「2027年から、安いエアコンが買えなくなる」という話は本当でしょうか。
筆者がこの記事を書いたのは、蛍光灯の2027年問題の記事に毎月多くの人が来るからです。同じ「2027年問題」でエアコンを調べる人も多い。そこで、国の資料の数字だけで整理しました。答えは早見表の1枚で足ります。
蛍光灯の2027年問題は、水銀の条約で蛍光灯の製造が止まる話。エアコンとは別の制度です

エアコンの2027年度基準の早見表(能力別のAPF)
2027年度基準では、壁掛形で冷房能力2.8kW以下の一般地向けは APF 6.6 以上、2.8kW を超えると能力に応じて 6.6〜5.3 です。寒冷地仕様は、それぞれ0.4低い値です。
| 冷房能力(畳数の目安) | 今の基準(2010年度) | 2027年度基準 | 寒冷地仕様(2027年度) |
|---|---|---|---|
| 2.2kW(おもに6畳) | 5.8(寸法規定)/6.6(寸法フリー) | 6.6 | 6.2 |
| 2.8kW(おもに10畳) | 5.8(寸法規定)/6.6(寸法フリー) | 6.6 | 6.2 |
| 3.6kW(おもに12畳) | 4.9(寸法規定)/6.0(寸法フリー) | 6.6 | 6.2 |
| 4.0kW(おもに14畳) | 4.9(寸法規定)/6.0(寸法フリー) | 6.6 | 6.2 |
| 5.6kW(おもに18畳) | 5.0 | 6.3 | 5.9 |
| 7.1kW(おもに23畳) | 4.5 | 5.9 | 5.5 |
出典:資源エネルギー庁「エアコンディショナー」(トップランナー制度)の区分・目標基準値。2.8kW を超える一般地は E=6.84−0.210×(A−2.8)、上限6.6・下限5.3(A は冷房能力 kW)で計算し、小数第2位を四捨五入。今の基準と2027年度基準では APF の測り方の JIS が違います(下の節)。畳数はカタログの一般的な目安です。部屋の条件で変わります。
2.8kW を超える機種の値は、資源エネルギー庁の算定式に冷房能力を入れて計算しました。たとえば5.6kWなら、6.84−0.210×(5.6−2.8)=6.84−0.588=6.252。四捨五入して6.3。計算した11個の値は、メーカー(日立)が公開している代表的な能力の目標値の表と、すべて同じでした。検算は合っています。
表でいちばん差が大きいのは、3.6kW・4.0kW の寸法規定タイプです。今の基準は4.9。これが6.6になります。リビング用の売れ筋の能力です。

2027年度基準で変わる3つのこと
変わるのは、基準の値の引き上げ、室内機の大きさによる区分の廃止、APF の測り方の JIS の3つです。区分は13から10に減り、代わりに寒冷地仕様の区分ができました。
| 項目 | 今の基準(2010年度・2012年度) | 2027年度・2029年度基準 |
|---|---|---|
| 目標年度 | 壁掛形 2010年度、壁掛形以外・マルチ 2012年度 | 壁掛形 2027年度、壁掛形以外・マルチ 2029年度 |
| 区分の数 | 13区分 | 10区分 |
| 区分の決め方 | 形・冷房能力・室内機の寸法(寸法規定/寸法フリー) | 形・冷房能力・仕様(一般地/寒冷地) |
| APF の測り方 | JIS C 9612(2005) | JIS C 9612(2013) |
出典:資源エネルギー庁「省エネ法に基づくエアコン告示の改正概要について」(2022年9月)。告示の改正は2022年5月。
寸法規定タイプの「低い基準」がなくなる
今の基準では、室内機の横幅が800mm以下かつ高さが295mm以下の機種を「寸法規定タイプ」と呼び、低めの基準にしていました。木造住宅の柱の間に収まる大きさ。資源エネルギー庁の資料によると、基準に差をつけた結果、目標の低い寸法規定タイプの開発が中心になりました。そこで新しい基準は、寸法による区分をやめた。
「2027年に安いエアコンが消える」と言われる理由はここ。資源エネルギー庁の資料では、品ぞろえの中心は寸法規定タイプになっていました。その基準が、2.2kWで5.8から6.6へ、4.0kWなら4.9から6.6へと、大きく上がります。差は大きい。
APF の測り方も厳しくなる
APF の値を出す方法の JIS も、2005年版から2013年版に変わりました。主な違いは3つです。弱い運転を「止まったり動いたり」として計算する、冷房の最大の負荷を外気33℃でなく35℃で考える、1年の気温の出方を新しい気象データにする、です。どれも、APF が高く出すぎないようにする向きの変更です(資料の言葉では「過大評価とならないように」)。
ここで筆者が迷ったのは、早見表の新旧の数字を並べてよいかです。測り方が違うので、5.8と6.6の差がそのまま性能の差ではない。それでも、この記事は並べる方を採りました。注記つきです。資源エネルギー庁は、区分Ⅰ〜Ⅳで2016年度より約13.7%効率が上がると見込んでいて、数字以上に厳しくなる向きは同じだからです。
2027年から安いエアコンは買えなくなるのか
1台ずつの販売が禁止されるわけではありません。基準は、メーカーごとに区分の出荷台数で重みをつけた平均の APF で判定します。ただ、平均を上げるために、基準に届かない安い機種は減ると見られています。ここが誤解の元。
トップランナー基準の判定は、1台ごとの合否ではない。メーカー(と輸入事業者)が、区分ごとに出荷した台数で重みをつけて APF の平均(加重調和平均)を出し、それが基準を下回らないかで見ます。6.6に届かない機種があっても、ほかの機種が上回っていれば、平均で達成できます。平均で見る仕組み。
達成が足りないときは、省エネ法 第150条で、経済産業大臣が性能を上げるよう勧告できます。段階は3つです。従わなければ公表、さらに省エネを著しく害すると認めれば命令。命令に違反すると、第174条で100万円以下の罰金。どれもメーカーと輸入事業者に向けた決まりで、販売店や買う人、使う人に向けたものではありません。
| よく見る言い方 | 資料で確かめた中身 |
|---|---|
| 2027年からエアコンが買えなくなる | 買える。基準はメーカーの出荷の平均で判定 |
| 安いエアコンが販売禁止になる | 1台ずつの禁止ではない。ただし平均を上げるため、基準に遠い機種は減ると見られる |
| 今のエアコンが使えなくなる | 使える。使う人に向けた決まりはない |
| 全部のエアコンが対象 | 2027年度は壁掛形。床置き・天井カセットなど壁掛形以外とマルチは2029年度 |
出典:資源エネルギー庁「エアコンディショナー」の判断の基準、省エネ法 第150条・第174条(e-Gov)。
値段がどれだけ上がるかは、国の資料には書かれていません。新聞や比較サイトには見通しが出ていますが、この記事は確かめられた数字だけを載せます。値上がりの幅は書かない。
APF とは?電気代とのつながりを計算で確かめる
APF(通年エネルギー消費効率)は、1年間に冷やした・温めた熱の量を、1年間に使った電気の量で割った値です。同じ部屋なら、APF が5.8の機種に比べて6.6の機種は、電気の量が約0.88倍になります。
APF は「電気1で、熱をいくつ運べたか」。エアコンはヒートポンプで外の熱を運ぶので、使った電気より多くの熱を動かせます。APF 6.6なら、電気1kWhで6.6kWh分の熱です。電気の6.6倍。
エアコンが使った電気より多くの熱を運べるしくみ(ヒートポンプと COP)
計算例:APF 5.8と6.6で電気代はいくら違う?
部屋とくらし方が同じなら、1年間の負荷(運ぶ熱の量)は同じ。ここでは仮に、1年の負荷を4,000kWhとします。
単価の31円/kWhは、家電の業界団体(全国家庭電気製品公正取引協議会)がカタログの電気代の目安に使う値です。負荷の4,000kWhは仮の値です。実際の額は、部屋の広さ・断熱・地域・使う時間で何倍も変わります。比べてよいのは「約0.88倍」の比の方。
自分の機種で計算するなら、カタログの「期間消費電力量(kWh/年)」に電気の単価をかけると、1年の電気代の目安が出ます。W と Wh があいまいなら、先にこちら。
カタログの kW と kWh を取り違えないための、電力と電力量の違い

2027年の前に買い替えるべきか:場面ごとの考え方
今のエアコンが問題なく動いているなら、基準の変更だけを理由に急ぐ必要はありません。調子が悪い・古い機種なら、2026年度の機種と2027年度の機種の値段と APF を、同じ JIS の値で比べて決めます。
| 場面 | 考え方 | 見るところ |
|---|---|---|
| 今のエアコンが問題なく動く | 基準は使う人に関係しない。急ぐ理由は基準からは出ない | — |
| 古くて調子が悪い | 壊れてからだと選ぶ時間がない。夏・冬の前に比べ始める | APF(JIS の年版)、期間消費電力量 |
| 新しい部屋に付ける | 畳数より、部屋の断熱と向きで能力を選ぶ | 冷房能力・暖房能力、区分名 |
| 寒い地域で暖房に使う | 2027年度基準で寒冷地仕様の区分ができた | 寒冷地仕様か、低い外気温での暖房能力 |
エアコンには、冷房能力・区分名・APF などを表示する決まりがあります(家庭用品品質表示法)。2027年度基準の区分名は Ⅰ〜Ⅹ です。省エネの度合いは、APF の数字と、省エネ基準の達成率(%)が書かれていればその値で比べるのが早道です。
取り付けには専用の回路が要ります。大きい能力の機種は200Vのことが多いので、買う前にコンセントの形を確かめてください。

