電気のしくみ(暮らしと現場)

トラッキング現象とは?電気火災が起きる仕組みと対策を図解|半断線・たこ足配線も危険度チェック

トラッキング現象を表すアイキャッチ。差しっぱなしのプラグの刃の間にほこりと湿気がたまり、小さな火花が出ている

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お悩み
こんなふうに思っていませんか?
  • テレビの裏のコンセント、何年も差しっぱなしで大丈夫か心配
  • 「トラッキング現象」がどう危ないのか知りたい
  • 延長コードやたこ足配線で、本当に火事になるの?
この記事でわかること
  • トラッキング現象とは何か、火が出るまでの4段階
  • 半断線・過電流など、電気火災のほかの原因
  • 今日からできる対策
  • 家のコンセントの危険度チェック
結論|まず30秒でわかる答え

トラッキング現象とは、コンセントに差しっぱなしのプラグの刃と刃の間に、ほこりと湿気がたまって小さな放電がくり返され、プラグの樹脂が炭になって電気の通り道(トラック)ができ、発火する現象です。電源を切っていても、差してあるだけで起きます。電気火災には、ほかにコードの中の銅線が切れかける「半断線」や、たこ足配線の「過電流」があり、どれも電気の通り道で熱が出すぎることが原因です。

トラッキング現象を表すアイキャッチ。差しっぱなしのプラグの刃の間にほこりと湿気がたまり、小さな火花が出ている

トラッキング現象とは?火が出るまでの4段階

トラッキング現象は、プラグを差しっぱなしにしている場所で、気づかないうちにゆっくり進みます。プラグの2本の刃の間は、ふつうは電気を通さない樹脂で仕切られています。ところが、ほこりと湿気がそろうと、そこに小さな電気の通り道ができてしまいます。

段階起きること
① ほこりがたまる差しっぱなしのプラグとコンセントのすき間に、ほこりが積もる
② 湿気を吸う結露や加湿器の湯気で、ほこりが水分を吸って電気を少し通すようになる
③ 小さな放電をくり返す刃と刃の間で、目に見えないほどの小さな火花がパチパチと何度も起きる
④ 樹脂が炭になって発火火花の熱で樹脂の表面が炭になり、炭が電気の通り道(トラック)になって大きな電流が流れ、発火する
ここが怖い

トラッキング現象は、家電の電源を切っていても起きます。コンセントにプラグが差さっていれば、刃と刃の間には100Vがかかっているからです。「使っていないから安全」ではありません。

起きやすい場所

場所理由
テレビ・冷蔵庫・洗濯機の裏差しっぱなしで、ほこりがたまっても見えない
キッチン・洗面所湯気や水はねで湿気が多い
窓ぎわ・北側の部屋冬に結露しやすい
加湿器・水そうの近くいつも水分が飛んでいる
家具のうしろ・床の上の電源タップほこりがたまりやすく、掃除の手がとどかない

NITE(製品評価技術基盤機構)の2024年1月25日の発表によると、コンセントや電源タップなどの配線器具の火災事故は、2019〜2023年の5年間で126件あり、2023年は2019年の約2倍にふえています。使い方や設置が原因とみられる50件のうち、いちばん多いのが、ほこりや水分によるトラッキング現象(18件)です。

トラッキング現象が火事になるまでの4段階の図。ほこりがたまる、湿気を吸う、刃の間で小さな放電をくり返す、樹脂が炭になって発火する

電気火災の原因は「熱の出すぎ」|3つのパターン

電気火災の多くは、電気の通り道のどこかで熱が出すぎることで起きます。電気が流れると、抵抗のあるところで熱(ジュール熱)が出ます。熱の量は Q=I²Rt(電流の2乗×抵抗×時間)です。ふだんは小さな熱でも、どこかがおかしくなると一気にふえます。

原因式のどこがおかしくなる?たとえ
トラッキング現象電流が流れてはいけない刃と刃の間に、電流が流れる堤防に穴があいて、水がもれ出す
半断線銅線が細くなった一点で、抵抗Rが大きくなる4車線の道が1車線になって大渋滞
過電流(たこ足配線)電流Iがふえる。Iは2乗で効く細い水道管に、消防ホースの水を流す

電流が2倍になると熱は4倍になるので、使いすぎはとくに危険です。ジュール熱の計算は、別の記事でくわしく説明しています。

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Q=I²Rtの意味と計算

電気火災の3つの原因の図。トラッキング現象は刃の間に電流がもれる、半断線は細くなった所で抵抗が大きくなる、過電流は電流が大きくなり熱は2乗でふえる

半断線|コードの中で銅線が切れかけている

電気のコードの中には、細い銅線が何十本もたばになって入っています。その一部が切れた状態が半断線です。外側のビニールはきれいなままなので、見た目ではわかりません。

残った少ない銅線に同じ電流が流れるので、切れかけた一点だけ抵抗が大きくなり、そこが熱くなります。さらに、切れた銅線どうしがふれたりはなれたりすると、小さな火花が出ます。この熱と火花でビニールがとけ、ショートや発火につながります。

半断線の原因なぜ切れる?
家具の脚でコードを踏んでいる重さで中の銅線が少しずつつぶれて切れる
プラグのつけ根で強く折り曲げている曲げが1か所に集中する
コードを引っぱってプラグを抜くつけ根の銅線に力がかかる
ドアや窓にはさんでいる開け閉めのたびに曲げられる
こんなサインが出たら、すぐ使うのをやめる

コードを動かすと電源が入ったり切れたりする/コードの一部だけが熱い/ビニールが変色している、とけている、焦げたにおいがする。どれか1つでもあれば、その家電や延長コードは使わず、修理か買いかえをします。ビニールテープを巻いて使い続けるのは危険です。

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抵抗が大きくなる仕組み

半断線の図。コードの外はきれいでも中の銅線が切れかけ、残った銅線に電流が集中して熱くなる。家具で踏む、つけ根で折る、コードを引っぱることで起きる

たこ足配線の過電流と、そのほかの原因

電源タップや壁のコンセントは、ふつう合計15A(100Vで1,500W)までです。電子レンジ(約1,000W)とドライヤー(約1,200W)を同じタップで使うと2,200Wになり、コードや差込口が熱くなります。合計の計算や、なぜ1,500Wなのかは、タコ足配線の記事に計算ツールつきでまとめています。

タコ足配線とは?なぜ危険か、1500Wの理由と火事の仕組み|計算ツール付き
そのほかの原因何が起きる?
プラグの差しこみが浅い・刃がゆるいふれる面積が小さく、そこが熱くなる(接触不良)
コードを束ねたり、巻いたまま使う熱が逃げず、たまって高温になる
古い電源タップを使い続ける差込口のばねが弱って接触不良になる。ほこりもたまっている
コードの上にカーペットや家具熱がこもり、踏まれて半断線にもなる

電源タップは消耗品で、何年も使うと差込口のばねが弱くなり、コードの被覆も熱と時間で劣化します。日本配線システム工業会は、テーブルタップの交換の目安を3〜5年としています。これは「その年数で必ず壊れる」という意味ではなく、点検と交換を考えるきっかけの目安です。年数より大事なのは、今の状態です。次のサインが1つでもあれば、使い始めて何年かに関係なく、使うのをやめて交換します。

交換のサイン中で起きていること
タップ・コード・プラグが熱い電流の流しすぎか、接点のゆるみで抵抗がふえて発熱している
コードを動かすと点いたり消えたりする中の銅線の一部が切れた半断線
プラグの抜き差しがゆるい刃受けのばねが弱り、接触不良で発熱しやすい
刃の根元が焦げている・溶けているすでに火花(放電)や異常な発熱が起きたあと
本体やコードのひび割れ・キズ絶縁がやぶれ、ショートや漏電につながる
プラグの刃が曲がっている刃受けと点でしか接しなくなり、そこが熱くなる

焦げたあとは、ふき取っても中の劣化は元に戻りません。曲がった刃を手で戻したり、ひび割れにビニールテープを巻いたりして使い続けるのも危険です。

出典:パナソニック「配線器具(テーブルタップ・延長コードなど) サポート」(交換の目安3〜5年は日本配線システム工業会の推奨として記載)

過電流とそのほかの原因の図。ドライヤー1,200Wと電子レンジ1,000Wで合計2,200Wとなり、タップの1,500Wをこえる。束ねたコードや浅い差しこみも発熱の原因

家のコンセントの危険度チェック

家のコンセントまわりで、あてはまるものにチェックをつけてください。どの原因の危険が高いかと、今日やることを出します。

チェックした内容は画面の中で判定するだけで、どこにも送信されません。焦げたにおいや煙がある場合は、チェックより先にブレーカーを切り、消防(119)に連絡してください。

電気火災を防ぐ対策|今日からできること

原因対策
トラッキング現象年に1〜2回はプラグを抜き、乾いた布でほこりをふく。使わない家電はプラグを抜く。トラッキング防止のカバーや、刃のつけ根に絶縁のカバーがついたプラグを使う
半断線コードを踏まない・はさまない・強く曲げない。プラグは本体を持って抜く。異常があるコードはすぐ使うのをやめる
過電流タップの合計は1,500W以内。電子レンジ・ドライヤー・ヒーターは壁のコンセントに直接さす。タップにタップをつながない
接触不良・発熱プラグは奥までしっかりさす。コードは束ねずに使う。古い電源タップは交換する

掃除のときは、必ずプラグを抜いてから、乾いた布でふきます。ぬれたぞうきんでふくと、かえって湿気をあたえてしまいます。焦げたあとや変色があるコンセントは、自分で直さず、電気工事士のいる電気工事店に相談してください。

電気火災を防ぐ4つの対策の図。プラグを抜いて乾いた布でほこりをふく、湿気の多い場所に防止カバー、コードを踏まない・折らない、大きな家電は壁に直接さしてタップは1,500Wまで

電気火災のよくある間違い

よくある間違い正しい考え方
電源を切っていれば、差しっぱなしでも安全差してあるだけで刃の間に100Vがかかり、トラッキングは起きる
外側がきれいなコードは大丈夫半断線は中の銅線で起きる。動かして電源が切れたら危険
ブレーカーが落ちないなら使いすぎではない部屋の安全ブレーカーが守るのは壁の中の電線(多くは20A)。タップ1つ(多くは15A・1,500W)の使いすぎは防げない
コードはきれいに巻いて使う巻いたまま・束ねたままだと熱がこもる。ほどいて使う
ほこりはぬれた布でふくプラグを抜いて、乾いた布でふく
電気火災のよくある間違いの図。電源を切っても差してあれば起きる、半断線はコードの中で起きる、ブレーカーはタップの使いすぎを防げない、プラグを抜いて乾いた布でふく

電気の安全 完全ナビ|命と家を守る9記事

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よくある質問

Q. トラッキング現象とは簡単にいうと?

A. 差しっぱなしのプラグの刃の間にほこりと湿気がたまり、小さな放電で樹脂が炭になって発火する現象です。

Q. 電源を切っていても起きる?

A. 起きます。プラグが差さっていれば、刃と刃の間には電圧がかかっているからです。使わない家電はプラグを抜きます。

Q. トラッキング現象の防ぎ方は?

A. 年に1〜2回プラグを抜いて乾いた布でほこりをふき、湿気の多い場所ではトラッキング防止のカバーを使います。

Q. 半断線はどうやって見つける?

A. コードを動かすと電源が切れる、一部だけ熱い、変色やにおいがある、がサインです。すぐ使うのをやめます。

Q. 電源タップは何Wまで使える?

A. ふつうは合計15A、100Vで1,500Wまでです。ドライヤーや電子レンジは壁のコンセントに直接さします。

まとめ
  • トラッキング現象=ほこり+湿気で刃の間に放電がくり返され、樹脂が炭になって発火
  • 電源を切っていても、差しっぱなしなら起きる
  • 電気火災の原因は「熱の出すぎ」。トラッキング・半断線・過電流が代表
  • 半断線は外から見えない。動かして電源が切れたら使うのをやめる
  • 掃除はプラグを抜いて乾いた布で。タップの合計は1,500Wまで
電気火災を防ぐまとめの図。差しっぱなしのプラグは年1〜2回掃除、湿気の多い所は防止カバー、コードを踏まない・束ねない、タップは1,500Wまで
この記事の理解を深める本と道具
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シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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