- 新しいラインの立ち上げ計画を立てたけど、「想定外のトラブル」が起きて大炎上した
- 客先監査の準備で「もし○○を指摘されたらどうする?」を整理したいけど、頭の中がごちゃごちゃで網羅できない
- QC検定で「PDPC法」が出てきたけど、アローダイアグラムやFMEAとの違いがピンとこない
- PDPC法の定義と「なぜ必要なのか」
- 強制連結型と逐次展開型の2タイプの違い
- 実務で使えるPDPC法の作り方5ステップ
- FMEA・FTAとの使い分け
- QC検定での出題ポイント
「計画通りにいかなかった」——仕事をしていれば、これほどよく聞く言葉はありません。
新しい生産ラインの立ち上げ、品質改善プロジェクト、客先への工程変更の申請……。どんなに綿密に計画を立てても、「想定外のトラブル」は必ず起きます。設備が届かない、試作品の品質が出ない、関係部署の承認が遅れる。
問題は「想定外が起きること」ではありません。「想定外を想定していなかったこと」です。
そんな「転ばぬ先の杖」を図にしたのがPDPC法です。目標に向かうプロセスの中で「もしこうなったら?」「その場合どうする?」を事前に洗い出し、代替案を一枚の図にまとめます。
この記事では、PDPC法の基本から2つのタイプの使い分け、実務での作り方まで、図解で徹底的に解説します。
目次
PDPC法とは?
PDPC法(Process Decision Program Chart:過程決定計画図)とは、目標達成までのプロセスで起こりうる不測の事態を事前に予測し、それぞれに対する代替案・対応策をフローチャート形式で一覧化する手法です。
PDPC法は新QC7つ道具(N7)の一つです。日本語では「過程決定計画図」と呼ばれます。
一言でいうと、「もし○○になったら、△△する」を図にしたものです。
「旅行計画」で理解するPDPC法
PDPC法を難しく考える必要はありません。あなたが家族旅行の計画を立てるときのことを想像してください。
🗺️ 旅行計画のPDPC(頭の中でやっていること)
計画:朝9時に車で出発 → 12時に目的地着
⚡ 想定外①:高速道路が渋滞したら?
→ 代替案A:一般道で迂回する(ナビに迂回ルートを登録しておく)
→ 代替案B:出発時間を1時間早める
⚡ 想定外②:当日雨だったら?
→ 代替案C:屋内の観光スポットに変更する(候補リストを準備)
⚡ 想定外③:子どもが車酔いしたら?
→ 代替案D:酔い止め薬を事前に購入しておく+休憩ポイントを多めに設定
あなたは旅行計画を立てるとき、無意識にこの「もし○○なら△△する」思考をやっています。PDPC法は、この思考を「見える化」して関係者全員で共有できるようにしたものです。
PDPC法の本質は「不測の事態を事前に予測し、代替案を準備しておくこと」。頭の中だけでやると漏れが出るし、一人だけが知っていても意味がない。だから図にして、チーム全員で共有するのです。

なぜPDPC法が必要なのか?
「わざわざ図にしなくても、頭の中で考えればいいのでは?」と思うかもしれません。しかし、頭の中だけの「もしもの想定」には3つの致命的な限界があります。
頭の中だけで考える3つの限界
限界①:漏れる
一人の頭で想定できるリスクには限界がある。3つ目、4つ目の「もしも」は思いつかないことが多い。
限界②:共有できない
ベテランの頭の中にだけある「もしもの知恵」は、そのベテランが休んだら誰も対応できない。
限界③:更新できない
過去のトラブルから学んだ対策を蓄積できない。同じ想定外が何度も繰り返される。
PDPC法は、この3つの限界を一枚の図で解決します。「漏れなく想定し」「チームで共有し」「蓄積・更新できる」——これがPDPC法を使う最大の理由です。
新QC7つ道具の中での立ち位置
PDPC法は、新QC7つ道具の中で「リスク対策・不測の事態への備え」を担当する手法です。他の手法との使い分けを把握しておきましょう。
| 手法 | 役割 | ひとこと |
|---|---|---|
| 親和図法 | グルーピング | バラバラな意見を仲間分けする |
| 連関図法 | 因果関係の把握 | 原因と結果を矢印でつなぐ |
| 系統図法 | 手段の展開 | 目的→手段をツリーで展開 |
| マトリックス図法 | 対応づけ | 2つの要素の関係を一覧表にする |
| アローダイアグラム | 日程管理 | 作業の順序と所要時間を矢印で表す |
| ⭐ PDPC法 | リスク対策 | 「もしこうなったら?」の事前対策を図にする |
| マトリックスデータ解析法 | 数値データの解析 | マトリックス図の数値版(主成分分析) |
アローダイアグラムは「計画通りに進む前提」で日程を管理する手法。PDPC法は「計画通りに進まない場合」の代替案を管理する手法。両者はセットで使うのが理想です。アローダイアグラムで日程を引き、PDPC法で「もし遅れたら?」の対策を準備する——これが実務での定番の組み合わせです。

PDPC法の2つのタイプ|強制連結型と逐次展開型
PDPC法には2つのタイプがあります。QC検定ではこの2つの違いが問われるため、しっかり区別しておきましょう。
① 強制連結型(ゴールから逆算するタイプ)
最初にスタートとゴールを決めてしまい、その間のプロセスで起こりうる不測の事態と対策を洗い出すタイプです。ゴールは「動かせない」前提で、途中の障害をどう乗り越えるかを計画します。
🔷 強制連結型のイメージ
新ライン
立ち上げ
設備納期が遅れる
→ 代替設備を手配
試作品の品質NG
→ 金型を修正
量産開始
(納期厳守)
ゴール(量産開始日)は動かせない。途中の障害を乗り越える方法を事前に準備する。
使うべき場面:納期が決まっているプロジェクト、客先への工程変更申請、量産立ち上げスケジュールなど。「ゴールの日付が動かせない」場面で威力を発揮します。
② 逐次展開型(状況に応じて分岐するタイプ)
ゴールを最初から決めず、状況の進行に応じて「こうなったらこちらへ」「ああなったらあちらへ」と分岐しながら、最も望ましい結果にたどり着くルートを探るタイプです。
🔶 逐次展開型のイメージ
原因が特定できた場合
→ 客先に報告書提出
🏁 望ましい結果
原因が特定できない場合
→ 再現テストを行う
ゴールは「やってみないとわからない」。状況に応じて最適なルートを選びながら進む。
使うべき場面:原因不明の不具合調査、新技術の開発、前例のないプロジェクトなど。「どこに着地するかわからない」場面で使います。
2つのタイプを一覧比較
| 比較項目 | 強制連結型 | 逐次展開型 |
|---|---|---|
| ゴール | 最初に決まっている(固定) | 最初は決まっていない(可変) |
| プロセスの流れ | スタート → ゴールの一本道 + 障害への対策 | 状況に応じて分岐しながら進む |
| 図の形 | 横長のフローチャート | ツリー状に広がる分岐図 |
| 適する場面 | 納期が決まっているプロジェクト | 前例のない不具合調査・開発 |
| 実務での頻度 | ★★★(最頻出) | ★★ |
QC検定では「強制連結型はゴールが固定」「逐次展開型はゴールが可変」の区別が問われます。「ゴールが最初から決まっているか否か」——この一点だけ覚えれば、2つのタイプは確実に見分けられます。

PDPC法の作り方|5ステップ
ここからは、実務で最も使う強制連結型PDPCの作り方を5ステップで解説します。「新しい生産ラインの立ち上げ」を例に進めます。
テーマ(目的)とゴールを決める
「何を達成したいか」と「いつまでに」を明確にします。
例:「8月1日までに新ラインで量産品を初回出荷する」
理想的なプロセス(正常ルート)を書く
「すべてが計画通りに進んだ場合」のプロセスを、左から右(または上から下)にフローチャートで書きます。
例:設備発注 → 設備搬入 → 据付・調整 → 試作品製造 → 品質確認 → 客先承認 → 量産開始
各ステップで「もしこうなったら?」を洗い出す
正常ルートの各ステップに対して、「起こりうる不測の事態」を洗い出します。ここは複数人でブレインストーミングするのが鉄則です。ベテランの経験に頼るだけでなく、過去のトラブル履歴やFMEAの結果も参考にしましょう。
例:
・設備搬入 → ⚡「設備の納期が2週間遅延する」
・試作品製造 → ⚡「寸法がスペックアウトする」
・客先承認 → ⚡「客先から追加データを要求される」
各不測事態に「代替案・対応策」を書く
洗い出した不測の事態それぞれに対して、「どうやって乗り越えるか」の代替案を記入します。代替案は1つに限らず、複数用意しておくと安全です。
例:
・設備納期遅延 → 代替案A「仮設備で先に試作を開始」 / 代替案B「サプライヤーに特急対応を依頼」
・寸法スペックアウト → 代替案A「金型を修正」 / 代替案B「加工条件を再調整」
事前に準備すべきアクションをリスト化する
代替案の中には「事前に準備しておかないと使えない」ものがあります。「仮設備を手配しておく」「金型修正の業者を確保しておく」「追加データの取得スケジュールを組んでおく」など、今すぐやるべきアクションを抽出します。これがPDPC法の最大の成果物です。
PDPC法は「作って終わり」ではありません。プロジェクトが進行するにつれて新たなリスクが見つかるため、定期的に更新することが重要です。週次のプロジェクト会議でPDPC図を見直す習慣をつけましょう。

具体例で見るPDPC図|量産立ち上げプロジェクト
5ステップで作成したPDPC図を、実際の図の形で示します。ここでは「新ライン量産立ち上げ」の強制連結型PDPCを例にします。
PDPC図の読み方
🔵 正常ルート(太い矢印で横に流れる)
🟠 不測の事態と代替案(下に分岐する)
| 対象ステップ | ⚡ 不測の事態 | 🛡️ 代替案 | 📋 事前準備 |
|---|---|---|---|
| 設備搬入 | 設備の納期が2週間遅延する | A:仮設備で試作を先行開始 B:サプライヤーに特急対応を依頼 |
仮設備のリストを作成しておく |
| 試作品製造 | 寸法がスペックアウトする | A:金型修正(5日間) B:加工条件の再調整 |
金型業者に修正の事前見積を依頼 |
| 品質確認 | 客先から追加データを要求される | A:予備データ(工程能力指数等)を事前取得 B:客先と事前にデータ項目を合意 |
想定データ項目をリスト化し、測定計画を組んでおく |
PDPC図の最大の成果物は、右端の「事前準備」列です。代替案を考えるだけでなく、「今のうちにやっておくべきこと」を具体的なアクションに落とし込むことが、PDPC法を「絵に描いた餅」で終わらせないコツです。

実務での活用例|品質保証・製造業で使う3つの場面
活用例①|新製品の量産立ち上げ
前の章で紹介した例がまさにこれです。量産開始日は客先と合意した「動かせない日付」。設備遅延、品質NG、承認遅れなど、あらゆるリスクを洗い出して代替案を準備します。PDPC法は初期流動管理と組み合わせると効果的です。
活用例②|客先監査への準備
「もし監査員に○○を指摘されたら?」「もし現場で△△の記録が見つからなかったら?」——客先監査の前にPDPC法で想定問答と対策を整理しておくと、当日のパニックを防げます。特にIATF16949の第三者審査やサプライヤー監査の準備に有効です。
活用例③|重大クレーム発生時の対応(逐次展開型)
客先から重大クレームが入った場合、「原因が特定できるか/できないか」「暫定対策で封じ込められるか」「恒久対策が効くか」など、状況に応じて対応が分岐します。逐次展開型PDPCで対応フローを事前に作成しておけば、パニック状態でも冷静に次のアクションを判断できます。
PDPC法は「面倒」と思われがちですが、一度作ってしまえばプロジェクトの「お守り」になります。特に客先監査では「御社はリスクをどう管理していますか?」と聞かれることが多く、PDPC図を提示できると「ちゃんとリスク管理している会社だ」という評価に直結します。

PDPC法とFMEA・FTAの違い
「リスクを事前に洗い出す手法」としては、FMEA(故障モード影響解析)やFTA(故障の木解析)もあります。PDPC法とどう違うのか、一覧で整理しておきます。
| 比較項目 | PDPC法 | FMEA | FTA |
|---|---|---|---|
| 何を対象とするか | プロジェクトのプロセスで起こりうる不測事態 | 製品・工程の故障モード | 発生した(想定する)トップ事象の原因 |
| 分析の方向 | 未来に向かって「もし○○なら?」 | ボトムアップ(部品→システム) | トップダウン(結果→原因) |
| アウトプット | 代替案・事前準備リスト | RPN(リスク優先数)と対策 | 故障の原因構造(ツリー図) |
| 使うタイミング | プロジェクト計画時 | 設計・工程の計画段階 | トラブル発生後の原因分析 |
| 分類 | 新QC7つ道具 | 品質保証手法(IATF等) | 信頼性工学 |
・PDPC法:「プロジェクトが計画通り進まなかったときの代替案」を準備する
・FMEA:「製品・工程がどんな壊れ方をするか」をリスク数値化して対策する
・FTA:「なぜそのトラブルが起きたか」を原因ツリーで特定する
3つは補完関係にあり、組み合わせて使うのが理想です。

QC検定での出題ポイント|押さえるべき3つの論点
PDPC法はQC検定2級・3級の「新QC7つ道具」で出題されます。計算問題は出ません。知識問題(選択肢の正誤判定)で問われるため、以下の3つを確実に押さえてください。
出題パターン① 強制連結型と逐次展開型の区別
「逐次展開型は最初にゴールを決めて、そこに向かう過程のリスクを洗い出す」→ ×(これは強制連結型の説明。逐次展開型はゴールが最初から決まっていない)。「ゴールが固定か可変か」が判断基準です。
出題パターン② PDPC法の目的
「PDPC法は、過去のトラブルの原因を分析するための手法である」→ ×(過去の原因分析はFTAやなぜなぜ分析の役割。PDPC法は未来に起こりうる不測の事態への事前対策を立てるための手法)。
出題パターン③ 新QC7つ道具の手法選択
「プロジェクトで想定される不測の事態に対し、事前に代替案を準備するのに適した手法はどれか」→ PDPC法。アローダイアグラム(日程管理)や系統図法(手段の展開)との使い分けが問われます。
✅ 強制連結型はゴール固定、逐次展開型はゴール可変
✅ PDPC法は「未来のリスクへの事前対策」(過去の原因分析ではない)
✅ アローダイアグラムは「日程管理」、PDPC法は「リスク対策」
✅ FMEA・FTAとの違いを説明できるようにしておく

まとめ
PDPC法は、「想定外を想定する」ための手法です。最後にポイントを整理します。
| PDPC法とは | 目標達成までのプロセスで「もしこうなったら?」を事前に想定し、代替案をフローチャートで一覧化する手法 |
| 2つのタイプ | 強制連結型(ゴール固定・障害を乗り越える方法を計画)と逐次展開型(ゴール可変・状況に応じて分岐) |
| 作り方 | ①テーマとゴール決定→②正常ルート作成→③不測事態の洗い出し→④代替案の記入→⑤事前準備のリスト化 |
| FMEA・FTAとの違い | PDPCは「プロジェクトのプロセス」のリスク対策。FMEAは「製品・工程の故障モード」の分析。FTAは「トラブルの原因」をトップダウンで追究。 |
| 最大の成果物 | 代替案そのものではなく、「今のうちにやっておくべき事前準備リスト」 |
PDPC法は「旅行計画で雨の日のプランBを考えておく」のと同じ発想です。「問題が起きてから慌てる」のではなく、「問題が起きる前に準備しておく」。このシンプルな考え方を図にするだけで、プロジェクトの成功率は格段に上がります。
まずは目の前のプロジェクトで、正常ルートを書き出し、各ステップに「⚡もしこうなったら?」を1つずつ追加するところから始めてみてください。
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