基板設計

サーマルビアの設計|放熱パッドからどう熱を逃がすか

😣 こんな経験はありませんか?
  • パワーICのデータシートに「放熱パッドの下にサーマルビアを配置」と書いてあるが、何本必要かわからない
  • とりあえずビアを9本並べてみたが、本当に足りているか不安
  • ビア径やピッチをどう決めればいいか、誰も教えてくれない
  • 試作したらICが熱保護でシャットダウンした。サーマルビアが原因か判断できない
✅ この記事でわかること
  • サーマルビアの本当の役割(電気じゃなくて「熱の通り道」)
  • 本数・ビア径・ピッチの決め方の目安
  • 内層GNDプレーンとの正しい接続方法
  • 「ビアを増やせばOK」が通用しない理由

前回の記事では「大電流基板で避けるべき設計ミス5選」を扱いました。その中で「ビアの本数不足で焼損」という話が出てきましたね。

今回扱う サーマルビア は、それと似ているようで、目的がまったく違います。
普通のビアは「電気を流す」のが仕事ですが、サーマルビアの仕事は「熱を逃がす」こと。同じ「ビア」でも、設計の考え方が変わります。

この記事では、ICの放熱パッドからの熱をどう内層GNDへ逃がすか、その設計のコツを「家の換気口」のたとえで完全図解していきます。

そもそもサーマルビアって何?=「熱の通り道」

サーマルビアとは、文字通り 「熱(thermal)を逃がすためのビア」 です。ICの裏側にある放熱パッド(=ICの中で発生した熱を基板に逃がすための金属露出面)と、内層や裏面のGNDプレーンを銅で繋ぎ、熱の通り道を作るのが役割です。

普通のビア

目的:電気を流す

設計指標:電流容量[A]

本数:電流に応じて

🔥

サーマルビア

目的:熱を逃がす

設計指標:熱抵抗[℃/W]

本数:発熱量に応じて

「家の換気口」をイメージしてください

夏場、エアコンのない部屋で料理をすると、室温がどんどん上がりますよね。窓を開けて換気口を作れば、熱が外へ逃げて快適になります。

サーマルビアも同じです。
ICの中で発生した熱は、放熱パッドという「熱源」に集まります。そのままでは熱は基板上層に閉じ込められて、IC自身の温度を上げてしまう。
そこで、サーマルビアという「下層への換気口」を開けて、内層GNDや裏面銅箔という「広い放熱の海」へ熱を逃がしてあげるのです。

💡 ポイント
サーマルビアは「電気のため」ではなく「熱のため」のビア。だから設計の指標も「熱抵抗(℃/W)」で考えます。電流計算で考えると、判断を間違えます。

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サーマルビア1本がどれくらい熱を逃がせるか?

設計の前に、まず「ビア1本の実力」を知っておきましょう。

標準的なサーマルビア(ビア径φ0.3mm、ビア長1.6mm、銅メッキ厚25μm)の熱抵抗は約60〜100℃/Wです。「ビア1本で1Wの熱を流すと、約60〜100℃の温度差が生まれる」という意味になります。

📐 サーマルビア1本の目安
熱抵抗:約60〜100 ℃/W(1本あたり)
並列で増やすと、本数に反比例して熱抵抗が下がる

つまり、ビア9本並列にすると熱抵抗は 約7〜11℃/W まで下がる、という計算になります。

ビア本数 合成熱抵抗(目安) 用途の例
1本 約60〜100℃/W 小信号IC・低発熱(〜0.3W)
9本(3×3) 約7〜11℃/W レギュレータ・小型LDO(〜2W)
25本(5×5) 約2.4〜4℃/W DC-DCコンバータ(〜5W)
49本(7×7) 約1.2〜2℃/W パワーMOSFET・大型IC(5W以上)
⚠️ 注意
これはあくまで「ビアそのものの熱抵抗」です。実際には放熱パッドや内層GND、外気との熱抵抗も加算されるので、これだけで安心せず、必ず全体の熱回路で評価してください。

ビア径とピッチはどう決める?

本数と並んで悩むのが、ビア径ピッチ(ビア間隔)です。それぞれの基本ルールを押さえましょう。

ビア径=φ0.3mmが標準。大きすぎても問題

「径を大きくすれば熱抵抗が下がるはず」と考えがちですが、ここに落とし穴があります。

φ0.3mm(標準)

熱抵抗とコストのバランス◎

はんだも吸われにくい

φ0.5mm以上

穴からはんだが裏に抜ける

放熱パッドのはんだ不足

大きいビアは、はんだリフロー時に 溶けたはんだが穴を伝って裏面へ抜けて行ってしまう 現象(ソルダーボイド・ソルダースルー)を起こします。結果、放熱パッドのはんだが足りなくなり、肝心の「IC↔パッドの熱伝達」が悪化する。本末転倒です。

🔧 現場の声
業界の鉄板ルールは 「サーマルビアはφ0.2〜0.3mm、ピッチ1.0〜1.2mm」。多くのIC(TI・ADI・STなど)のデータシートでも同じような推奨値が示されています。

ピッチ=1.0〜1.2mmが目安

ピッチ(ビアとビアの中心間距離)は、密にしすぎても効果が頭打ちになります。

ピッチ 特徴
0.6〜0.8mm 密。効果は若干上がるが製造難度UP・コスト増
1.0〜1.2mm 標準。熱性能・製造性のバランス◎
1.5mm以上 疎すぎ。本数が増えても効果が分散する

ピッチが広すぎると、放熱パッド内に「熱が逃げない場所」ができて、その下のICの一部だけが集中的に熱くなることもあります。「均等に並べる」のが鉄則です。

内層GNDへの接続=「広い海」を用意する

サーマルビアで頑張って熱を内層に降ろしても、内層側のGNDが貧弱だとそこで熱が滞留します。下水管を太くしても、下水処理場が小さければ詰まるのと同じ。

サーマルビアの設計は「ビアそのもの」だけでなく、接続先のGNDプレーンの広さもセットで考えましょう。

原則1

内層GNDはベタ(広い面)で接続する
細い線ではなく、広いプレーンに「面」で接続するのがベスト。熱は面で広がる方が逃げやすい。

原則2

サーマルリリーフはOFFにする
製造ソフトの初期設定では「十字接続(サーマルリリーフ)」になっていることが多い。これでは熱の通り道が極端に狭くなる。

原則3

裏面にも放熱銅箔を敷く
4層基板なら、裏面(L4)にも広いGNDプレーンを設け、サーマルビアで貫通させる。これで「外気への放熱」もできる。

サーマルリリーフON

十字の細い線でしか繋がっていない

熱がここで詰まる

サーマルリリーフOFF

広いベタ面に直接接続

熱がスムーズに広がる

⚠️ 注意
サーマルリリーフをOFFにすると、製造時のはんだ付けで熱が逃げやすくなり、はんだ不良を招く可能性があります。製造部門と必ず事前に相談してください。

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サーマルビア設計の落とし穴3選

「ビアの本数を増やせばOK」と思っていると、痛い目に遭います。実際の現場でよく見る3つの落とし穴を紹介します。

落とし穴①:ビア径が大きすぎてはんだが抜ける

前述の通り、φ0.5mm以上のビアを放熱パッドに置くと、リフロー時にはんだが裏面へ流れていきます。結果、放熱パッドのはんだ層が薄くなって 熱伝達が悪化。本末転倒の典型例です。

対策は、ビア径φ0.2〜0.3mmを守るか、ビア埋め(filled via / capped via)仕様にすることです。

落とし穴②:内層GNDがブツ切り

「内層にもサーマルビアを通したぞ!」と安心していたら、内層のGNDが他の配線で分断されていて、熱が広がらなかった――というケース。

必ず内層GNDの「ベタの広さ」を確認してください。サーマルビアの直下が細い島になっていたら、いくらビアを増やしても効果は出ません。

落とし穴③:パッドの外側にビアを打つ

「ビアをはんだの邪魔にしないように」と、放熱パッドの外側にビアを並べるケースをたまに見ます。これではせっかくの熱が、パッドからビアまで遠回りすることになります。

サーマルビアは 放熱パッドの「中」 に配置するのが大原則です。はんだの問題はビア径やビア埋めで対処すべきで、配置を犠牲にしてはいけません。

💡 ポイント
ICのデータシートには、ほぼ必ず「推奨フットプリント」が載っています。サーマルビアの本数・配置・ピッチも図示されているので、まずはそれに従うのが安全です。

サーマルビア設計の手順=4ステップで完成

ここまでの話を、設計の手順としてまとめます。

STEP 1

ICの発熱量[W]を確認する
データシートのPd(消費電力)を確認。実使用時の損失計算でもOK。

STEP 2

必要な熱抵抗[℃/W]を決める
「Tj(接合温度)−Ta(周囲温度)÷ Pd」で逆算。マージン込みで設計。

STEP 3

ビア本数を決める
「1本60〜100℃/W ÷ 必要本数 = 目標熱抵抗」で逆算。表(ブロック③)を参考に。

STEP 4

径φ0.3mm・ピッチ1.0〜1.2mmで均等配置
放熱パッド内に均等に配置。サーマルリリーフOFF・内層GNDはベタ。

迷ったら
「データシート推奨フットプリント+ピッチ1.0mm+サーマルリリーフOFF」

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まとめ=サーマルビアは「熱の換気口」

今日の話を整理します。

✅ サーマルビアは「熱を逃がす換気口」。電流じゃなくて熱で考える

✅ 1本あたりの熱抵抗は約60〜100℃/W。並列で本数を増やす

✅ ビア径はφ0.2〜0.3mm、ピッチは1.0〜1.2mmが標準

✅ 内層GNDはベタ&サーマルリリーフOFFで「広い海」を用意

✅ 迷ったらデータシートの推奨フットプリントに従う

サーマルビアの設計は、地味ですがパワーIC・MOSFET・LED系基板の寿命と信頼性に直結します。「ビアを9本並べておけばOK」という思い込みを今日で卒業して、熱抵抗ベースで設計できるようになりましょう。

次回は、サーマルビアと並んで重要な「放熱パッド・ヒートシンクの設計」について、より広い視点から解説していきます。お楽しみに。

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