電力科目の解説

単相3線式の計算|中性線の断線・バランサと過去問のポイント

単相3線式の計算。中性線の断線・バランサと過去問のポイント

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お悩み
こんなふうに思っていませんか?
  • 単相3線式の計算で、中性線に流れる電流の向きと大きさがわからない
  • 中性線が切れると、なぜ電圧が上がる側と下がる側ができるのかピンとこない
  • バランサの問題が出ると、手が止まってしまう
この記事でわかること
  • 平衡・不平衡のときの電流・損失・電圧の計算(途中式つき)
  • 中性線が切れたときに何Vかかるかの計算
  • 電験三種で実際に問われたポイントと解き方

単相3線式の計算は、電験三種の電力でくり返し出題されるテーマです。中性線という1本の線がからむので、はじめは混乱して当然です。この記事では、ひとつの例題の数字を少しずつ変えながら、平衡、不平衡、断線、バランサまで順番に計算していきます。

結論|まず30秒でわかる答え

単相3線式の計算は、2本の外線の電流の差が中性線に流れる、という1つの決まりで解けます。負荷が平衡なら中性線の電流は0Aで、損失と電圧降下が最小になります。不平衡だと中性線に電流が流れて損失が増え、中性線が切れると軽い負荷の側に100Vを大きく超える電圧がかかります。バランサ(巻数比1:1の単巻変圧器)を線路の末端につなぐと、外線の電流がそろい、この不平衡を打ち消せます。

単相3線式のしくみ:3本の線から100Vと200V

単相3線式は、変圧器の二次側の巻線の真ん中から中性線を引き出し、外線2本と中性線1本の計3本で送る方式です。外線と中性線の間が100V、外線どうしの間が200Vになります。中性線は大地とつないで(接地して)あり、0V近くに保たれています。

つなぐ場所電圧つなぐ機器の例
外線1 と 中性線100V照明・コンセント
外線2 と 中性線100V照明・コンセント
外線1 と 外線2200Vエアコン・IH調理器
たとえると

高さ200cmの階段の、ちょうど100cmのところに踊り場(中性線)がある、と考えてください。上の段から踊り場までも、踊り場から下の段までも100cm。上の段から下の段までは200cmです。踊り場をつくったおかげで、100cmと200cmの2種類の高さを使い分けられます。

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つまり単相3線式は、200Vの電源を真ん中で分けて、100Vを2組つくっている方式です。計算でも、この「上の100V」と「下の100V」の2つの回路に分けて考えます。

平衡負荷なら、中性線の電流は0A

平衡負荷とは、上の100V側と下の100V側に、同じ大きさの負荷がつながっている状態です。このとき中性線の電流は0Aになります。

公式
中性線の電流 = 外線1の電流 − 外線2の電流

なぜ差になるのか

上の負荷を通った電流は、中性線のところで「帰り道」に出ます。下の負荷へ向かう電流は、中性線から「行き道」として入ります。中性線の上では、この2つが逆向きに重なるので、差だけが残ります。

例題:25Aずつの平衡負荷

上下の100V側に、それぞれ25A(力率1)の負荷がつながっています。電線の抵抗は、外線も中性線も1本0.1Ωとします。

STEP 1

中性線の電流 = 25A − 25A = 0A

STEP 2

線路の損失は、電流が流れる外線2本だけで計算します。25² × 0.1 + 25² × 0.1 = 62.5 + 62.5 = 125W

STEP 3

負荷の電力は、100V × 25A × 2組 = 5,000W。これを200V × 25A と見ても同じ5,000Wです。

POINT

平衡なら、単相3線式は「200Vの単相2線式」と同じ電流で同じ電力を送れます。損失も外線2本分だけです。この125Wを、次の不平衡の例とくらべます。

不平衡負荷では、中性線に電流が流れて損失が増える

不平衡負荷とは、上下の負荷の大きさがそろっていない状態です。外線の電流の差が中性線に流れ、そのぶん損失が増えます。

例題:上30A・下20Aの不平衡負荷

合計の電流は先ほどと同じ50Aのまま、上を30A、下を20Aにします(力率1、電線は1本0.1Ω)。

STEP 1

中性線の電流 = 30A − 20A = 10A。多いほう(上の負荷)の帰り分が、中性線を通って電源へ戻ります。

STEP 2

3本それぞれの損失を出します。外線1:30² × 0.1 = 90W、外線2:20² × 0.1 = 40W、中性線:10² × 0.1 = 10W

STEP 3

合計します。90 + 40 + 10 = 140W。平衡のとき(125W)より15W増えました。

たとえると

2本の車線に50台の車を通すとき、25台ずつに分ければどちらもすいすい流れます。30台と20台に片寄ると、混んだ車線の渋滞がひどくなり、全体の燃料のむだ(損失)も増えます。損失は電流の2乗で効くので、片寄りが大きいほど一気に増えます。

POINT

実際の屋内配線でも、上下の負荷をなるべくそろえるように回路を分けます。内線規程(屋内配線の民間規格)では、単相3線式の設備不平衡率を原則40%以下にするよう定めています。

不平衡のときの端子電圧を計算する

不平衡のときは、上下の負荷にかかる電圧(端子電圧)も変わります。電圧降下を「外線1本分+中性線1本分」で考えるのがコツです。中性線の電流の向きによって、中性線の電圧降下を引くか足すかが変わります。

例題:電源105V、上30A・下20A

電源側の電圧は、上下とも105Vとします。条件は先ほどと同じ(電線1本0.1Ω、力率1)です。

STEP 1

各線の電圧降下を出します。外線1:30A × 0.1Ω = 3V、外線2:20A × 0.1Ω = 2V、中性線:10A × 0.1Ω = 1V

STEP 2

上の負荷:中性線の10Aは、上の負荷の電流と同じ向き(電源へ戻る向き)に流れるので、中性線の降下も引きます。105 − 3 − 1 = 101V

STEP 3

下の負荷:中性線の10Aは、下の負荷の電流と逆向きなので、中性線の降下は足し戻します。105 − 2 + 1 = 104V

重い上の負荷は101V、軽い下の負荷は104Vになりました。中性線に電流が流れると、重い側の電圧が下がり、軽い側の電圧が上がります。

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注意|ここで間違えやすい

中性線の降下を、上下どちらからも引いてしまう間違いが多いです。中性線の電流は1方向にしか流れないので、片方では引き、もう片方では足します。迷ったら、電流の矢印を回路図に書き込んでから計算してください。

中性線が切れると何が起きる?異常電圧の計算

中性線が切れる(中性線欠相)と、上下の100Vの負荷が直列につながり、200Vを2つの負荷で分け合う形になります。電圧は抵抗の大きさに比例して分かれるので、軽い負荷(抵抗が大きい)の側に高い電圧がかかります。

例題:上1kW・下500Wで中性線が切れた

上に100V・1kW、下に100V・500Wの機器がつながっています(どちらも抵抗負荷とし、電線の抵抗は無視します)。

STEP 1

機器の抵抗を出します(R = V² ÷ P)。上:100² ÷ 1,000 = 10Ω、下:100² ÷ 500 = 20Ω

STEP 2

中性線が切れると、2つが直列で200Vにつながります。電流 = 200V ÷(10 + 20)Ω = 約6.67A

STEP 3

上の機器の電圧 = 6.67A × 10Ω = 約66.7V

STEP 4

下の機器の電圧 = 6.67A × 20Ω = 約133.3V。100V用の機器に133Vがかかります。

重い(容量の大きい)側は電圧が下がって動かなくなり、軽い(容量の小さい)側は電圧が上がって壊れるおそれがあります。片側の負荷がほとんどないと、軽い側には200V近い電圧がかかります。

実際の対策

住宅の分電盤には、中性線が切れたことを検知して回路を切る「中性線欠相保護機能」つきのブレーカーが使われています。また、中性線だけが単独で切れないように、中性線にはヒューズを入れず、外線と同時に切れる開閉器を使います。

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バランサとは?不平衡を打ち消す変圧器の計算

バランサは、巻数比1:1の単巻変圧器(1つの巻線の途中から線を出した変圧器)です。線路の末端で、外線2本の間につなぎ、巻線の真ん中を中性線につなぎます。上下の電圧を等しく保とうとして、外線の電流をそろえる働きをします。

公式
バランサの電流 =(外線1の負荷電流 − 外線2の負荷電流)÷ 2

例題:上30A・下20Aにバランサをつなぐ

STEP 1

バランサには、負荷の電流の差の半分が流れます。(30 − 20)÷ 2 = 5A

STEP 2

電源から見た外線の電流は、平均の値にそろいます。(30 + 20)÷ 2 = 25A ずつ。中性線(電源とバランサの間)は 25 − 25 = 0A

STEP 3

線路の損失 = 25² × 0.1 × 2本 = 125W。バランサなし(140W)より15W減りました。

STEP 4

端子電圧は、上下とも 105 − 25 × 0.1 = 102.5V。101Vと104Vの差がなくなりました。

たとえると

バランサは、混んだ車線から空いた車線へ、出口の手前で車を振り分ける誘導員のようなものです。上の負荷が多く使う分の半分を、下の外線から回してくれるので、電源から来る2本の車線はちょうど半分ずつの混み具合になります。

注意|ここで間違えやすい

バランサの電流は、差の10Aではなく、その半分の5Aです。バランサの上半分と下半分に同じ5Aが流れ、中性線との接続点で合わせて10Aになり、負荷側の中性線の10Aを打ち消します。バランサは線路の「末端(負荷側)」につなぎます。電源側につないでも、線路の不平衡は解消しません。

電験三種の過去問で問われているポイント

単相3線式は、電力科目の配電分野で、論説問題(正誤を選ぶ問題)と計算問題の両方で出題されています。実際に出た問題の問われ方を、パターン別に整理します。

年度・問題形式問われたこと
令和3年度 電力 問12論説(誤りを選ぶ)電圧降下・中性線の断線・不平衡時の損失・100V/200Vの供給・1線あたりの供給電力
令和5年度下期 電力 問13計算(A問題)損失が単相2線式の1/5のとき、1線あたりの抵抗は何倍か
平成28年度 電力 問17計算(B問題)30Aと20Aの不平衡負荷にバランサをつないだときの、バランサの電流と線路損失の変化
平成22年度 理論 問7計算(理論科目)単相3線式回路に平衡負荷をつないだときの消費電力

パターン1:論説問題は「特徴5つ」で判断する

令和3年度 問12では、次の特徴の正誤が問われました。正しい内容をそのまま覚えておけば、言い回しが変わっても見抜けます。

  • 電圧降下は、単相2線式より小さい(正しい)
  • 不平衡のまま中性線が切れると、容量の大きい側の電圧が下がる(正しい。小さい側は上がる)
  • 不平衡だと、平衡のときより損失が増える(正しい)
  • 100Vと200Vの両方の負荷に送れる(正しい)
  • 1線あたりに送れる電力は、単相2線式より大きい(「小さい」とした選択肢が誤り。1線あたり 2/3VIcosθ で、単相2線式の 1/2VIcosθ より大きい)

パターン2:単相2線式との比較は「電流が半分」から

令和5年度下期 問13は、同じ100Vの負荷を単相2線式と単相3線式(平衡)で送ったとき、損失が1/5になる抵抗を求める問題でした。解き方の流れは次のとおりです。

STEP 1

単相3線式は200Vで送るので、電流は単相2線式の半分(I ÷ 2)

STEP 2

損失はどちらも外線2本分(平衡なので中性線は0)。単相2線式:2I²R、単相3線式:2 ×(I ÷ 2)² × R' = I²R' ÷ 2

STEP 3

I²R' ÷ 2 = 2I²R × 1/5 とおくと、R' = 4R × 1/5 = 0.8R。答えは0.8倍です。

パターン3:バランサは「差の半分」と「損失の差」

平成28年度 問17は、この記事の例題と同じ30Aと20Aの不平衡負荷にバランサをつなぐB問題でした。(a)でバランサの電流、(b)で損失の変化量が問われています。バランサの電流は(30 − 20)÷ 2 = 5A。損失の変化は、バランサの前後で3本の線の損失をそれぞれ計算して差をとります(問題の線路抵抗の値で計算すると20W)。中性線の抵抗が外線と違う値で与えられることがあるので、1本ずつ計算するのが確実です。

POINT

計算問題は、どれも「回路図に電流の矢印と値を書き込む」ことから始まります。中性線の電流(差)、バランサの電流(差の半分)、外線の電流(バランサ後は平均)の3つが書ければ、損失も電圧もあとは I²R と IR で出せます。

よくある間違い・つまずきポイント

単相3線式の計算で点を落とすのは、ほとんどが次の5つです。解き終わったら、この順に見直してください。

1. 中性線の電流を「和」にしてしまう

中性線には、上下の電流が逆向きに流れるので「差」が残ります。30Aと20Aなら50Aではなく10Aです。

2. 平衡なのに中性線の損失を数える

平衡なら中性線は0Aなので、損失は外線2本分だけです。3本分で計算すると、答えが1.5倍になります。

3. 端子電圧で、中性線の降下を両側から引く

中性線の降下は、重い側では引き、軽い側では足します。両側から引くと、軽い側の電圧が実際より低く出ます。

4. 中性線が切れたとき、重い側の電圧が上がると考える

電圧が上がるのは、抵抗が大きい「軽い(容量の小さい)」側です。容量の大きい機器ほど抵抗が小さいので、電圧が下がります。

5. バランサの電流を「差」そのものにする

バランサの電流は差の半分です。30Aと20Aなら10Aではなく5Aです。

よくある質問

Q. 単相3線式の中性線に流れる電流はどう計算しますか?

A. 2本の外線を流れる負荷電流の差です。上30A・下20Aなら中性線は10Aで、平衡なら0Aになります。

Q. 単相3線式で中性線が切れるとどうなりますか?

A. 上下の負荷が直列になり200Vを分け合います。軽い負荷の側に100Vを超える電圧がかかり、機器が壊れるおそれがあります。

Q. バランサとは何ですか?

A. 巻数比1:1の単巻変圧器で、単相3線式の末端につなぎます。外線の電流をそろえ、不平衡による損失と電圧の差を減らします。

Q. バランサに流れる電流はいくらですか?

A. 上下の負荷電流の差の半分です。30Aと20Aなら5Aで、電源側の外線の電流は平均の25Aずつにそろいます。

Q. 不平衡だと損失が増えるのはなぜですか?

A. 中性線にも電流が流れ、外線の電流も片寄るからです。損失は電流の2乗に比例するので、片寄るほど合計が大きくなります。

まとめ:電流の「差」と「差の半分」で解ける

この記事の要点
  • 中性線の電流 = 外線の負荷電流の差(平衡なら0A)
  • 不平衡だと損失が増える(例:平衡125W → 30A/20Aで140W)
  • 端子電圧:中性線の降下は、重い側で引き、軽い側で足す(例:101V/104V)
  • 中性線が切れると直列になり、軽い側に高い電圧(例:133.3V)
  • バランサの電流 = 差の半分。外線は平均にそろい、損失と電圧の差が減る

まずは30Aと20Aの例題を、回路図に矢印を書き込みながら自分の手で解いてみてください。電流の値さえ正しく書ければ、論説問題も計算問題も同じ考え方で解けるようになります。

この記事の理解を深める本と道具
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電験三種・QC検定1級 / メーカーで回路設計・生産技術(品質改善)の実務

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ここまでで、単相3線式の電流・損失・電圧を、平衡から断線、バランサまで計算できるようになりました。次は、配電線の形や、損失を減らすもう1つの方法である力率の改善へ進みましょう。

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