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電験三種 電力 公式の数は、7分野で38個。
このブログには、理論と機械の公式一覧はありました。電力だけが無かった。電力の計算は発電・送電・配電に散らばっていて、試験の直前に見返す1枚が欲しくなる科目です。そこで、公式を分野ごとに1行ずつ並べ、出題された年度と問番号を添えました。
どの式も「何を求めるか」「記号の意味」を同じ行に書いています。導き方まで知りたい式は、表の下のカードから詳しい記事へ進めます。全部で5例題です。

電験三種 電力でまず覚える6つの公式
電力の計算問題の多くは、水力の出力、送電線の電圧降下と電力損失、%Z を使った短絡電流、電線のたるみ、力率改善の5つの場面に集まります。この6つの式を先に覚えると、残りの式は「この6つの変形」として読めます。
| 公式 | 求めるもの | 分野 | 出題の例 |
|---|---|---|---|
| P=9.8QHη[kW] | 水力発電所の出力 | 水力 | R07上 問1 |
| v=√3I(Rcosθ+Xsinθ)[V] | 三相3線式の電圧降下 | 送電・配電 | R05上 問12、R07下 問16 |
| Pℓ=3I²R[W] | 三相3線式の電力損失 | 送電 | R06下 問12、R04上 問8 |
| Is=In×100/%Z[A] | 三相短絡電流 | 変電・短絡 | H21 問16、R07上 問16 |
| D=WS²/8T[m] | 電線のたるみ(弛度) | 送電 | R08上 問16、R05下 問12 |
| Qc=P(tanθ₁−tanθ₂)[kvar] | 力率改善に要るコンデンサの容量 | 配電 | H29 問17、H22 問6 |
出題の例は、電験王「科目別 電力問題一覧」の論点名で確かめた年度と問番号です(R=令和、H=平成、上・下=上期・下期)。問題文はこの記事に載せていません。
年度を拾うために、電験王の電力の問題一覧を分野ごとに読みました。たるみは令和5年度下期から令和8年度上期までの6回の試験のうち4回で出ています。電圧降下は令和7年度下期に、問16と問17の2問続けて出ました。この2つは別格。公式を見た瞬間に手が動くところまで練習しておきたい式です。

水力発電の公式(出力・揚水・比速度)
水力発電の出力は P=9.8QHη[kW]で、流量 Q[m³/s]と有効落差 H[m]と効率 η を掛けるだけです。揚水発電は同じ式を「くみ上げる側」に使い、効率で割ります。
| 公式 | 求めるもの | 記号の意味 | 出題の例 |
|---|---|---|---|
| P=9.8QHη[kW] | 発電所の出力 | 9.8=重力加速度 g[m/s²]、Q=流量[m³/s]、H=有効落差[m]、η=水車と発電機の総合効率 | R07上 問1 |
| P₀=9.8QH[kW] | 理論水力(効率を掛ける前) | η を掛けない値。包蔵水力の計算にも使う | R08上 問2 |
| Pp=9.8QH/(ηp・ηm)[kW] | 揚水に要る電動機の入力 | ηp=ポンプ効率、ηm=電動機効率。くみ上げは効率で「割る」 | R08上 問15、R06上 問2 |
| η=(発電した電力量)/(揚水に使った電力量) | 揚水発電所の総合効率 | 発電側と揚水側の効率をすべて掛けた値と同じ | R04上 問15 |
| Ns=N・P^(1/2)/H^(5/4) | 水車の比速度[m・kW] | N=回転速度[min⁻¹]、P=出力[kW]、H=有効落差[m] | R06上 問15、R05上 問1 |
| N=120f/p | 発電機の回転速度(同期速度) | f=周波数[Hz]、p=磁極数。比速度の計算の前に使う | R06上 問15 |
例題1 流量20m³/s・落差50m・効率85%の出力
9.8 は重力加速度で、1m³の水(1,000kg)が1m落ちると 9.8kJ の仕事をする、という意味の数字です。ここが要です。単位が kW で出るのは、1,000kg の「1,000」と、W を kW にする「÷1,000」が打ち消し合うから。ここを知っていると、9.8 を忘れても式を組み立て直せます。
火力発電・原子力発電の公式(熱効率・燃料・CO2・E=mc²)
火力の熱効率は η=3,600W/(BH) で、発電した電力量 W[kWh]を熱の量に直して、使った燃料の熱量で割ります。原子力は E=mc² で、なくなった質量に光の速さの2乗を掛けるとエネルギーになります。
| 公式 | 求めるもの | 記号の意味 | 出題の例 |
|---|---|---|---|
| η=3,600W/(BH) | 発電端熱効率 | W=発電電力量[kWh]、B=燃料の量[kg]、H=発熱量[kJ/kg]。1kWh=3,600kJ | R07下 問15、R05上 問15 |
| B=3,600W/(ηH)[kg] | 燃料の消費量 | 上の式を B について並べ替えたもの | R06下 問15 |
| CO₂=C×44/12[kg] | 二酸化炭素の発生量 | C=燃えた炭素の質量[kg]。炭素12に対して CO₂ は44 | R07下 問15、R06下 問15 |
| ηs=η×(1−L) | 送電端熱効率 | L=所内率(発電所の中で使う電力の割合) | — |
| ηt=(タービンの出力)/(蒸気が渡した熱量) | タービン効率 | 蒸気の熱量は「比エンタルピーの差×蒸気の量」で出す | R07上 問2、R04上 問3 |
| E=mc²[J] | 核分裂で出るエネルギー | m=なくなった質量[kg]、c=3.0×10⁸[m/s] | R06上 問4、H23 問4 |
| Δm=(反応前の質量)−(反応後の質量) | 質量欠損 | この差が E=mc² の m になる | R08上 問4 |
火力の問題で手が止まりやすいのは、1kWh=3,600kJ の換算です。1W は1秒に1J、1kWh は1,000W を3,600秒なので 3,600,000J=3,600kJ。式の「3,600」はこの換算そのもの。覚える数字ではありません。
新エネルギーの公式(風力・太陽電池・蓄電)
風力発電の出力は P=½ρAV³ で、風速 V の3乗に比例します。風速が2倍になると出力は 2³=8倍です。
| 公式 | 求めるもの | 記号の意味 | 出題の例 |
|---|---|---|---|
| P=½ρAV³・Cp[W] | 風車の出力 | ρ=空気の密度[kg/m³]、A=風を受ける面積 πr²[m²]、V=風速[m/s]、Cp=パワー係数 | H30 問5、H22 問5 |
| P=(日射の強さ)×(面積)×(変換効率) | 太陽電池の出力 | 日射の強さ[kW/m²]。変換効率はパネルで決まる | R02 問5(構成と特徴) |
| W=P×t[kWh] | 蓄電池・発電所の電力量 | P=出力[kW]、t=時間[h] | — |
V³ は、風が運ぶ空気の量(V に比例)と、その空気が持つ運動エネルギー(V² に比例)を掛けたものです。半径 r が2倍になると面積 A は4倍。風速と羽根の大きさ、どちらの効き方が大きいかを比べる問題にそのまま使えます。答えは風速です。
変電・短絡の公式(%Z・短絡電流・V結線)
短絡電流は Is=In×100/%Z で、定格電流 In を百分率インピーダンス %Z で割って100倍します。%Z が5%なら、短絡電流は定格電流の20倍です。
| 公式 | 求めるもの | 記号の意味 | 出題の例 |
|---|---|---|---|
| %Z=(Z・In/E)×100[%] | 百分率インピーダンス | Z=インピーダンス[Ω]、In=定格電流[A]、E=相電圧[V] | R04下 問6、H25 問17 |
| %Z=(Z・P/V²)×100[%] | 三相の %Z(容量と線間電圧で表す形) | P=基準容量[V・A]、V=線間電圧[V] | H20 問8 |
| %Z'=%Z×(P'/P) | 基準容量をそろえる換算 | P'=そろえたい基準容量。%Z は容量に比例する | H21 問16 |
| Is=In×100/%Z[A] | 三相短絡電流 | In=P/(√3V) の定格電流 | R07上 問16、R05下 問16 |
| Ps=Pn×100/%Z[V・A] | 短絡容量(遮断器の選び方に使う) | Pn=基準容量 | R06上 問16 |
| 利用率=√3/2≒0.866、出力比=1/√3≒0.577 | V結線の利用率と、Δ結線に対する出力の比 | 単相変圧器2台で三相を送るときの値 | R08上 問6、H30 問12 |
例題2 10MVA・6.6kV・%Z=5% の短絡電流
%Z の問題は、まず基準容量をそろえるところから始まります。変圧器が20MVA、電源側が10MVA基準で与えられていたら、どちらかに換算してから足す。換算を忘れて足すと、答えの選択肢にそのまま並んでいる値になります。よくある罠です。
%Z の意味と、基準容量の換算・短絡電流の計算を途中式つきで
送電の公式(電圧降下・電力損失・たるみ・送電電力)
三相3線式の電圧降下は v=√3I(Rcosθ+Xsinθ)、電力損失は Pℓ=3I²R です。同じ電力を送るとき、電圧を2倍にすると電流が半分になり、電力損失は 1/4 になります。
| 公式 | 求めるもの | 記号の意味 | 出題の例 |
|---|---|---|---|
| v=√3I(Rcosθ+Xsinθ)[V] | 三相3線式の電圧降下(近似式) | I=線電流、R・X=1線の抵抗とリアクタンス、cosθ=力率 | R05上 問12、H20 問16 |
| ε=(Vs−Vr)/Vr×100[%] | 電圧降下率 | Vs=送電端電圧、Vr=受電端電圧。分母は受電端 | R05上 問12 |
| Pℓ=3I²R=P²R/(V²cos²θ)[W] | 三相3線式の電力損失 | P=送る電力、V=線間電圧。電圧の2乗に反比例 | R06下 問12、R04上 問8 |
| P=Vs・Vr・sinδ/X[W] | 送電できる電力 | δ=送電端と受電端の電圧の位相差、X=線路のリアクタンス | — |
| D=WS²/(8T)[m] | 電線のたるみ(弛度) | W=電線1mの重さ[N/m]、S=径間[m]、T=水平張力[N] | R08上 問16、R06上 問12 |
| L=S+8D²/(3S)[m] | 電線の実際の長さ(実長) | たるみ D と径間 S から出す | R07上 問12、R03 問16 |
| W=√(Wc²+Ww²)[N/m] | 風圧がかかったときの合成荷重 | Wc=電線の重さ、Ww=風圧荷重。たるみの式の W に入れる | — |
例題3 三相・100A・R=0.5Ω・X=0.8Ω・力率0.8
筆者なら、送電の計算は「1相分で解いて、最後に線間へ直す」順で見ます。1相分の電圧降下は I(Rcosθ+Xsinθ)=100×0.88=88V。これを √3 倍すると線間の 152.4V で、上の答えと一致します。理由は、√3 を最初から式に入れると、相電圧と線間電圧のどちらで答えるのかを見失いやすいからです。
電圧降下の近似式と 3I²R を、ベクトル図から導く
例題4 電線1mの重さ20N・径間200m・水平張力20,000N のたるみと実長
たるみの問題で、温度が上がったときのたるみを問うものは、実長の式を2回使います。温度で伸びた実長から、もう一度 D を逆算する。D の式だけでは解けません。
たるみ D=WS²/8T と実長、風圧・温度が変わったときの解き方

配電の公式(単相3線式・力率改善・需要率)
力率改善に要るコンデンサの容量は Qc=P(tanθ₁−tanθ₂) で、有効電力 P に「改善前と改善後の tanθ の差」を掛けて求めます。
| 公式 | 求めるもの | 記号の意味 | 出題の例 |
|---|---|---|---|
| v=2I(Rcosθ+Xsinθ)[V] | 単相2線式の電圧降下 | 往復2本分なので 2 倍 | R03 問17 |
| 中性線の電流=(一方の電流)−(もう一方の電流) | 単相3線式の中性線の電流 | 平衡なら0。不平衡だと差の分が流れる | R08上 問13、R05下 問13 |
| Qc=P(tanθ₁−tanθ₂)[kvar] | 力率改善のコンデンサの容量 | θ₁=改善前、θ₂=改善後の力率角 | H29 問17、H22 問6 |
| 需要率=最大需要電力/設備容量×100[%] | 設備がどれだけ同時に使われるか | 1以下(100%以下) | (法規の電気施設管理で多い) |
| 負荷率=平均電力/最大電力×100[%] | 電力の使い方のならされ具合 | 期間(日・月・年)をそろえる | (同上) |
| 不等率=(各需要家の最大電力の和)/(合成した最大電力) | 最大の時刻のずれ | 1以上 | (同上) |
例題5 300kW の負荷の力率を0.6から0.8へ
需要率・負荷率・不等率は、電験王の電力の一覧の論点名には見当たりませんでした。法規の電気施設管理の計算で出ることが多い式です。電力の教科書にも載る式なので、一覧に入れた。
電気材料の公式(抵抗率・導電率・温度)
電力の問14は、令和3年度から令和7年度下期まで毎回「電気材料」の論説問題でした。計算より言葉の正誤が問われますが、抵抗の式と導電率の数字を知っていると、誤りの選択肢を見抜きやすくなります。
| 公式 | 求めるもの | 記号の意味 | 出題の例 |
|---|---|---|---|
| R=ρL/A[Ω] | 電線の抵抗 | ρ=抵抗率[Ω・m]、L=長さ[m]、A=断面積[m²] | 問14(電気材料) |
| 導電率:軟銅100%、硬銅97% | 銅の電気の通りやすさ | 焼きなまし(軟銅)の方が通りやすい | R03 問14 |
| R₂=R₁{1+α(t₂−t₁)}[Ω] | 温度が変わったときの抵抗 | α=抵抗の温度係数[1/℃] | (理論と共通) |
問14 の出題の記録は、このブログの「導電材料と磁性材料」の記事で、電験王の解説ページを読んで整理したものです。
電力の公式でつまずきやすい4つのところ
電力の計算のミスは、√3 の付け忘れ、相電圧と線間電圧の取り違え、%Z の基準容量のそろえ忘れ、kW と kWh の取り違えの4つに集まります。
| つまずき | 起きること | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| √3 の付け忘れ | 三相の電圧降下・電流が √3 倍ずれる | 1相分で解いてから、最後に √3 を掛ける |
| 相電圧と線間電圧 | %Z の E に線間電圧を入れてしまう | %Z=ZIn/E の E は相電圧、ZP/V² の V は線間電圧 |
| %Z の基準容量 | 基準の違う %Z をそのまま足す | 先に1つの基準容量へ換算する |
| kW と kWh | 熱効率の W に kW を入れる | 3,600 を掛けるのは電力量[kWh] |
√3 の付け忘れは、筆者も理論の勉強でやった失敗です。筆者は『みんなが欲しかった!』のシリーズで独学し、計算を型に分けて身につけました。√3 を掛ける場所も、その型の1つです。
この一覧の使い方として、筆者なら「問題を解いたあとの答え合わせ」に使います。理由は、表を眺めて覚えた式は、問題文のどの数字をどの記号に入れるかで迷うからです。例題を自分の手で1回解いてから表に戻ると、記号の意味が数字と結びつきます。この順番が大事。

