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改善活動でメンバーから意見を集めたものの、「ラインが止まる」「ねじが合わない」「段取り替えが遅い」「不良品が増えた」……と付箋が壁一面に貼り出され、途方に暮れた経験はないでしょうか。
バラバラに見える意見も、「似たもの同士」でグループ分けしていくと、不思議なことに問題の全体像が浮かび上がってきます。この「仲間分け」の作業こそが親和図法です。
この記事では、親和図法の定義から作成手順、製造業での使いどころまでを、図解を中心に「中学生でも理解できるレベル」で徹底解説します。結論を先に言うと、親和図法は「付箋を"仲間分け"して、ラベルを付けるだけ」です。手順さえ知れば誰でもすぐに使えます。
新QC7つ道具の7つの手法の全体と使い分けは、次の記事にまとめています。
QC7つ道具との違いと7つの手法の使い分け
親和図法とは?──30秒でわかる定義
読み方は「しんわずほう」。英語では affinity diagram(アフィニティ・ダイアグラム)といいます。8枚のカードを3つの見出しにまとめた具体例は、この記事の作り方の手順(STEP4〜5)の図で確かめられます。
もう少しかみ砕きます。「親和性」とは、「似ている」「仲間っぽい」「同じ系統だ」という意味です。つまり親和図法とは、意見の付箋を「似たもの同士」で集めて、グループにタイトルをつけるだけの手法です。
イメージとしては、散らかった部屋の片づけに似ています。床に散らばった本・服・食器を「本は本棚」「服はクローゼット」「食器はキッチン」と仲間ごとに片づけていくと、部屋の全体像が見えてきますよね。あれと同じことを「意見や事実」に対してやるのが親和図法です。
新QC7つ道具の中の位置づけ
親和図法は、新QC7つ道具(N7)の1つです。新QC7つ道具とは、数値データではなく「言語データ(言葉・文章)」を扱うための手法群で、以下の7つから構成されています。
| No. | 手法名 | ひとことで言うと |
|---|---|---|
| 親和図法 ← 今ここ! | バラバラな意見を「仲間分け」する | |
| 連関図法 | 原因と結果を矢印でつなぐ | |
| 系統図法 | 目的→手段をツリーで分解する | |
| マトリックス図法 | 2つの軸の関係を表で整理する | |
| アローダイアグラム法 | 作業の順序と日程を矢印で管理する | |
| PDPC法 | 不測の事態への対策を事前に計画する | |
| マトリックス・データ解析法 | 数値データを主成分分析で要約する |
親和図法は、この中で「最初に使う道具」になることが多いです。なぜなら、問題を解決するには、まず「何が問題なのか」を整理する必要があるからです。バラバラな意見を整理して全体像をつかむ親和図法は、改善活動の「第一歩」として最適です。

データや意見を「仲間ごとに分ける」考え方は、QC7つ道具の土台になる「層別」と共通しています。
QC7つ道具の土台になる考え方とやり方
「KJ法」と「親和図法」の違い──結論:ほぼ同じ
親和図法を調べると必ず出てくるのが「KJ法」という言葉です。「KJ法と親和図法は何が違うの?」と疑問に思う方も多いでしょう。結論から言います。
KJ法は、文化人類学者の川喜田二郎(Kawakita Jiro)氏が考案した手法で(1967年の著書『発想法』で広く知られるようになりました)、名前のイニシャル「K.J.」から「KJ法」と呼ばれています。川喜田氏がフィールドワークで大量に集めた情報を整理するために編み出した方法であり、後に品質管理の分野に取り入れられて「親和図法」という一般名称で呼ばれるようになりました。
| 比較項目 | KJ法 | 親和図法 |
|---|---|---|
| 名前の由来 | 川喜田二郎のイニシャル | 手法の特徴から命名 |
| 広まった時期 | 1967年の著書『発想法』で広く知られる | KJ法を品質管理に応用 |
| やること | 言語データをグループ化して統合図を作る | 同じ |
| QC検定での呼び方 | 出題あり(別称として) | こちらが正式名称 |

親和図法はどんなときに使う?
親和図法が威力を発揮するのは、「情報がバラバラで整理がつかないとき」です。逆に言えば、すでに原因が明確な問題や、即断即決すべき緊急対応には向いていません。
親和図法が「向いている場面」と「向いていない場面」

親和図法の作り方──5ステップの全手順
ここからが本題です。親和図法の作成手順を5つのステップに分けて、製造業の現場を例に解説します。まずは全体の流れを確認しましょう。
それでは、1つずつ詳しく見ていきましょう。ここでは製造部門の改善活動で「現場の困りごとを整理して改善テーマを決める」というシーンを例に進めます。
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STEP 1:テーマ(目的)を決める
まず最初に、「何について意見を集めるのか」を決めます。これが親和図のテーマです。テーマが曖昧だと、出てくる意見もぼやけてしまうので、できるだけ具体的に設定しましょう。
STEP 2:意見を書き出す(=言語カードを作る)
テーマに沿って、メンバー全員から意見を集めます。1つの付箋(=言語カード)に1つの意見だけを書くのがルールです。付箋がない場合は、メモ用紙やExcelのセルでもOKです。

STEP 3:似たもの同士を「仲間分け」する
ここが親和図法の核心部分です。書き出した言語カードを机(または模造紙・ホワイトボード)に広げ、「この2枚は似ている」と感じるもの同士を近くに寄せていきます。
このとき重要なのは、「あらかじめ分類の枠を決めない」ことです。「設備」「品質」「作業」のような分類を先に決めてしまうと、既存の枠に無理やり当てはめてしまい、新しい気づきが得られません。付箋を眺めながら、「あ、この2枚は同じことを言っているな」と直感的にグループを作っていくのが正しいやり方です。
STEP 4:各グループにラベル(=親和カード)をつける
仲間分けしたグループに、そのグループを一言で表す「見出し」をつけます。この見出しが「親和カード」です。
ポイントは、グループ内の付箋を全部読み返して、「つまり何の話?」を考えることです。先ほどの例で言えば、以下のようになります。
| グループ | 中身の付箋 | 親和カード(ラベル) |
|---|---|---|
| ① | 製品倒れでライン停止、チョコ停、ねじ不具合 | 工程トラブルによるライン停止 |
| ② | 傷の増加、寸法バラつき、治具校正切れ | 品質不良の増加 |
| ③ | 段取り替え長い、取り付け作業長い | 作業時間のロス |
バラバラだった8枚の付箋が、たった3つのラベルに集約されました。これが親和図法の最大の威力です。「8枚の付箋」と言われてもピンときませんが、「工程トラブル」「品質不良」「作業ロス」と言われれば、一瞬で全体像が把握できます。
STEP 5:親和図を完成させ、読み取りを行う
最後に、グループ同士の関係性を線や矢印で表し、全体を1枚の図として完成させます。この図全体が「親和図」です。
完成した親和図から読み取れる情報を、箇条書きの文章で整理します。たとえば以下のようにまとめます。
このように、親和図を作ることで「何から手をつけるべきか」が見えてきます。感覚的に「設備Aが悪い!」と決めるのではなく、データ(=意見の集まり)に基づいて優先順位を決められるのが、親和図法の大きなメリットです。
目的から手段へツリーで分解する系統図法

親和図法の3つのメリット
「付箋を仲間分けするだけでしょ?わざわざ手法にする意味あるの?」と思うかもしれません。しかし、親和図法を「正しく」使うことで得られる効果は意外と大きいです。
メリット① 問題の「全体像」が一目で見える
付箋が50枚散らばっている状態では、全体像は把握できません。しかし親和図にすれば、「現場の問題は大きく3つの領域に分かれている」「そのうちライン停止に関する付箋が最も多い」と一目でわかります。これが上司への報告や、メンバー間の認識合わせに非常に役立ちます。
メリット② 「全員参加」で意見が出やすくなる
口頭の会議では、声の大きい人の意見ばかり通りがちです。しかし付箋に書いて出す方式なら、普段は発言しない人の意見も平等に拾えます。「改善案」ではなく「困っていること」を書くだけなので、立場や経験年数に関係なく誰でも参加できるのが親和図法の良いところです。
メリット③ 「事実」と「推測」を分けるクセがつく
言語カードには「目の前の事実」を書くのがルールです。このルールを守ることで、「たぶん設備が古いから」のような推測を事実と混同するクセが直ります。品質保証部で上司に報告するとき、「事実」と「推測」を分けて伝えられるようになる──これは日常業務でも大きな武器になります。

親和図法を成功させる5つのコツ
手順はシンプルですが、「やってみたけど上手くいかなかった」というケースもあります。以下の5つのコツを意識すると、親和図の質が格段に上がります。

親和図で整理した課題について、原因と結果のつながりを矢印でたどるのが連関図法です。
原因と結果を矢印でつなぐ「問題の地図」の作り方
「QC7つ道具」と「新QC7つ道具」の使い分け
「QC7つ道具」と「新QC7つ道具」は名前が似ていますが、扱うデータの種類がまったく違います。ここを混同すると、客先監査で「なぜこの手法を選んだのですか?」と聞かれたときに答えられなくなります。
| 比較項目 | QC7つ道具 | 新QC7つ道具(N7) |
|---|---|---|
| 扱うデータ | 数値データ(寸法、温度、不良数など) | 言語データ(意見、アイデア、事実など) |
| 主な目的 | 現状の把握・分析 | 問題の構造化・計画の立案 |
| 代表的な手法 | パレート図、管理図、ヒストグラム | 親和図法、連関図法、系統図法 |
| 使う場面 | 製造工程の品質管理 | 企画・計画段階、改善活動のテーマ選定 |

QC検定での出題ポイント
QC検定(2級・3級)では、新QC7つ道具に関する問題がよく出題されます。親和図法に関しては、以下のポイントを押さえておくと得点しやすくなります。
試験で押さえるべき4つのポイント

よくある質問
まとめ:親和図法は「仲間分けして、名前をつけるだけ」
最後に、この記事の内容を一枚の表にまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 親和図法とは | バラバラな言語データを親和性(=似ているかどうか)で仲間分けし、問題の全体像を見える化する手法 |
| 別名 | KJ法(川喜田二郎法) |
| 属する手法群 | 新QC7つ道具(N7) |
| 使う場面 | 問題が整理されていないとき、改善テーマを決めるとき |
| 手順 | テーマ決定 → 意見を書き出す → 仲間分け → ラベルをつける → 図を完成させる |
| 最大の注意点 | 分類を「先に」決めない(先入観なしでグループ化する) |
親和図法は、品質管理の世界で長く使われている「古典的だけど実用的」な手法です。特別なツールも統計ソフトも不要で、付箋と模造紙さえあれば今日からすぐに使えます。
次の改善活動のキックオフで「まず現場の困りごとを親和図法で整理しましょう」と提案すれば、上司も「お、こいつ勉強してるな」と思うはずです。

