回路設計

コンパレータのヒステリシスの計算|出力がバタつく原因と抵抗の決め方

ブレッドボードに挿した8本足のICと青い可変抵抗と抵抗、奥に光る方形波の写真に、コンパレータのヒステリシス計算・2つのしきい値・幅≒Vcc×(R1∥R2)÷RHの文字

※本記事にはプロモーション(広告)が含まれています。

コンパレータのヒステリシスは、出力から+入力へ抵抗で戻し(正帰還)、しきい値を上と下で変えて出力のバタつきを止めるしくみです。抵抗の値は4ステップで計算でき、3.3V・0.90V/0.85V の例では R1 62kΩ・R2 22kΩ・RH 1.1MΩ になります。

結論|まず30秒でわかる答え

コンパレータのヒステリシスの計算は、次の4ステップです。
①k=幅 ÷ 電源の電圧
②Vth=下のしきい値 ÷(1−k)
③R1・R2 の分圧を Vth に合わせる
④RH=(R1∥R2)×(1−k)÷ k
幅はノイズの p-p より大きくします。3.3V で、温度センサの0.90V(40℃)で知らせて0.85V(35℃)で戻すなら、R1 62kΩ・R2 22kΩ・RH 1.1MΩです。

この記事に出てくる言葉

わからない言葉が出てきたら、ここに戻ってきてください。本文でも、初めて出たところで言い換えます。

コンパレータ2つの電圧をくらべて、どちらが高いかを H(高い電圧)か L(低い電圧)で出す IC
しきい値出力が切りかわる境目の入力の電圧
ヒステリシス上がるときと下がるときで、しきい値をずらすこと。ずらした幅を「ヒステリシス幅」と呼ぶ
正帰還出力の一部を+入力に戻すつなぎ方。切りかわりを後押しする向きに働く
ノイズの p-pノイズの上の山から下の谷までの幅(peak to peak)
オープンコレクタ出力が GND につなぐか浮くかだけの形。H にするには外の抵抗(プルアップ)が要る。FET 版はオープンドレイン
プルアップ抵抗浮いた出力を電源の電圧まで引き上げる抵抗(この記事では RPU)
E24 系列売っている抵抗の値の並び(1.0・1.1・1.2・1.3・1.5…)

コンパレータは、温度・明るさ・電池の電圧などが「決めた値を超えたか」を知らせるときに使う部品です。ところが、しきい値を1つにしたまま使うと、境目の近くで出力が何度も切りかわる「バタつき」が起きます。

この記事では、抵抗を1本足して2つのしきい値を作る方法を、目標の温度から抵抗の値を決めるところまで、かけ算と割り算だけで進めます。

ブレッドボードに挿した8本足のICと青い可変抵抗と抵抗、奥に光る方形波の写真に、コンパレータのヒステリシス計算・2つのしきい値・幅≒Vcc×(R1∥R2)÷RHの文字

この記事で作るもの:40℃で知らせ、35℃まで下がったら戻す

この記事のゴールは、温度センサの電圧をコンパレータでくらべ、39.9℃(0.899V)を超えたら出力を L にし、35.2℃(0.852V)まで下がったら H に戻す回路です。

温度センサ MCP9700 は、0℃で0.5V、1℃上がるごとに10mV(0.01V)上がる電圧を出します。40℃なら0.90V、35℃なら0.85V です。

コンパレータ LM393 の−入力にこの電圧を入れ、+入力には抵抗で作った「しきい値の電圧」を入れます。出力が L になったら、マイコンがファンを回す、といった使い方を考えます。

部品使うもの役目
温度センサMCP9700(3.3V)温度を電圧に変える(10mV/℃)
コンパレータLM393(3.3V)センサーの電圧としきい値をくらべる
R1・R262kΩ・22kΩしきい値のもとになる電圧を作る
RH1.1MΩ出力から+入力に戻し、しきい値を2つにする
RPU10kΩ出力を 3.3V に引き上げる(プルアップ)

つまり、しきい値を2つ(0.899V と 0.852V)にして、その間(幅 約48mV)ではノイズで出力が切りかわらないようにします。

温度センサの電圧をLM393の−入力へ、+入力はR1 62kΩとR2 22kΩの分圧にRH 1.1MΩで出力から戻し、出力はRPU 10kΩで3.3Vにプルアップした回路図。39.9℃で出力L、35.2℃で出力H

コンパレータの基本:+と−をくらべて、HかLを出す

コンパレータは、+入力が−入力より高ければ H、低ければ L を出します。途中の電圧は出さず、どちらかに切りかわります。

入力出力
+入力 > −入力H(高い電圧)
+入力 < −入力L(ほぼ0V)

LM393 の出力は「オープンコレクタ」です。中のトランジスタが ON すると出力を GND につなぎ(L)、OFF すると出力が浮きます。浮いた出力を H にするには、外の抵抗(プルアップ抵抗)で電源につなぎます。

この記事の回路は、センサーの電圧を−入力に入れます。そのため、温度が上がってセンサーの電圧がしきい値を超えると、出力が L になります。

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つまり、コンパレータは「くらべて H/L を出す」部品。LM393 は L しか自分で出せないので、プルアップ抵抗が必要です。

+0.95Vと−0.90Vで出力H、+0.85Vと−0.90Vで出力Lの2つの例。LM393の出力はオープンコレクタで、Hにするには外のプルアップ抵抗が要る

出力がバタつく原因:ゆっくり変わる信号にノイズが乗っている

しきい値が1つだと、入力がその近くをゆっくり通るとき、乗っているノイズのたびに入力がしきい値を上下にまたぎ、出力が何度も切りかわります。

温度はゆっくり変わります。一方、センサーの電圧には、電源や周りの回路から入る小さなノイズが乗ります。ここでは例として、上下に20mV(p-p)のゆれが乗っているとします。

抵抗2本だけでしきい値を1つ(0.864V)にすると、温度がその近くにある間、ノイズの山が超え、谷が下回るたびに出力が H と L を行き来します。

TI の資料でも、ノイズや信号のゆれ、ゆっくり変わる信号では、しきい値が1つだと出力に望まない切りかわりが出ると説明されています。

注意|困るのはこんなとき

出力でファンやリレーを動かすと、カチカチと何度も入り切りして部品を傷めます。マイコンの割り込みにつなぐと、1回の温度上昇で何十回も割り込みが入ります。

スイッチの接点がはねる「チャタリング」は、抵抗とコンデンサで細かいゆれを消す方法もあります。コンパレータの入力でもフィルタは役に立ちますが、ゆっくり変わる信号では、しきい値を2つにするヒステリシスが基本の対策です。

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ゆっくり上がる電圧にp-p 20mVのノイズが乗った波形と、しきい値1つ(0.864V)の近くで出力がHとLを何度も行き来する波形(イメージ)

ヒステリシスで止める:しきい値を上下で変える

ヒステリシスは、入力が上がるときのしきい値(0.899V)と、下がるときのしきい値(0.852V)を変えることです。一度切りかわると、しきい値がノイズでは届かない所まで逃げるので、出力は1回だけ切りかわります。

温度が上がる

入力が 0.899V を超えた瞬間、出力が L になる

しきい値が下がる

出力が L になると、しきい値が 0.852V に移る

ノイズでは戻らない

ノイズの谷(約10mV 下)では 0.852V に届かない。出力は L のまま

温度が下がる

入力が 0.852V を下回ったら H に戻り、しきい値は 0.899V に戻る

たとえると

エアコンが「28℃で冷房を入れ、26℃まで下がったら切る」のと同じです。27℃あたりで入り切りをくり返さないように、入れる温度と切る温度をずらしています。

つまり、幅(約48mV)がノイズ(20mV)より大きければ、ノイズでは出力が戻れません。

同じノイズの入力で、上がるときのしきい値0.899Vと下がるときのしきい値0.852Vの帯を示し、出力が1回だけHからLに切りかわる波形(イメージ)

入力と出力の関係は「ループ」になる

横軸に入力、縦軸に出力をとると、ヒステリシスのある回路は四角いループを描きます。温度が上がるときは右へ進んで0.90V で下に落ち、下がるときは左へ進んで0.85V で上に戻ります。

ループの中(0.85〜0.90V の帯)では、入力が同じでも、出力は「今の状態」によって H にも L にもなります。これがヒステリシス(前の状態を覚えている性質)です。

横軸に入力、縦軸に出力をとったヒステリシスのループ。上がるときは0.899V(39.9℃)でHからL、下がるときは0.852V(35.2℃)でLからH、間の幅48mV

しきい値が動くしくみ:出力から+入力へ戻す(正帰還)

出力から+入力へ抵抗 RH を戻すと、出力が H のときは RH が 3.3V 側に、L のときは GND 側につきます。そのぶん+入力の電圧(しきい値)が上下に動きます。

+入力の電圧は、R1(3.3V へ)と R2(GND へ)の分圧で決まります。ここに出力からの RH が加わります。

出力RH がつながる先+入力の電圧(しきい値)
H(3.3V)3.3V 側(R1 と並ぶ)高くなる:0.899V
L(0V)GND 側(R2 と並ぶ)低くなる:0.852V

出力が H のとき、RH は RPU を通って 3.3V につながります。RPU は RH と直列になるので、計算では RH+RPU として扱います。出力が L のとき、出力は GND につながり、RPU には別の電流が流れるだけで+入力には効きません。

出力から+入力に戻すので「正帰還」と呼びます。オペアンプの増幅回路は出力を−入力に戻す「負帰還」で、向きが逆です。

つまり、RH が「出力の状態を+入力に知らせる」ことで、しきい値が2つになります。

出力Hのときは RH+RPU 1.11MΩがR1 62kΩと並んで+入力0.899V、出力Lのときは RH 1.1MΩがR2 22kΩと並んで+入力0.852Vになる2つの等価回路

しきい値の式:出力がHのときとLのときで2回計算する

しきい値は、分圧の式を2回使って計算できます。TI の資料(SNOA997A)と同じ考え方です。「∥」は並列の合成抵抗(a×b÷(a+b))を表します。

上がるときのしきい値(出力 H)
VH = Vcc × R2 ÷(R2 + R1∥(RH+RPU))
下がるときのしきい値(出力 L)
VL = Vcc ×(R2∥RH)÷(R1 + R2∥RH)

この記事の値を入れます。R1∥(RH+RPU)= 62kΩ∥1.11MΩ ≒ 58.72kΩ なので、VH = 3.3 × 22 ÷(22+58.72)≒ 0.8994V。

R2∥RH = 22kΩ∥1.1MΩ ≒ 21.57kΩ なので、VL = 3.3 × 21.57 ÷(62+21.57)≒ 0.8517V。

幅の目安(RPU を無視)
幅 ≒ Vcc ×(R1∥R2)÷(R1∥R2 + RH)

R1∥R2 = 16.24kΩ なので、幅 ≒ 3.3 × 16.24 ÷(16.24+1100)≒ 48.0mV。2つの式の差(47.7mV)とほぼ同じです。

上がるときVH=Vcc×R2÷(R2+R1∥(RH+RPU))=0.8994V、下がるときVL=Vcc×(R2∥RH)÷(R1+R2∥RH)=0.8517V、幅≒Vcc×(R1∥R2)÷(R1∥R2+RH)=48.0mVの計算

抵抗の決め方の4ステップ:40℃でL、35℃でHに戻す

目標のしきい値2つ(VH・VL)から抵抗を決めるには、①k ②Vth ③R1 ④RH の順に計算します。かけ算と割り算だけで、二次方程式は要りません。

考え方の土台は1つです。RPU を無視すると、+入力の電圧は「R1・R2 の分圧の電圧 Vth」と「出力の電圧」を、1−k と k の割合で混ぜたものになります(k=R1∥R2 ÷(R1∥R2+RH))。出力が3.3V と0V で変わるので、幅は 3.3V × k、下のしきい値は Vth ×(1−k)です。

STEP 1 幅の割合 k

k = 幅 ÷ Vcc = 0.05 ÷ 3.3 ≒ 0.0152

STEP 2 基準の電圧 Vth

Vth = VL ÷(1 − k)= 0.85 ÷ 0.9848 ≒ 0.8631V

STEP 3 R1 を決める

R2 を22kΩ に決める。Vth = 3.3 × R2 ÷(R1+R2)なので、R1 = R2 ×(3.3 ÷ Vth − 1)≒ 62.1kΩ → E24 の 62kΩ

STEP 4 RH を決める

R1∥R2 = 62∥22 ≒ 16.24kΩ。RH = R1∥R2 ×(1−k)÷ k ≒ 1.055MΩ → E24 の 1.1MΩ

R2 の22kΩ は、R1 の計算結果が E24 の値(62kΩ)に近くなる組み合わせとして選びました。R2 を10kΩ にすると R1 は約28kΩ で、近い E24 の27kΩ と30kΩ のどちらでも少しずれます。R1 と R2 の大きさは、分圧に流れる電流(ここでは約39µA)と、入力の電流の影響のバランスで、目安として10k〜100kΩ の間から選びます。

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4ステップのカード。k=0.05÷3.3=0.0152、Vth=0.85÷0.9848=0.8631V、R2 22kΩでR1=62.1k→62kΩ、RH=16.24kΩ×(1−k)÷k=1.055M→1.1MΩ

確かめ:E24の値とRPUを入れて、式に戻す

最後に、E24 に丸めた値と RPU 10kΩ を、しきい値の2つの式に戻して確かめます。

組み合わせ上がるとき VH下がるとき VL幅
目標0.900V(40.0℃)0.850V(35.0℃)50mV
R1 62k・R2 22k・RH 1.1M(採用)0.899V(39.9℃)0.852V(35.2℃)48mV
RH だけ 1.0MΩ にすると0.903V(40.3℃)0.850V(35.0℃)52mV
RH なし(ヒステリシスなし)0.864V(36.4℃)同じ0mV

温度は MCP9700 の式(0℃で0.5V、10mV/℃)で換算しました。センサー自体にも誤差があり、MCP9700A は0〜70℃で±2℃、MCP9700 は±4℃です(データシート)。抵抗の誤差(±1% など)とコンパレータのオフセット電圧でも、しきい値は少しずれます。

LM393 の入力の電流(最大250nA)が、+入力側の抵抗(R1・R2・RH の並列、約16kΩ)を流れると、最大で約4mV(約0.4℃)ずれます。気になるときは、入力の電流が小さい LM393B(最大25nA)などを選びます。

目標0.900Vと0.850V、採用の組み合わせで0.899V(39.9℃)と0.852V(35.2℃)幅48mV、RHを1.0MΩにすると0.903Vと0.850V、RHなしは0.864Vの表

幅の決め方:ノイズのp-pより大きく、でも広げすぎない

ヒステリシスの幅は、入力に乗るノイズの p-p(山から谷まで)より大きくします。広げすぎると、元に戻るまでの温度の差が大きくなり、反応が遅くなります。

DigiKey の技術フォーラムの記事では「ヒステリシスの量は、システムで予想されるノイズの最大の p-p より大きくする」と書かれています。TI のブログでも、幅は入力のノイズとバタつきやすさに合わせて決めるとしています。

幅結果
ノイズより狭い(例 10mV)ノイズの谷が戻るしきい値に届き、まだバタつく
ノイズより広い(この例 48mV)ノイズでは戻らない。1回だけ切りかわる
広すぎる(例 200mV = 20℃)40℃で入って、20℃まで下がらないと戻らない

ノイズの大きさは、オシロスコープで入力を見て、上下のゆれ幅を読みます。この記事の20mV は計算のための例です。実際の回路で測って、その値に余裕を足して幅を決めます。

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つまり、幅は「ノイズの p-p より大きく、目的の温度差より小さく」。この例ではノイズ20mV に対して約48mV(約4.8℃)にしました。

切りかわった直後の入力にp-p 20mVのノイズが乗っても、戻るしきい値0.852Vまで48mVの幅があるので届かない様子のグラフ(イメージ)

早見表:RHと幅(R1とR2の並列が10kΩのとき)

R1 と R2 の並列(R1∥R2)が10kΩ のときの、RH と幅の目安です。答えだけ欲しいときに使ってください。

RH幅(Vcc 3.3V)幅(Vcc 5V)
100kΩ300mV455mV
220kΩ143mV217mV
470kΩ69mV104mV
1MΩ33mV50mV
2.2MΩ15mV23mV

R1∥R2 が20kΩ なら幅はほぼ2倍、5kΩ ならほぼ半分です。表は RPU を無視した目安で、幅の中心(2つのしきい値のまん中)も少し動きます。最後は2つの式で確かめます。

RH 100kΩ・220kΩ・470kΩ・1MΩ・2.2MΩのときの幅。Vcc 3.3Vで300・143・69・33・15mV、5Vで455・217・104・50・23mV

プルアップ抵抗RPUも、帰還の一部になる

オープンコレクタ(オープンドレイン)の出力では、出力が H のとき RPU と RH が直列になります。RPU は RH よりずっと小さく(目安は20分の1以下)します。プルアップ先の電圧も、上のしきい値を変えます。

プルアップ上がるとき VH温度
10kΩ を 3.3V へ(採用)0.899V39.9℃
330kΩ を 3.3V へ(大きすぎ)0.892V39.2℃
プルアップ先を 5V に0.924V42.4℃

RPU が大きいと、H のときに RH へ届く電圧が下がり、上のしきい値も下がります。TI の資料でも、オープンドレインの場合は RPU(資料では R3)を RH と直列に入れて計算しています。

プルアップ先を、コンパレータの電源(3.3V)と違う電圧(5V など)にすると、H のときに RH を押す電圧が変わり、しきい値がずれます。計算の Vcc を、プルアップ先の電圧に置きかえて計算し直します。L のとき RPU に流れる電流は 3.3V ÷ 10kΩ = 0.33mA で、LM393 の出力で十分に流せます。

つまり、RPU は小さめ(RH の20分の1以下)に。プルアップ先の電圧を変えたら、しきい値も計算し直します。

オープンコレクタ出力の中身(RPU 10kΩと中のトランジスタ、RH 1.1MΩ)と、RPU 10kΩで0.899V、330kΩで0.892V、プルアップ先5Vで0.924Vになる表

オペアンプとの違い:コンパレータの代わりに使うときの注意

コンパレータとオペアンプは記号が同じ三角形ですが、作られた目的が違います。くらべるならコンパレータ、増幅するならオペアンプが基本です。

コンパレータ(LM393)オペアンプ(LM358 など)
目的2つをくらべて H/L負帰還で増幅・フォロワ
帰還のかけ方正帰還(ヒステリシス)負帰還(出力を−入力へ)
出力オープンコレクタが多い自分で H も L も出す
切りかわりの速さ速い遅め(増幅で安定させる作りのため)

TI の LM324・LM358 の設計ガイドでは「オペアンプは一般にコンパレータに向かない」としたうえで、使わない回路が余っている・速さが要らない、といった理由で使うことはある、と書かれています。

代わりに使うときは、①速さが足りるか、②+と−の入力の間にダイオード(入力保護)がないか、③出力の H・L の電圧がつなぎ先に合うかを、データシートで確かめます。TI のブログでは、入力の間にダイオードがある品種は、差が約0.7V を超えると片方の入力がもう片方を引っぱり、正しくくらべられないと説明しています。

コンパレータ(LM393)とオペアンプ(LM358など)の比較表。目的、帰還のかけ方、出力、切りかわりの速さ、入力どうしの電圧差。オペアンプで代用するときの確かめ3つ

ブレッドボードで組む:LM393と抵抗4本

温度センサの代わりに可変抵抗で2番(−入力)の電圧を動かし、しきい値を確かめます。LM393 は溝をまたいで挿し、8番を 3.3V、4番を GND につなぎます。

① IC を挿す

切り欠きを左にして、溝をまたぐように挿す。下の列が左から1・2・3・4番、上の列が右から5・6・7・8番(LM358 と同じ並び)

② 電源とパスコン

8番の列を 3.3V に、4番の列を GND に。8番の列と GND の間に0.1µF

③ 抵抗4本

R1 62kΩ を3番の列と3.3V の間、R2 22kΩ を3番と4番(GND)の列の間、RH 1.1MΩ を1番と3番の列の間、RPU 10kΩ を1番の列と3.3V の間

④ 入力と出力

可変抵抗の両端を 3.3V と GND に、真ん中を2番の列へ。1番の列が出力

RH は1番(出力)と3番(+入力)をつなぎます。2番(−入力)につなぐと正帰還にならず、ヒステリシスが付きません。抵抗の色は、62kΩ が青・赤・橙、22kΩ が赤・赤・橙、1.1MΩ が茶・茶・緑、10kΩ が茶・黒・橙です。

LM393 の資料では、電源ピンにバイパスコンデンサを入れること、出力の配線と−入力の配線を並べないこと(発振を防ぐ)がすすめられています。

ブレッドボードの配線図。LM393を溝をまたいで挿し、8番を3.3V、4番をGND、8番の列とGNDの間に0.1µF、R1 62kΩを3番の列と3.3V、R2 22kΩを3番と4番の列、RH 1.1MΩを1番と3番の列、RPU 10kΩを1番の列と3.3V、可変抵抗の真ん中を2番の列へ

組んだら測る:可変抵抗を回して、切りかわる電圧を読む

テスターの黒を GND に当てたまま、赤を2番(可変抵抗の真ん中)に当て、可変抵抗をゆっくり回します。1番の電圧が切りかわる所を見ます。

測ること計算の値
① 2番を上げていき、1番が L になった所約0.90V
② そこから下げて、1番が H に戻った所約0.85V
③ ①−②(幅)約48mV
④ 3番(+入力)の電圧:出力 H のとき・L のとき0.90V・0.85V

テスター1台で測るときは、2番と1番を交互に当てるか、1番に LED(抵抗つき)を足して切りかわりを目で見ます。④で3番の電圧が出力に合わせて動けば、正帰還が効いています。数値は計算の値で、抵抗の誤差で少しずれます。

回路図と測る所の表。2番を上げて1番がLになる約0.90V、下げてHに戻る約0.85V、幅約48mV、3番の電圧が出力に合わせて0.90Vと0.85Vに動く

よくある失敗4つ:帰還の向き・プルアップ・入力範囲・幅

ヒステリシスが効かないときの原因は、帰還の向き・プルアップ抵抗の忘れ・入力の電圧の範囲・幅の狭さの4つが代表です。

失敗1:RHを−入力に戻す

RH は必ず+入力に戻します。−入力に戻すと正帰還にならず、しきい値が2つになりません。

失敗2:プルアップ抵抗を忘れる

LM393 はオープンコレクタなので、プルアップ抵抗がないと出力が H になれず浮いたままです。ヒステリシスの計算も成り立ちません。

失敗3:入力の電圧の範囲を超える

LM393 が正しくくらべられる入力の範囲(同相入力電圧範囲)は、0V〜電源−1.5V(25℃)、全温度では0V〜電源−2V です。3.3V なら1.3V(全温度)までに収めます。この記事の0.85〜0.90V は範囲の中です。

失敗4:幅がノイズより狭い

幅10mV でノイズが20mV なら、まだバタつきます。ノイズの p-p を測って、それより広くします。

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つまり、バタつきが止まらないときは「3番(+入力)の電圧が、出力の H・L で動くか」を最初に測ると、原因を早くしぼれます。

4つの失敗。RHを−入力に戻す、プルアップ抵抗を忘れる、LM393の同相入力電圧範囲(0〜Vcc−1.5V、全温度でVcc−2V)を超える、幅がノイズより狭い

よくある質問(FAQ)

Q. コンパレータのヒステリシスの計算方法は?

A. k=幅÷電源電圧、Vth=下のしきい値÷(1−k)でR1・R2を決め、RH=(R1∥R2)×(1−k)÷kで帰還抵抗を出します。

Q. コンパレータの出力がバタつく原因は?

A. ゆっくり変わる入力にノイズが乗り、しきい値の近くで何度もまたぐためです。ヒステリシスで止めます。

Q. ヒステリシスの幅はどれくらいにする?

A. 入力に乗るノイズのp-pより大きくします。広げすぎると元に戻るまでの差が大きくなり反応が遅れます。

Q. ヒステリシスの抵抗はどこにつなぐ?

A. 出力から+入力へつなぎます(正帰還)。−入力へつなぐとしきい値が2つにならずヒステリシスが付きません。

Q. プルアップ抵抗はしきい値に影響する?

A. 影響します。出力がHのときRHと直列になるので、RHの20分の1以下を目安に小さくします。

Q. オペアンプをコンパレータの代わりに使える?

A. 速さが要らなければ使えることもありますが、入力保護のダイオードや出力の電圧をデータシートで確かめます。

まとめ
  • しきい値が1つだと、ゆっくり変わる信号のノイズで出力がバタつく
  • 出力から+入力へ RH を戻す(正帰還)と、しきい値が2つになる
  • 4ステップ:k=幅÷Vcc → Vth=VL÷(1−k) → R1 → RH=(R1∥R2)×(1−k)÷k
  • 例:3.3V・40℃/35℃で R1 62kΩ・R2 22kΩ・RH 1.1MΩ。VH 0.899V・VL 0.852V
  • 幅はノイズの p-p より大きく。RPU は RH の20分の1以下
  • くらべるならコンパレータ。オペアンプで代用するときはデータシートで確かめる

次の一歩として、手元の回路図からコンパレータを1つ探し、出力から+入力に抵抗が戻っているかを見てください。戻っていれば、その抵抗の値からヒステリシスの幅を計算できます。

参考にした資料

法令・規格・資料は改訂されることがあります。実務で使うときは、発行元の最新版で確かめてください。

この記事の理解を深める本と道具
おすすめの道具

回路を実際に組んで、電流や電圧を確かめてみたいときに向いています。サンハヤトのブレッドボード SAD-101です。408個の穴に部品を差し込むだけで、はんだ付けをせずに回路を組めます。

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回路の電圧や導通を自分の手で確かめるなら、手元にテスターが1台あると便利です。三和電気計器のデジタルマルチメータ(テスター)CD772です。電圧や抵抗などを測れます。

おすすめの本

「コンパレータのヒステリシス」は、回路シミュレータで電圧や電流の波形を見ながら確かめると理解が深まります。無料の回路シミュレータLTspiceを使って、電子回路を学べる本です(オーム社、渋谷道雄 著)。

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シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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