回路設計

ヒューズの選び方|定格電流・溶断特性・突入電流の3点で決める

基板の上の金属のクリップにはさまれたガラス管ヒューズ、電解コンデンサ、チップヒューズ、DCジャックの写真に、ヒューズの選び方・ふだん1Aなら1.6A・1.0A÷(0.75×0.97)=1.37A→1.6A の文字

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ヒューズの定格電流は、ふだんの電流÷0.75÷温度の係数で出します(ふだん 1.0A・60℃なら 1.37A → 1.6A)。速断(F)とタイムラグ(T)の選び分けはSTEP 2、ふだんの電流からの目安は早見表にあります。

結論|まず30秒でわかる答え

ヒューズの選び方は、定格電流・溶断特性・突入電流の3点です。
①定格電流=ふだんの電流÷0.75÷温度の係数(ふだん1.0A・60℃なら1.37A → 1.6A)
②溶断特性=突入電流の大きい入口はタイムラグ(T)、半導体を早く守るなら速断(F)
③突入電流=突入電流の I²t÷0.22 より、ヒューズの溶断 I²t が大きいこと
最後に、定格電圧(交流か直流か)と遮断容量が回路に合うかを確かめます。

この記事に出てくる言葉

わからない言葉が出てきたら、ここに戻ってきてください。本文でも、初めて出たところで言い換えます。

ヒューズ電流が流れすぎると、中の細い金属が溶けて切れ、回路を電源から切り離す部品
定格電流ヒューズに書かれた電流の値。「この電流で切れる」値ではない
溶断ヒューズの中の金属が溶けて切れること
速断(F)大きな電流ですばやく切れる種類。Fast の F
タイムラグ(T)短い時間の大きな電流では切れにくい種類。Time-lag の T
突入電流電源を入れた瞬間、コンデンサを充電するために一瞬だけ流れる大きな電流
I²t(アイ・ツー・ティー)電流の2乗×時間。ヒューズを溶かす熱の量の目安。単位は A²s
遮断容量ヒューズが安全に切ることのできる、いちばん大きな電流

ヒューズは、回路がこわれて大きな電流が流れたときに、自分が切れて火や煙を防ぐ「最後のとりで」です。ふだんは切れず、こわれたときだけ切れる、という2つを両立させるのが選び方の中心です。

この記事では、12V で動く小さな基板を例に、実在のヒューズのデータシートの数字を使って、定格電流から遮断容量まで順に計算します。

基板の上の金属のクリップにはさまれたガラス管ヒューズ、電解コンデンサ、チップヒューズ、DCジャックの写真に、ヒューズの選び方・ふだん1Aなら1.6A・1.0A÷(0.75×0.97)=1.37A→1.6A の文字

この記事の例:12Vで動く基板の入口に入れるヒューズ

例にするのは、直流12V の電源で動き、ふだん1.0A が流れる基板です。入口に220µF のコンデンサがあり、箱の中は60℃まで上がるとします。

ヒューズは、電源から基板へ向かう線の途中、できるだけ電源に近い所に入れます。基板のどこかがショートしても、ヒューズが切れれば電源から切り離せるからです。

項目この記事の例
電源直流12V
ふだんの電流1.0A
箱の中の温度60℃
入口のコンデンサ220µF(電源を入れた瞬間に突入電流が流れる)
電源の入り切り1日10回・10年使う
POINT|ヒューズに求める2つのこと

①ふだんの電流と、電源を入れた瞬間の突入電流では「切れない」。②部品がこわれてショートしたら「すぐ切れる」。この2つの間にちょうどよく入るヒューズを選びます。

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つまり、ヒューズ選びは「切れてはいけない電流」と「切れてほしい電流」の間を探す作業です。

直流12Vの電源、ヒューズ、220µFのコンデンサ、ふだん1.0A・箱の中60℃の基板の回路図と、ふだんは切れない(定格電流とI²tで選ぶ)・ショートですぐ切れる(電圧と遮断容量で確かめる)の2枚のカード

ヒューズは3点で選ぶ:定格電流・溶断特性・突入電流

ヒューズは、①定格電流、②溶断特性(速断かタイムラグか)、③突入電流(I²t)の3点で候補をしぼり、最後に定格電圧と遮断容量を確かめます。

① 定格電流

ふだんの電流に余裕を足して決める。ふだんの電流÷0.75÷温度の係数

② 溶断特性

速断(F)かタイムラグ(T)か。切れるまでの時間の違いで選ぶ

③ 突入電流

電源を入れた瞬間の大きな電流で切れないかを、I²t で比べる

確かめ

定格電圧は回路の電圧以上か(交流・直流も)、遮断容量はショートの電流以上か

ふだんの電流は、部品ごとの電流を足して見積もります。この記事では1.0A とします。

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つまり、ヒューズ選びは「電流の大きさ」「切れる速さ」「一瞬の電流」の3つを順に見ること。

3枚のカード。①定格電流(ふだん÷0.75÷温度の係数)、②溶断特性(速断Fかタイムラグ Tか)、③突入電流(I²tで比べる)と、定格電圧≧回路の電圧・遮断容量≧ショートの電流の確かめ

定格電流は「切れる電流」ではない

ヒューズの定格電流は「この電流で切れる」値ではありません。速断の小型ヒューズでは、定格の1.5倍でも1時間は切れず、2.1倍で30分以内に切れる、と決められています。

はじめての人がいちばん誤解しやすいのがここです。2A のヒューズは、2A を超えた瞬間に切れるわけではありません。ガラス管の小型ヒューズの規格(IEC 60127-2)では、流れる電流と切れるまでの時間が、次のように決まっています。

流れる電流速断(F)タイムラグ(T)
定格の1.5倍1時間以上 切れない1時間以上 切れない
定格の2.1倍30分以内に切れる2分以内に切れる
定格の2.75倍0.05〜2秒0.6〜10秒
定格の4倍0.01〜0.3秒0.15〜3秒
定格の10倍0.02秒以内0.02〜0.3秒

では、定格ぴったりの電流を流し続けてもよいかというと、そうではありません。ヒューズは熱で切れる部品なので、定格に近い電流を流し続けると、中の金属が少しずつ傷み、ある日なにもないのに切れることがあります。

注意|同じ「2A」でも規格で中身が違う

上の表は IEC 60127-2 の小型ヒューズの決まりです。北米の規格(UL 248)の品は、決まりの電流や時間が違います。入れ替えるときは、定格電流の数字だけでなく、データシートの溶断の特性で比べます。

つまり、定格電流は「切れる値」ではなく「ふだん使える上限の目安」。余裕を足して選ぶ理由がここにあります。

定格の何倍かを示す帯。0.75倍まで使ってよい、0.75〜1倍は長く使うと傷みやすい、1〜2.1倍はすぐには切れない、2.1倍から切れる。下に速断とタイムラグの溶断時間の表(1.5倍1時間以上、2.1倍30分・2分以内、2.75倍0.05〜2秒・0.6〜10秒、4倍0.01〜0.3秒・0.15〜3秒、10倍0.02秒以内・0.02〜0.3秒)

STEP 1:定格電流=ふだんの電流÷0.75÷温度の係数

ヒューズの定格電流は、ふだんの電流を0.75 と温度の係数で割り、標準の値に切り上げて決めます。ふだん1.0A・60℃なら、1.0÷(0.75×0.97)=1.37A → 1.6A です。

定格電流の決め方
定格電流 ≧ ふだんの電流 ÷(0.75 × 温度の係数)
1. 25℃の余裕をかける

ヒューズメーカーの Littelfuse は、25℃でも定格の75%以下で使うよう勧めている。1.0÷0.75=1.33A

2. 温度の係数で割る

箱の中は60℃。ヒューズの温度の曲線から、60℃で使える電流は定格の約97%。1.33÷0.97=1.37A

3. 標準の値に切り上げる

5×20mm のヒューズの定格は 1.25・1.6・2・2.5A…と飛び飛び。1.37A 以上で最も小さい 1.6A を選ぶ

0.75 はメーカーの目安で、Bel のチップヒューズ(0685P)のデータシートは「25℃で定格の80%以下」と書いています。選んだヒューズのメーカーの値があれば、そちらに従います。

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つまり、ふだん1.0A の回路に1A のヒューズは小さすぎる。60℃なら1.6A が出発点です。

定格電流≧ふだんの電流÷(0.75×温度の係数)の式と、1.00A、÷0.75で1.33A、÷0.97で1.37A、標準の定格に上げて1.6Aの4本の横棒

温度の係数はヒューズの種類で違う:データシートの曲線で読む

温度の係数は、ヒューズの種類で大きく違います。Bel のガラス管は60℃で約97%ですが、Littelfuse の昔ながらのタイムラグ形は75℃で80%まで下がります。

ヒューズは熱で切れる部品なので、まわりが熱いほど、少ない電流で切れやすくなります。どれだけ下がるかは、データシートの「温度の曲線(Temperature Derating Curve)」で読みます。

ヒューズ温度の曲線(データシートの図から読んだ目安)
Bel 0651C・0652C(ガラス管)-60℃で約109%、60℃で約97%、125℃で約91%
Bel 0685P(チップ)60℃でも約98%、125℃で約95%
Littelfuse の昔ながらのタイムラグ形75℃で80%

Littelfuse のガイドの例では、ふだん1.5A の回路で、このタイムラグ形を75℃で使うと、1.5÷(0.75×0.80)=2.5A のヒューズになります。25℃なら1.5÷0.75=2.0A なので、温度だけで1段階大きくなります。

POINT|「まわりの温度」は箱の中の温度

ヒューズのまわりの温度は、部屋の温度ではありません。箱の中や、熱くなる部品(抵抗・トランス・レギュレータ)の近くでは、部屋よりずっと高くなります。

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つまり、温度の係数は「選んだヒューズのデータシートの曲線」で読む。種類によって1割から2割も違います。

まわりの温度と使える電流の割合のグラフ。Belのガラス管(-60℃で約109%、60℃で約97%、125℃で約91%)、Belのチップ(125℃で約95%)、Littelfuseの昔ながらのタイムラグ形の75℃で80%の点。データシートの図から読んだ目安

STEP 2:速断(F)とタイムラグ(T)の違いと選び方

速断(F)は大きな電流ですばやく切れ、タイムラグ(T)は短い時間の大きな電流では切れにくい種類です。定格の4倍の電流なら、速断は0.01〜0.3秒、タイムラグは0.15〜3秒で切れます。

ヒューズの表面には「F2AL250V」や「T1.6AL250V」のような文字があります。先頭の F が速断、T がタイムラグ、そのあとが定格電流、L は遮断容量が小さい(low breaking capacity)品、最後が定格電圧です。

速断(F)タイムラグ(T)
切れ方大きな電流ですばやく切れる短い時間の大きな電流では切れにくい
4倍の電流0.01〜0.3秒0.15〜3秒
向いている所半導体や細いパターンを早く守りたい所突入電流の大きい入口(大きなコンデンサ・モーター・トランス)
気をつけること突入電流で切れやすいこわれたときに切れるのも遅い

この記事の例は、突入電流が小さめ(STEP 3 で確かめます)なので、速断(F)を候補にします。突入電流で切れてしまうときに、タイムラグ(T)を考えます。

注意|F を T に、T を F に入れ替えない

同じ定格電流でも、速断とタイムラグは切れる速さがまったく違います。修理でヒューズを替えるときは、F・T と定格電流・定格電圧をすべて同じにします。

つまり、まず速断(F)で考え、突入電流で切れるならタイムラグ(T)。速さと守りやすさは引きかえです。

定格の2.75倍・4倍・10倍のときに切れるまでの時間の範囲を、速断(0.05〜2秒、0.01〜0.3秒、0.02秒以内)とタイムラグ(0.6〜10秒、0.15〜3秒、0.02〜0.3秒)で比べた横棒グラフ(対数の目盛り)

STEP 3:突入電流を見積もる:ピーク=電圧÷抵抗

空のコンデンサにつないだ瞬間、電流は「電圧÷回路の抵抗」まで跳ね上がり、時定数 τ=R×C で減っていきます。12V・抵抗0.5Ω・220µF なら、ピーク24A・τ=0.11ms です。

電源を入れた瞬間、空のコンデンサは電線と同じように見えるので、電流を止めるものは電源の出口・ケーブル・コネクタ・コンデンサ自身の小さな抵抗だけです。この記事では、これらを合わせて0.5Ω とします(イメージの値です。実物は測って確かめます)。

突入電流のピークと時定数
ピーク = 12V ÷ 0.5Ω = 24A / τ = 0.5Ω × 220µF = 0.11ms

電流はピークから、τ の時間ごとに約37%ずつに減っていきます。0.11ms はとても短い時間ですが、24A はふだんの電流の24倍です。

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ヒューズが切れるかどうかは、電流の大きさだけでなく、流れた時間も合わせた「熱の量」で決まります。その目安が I²t(電流の2乗×時間)です。

指数で減る突入電流の I²t
I²t = ½ × ピーク² × τ = ½ × 24² × 0.11ms = 0.0317 A²s
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つまり、突入電流は「大きいけれど短い」。熱の量に直すと 0.0317 A²s です。

突入電流の波形。220µFではピーク24A(12V÷0.5Ω)からτ=0.11msで減り、470µFでは減り方が遅い。ふだんの電流1.0Aの線。I²t=½×24²×0.11ms=0.0317A²s。0.5Ωはイメージ

突入電流のI²t÷0.22より、ヒューズの溶断I²tが大きいこと

ヒューズの溶断 I²t が、突入電流の I²t÷0.22(0.144A²s)より大きければ、10万回の電源の入り切りでも切れにくいと判断できます。例の候補はどれも合格です。

データシートには、ヒューズを溶かすのに必要な熱の量が「溶断 I²t(Melting I²t)」として載っています。これと、突入電流の I²t を比べます。

突入電流で切れないための条件
ヒューズの溶断 I²t ≧ 突入電流の I²t ÷ 0.22 = 0.0317 ÷ 0.22 = 0.144 A²s
候補(Bel)溶断 I²t必要な値との比判定
チップ 0685P 2A0.2 A²s1.4倍合格(余裕は小さい)
ガラス管 F 1.6A(0651C)4.4 A²s30.6倍合格
ガラス管 T 1.6A(0652C)8.15 A²s56.6倍合格

チップヒューズは、同じくらいの定格でも溶断 I²t がずっと小さい点に注意します。もしコンデンサを470µF に増やすと、突入電流の I²t は0.0677A²s、必要な値は0.308A²s になり、2A のチップ(0.2A²s)では足りません。2.5A のチップ(0.6A²s)に上げる必要があります。

POINT|溶断 I²t は温度で変わりにくい

Littelfuse のガイドによると、短い時間で溶かす熱の量(溶断 I²t)は、まわりの温度や電圧にほとんどよらない、そのヒューズに固有の値です。そのため突入電流の確かめに使えます。

つまり、突入電流は I²t で比べる。コンデンサを増やしたら、ヒューズも計算し直します。

溶断I²tの横棒グラフ(対数)。チップ0685P 2Aは0.2A²s(1.4倍)、ガラス管F 1.6Aは4.4A²s(30.6倍)、ガラス管T 1.6Aは8.15A²s(56.6倍)。必要0.144の線と、470µFなら0.308の線

0.22はどこから?突入電流をくり返す回数で決まる係数

0.22 は、突入電流を10万回くり返しても切れないための係数です。Littelfuse の表では、くり返しが少ないほど大きくなり、100回なら48%です。

くり返す回数突入電流の I²t ÷ ヒューズの溶断 I²t
100回48%まで
1,000回38%まで
1万回29%まで
10万回22%まで

ヒューズは、溶けない程度の大きな電流でも、流れるたびに中の金属が温まって冷え、少しずつ傷みます。回数が多いほど、1回あたりの熱の量を小さくしておく必要があります。

この記事の例は、1日10回の電源の入り切りを10年続けると、10×365×10=36,500回です。表の1万回と10万回の間なので、安全側の10万回(22%)の行で計算しました。

注意|パルスの間はあける

この表は、パルスとパルスの間に10秒以上あけ、前の熱が冷めることが前提です。短い間隔で何度もくり返す回路では、メーカーに相談するか、実機で確かめます。

つまり、何回くり返すかを先に決め、表から係数を選ぶ。迷ったら10万回の22%で計算すると安全側です。

くり返す回数と係数の棒グラフ。100回48%、1,000回38%、1万回29%、10万回22%(Littelfuseの表)

STEP 4:定格電圧は回路の電圧以上、交流用と直流用を取り違えない

ヒューズの定格電圧は、回路の電圧以上にします。さらに、交流(AC)と直流(DC)は別に確かめます。直流は電圧が0にならず、切れた所の火花(アーク)が消えにくいからです。

ヒューズの定格電圧は「この電圧までなら、切れたときに安全に電流を止められる」という値です。ふだんの使い方とは関係がなく、切れたあとの安全のための数字です。

交流は1秒に100〜120回、電圧が0V を通るので、切れた所の火花が自然に消えやすくなります。直流は電圧がずっと同じ向きなので、火花が続きやすく、ヒューズがこわれる危険があります。ヒューズメーカーの SOC も、回路と同じ種類(交流・直流)の定格のヒューズを選ぶよう書いています。

例(Bel)データシートの定格電圧12V 直流の回路では
チップ 0685P 2A直流63V・交流50V使える
ガラス管 0651C交流250V(直流は書かれていない)メーカーに直流の定格を確かめる

つまり、「250V だから12V でも平気」とは限らない。直流の回路では、直流の定格電圧が書かれたヒューズを選びます。

交流は0Vを通るので火花が消えやすく、直流は0Vにならないので火花が続きやすいことを示す2枚のカードと波形。チップ0685P 2Aは直流63V・交流50Vで12V直流に使える、ガラス管0651Cは交流250Vだけで直流ならメーカーに確かめるの表

STEP 4:遮断容量はショートで流れうる最大の電流以上

遮断容量は、ヒューズが安全に切れる最大の電流です。ガラス管の小型ヒューズは35A(交流250V)の品もあり、ショートで流れうる電流がこれを超えると、ヒューズが割れたり火花が続いたりします。

ヒューズ遮断容量
Bel 0651C(ガラス管 F)交流250V で35A(または定格の10倍の大きいほう)
Bel 0652C 1.25〜3.15A(ガラス管 T)交流250V で100A
Bel 0685P 2〜8A(チップ)直流63V で100A
UL 248 の品(Littelfuse のガイド)交流125V で10,000A

基板の入口でショートが起きたとき、どれだけの電流が流れるかは、電源で決まります。電流を制限する機能つきの小さな AC アダプタなら小さく、電池やコンセントの100V の入口では、とても大きな電流が流れることがあります。

反対に、ショートしても電源が小さな電流しか出せないと、ヒューズが切れないことがあります。たとえば 0685P の2A は、2.5倍の5A で5秒以内に切れる品です。電源が5A 以上を出せるかも、あわせて確かめます。

つまり、遮断容量は「大きすぎる電流」の確かめ、溶断の電流は「小さすぎる電流」の確かめ。どちらも電源の能力で決まります。

遮断容量の横棒グラフ(対数)。ガラス管F(0651C)交流250Vで35A、ガラス管T 1.25〜3.15A(0652C)交流250Vで100A、チップ0685P 2〜8A 直流63Vで100A、UL 248の品 交流125Vで10,000A

ガラス管とチップの違い:交換できるか・大きさ・I²t

ガラス管ヒューズはホルダーで交換でき、切れたのが目で見えます。チップヒューズは小さく実装機で載せられますが、交換はできず、同じ定格でも溶断 I²t が小さめです。

くらべる点ガラス管(5×20mm)チップ(1206 など)
交換ホルダーで差し替えられるはんだ付け。基本は交換しない
切れたかの確かめ目で見てわかるテスターで導通を測る
大きさ大きい(ホルダー込み)小さい・実装機で載る
溶断 I²t(2A)0651C で7.50A²s0685P で0.2A²s
注意ホルダーは定格の60%以下で使う(Littelfuse の目安)直流の定格電圧が書かれた品が多い

修理や点検でヒューズを替えたい機器(電源装置や計測器など)は、ガラス管とホルダーが向いています。小さな基板や、こわれたら基板ごと替える製品では、チップがよく使われます。

注意|ホルダーにも定格がある

ガラス管を使うときは、ヒューズだけでなくホルダー(クリップ)の定格も確かめます。Littelfuse のガイドでは、ホルダーは定格電流の60%以下で使うよう勧めています。

つまり、「交換させたいか」で形を決め、形が決まったら、その形のデータシートで STEP 1〜4 を確かめます。

5×20mmのガラス管ヒューズと1206のチップヒューズの絵と比較表。交換(ホルダーで差し替え/はんだ付け)、切れたか(目で見る/テスター)、大きさ、2AのI²t(7.5A²s/0.2A²s)、注意(ホルダーは60%まで/直流の定格が書かれた品が多い)

例の答え:チップ0685Pの2A(ガラス管ならF1.6A)

例の基板(12V・ふだん1.0A・60℃・220µF)の答えは、チップの Bel 0685P の2A です。ガラス管なら速断の1.6A ですが、直流の定格電圧をメーカーに確かめます。

ステップ確かめたこと結果
STEP 1 定格電流1.0÷(0.75×0.97)=1.37A1.6A 以上(チップは2A から)
STEP 2 溶断特性突入電流は小さめ速断(F)
STEP 3 突入電流0.0317÷0.22=0.144A²s2A のチップは0.2A²s で合格
STEP 4 電圧・遮断直流12V0685P は直流63V・100A
STEP 5 実機電源の入り切り・ショート切れ方を確かめる

確かめ:最低限ここだけ

1. ふだんの電流と比べる

ふだんの電流÷定格が0.75以下か(1.0÷2=0.50)。60℃なら温度の係数も入れる

2. 突入電流と比べる

ヒューズの溶断 I²t が、突入電流の I²t÷0.22 以上か(0.2≧0.144)

余裕があれば

実物の基板で、電源を入れたときの電流をオシロスコープで測り、I²t を計算し直します。ヒューズメーカーの SOC は、コンデンサの電気を抜いてから測る、サーミスタ(温度で抵抗が変わる部品)があれば抵抗がいちばん小さくなる条件で測る、と書いています。最後に、ショートさせたときにヒューズが安全に切れるかを、最終の機器で確かめます。

つまり、計算は候補をしぼるため。最後は実機の試験で決めます。

5枚のステップカード。STEP1定格電流1.37A→1.6A以上、STEP2溶断特性→速断F、STEP3突入電流0.144A²s→2Aチップ0.2でOK、STEP4電圧・遮断→直流63V・100A、STEP5実機で切れ方を確かめる

早見表:ふだんの電流から選ぶヒューズの定格電流

ふだんの電流から定格電流を選ぶ早見表です。25℃は÷0.75、60℃は÷(0.75×0.97)で計算し、標準の値に切り上げました。

ふだんの電流25℃の計算25℃で選ぶ60℃の計算60℃で選ぶ
0.3A0.40A0.5A0.41A0.5A
0.5A0.67A0.8A0.69A0.8A
0.8A1.07A1.25A1.10A1.25A
1A1.33A1.6A1.37A1.6A
1.5A2.00A2A2.06A2.5A
2A2.67A3.15A2.75A3.15A
3A4.00A4A4.12A5A

標準の定格は、5×20mm のヒューズの系列(0.5・0.63・0.8・1・1.25・1.6・2・2.5・3.15・4・5A…)で選びました。チップヒューズは系列が違うので、選んだシリーズのデータシートで、計算した値以上の最も小さい定格を選びます。

注意|早見表は STEP 1 だけ

この表は定格電流(STEP 1)だけです。60℃の係数は Bel のガラス管の曲線から読んだ目安(0.97)です。突入電流(STEP 3)と、電圧・遮断容量(STEP 4)は、選んだヒューズのデータシートで別に確かめます。

つまり、表で出発点を決め、STEP 3・4 で確かめる。この順番なら迷いません。

早見表。ふだん0.3Aは0.5A、0.5Aは0.8A、0.8Aは1.25A、1Aは1.6A、1.5Aは25℃で2A・60℃で2.5A、2Aは3.15A、3Aは25℃で4A・60℃で5A

ヒューズ選びのよくある失敗3つ

ヒューズ選びの失敗は、定格ぴったりで選ぶ・コンデンサを増やして突入電流を見直さない・交流用を直流に使う、の3つが代表です。

失敗1:定格ぴったりで選ぶ

ふだん1A の回路に1A のヒューズを入れると、すぐには切れなくても、熱で中の金属が少しずつ傷み、ある日切れます。ふだんの電流÷0.75÷温度の係数で選びます。

失敗2:コンデンサを増やして突入電流を見直さない

入口のコンデンサを220µF から470µF に増やすと、突入電流の I²t は0.0317から0.0677A²s へ、約2.1倍になります。2A のチップヒューズでは足りなくなり、電源を入れた瞬間に切れることがあります。回路を変えたら、STEP 3 をやり直します。

失敗3:交流用を直流に使う

交流250V の定格だけが書かれたヒューズを直流の回路に使うと、ショートしたときに火花が消えず、ヒューズがこわれることがあります。直流の回路では、直流の定格電圧が書かれた品を選びます。

つまり、「余裕を見る」「突入を比べる」「交流と直流を分ける」の3つを守れば、大きな失敗は防げます。

3枚のカード。ふだん1Aに1Aのヒューズはある日切れる(÷0.75と温度の係数で1.6A)、コンデンサを220→470µFにすると突入のI²tが2倍強(0.144→0.308A²s)、交流250Vの品を直流に使うと火花が消えないことも(0685Pは直流63V)

ヒューズの回路図記号:長方形の中を線が通る

ヒューズの回路図記号は、抵抗と同じ長方形の中を、端から端まで1本の線が通り抜ける形です。回路図では部品番号を F1・F2 のように F で始めることが多く、この記事の例の F1 もその書き方です。

中を通る線は、ヒューズの中の細い金属(エレメント)を表していると考えると覚えやすくなります。大きな電流が流れると、この線が溶けて切れる。抵抗の長方形には中の線がありません。見分けどころはそこだけです。

記号見分けどころ部品番号の例
ヒューズ長方形の中を線が通り抜けるF1・F2
抵抗長方形だけ(中に線がない)R1・R2
注意|回路図の記号だけでは種類は決まらない

記号は速断(F)でもタイムラグ(T)でも、ガラス管でもチップでも同じ形です。どの定格・溶断特性の品を使うかは、回路図の横の部品の値か、部品表(BOM)で決めます。この記事の STEP 1〜4 で選んだ値を、部品表に書き込んでおきます。

抵抗・コンデンサ・ダイオードなどほかの部品の記号と並べて、30個を1枚の早見表にした記事もあります。

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ヒューズ・抵抗・コンデンサなど30個の記号を、実物の絵と並べて確かめられる。印刷用の1枚つき

よくある質問(FAQ)

Q. ヒューズの選び方の基本は?

A. 定格電流・溶断特性・突入電流の3点です。ふだんの電流に余裕を足し、速断かタイムラグかを決め、I²tで突入電流と比べます。

Q. ヒューズの定格電流は何倍にする?

A. ふだんの電流を0.75で割り、さらに温度の係数で割ります。ふだん1.0A・60℃なら約1.37Aで、1.6Aを選びます。

Q. 速断とタイムラグはどう使い分ける?

A. 突入電流の大きい電源の入口はタイムラグ、半導体や細いパターンを早く守りたい所は速断が向いています。

Q. I²tとは何ですか?

A. 電流の2乗×時間で、ヒューズを溶かす熱の量の目安です。突入電流のI²tとヒューズの溶断I²tを比べて選びます。

Q. 交流用のヒューズを直流に使えますか?

A. 交流の定格だけでは使えるとは限りません。直流は火花が消えにくいので、直流の定格電圧が書かれた品を選びます。

Q. ヒューズの遮断容量とは?

A. ヒューズが安全に切れる最大の電流です。ショートで流れうる最大の電流より大きい品を選ばないと、ヒューズが割れることがあります。

まとめ
  • ヒューズの選び方は、定格電流・溶断特性・突入電流の3点+電圧と遮断容量の確かめ
  • 定格電流=ふだんの電流÷0.75÷温度の係数。ふだん1.0A・60℃なら1.37A → 1.6A
  • 温度の係数はヒューズの種類で違う。データシートの温度の曲線で読む
  • 突入電流の大きい入口はタイムラグ(T)、半導体を早く守るなら速断(F)
  • 突入電流の I²t÷0.22 ≦ ヒューズの溶断 I²t。例は0.0317÷0.22=0.144A²s
  • 定格電圧は交流・直流を分けて確かめ、遮断容量はショートの電流以上

次の一歩として、手元の基板のふだんの電流と入口のコンデンサの容量を書き出し、この記事の STEP 1 と STEP 3 を計算してみてください。今のヒューズに余裕があるかが、数字で確かめられます。

参考にした資料

法令・規格・資料は改訂されることがあります。実務で使うときは、発行元の最新版で確かめてください。

この記事の理解を深める本と道具
おすすめの本

電源回路の設計を、要求仕様から短時間でまとめる実務の考え方まで知りたい人に向いています。要求仕様どおりの電源を短時間で設計するための、電源回路設計の本です(CQ出版、馬場清太郎 著)。

おすすめの道具

回路の電圧や導通を自分の手で確かめるなら、手元にテスターが1台あると便利です。三和電気計器のデジタルマルチメータ(テスター)CD772です。電圧や抵抗などを測れます。

おすすめの道具

波形を自分の目で確かめるなら、手元にオシロスコープが1台あると便利です。RIGOLのデジタル・オシロスコープ DHO804です。周波数帯域70MHz・4チャンネルで、12ビットの垂直分解能をもちます。

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シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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