回路設計

フローティングとは?「浮いている」状態とプルアップ・プルダウンの選び方|計算ツール付き

フローティングとは何かを表すアイキャッチ。ICの入力端子がどこにもつながらず、まわりのノイズで電圧がふらついている

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お悩み
こんなふうに思っていませんか?
  • 「この端子、浮いてるよ」と言われたけど、何がいけないのかわからない
  • フローティング・ハイインピーダンス・オープンのちがいがあいまい
  • プルアップ抵抗は何kΩにすればいいのか迷う
この記事でわかること
  • フローティング(浮いている)とは何か
  • 浮いた端子がノイズを拾い、ICを熱くする理由
  • プルアップ・プルダウンの役割と抵抗値の決め方
  • 抵抗値から電流と立ち上がり時間を出す計算ツール
結論|まず30秒でわかる答え

フローティングとは、回路で「浮いている」と呼ぶ状態のことで、ICの入力端子などが電源(VCC)にもGNDにもつながっておらず、電圧が決まっていない状態です。電流がほとんど流れないハイインピーダンスなので、まわりのノイズを拾って電圧がふらつき、デジタルICでは誤動作や、CMOSの貫通電流による発熱の原因になります。抵抗でVCCかGNDにつなぐプルアップ・プルダウンで電圧を決めて防ぎます。

フローティングとは何かを表すアイキャッチ。ICの入力端子がどこにもつながらず、まわりのノイズで電圧がふらついている
入力端子が浮いて電圧がふらつくフローティング

フローティングとは?「浮いている」状態の正体

回路の「浮いている」とは、ある端子の電圧を決めるつながりがどこにもない状態です。たとえば、マイコンの入力端子に何もつながっていないと、その端子はVCCでもGNDでもなく、電圧が決まりません。ひもの切れた風船のように、まわりの影響でふらふら動きます。

用語意味使われ方
フローティング(浮き)端子がどこにもつながらず、電圧が決まっていない「この入力、浮いてる」
ハイインピーダンス(Hi-Z)電流がほとんど流れない、つながっていないのに近い状態出力をOFFにした3ステートの状態、測定器の入力
オープン線が切れていて、電流が流れない断線、スイッチOFF

3つは厳密には意味がちがいますが、入力端子について言うときは、どれも「電圧が決まらない」という同じ困りごとにつながります。インピーダンスは交流での電流の流れにくさで、ハイインピーダンスは「とても流れにくい」という意味です。

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インピーダンスと抵抗の違い

浮いている状態の図。抵抗でGNDにつながった端子は電圧が決まるが、どこにもつながらない端子は電圧が決まらないハイインピーダンス
つながっていない端子は電圧が決まらない

浮いた端子は何がいけないのか

① ノイズを拾う「アンテナ」になる

まわりの空間には、スイッチング電源・モーター・無線などの電磁波がいつも飛んでいます。浮いた端子につながる配線は小さなアンテナになり、このノイズを拾います。端子がVCCやGNDに低いインピーダンスでつながっていれば、ノイズはそこへ逃げて消えますが、浮いていると逃げ場がなく、ノイズがそのまま端子の電圧になります。

浮いた端子をテスターで測ると、0.5Vだったり2Vだったりと、測るたびにちがう値が出ます。値が決まらないこと自体が、浮いている証拠です。

② HIGHかLOWか決まらず、誤動作する

デジタルICの入力は、電圧をHIGH(1)かLOW(0)に分けて読みます。3.3V系のLVTTL/LVCMOS(JEDECの規格)なら、2.0V以上がHIGH、0.8V以下がLOWで、その間は「どちらかわからない」範囲です(0.7VCC・0.3VCCで決めるICもあります)。浮いた端子はこの範囲をうろうろするので、マイコンがボタンを押していないのに押したと読む、といった誤動作が起きます。

③ CMOSの貫通電流で熱くなる

CMOSの入力は、VCC側のPチャネルとGND側のNチャネルのMOSFETが組になっています。HIGHかLOWなら片方だけがONですが、中間の電圧だと両方が少しずつONになり、VCCからGNDへ電流が流れっぱなしになります。これが貫通電流で、消費電流がふえ、ICが熱くなり、長く続くと劣化の原因になります。

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プルアップとプルダウン|抵抗1本で電圧を決める

浮かないようにするには、抵抗でVCCかGNDにつないで、何もしないときの電圧を決めておきます。

方法つなぎ方何もしないときよく使う場面
プルアップ端子とVCCの間に抵抗HIGH押すとGNDにつながるボタン、リセット端子、I²C、オープンドレイン出力
プルダウン端子とGNDの間に抵抗LOW押すとVCCにつながるボタン、イネーブル端子、起動時のモード設定

ボタンを押すとLOWになる回路なら、離しているあいだはプルアップ抵抗がHIGHに引き上げます。押すとボタンがGNDにつなぐので、抵抗を通ってVCC/Rの電流が流れ、端子はLOWになります。抵抗がないと、押した瞬間にVCCとGNDがショートしてしまうので、抵抗が必要です。

オープンドレイン出力にはプルアップが必須

オープンドレイン(オープンコレクタ)の出力は、GNDへ引き下げるスイッチしか持っていません。LOWにはできますが、HIGHにする力がないので、OFFにすると浮きます。I²Cのように、何台ものICが同じ線をLOWに引ける通信では、この形と外付けのプルアップ抵抗が前提になっています。

プルアップとプルダウンの図。プルアップはVCCとの間に抵抗を入れ押さないとHIGH、プルダウンはGNDとの間に抵抗を入れ押さないとLOW
プルアップは押さないとHIGH、プルダウンは押さないとLOW

プルアップ抵抗の値の決め方

よく使われるのは1k〜100kΩで、迷ったら10kΩが出発点です。ただ、値は次の3つのバランスで決まります。

見ること抵抗を小さくすると抵抗を大きくすると
消費電流(LOWのとき I=VCC/R)ふえる(3.3V・1kΩで3.3mA)へる(3.3V・100kΩで33μA)
立ち上がりの速さ(R×端子と配線の容量)速い遅い。速い信号では波形がなまる
ノイズへの強さ・漏れ電流での電圧の下がり強い・下がりにくい弱い・漏れ電流×Rで電圧が下がる

たとえばI²Cは、通信速度ごとに立ち上がり時間の上限(標準モードで1000ns、ファストモードで300ns)があり、バスの容量が大きいほど小さい抵抗が必要です。一方、LOWのときに流せる電流(多くは3mA)の上限があるので、小さくしすぎることもできません。電池で動く機器では、押しボタンのプルアップを100kΩ前後にして待機の電流をへらすこともあります。

マイコンの内蔵プルアップ

多くのマイコンは、設定で入力端子に内蔵のプルアップ(またはプルダウン)をつなげます。部品が1つへりますが、値は数十kΩと大きめで、ばらつきも大きいのがふつうです。ノイズの多いパワエレの基板や、長い配線の先のスイッチでは、外付けの抵抗のほうが安心です。

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マイコンの入出力の基本

プルアップ抵抗の値の決め方の図。小さい抵抗は電流がふえるが速くノイズに強い、大きい抵抗は電流がへるが遅くノイズに弱い。迷ったら10kΩ
プルアップ抵抗の値は迷ったら10kΩ

プルアップ抵抗の計算ツール

電源電圧と抵抗値、端子と配線の容量などを入れてください。LOWのときの電流、VIHに届くまでの時間、漏れ電流による電圧の下がりを出します。

入力すると、その場で計算し直します。入力した数字は画面の中で計算するだけで、どこにも送信されません。

使わない端子と、もう1つの「フローティング」

使わない入力端子の処理

端子処理のしかた
ロジックICの使わない入力VCCかGNDに直接、または抵抗を通してつなぐ(データシートの指示に従う)
マイコンの使わないGPIO出力にしてLOWにするか、内蔵プルアップ・プルダウンを有効にする
オペアンプの使わない回路ボルテージフォロワにして入力を固定する(データシートの推奨に従う)

GNDから浮いた電源・測定

「フローティング」は、もう1つの意味でも使われます。出力がGND(大地)に対して決まっていない電源や、大地から絶縁して測る測定を、フローティング電源・フローティング測定と呼びます。たとえば、ハーフブリッジのハイサイドのゲート電圧は、スイッチのたびに大きく動く点を基準にしているので、オシロスコープのプローブのGND(大地につながっている)を直接つなぐと短絡してしまいます。差動プローブや絶縁したプローブで「浮かせて」測ります。

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使わない端子ともう1つの意味の図。使わない入力端子はVCCかGNDに固定する。GNDから浮いた電源や、大地から絶縁して測る測定もフローティングと呼ぶ
使わない入力はVCCかGNDに固定する

フローティングのよくある間違い

よくある間違い正しい考え方
使わない入力は放っておいてよい浮くとノイズで誤動作し、貫通電流で熱くなる。必ず処理する
浮いた端子は0Vになっている電圧は決まらず、ノイズでふらつく
プルアップは小さいほど安心LOWのときの電流と消費電力がふえる。LOWで流せる電流にも上限
プルアップは大きいほど省エネでよい立ち上がりが遅れ、ノイズや漏れ電流に弱くなる
内蔵プルアップがあれば外付けは不要内蔵は数十kΩで大きめ。ノイズの多い所は外付けが安心
フローティングのよくある間違いの図。使わない入力はVCCかGNDに固定する、浮いた端子の電圧は決まらない、プルアップは電流と上限を確かめる、ノイズが多いなら外付け
フローティングで起きやすい4つの間違い
キャリア
設計の経験を、メーカーの仕事に活かすなら

回路や基板の設計経験は、メーカーをはじめ多くの企業で求められています。今の職場で経験を積むのも、より広く経験を活かせる職場を探すのも、ひとつの道です。メーカーズジョブは、株式会社MyVisionが運営する、メーカー・製造業に特化した転職支援です。扱う職種や求人の範囲は、面談で確かめてください。

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よくある質問

Q. フローティングとは簡単にいうと?

A. 端子が電源にもGNDにもつながっておらず、電圧が決まっていない状態です。回路では「浮いている」と言います。

Q. ハイインピーダンスとは?

A. 電流がほとんど流れない状態です。端子が浮いているときや、3ステート出力をOFFにしたときがこの状態です。

Q. 浮いているとなぜいけないの?

A. ノイズを拾って電圧がふらつき、デジタルICが誤動作します。CMOSでは貫通電流が流れて熱くなることもあります。

Q. プルアップ抵抗は何kΩがいい?

A. 迷ったら10kΩが出発点です。速い信号やI²Cは小さめ、電池で動く機器のボタンは大きめにします。

Q. プルアップとプルダウンの違いは?

A. 何もしないときにHIGHにしたいならプルアップ(VCCへ)、LOWにしたいならプルダウン(GNDへ)です。

まとめ
  • フローティング=端子の電圧を決めるつながりがない状態(ハイインピーダンス)
  • 浮いた端子はノイズを拾い、誤動作やCMOSの貫通電流の原因になる
  • プルアップ(VCCへ)・プルダウン(GNDへ)の抵抗で電圧を決める
  • 抵抗値は消費電流・立ち上がり・ノイズのバランス。迷ったら10kΩから
  • 使わない端子も処理する。GNDから浮いた電源・測定という意味もある
フローティングのまとめの図。浮きは電圧が決まらない状態、ノイズ・誤動作・発熱の原因、プルアップ・プルダウンで防ぐ、抵抗は迷ったら10kΩから
フローティングの要点:プルアップ・プルダウンで防ぐ
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シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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