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電験三種の数学で、いちばん手が止まるのは交流の問題です。「cos30°」が出た瞬間に止まる。電流を出そうとしたら、100を(6+j8)で割る式が出てきて、そこでまた止まる。電験三種の理論で止まる場所は、電気の知識より数学のことが多いです。
この記事を書いたのは、このブログの理論の公式一覧に数学の章がなかったからです。電気の公式は覚えたのに、三角関数や複素数の計算で点を落とす。そこを1ページで見返せるようにしました。
載せた公式は、電験王の理論の解説ページで「どの年度のどの問題で使われたか」を1問ずつ確かめたものを中心にしています。例題の数字はすべて自作です。

電験三種でまず覚える数値の早見表
電験三種の計算では、√2=1.414、√3=1.732、π=3.14、1/e=0.368、log10 2=0.301 の5つを覚えておくと、ほとんどの問題で電卓の前で迷いません。電卓は四則演算と √ だけが使えるので、三角関数と対数の値は覚えて使います。
| 数値 | 値 | どこで使うか |
|---|---|---|
| √2 | 1.414 | 実効値と最大値(最大値=√2×実効値)、45°の三角比 |
| √3 | 1.732 | 三相の線間電圧と相電圧(線間=√3×相)、三相電力 P=√3VIcosθ |
| 1/√2 | 0.707 | sin45°・cos45°、力率0.707 |
| 1/√3 | 0.577 | tan30°、Δ結線の相電流=線電流÷√3 |
| π | 3.14 | 角周波数 ω=2πf、弧度法 |
| 2π×50 / 2π×60 | 314 / 377 | 50Hz・60Hz の ω(リアクタンス ωL・1/ωC) |
| e | 2.718 | 過渡現象の指数関数 e^(−t/τ) |
| 1/e / 1−1/e | 0.368 / 0.632 | 時定数 τ のときの放電の残り36.8%・充電の63.2% |
| e^−2 / e^−3 / e^−5 | 0.135 / 0.050 / 0.0067 | 2τ・3τ・5τ のときの残り(5τでほぼ0) |
| log10 2 / log10 3 | 0.301 / 0.477 | dB の計算(2倍→約6dB、電力2倍→約3dB) |
値は小数第3位(e^−5 は第4位)まで。値は Python の math で計算して確かめました。電験三種で持ち込める電卓は1台で、四則演算と√ができるものに限られ、関数電卓は使えません(電気技術者試験センターの受験案内の「電卓」の項目)。
√3 は三相の問題でほぼ毎回出ます。覚え方は語呂です。1.732 は「ひとなみにおごれや(1.7320508)」の語呂で覚える人が多い数字です。1/e=0.368 は、時定数の問題の選択肢にそのまま並ぶこともある数字。
分数・指数・平方根と比例の公式
指数は「掛け算は指数の足し算、割り算は引き算」、平方根は「√a×√b=√(ab)」と「分母の√は有理化」を押さえれば、単位の換算と式の整理で困りません。比例・反比例は、抵抗 R=ρℓ/S や電力 P=V²/R で「何倍になるか」を答える問題で使います。
| 公式 | 中身 | 電験での使いどころ |
|---|---|---|
| a^m × a^n = a^(m+n) | 掛け算は指数を足す | 10³×10⁻⁶=10⁻³(kΩ×µF=ms) |
| a^m ÷ a^n = a^(m−n) | 割り算は指数を引く | 単位の換算、静電気の 10⁻¹² の計算 |
| a^(−n) = 1/a^n | マイナスの指数は逆数 | µ=10⁻⁶、ε₀=8.85×10⁻¹² |
| √a × √b = √(ab) | 平方根の掛け算 | √2×√3=√6≒2.449 |
| 1/√3 = √3/3 | 分母の有理化 | Δ結線の相電流、三相の計算の整理 |
| y = kx(比例) | x が2倍なら y も2倍 | R=ρℓ/S(長さ2倍で抵抗2倍) |
| y = k/x(反比例) | x が2倍なら y は1/2 | 断面積2倍で抵抗1/2 |
| y = kx²(2乗に比例) | x が2倍なら y は4倍 | P=V²/R、損失 3I²R(電流2倍で損失4倍) |
比の問題は速く解けます。「何倍になるか」の問題は、式に数字を入れる前に、比例か2乗かを見て答えの見当をつけると速く解けます。電圧が2倍なら P=V²/R で電力は4倍。数字を入れるのは検算のときだけで済みます。
接頭語も指数の仲間です。単位の接頭語(k=10³、M=10⁶、m=10⁻³、µ=10⁻⁶、n=10⁻⁹、p=10⁻¹²)は、指数の計算とセットで使います。時定数 τ=RC なら、10kΩ×100µF=10×10³×100×10⁻⁶=1s。10³ と 10⁻⁶ を掛けて 10⁻³、それに 10×100 を掛けて 1 になります。
一次方程式・連立方程式・二次方程式の公式
電験三種で最も多く使う方程式は、キルヒホッフの法則で立てる連立方程式です。二次方程式は「2乗の式を開く」形で出ることが多く、最大電力の問題は相加相乗平均で解けます。
連立方程式(キルヒホッフの法則・電池の内部抵抗)
自作の例で確かめます。電池に R=4Ω をつなぐと2A、R=6Ω にすると1.5A が流れました。起電力 E と内部抵抗 r を求めます。
令和7年度下期 理論 問6 は、この形そのものです(抵抗を2通りに変えたときの電流から起電力を求める問題。電験王の解説では平成18年度 問5 の再出題)。
連立方程式の立て方を、電流則と電圧則の2つから1ステップずつ
二次方程式と相加相乗平均(最大電力)
解の公式は検算用です。x²−5x+6=0 なら、a=1・b=−5・c=6 を入れて、x={5±√(25−24)}÷2=(5±1)÷2 で x=3 と 2。電験三種では解の公式を毎回使うより、「(24+I)²=6400 → 24+I=80」のように2乗を外す形や、相加相乗平均で最小・最大を出す形のほうが多く出ます。
最大電力の条件(負荷抵抗=内部抵抗)は、この式から出ます。式を変形します。P=E²R/(R+r)² の分母と分子を R で割ると P=E²/(R+2r+r²/R)。R+r²/R が最小のとき P が最大で、相加相乗平均から R=r²/R、つまり R=r です。E=12V・r=3Ω なら、R=3Ω で最大電力は E²/4r=144÷12=12W。
令和3年度 理論 問7 は可変抵抗の最大電力を求める問題で、電験王の解説も「微分積分の知識もしくは相加相乗」を使うと書いています。
三角関数と弧度法の公式(sin・cos・tan)
三角関数は、0°・30°・45°・60°・90° の sin・cos・tan の値と、sin²θ+cos²θ=1・tanθ=sinθ/cosθ の2つの式を覚えれば、交流の電力・力率・ベクトルの問題に使えます。角度は弧度法(π rad=180°)でも書けるようにしておきます。
| 角度 | rad | sin | cos | tan |
|---|---|---|---|---|
| 0° | 0 | 0 | 1 | 0 |
| 30° | π/6 | 1/2=0.5 | √3/2≒0.866 | 1/√3≒0.577 |
| 45° | π/4 | 1/√2≒0.707 | 1/√2≒0.707 | 1 |
| 60° | π/3 | √3/2≒0.866 | 1/2=0.5 | √3≒1.732 |
| 90° | π/2 | 1 | 0 | (なし) |
30°と60°は sin と cos が入れ替わる、と覚えると表の半分で済みます。
いちばん使うのは sin²θ+cos²θ=1 です。力率で毎回出ます。力率 cosθ=0.8 なら、sinθ=√(1−0.8²)=√0.36=0.6。有効電力と無効電力の比が 0.8:0.6 になるのはこの式からです。令和7年度上期 理論 問9 も、電流の無効分を sinθ=√(1−cos²θ) で出しています。
π は180°のことです。弧度法は、瞬時値の式 i=Im sin ωt で使います。令和7年度上期 理論 問8 は、sin120πt の値から時刻を求める問題でした。sin の値が 1/√2 になる角度が π/4 rad(45°)だとすぐ出れば、そこからは割り算だけ。
sin・cos・tan の値の覚え方と、交流で三角関数を使う理由

ベクトルと三平方の定理の公式
交流の電圧や電流は、大きさと向き(位相)をもつベクトルとして足し算します。直角に交わる2つのベクトルの和は三平方の定理 √(a²+b²) で、角度は tan⁻¹(b/a) で出します。
自作の例です。電圧 3V と、それより90°進んだ電圧 4V を足すと、大きさは √(3²+4²)=√25=5V、角度は tan⁻¹(4/3)≒53.1° 進みです。3+4=7V にはならない。直流の足し算との違いは、ここだけです。
令和6年度下期 理論 問8 は、位相が π/2 ずれた2つの正弦波を足す問題で、√(1²+(√3)²)=2 倍の大きさ、tan⁻¹√3=π/3 の進みになります。数字が 1 と √3 なので、30°・60°の三角形がそのまま出てきます。
三相の √3 もベクトルから出ます。図にすると一目です。120°ずれた2つの相電圧の差をとると、二等辺三角形の底辺の長さが 2×相電圧×cos30°=√3×相電圧 になります。200V の線間電圧なら、相電圧は 200÷√3≒115.5V。
複素数の公式(j・直交形式・極形式)
交流回路の複素数は、j²=−1 と、直交形式 a+jb と極形式 r∠θ の行き来だけ覚えれば足ります。掛け算は「大きさを掛けて角度を足す」、割り算は「大きさを割って角度を引く」です。
| 公式 | 中身 |
|---|---|
| j² = −1 | 電気では虚数単位を i でなく j と書く(i は電流) |
| Z = R+jX | 直交形式。R は抵抗、X はリアクタンス(コイルは+jωL、コンデンサは −j/ωC) |
| |Z|= √(R²+X²) | 大きさ(インピーダンスの絶対値) |
| θ = tan⁻¹(X/R) | 偏角(位相角) |
| Z = |Z|∠θ | 極形式。R=|Z|cosθ、X=|Z|sinθ で直交形式に戻る |
| 1/(jωC) = −j/(ωC) | 分母の j は、分子と分母に j を掛けて −1 にして消す |
| (a+jb)(a−jb) = a²+b² | 共役(j の符号を変えたもの)を掛けると実数になる |
割り算は共役を掛ける
掛け算は極形式が速い
(3+j4)×(1+j1) を直交形式で開くと、3+j3+j4+j²4=3−4+j7=−1+j7。極形式なら、5∠53.1° × √2∠45°=7.07∠98.1°。大きさ √(1²+7²)=√50≒7.07 と一致します。
割り算は試験に毎回出ます。令和8年度上期 理論 問9 は、単相3線式の線電流を、負荷のインピーダンスを複素数で書いて求める問題でした。100V や 200V をインピーダンスで割る計算が3回続くので、共役を掛ける手順が身についているかで時間が大きく変わります。令和6年度上期 理論 問13 も、直列の r と L を並列の形に直すのに、アドミタンス Y=1/(r+jωL) の割り算。
なぜ交流で虚数 j が出てくるのかを、回転するベクトルで

指数関数と対数の公式(e と dB)
過渡現象では e^(−t/τ) を使い、時定数 τ のときに放電で36.8%が残り、充電で63.2%まで上がります。増幅器の利得は dB で表し、電圧の比なら 20log10、電力の比なら 10log10 をとります。
| 経過時間 | e^(−t/τ)(放電で残る割合) | 1−e^(−t/τ)(充電の割合) |
|---|---|---|
| τ | 0.368(36.8%) | 0.632(63.2%) |
| 2τ | 0.135(13.5%) | 0.865(86.5%) |
| 3τ | 0.050(5.0%) | 0.950(95.0%) |
| 5τ | 0.0067(0.67%) | 0.993(99.3%) |
令和5年度下期 理論 問10 は、RC 回路の放電で「τ 後に電源電圧の0.368倍になる」が正しい記述として出ています。0.368 と 0.632 の取り違えが、得点の分かれ目。
時定数 τ の意味と、63.2%ルールで過渡現象を解く手順
dB は掛け算を足し算に変える道具です。電圧が100倍なら 20×log10 100=20×2=40dB、電力が100倍なら 10×2=20dB。電圧が半分なら 20×log10 0.5=20×(−0.301)≒−6.0dB です。dB は足し算できるので、20dB の増幅器と 40dB の増幅器をつなぐと全体で60dB(電圧で1,000倍)。令和5年度下期 理論 問13 は、この「段ごとの dB を足す」考え方で、2段目の増幅器の利得を求める問題でした。

近似式の公式(小さい x のとき)
x が1よりずっと小さいとき、(1+x)ⁿ≒1+nx と √(1+x)≒1+x/2 が使えます。電圧の変化が小さいときの電力の変化や、送電線の電圧降下の近似式の考え方に出てきます。
| 近似式 | 使える条件 | 例(自作) |
|---|---|---|
| (1+x)ⁿ ≒ 1+nx | |x|が0.1以下くらい | 電圧が2%下がると、電力は (0.98)²=0.9604≒1−2×0.02=0.96 → 約4%減 |
| √(1+x) ≒ 1+x/2 | 同上 | √1.02≒1.01 |
| 1/(1+x) ≒ 1−x | 同上 | 1/1.05≒0.95(正しくは0.952) |
近似は電力科目でも使います。電力科目の電圧降下の式 v≒√3I(Rcosθ+Xsinθ) も、送電端と受電端の電圧の角度の差が小さいとして、ベクトル図の一部を省いた近似式です。式が「≒」で書かれている理由がわかると、どこまでの精度で答えればよいかの見当がつきます。
電験三種の数学でよくある間違いと見直しの順番
数学の間違いは、√3 の付け忘れ、20log と 10log の取り違え、0.368 と 0.632 の取り違え、複素数の割り算で共役を掛け忘れる、の4つが大半です。答えを出したら、係数と単位を最後に見直します。
| よくある間違い | 正しい考え方 |
|---|---|
| 三相の電力を VIcosθ で出す | 三相は P=√3VIcosθ(V・I は線間電圧・線電流) |
| 電圧の比を 10log10 で dB にする | 電圧・電流は 20log10、電力は 10log10 |
| τ のときの充電を 36.8% とする | 充電は 63.2%、放電で残るのが 36.8% |
| (6+j8) で割るとき、分子だけに j を掛ける | 分子と分母に共役 (6−j8) を掛け、分母を実数にする |
| 3V と 4V(90°ずれ)を足して 7V | ベクトルの和で √(3²+4²)=5V |
筆者は電験三種の理論を、交流でつまずいたところから立て直しました。やったのは、計算を型に分けることです。数学の公式も同じで、「どの型の問題で、どの公式を使うか」を表にすると、問題を見た時点で手が動くようになります。筆者自身の失敗も、√3 の付け忘れ。
見直しの順番も決めておきます。筆者なら、答えを出したあと、式の立て方より先に「√3 と単位」を見直します。理由は、係数の付け忘れは式の流れが正しくても起き、しかも付け忘れた数字が選択肢に並んでいることが多いからです。
勉強に使ったのは、TAC出版『みんなが欲しかった!』のシリーズだけで、電気の知識がほぼゼロから全科目を独学で受けました。数学だけの本を別に買わなくても、理論の教科書の中で出てくる順に、この記事の表で引き直せば足りるというのが筆者の考えです。数学の勉強時間の公式の目安はないので、ここには書きません。

