電気のしくみ(暮らしと現場)

ポータブル電源の容量の選び方|停電で家電が何時間動くかの早見表と計算

停電の夜の部屋でポータブル電源からLEDスタンドとスマホに給電している写真に、ポータブル電源の容量・何時間動く?・×0.8・時間=容量Wh×0.8÷消費電力Wの文字

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ポータブル電源で家電が動く時間は、容量(Wh)×0.8÷消費電力(W)で出せます。1,000Wh なら LED 電球(8W)で約100時間、冷蔵庫で約20時間で、容量ごとの目安は早見表、冷蔵庫の計算は年間消費電力量の節へ。

結論|まず30秒でわかる答え

ポータブル電源の容量は、使える時間=容量(Wh)×0.8÷家電の消費電力(W)で選びます。1,000Wh なら 8W の LED 電球は約100時間、年間355kWh の冷蔵庫(平均 約41W)は約20時間です。冷蔵庫を動かすかどうかで、必要な容量が5倍以上変わります。

停電の夜の部屋でポータブル電源からLEDスタンドとスマホに給電している写真に、ポータブル電源の容量・何時間動く?・×0.8・時間=容量Wh×0.8÷消費電力Wの文字

ポータブル電源の容量(Wh)と定格出力(W)は別の数字

ポータブル電源の仕様で大事な数字は2つです。容量(Wh)は「どれだけ長く」、定格出力(W)は「一度にどれだけ」の電気を出せるかを表します。

ポータブル電源は、大きなリチウムイオン電池に、家庭のコンセントと同じ交流100V を作る回路を組み合わせた箱です。仕様表には数字がたくさん並びますが、停電への備えで見るのは次の2つだけです。

数字意味決めるもの
容量(Wh、ワットアワー)ためておける電気の量家電が何時間動くか
定格出力(W、ワット)一度に出し続けられる電気の大きさどの家電を同時に使えるか
たとえると

容量はタンクの水の量、定格出力は蛇口の太さです。水が多くても蛇口が細ければ、一度にたくさんは出せません。蛇口が太くても水が少なければ、すぐに空になります。

Wh は「W(電力)×h(時間)」の単位です。100W の家電を1時間使うと 100Wh、10W の家電を10時間使っても 100Wh です。つまり容量 Wh を家電の W で割ると、使える時間が出ます。

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つまり、まず「何時間使いたいか」で容量 Wh を、「何を同時に使いたいか」で定格出力 W を決める、という順番です。

容量Whはためておける電気の量でタンクの水、定格出力Wは一度に出せる電気の大きさで蛇口の太さ。1000Whなら100Wの家電を約8時間

使える時間の計算式:容量×0.8÷消費電力

家電がポータブル電源で何時間動くかは、容量(Wh)×0.8÷消費電力(W)で見積もります。0.8 は、電池の直流を家庭用の交流に変えるときのロスを見込んだ目安です。

公式
使える時間(時間)= 容量(Wh)× 0.8 ÷ 消費電力(W)

電池にたまっているのは直流の電気です。家庭の家電は交流100V で動くので、ポータブル電源の中のインバーター(直流を交流に変える回路)で変換してから出しています。この変換で一部が熱になって失われ、電池の残りを守る制御にも少し使われます。

そのため、表示の容量をそのまま全部は使えません。メーカーの説明でも、出力するときのロスを見込んで容量の80%で計算する例が使われています。

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例題:1,000Wh で 100W の家電は何時間動く?

STEP 1

容量に0.8を掛けて、実際に使える量を出す:1,000Wh × 0.8 = 800Wh

STEP 2

家電の消費電力で割る:800Wh ÷ 100W = 8時間

STEP 3

答え:約8時間(0.8 を掛けないと10時間になり、2時間多く見積もってしまう)

注意|0.8 は目安

0.8 は「だいたいこのくらい」の目安で、機種・家電の大きさ・気温で変わります。USB の出力で直接スマホを充電するときは、交流に変える段がないぶん、もう少し多く使えることがあります。ぎりぎりの容量を選ばず、余裕をもたせてください。

つまり、仕様表の容量は「満タンの量」で、使える量はその8割くらい、と覚えておけば大きく外しません。

電池の直流1000Whがインバーターで交流100Vに変わり、家電で使えるのは約800Wh。約2割は熱や制御で失われる目安

早見表:容量ごとに家電が何時間動くか

300Wh〜2,000Wh の容量ごとに、よく使う家電が何時間動くかを計算しました。冷蔵庫以外の消費電力は例(仮の値)なので、手もとの家電のラベルの数字に置き換えてください。

家電(例)消費電力300Wh500Wh1,000Wh2,000Wh
LED電球(1個)8W約30時間約50時間約100時間約200時間
扇風機(DCモーター)20W約12時間約20時間約40時間約80時間
ノートパソコン45W約5.3時間約8.9時間約18時間約36時間
液晶テレビ(32型)50W約4.8時間約8.0時間約16時間約32時間
冷蔵庫(平均)約41W約5.9時間約9.9時間約20時間約39時間
電気毛布(中)40W約6.0時間約10時間約20時間約40時間
スマホの充電1回 約20Wh約12回約20回約40回約80回

計算はすべて「容量×0.8÷消費電力」です。たとえば 500Wh で液晶テレビ(50W)なら、500×0.8÷50=8時間になります。

冷蔵庫の「約41W」は、実在の411L の冷蔵庫(パナソニック NR-E431GV)の年間消費電力量 355kWh/年を、1年の時間(8,760時間)で割った平均です。冷蔵庫の計算のしかたは次の節で説明します。

スマホは、電池の容量が約19Wh(5,000mAh・3.87V の例)の機種を、充電のロスを含めて1回 約20Wh とおいて計算しました。

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POINT|家電の W はどこを見る?

家電の消費電力は、本体の裏や底のラベル、取扱説明書の仕様に「定格消費電力 ◯W」と書いてあります。アンペア(A)しか書いていなければ、100V×A で W に直せます(1.5A なら150W)。

つまり、表の行を自分の家電に入れ替えれば、自分の家で何時間もつかがすぐに出せます。

300・500・1000・2000Whで、LED電球8W・扇風機20W・ノートPC45W・テレビ50W・冷蔵庫平均約41W・電気毛布40Wが何時間動くか、スマホの充電回数の早見表

冷蔵庫は「定格」ではなく「年間消費電力量」で計算する

冷蔵庫は、定格消費電力ではなく年間消費電力量を8,760時間で割った平均で計算します。355kWh/年の冷蔵庫なら平均 約41W で、1,000Wh で約20時間です。定格で計算すると約3時間になり、6倍以上ずれます。

冷蔵庫のラベルには、ふつう2種類の数字が書かれています。

数字例(NR-E431GV)意味
定格消費電力電動機 87W/電熱装置 169Wコンプレッサー(電動機)や霜取りのヒーター(電熱装置)が動いているときの最大
年間消費電力量355kWh/年決められた試験方法(JIS C 9801-3:2015)で1年間使ったときの量

冷蔵庫のコンプレッサーは、庫内が冷えたら止まり、温まったらまた動きます。霜取りのヒーターは時々しか動きません。だから、ずっと定格の電力を使い続けているわけではありません。

平均の W を出す手順

STEP 1

年間消費電力量を Wh に直す:355kWh = 355,000Wh

STEP 2

1年の時間で割る:355,000 ÷ 8,760時間 = 約40.5W(これが平均の消費電力)

STEP 3

1日の量は 355,000 ÷ 365 = 約973Wh

STEP 4

1,000Wh なら 1,000×0.8÷40.5 = 約19.7時間

注意|定格で計算すると足りなく見える

定格の合計 87+169=256W で割ると、1,000×0.8÷256=約3.1時間です。これを見て「冷蔵庫は無理」と考えるのは早すぎます。ただし、ドアの開け閉めが多い・部屋が暑い夏は、平均より多く使います。年間の値は試験の条件での目安と考えてください。

一方で、定格の数字はむだではありません。コンプレッサーと霜取りのヒーターが重なった瞬間や、コンプレッサーが動き出す瞬間には大きな電力が流れます。時間(容量)は平均で、出力(W)は定格や起動の大きさで考えるのが正しい使い分けです。

つまり、冷蔵庫は「年間 kWh ÷ 8,760」で平均を出して時間を計算し、ポータブル電源の定格出力は冷蔵庫の定格より十分大きいものを選びます。

冷蔵庫の定格の合計256Wと年間の平均約41Wの比較と、1000Whで定格なら3.1時間・平均なら19.7時間

停電1日分の容量を計算してみる(例)

照明・スマホ・テレビ・冷蔵庫を1日使う例では、合計 約1,181Wh を0.8で割って約1,476Wh が必要です。冷蔵庫を除くと約260Wh で、必要な容量が5倍以上ちがいます。

停電に備えるときは、家電ごとに「消費電力×使う時間」を出して足し、最後に0.8で割り戻します。次の例は、停電中に最低限使いたいものを並べたものです(冷蔵庫以外は仮の値)。

家電消費電力使う時間・回数1日の量
LED電球8W6時間48Wh
スマホの充電1回 20Wh3回60Wh
液晶テレビ50W2時間100Wh
冷蔵庫41W24時間973Wh
合計約1,181Wh
STEP 1

家電ごとの量を足す:48+60+100+973 = 約1,181Wh

STEP 2

0.8で割り戻す:1,181 ÷ 0.8 = 約1,476Wh

STEP 3

1日もたせるなら 1,500Wh 前後、2日なら約2,952Wh

POINT|冷蔵庫が8割以上を占める

この例では、冷蔵庫だけで1日 約973Wh と、合計の8割以上です。冷蔵庫を除いた照明・スマホ・テレビだけなら約208Wh で、0.8 で割っても約260Wh です。300Wh 級でも1日はまかなえます。

「冷蔵庫も動かしたいか」が、容量の選び方のいちばん大きな分かれ目です。冷蔵庫をあきらめて保冷剤とクーラーボックスで乗り切るなら、小さめの容量で足ります。逆に冷蔵庫を動かしたいなら、1,000Wh でも1日もちません。

つまり、まず冷蔵庫を入れるかどうかを決め、そのあと日数を掛ける、という順番で考えると迷いません。

LED電球48Wh・スマホ60Wh・テレビ100Wh・冷蔵庫973Wh。合計約1181Wh÷0.8で約1476Wh、冷蔵庫なしなら約260Wh

定格出力(W)の選び方:同時に使う家電の合計より大きく

定格出力は、同時に使う家電の消費電力の合計より大きいものを選びます。電気ケトルやドライヤーのような1,200W 前後の家電は、定格出力が小さいポータブル電源では使えません。

ポータブル電源は、定格出力をこえる家電をつなぐと、保護の機能が働いて出力が止まります。容量がどれだけ残っていても、出力が足りなければ使えません。

使い方(例)同時に使う W の合計目安の定格出力
LED電球+スマホ+扇風機8+20+20 = 約48W300W 級で足りる
冷蔵庫(定格 256W)+テレビ+LED電球+スマホ256+50+8+20 = 約334W500W 以上(起動の分も見る)
電気ケトル(1,250W の例)1,250W1,500W 級

冷蔵庫のようにモーターで動く家電は、動き出す瞬間に定格より大きな電力が流れることがあります。ポータブル電源の仕様に「瞬間最大出力」が書いてあれば、そこも確かめてください。

POINT|大きな W の家電は「短く」なら使える

電気ケトルは 1,250W と大きいですが、お湯を沸かすのは5分ほどなので、1回の量は 1,250×5÷60 = 約104Wh です。容量はあまり使いません。決め手は容量ではなく定格出力です。

注意|医療機器を使う家庭は別に考える

内閣府は、生命の維持に直結する医療用機器を使う家庭に、停電に対処できるバッテリー等を備えるよう呼びかけています。医療機器の電源は、機器のメーカーや主治医に、使える電源と時間を必ず確かめてください。

つまり、容量(Wh)で時間を、定格出力(W)で使える家電を決める、という2段階で選びます。

LED電球+スマホ+扇風機は約48Wで300W級、冷蔵庫+テレビ+LED+スマホは約334Wで500W以上、電気ケトル1250Wは1500W級

停電に備えるポータブル電源の選び方3ステップ

停電に備えるポータブル電源は、使う家電を書き出す→Wh を足して0.8で割る→同時に使う W と定格出力を比べる、の3ステップで決まります。

STEP 1 書き出す

停電中に使う家電を決め、ラベルの消費電力(W)と、冷蔵庫なら年間消費電力量(kWh/年)をメモする。

STEP 2 Wh を足す

家電ごとに「W×使う時間」を出して足す。合計を0.8で割り、もたせたい日数を掛ける。これが必要な容量。

STEP 3 出力を見る

同時に使う家電の W の合計より、定格出力が大きいことを確かめる。ケトル・ドライヤー・電子レンジを使いたいなら、それより大きい定格出力が要る。

太陽光パネルで充電できる機種もありますが、晴れの日中に限られ、出せる電力は天気でかなり変わります。停電の日数が延びるなら「何Wh 充電できるか」も足し算に入れますが、まずは充電なしで何日もつかを基準にすると安全側です。

つまり、自分の家の数字で3ステップを1回計算しておけば、店頭やカタログで迷う時間がぐっと減ります。

STEP1 使う家電を書き出す、STEP2 W×時間を足して0.8で割り日数を掛ける、STEP3 同時に使うWと定格出力を比べる

よくある間違い4つ

ポータブル電源の容量選びでは、mAh と Wh の取り違え、冷蔵庫を定格で計算する、出力を見ない、しまいっぱなしにする、の4つの間違いが起きやすいです。

間違い正しくは
mAh(ミリアンペアアワー)の数字で容量を比べる電圧がちがうと比べられない。Wh(電圧×mAh÷1,000)で比べる
冷蔵庫を定格 256W で計算し「約3時間しかもたない」と思う年間 355kWh から平均 約41W で計算すると約20時間
容量 Wh だけで選び、定格出力 W を見ない同時に使う W の合計 < 定格出力 を確かめる
買ったまま押し入れにしまっておく取扱説明書どおりに時々充電し、残量を確かめる。使える温度の範囲も守る

1つ目の mAh は、モバイルバッテリーでよく使われる単位です。mAh は電流×時間なので、電池の電圧がわからないと電気の量(Wh)になりません。3.6V・10,000mAh なら 3.6×10,000÷1,000=36Wh です。

つまり、比べるときはいつも Wh、冷蔵庫はいつも平均、選ぶときは出力も、と覚えておけば4つとも防げます。

mAhで比べる、冷蔵庫を定格で計算、出力を見ない、しまいっぱなし、の4つの誤りと正しいやり方

よくある質問(FAQ)

Q. ポータブル電源の容量はどう選べばいいですか?

A. 停電中に使う家電の消費電力×使う時間を足して0.8で割り、日数を掛けた Wh 以上の容量を選びます。

Q. 1,000Whのポータブル電源で冷蔵庫は何時間動きますか?

A. 年間355kWhの冷蔵庫なら平均約41Wで、1,000×0.8÷41で約20時間が目安です。機種と使い方で変わります。

Q. 計算で0.8を掛けるのはなぜですか?

A. 電池の直流を家庭用の交流に変えるインバーターなどで約2割が失われるため、使える量を8割と見込みます。

Q. WhとWの違いは何ですか?

A. Whはためておける電気の量で使える時間を決め、Wは一度に出せる電気の大きさで使える家電を決めます。

Q. 電気ケトルはポータブル電源で使えますか?

A. 定格出力がケトルの消費電力(1,200W前後)より大きい機種なら使えます。5分なら容量は約100Whです。

まとめ
  • 使える時間=容量(Wh)×0.8÷消費電力(W)
  • 0.8 は直流を交流に変えるときなどのロスを見込んだ目安
  • 冷蔵庫は年間消費電力量÷8,760時間で平均の W を出す(355kWh/年なら約41W)
  • 照明・スマホ・テレビ・冷蔵庫の1日の例で約1,476Wh、冷蔵庫なしなら約260Wh
  • 定格出力は、同時に使う家電の W の合計より大きいものを選ぶ

次の一歩として、家の冷蔵庫のラベルで年間消費電力量を見て、8,760で割ってみてください。平均の W がわかれば、停電でどのくらいの容量が要るかの見当がつきます。

使える時間の式、冷蔵庫の平均の出し方、1日分の計算、定格出力、ケトル、ふだんの充電の6つのチェック
参考にした資料

法令・規格・資料は改訂されることがあります。実務で使うときは、発行元の最新版で確かめてください。

この記事の理解を深める本と道具
容量の例

冷蔵庫を動かさず、照明・スマホ・テレビで停電をしのぐ例(約260Wh)なら、500Wh 級で足ります。定格出力が500Wなので、1,200W 前後のケトルやドライヤーは使えません。Jackery のポータブル電源 500 New(JE-500A)です。容量512Wh・定格出力500Wで、電池はリン酸鉄リチウムイオンです。

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1,000Wh 級で、電気ケトル(1,250W)も使える定格出力がほしいときの例です。EcoFlow のポータブル電源 DELTA 3 Plus です。容量1,024Wh・定格出力1,500Wで、電池はリン酸鉄リチウムイオンです。

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冷蔵庫も動かして停電の1日をしのぐ例(約1,476Wh)に合う、1,500Wh 級の例です。Jackery のポータブル電源 1500 New(JE-1500D)です。容量1,536Wh・定格出力2,000Wで、電池はリン酸鉄リチウムイオンです。

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S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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