新QC7つ道具」で出題されます。計算問題は出ません。知識問題(選択肢の正誤判定)で問われるため、以下の3つを確実に押さえてください。
出題パターン① L型・T型・Y型の区別
「T型マトリックス図は3つの要素群を扱い、すべてのペアの関係を見る」→ ×(これはY型の説明。T型は中央の要素群を共通軸とし、2つのペアだけを見る)。このような正誤問題が典型です。
出題パターン②「マトリックス図法」と「マトリックスデータ解析法」の違い
「マトリックスデータ解析法は記号(◎○△)を用いて関係を整理する手法である」→ ×(記号を使うのはマトリックス図法。マトリックスデータ解析法は数値データを主成分分析で解析する手法)。
出題パターン③ 新QC7つ道具の手法選択
「2つの要素群の対応関係を一覧表で整理したい場合に適した手法はどれか」→ マトリックス図法。連関図法(因果関係)、系統図法(目的→手段)との使い分けを問う問題です。
✅ L型は2要素群、T型は3要素群(中央共通)、Y型は3要素群(全ペア)
✅ マトリックス図法は「記号」、マトリックスデータ解析法は「数値」
✅ マトリックス図法の目的は「対応づけ・整理」
✅ QFDの品質表はマトリックス図法の応用

まとめ
マトリックス図法は、「2つの要素群の関係を一覧表で見える化する」ためのシンプルかつ強力な手法です。最後にポイントを整理します。
| マトリックス図法とは | 2つ以上の要素群を行と列に配置し、交点に◎○△で関係の強さを示す手法 |
| 交点の記号 | ◎(5点)=強い関係、○(3点)=関係あり、△(1点)=弱い関係、空欄=関係なし |
| 5つの型 | L型(2要素群)、T型(3要素群・中央共通)、Y型(3要素群・全ペア)、X型(4要素群)、C型(3次元) |
| 作り方 | ①目的の明確化→②要素のリストアップ→③記号ルールの統一→④記号の記入→⑤合計点で重点特定 |
| QFDとの関係 | 品質の家の中核部分はL型マトリックス図。マトリックス図法を理解すればQFDの基礎が身につく |
マトリックス図法は、出席簿の要領で「行と列に要素を並べて、交点に記号を打つだけ」のシンプルな手法です。でもそのシンプルさゆえに、品質保証・FMEA・QFDなど幅広い場面で応用されています。
まずは目の前の業務で「2つの要素の関係を整理したい」場面があったら、Excelで行と列を作って◎○△を打ってみてください。それがマトリックス図法の第一歩です。
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