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- 「この端子、浮いてるよ」と言われたけど、何がいけないのかわからない
- フローティング・ハイインピーダンス・オープンのちがいがあいまい
- プルアップ抵抗は何kΩにすればいいのか迷う
- フローティング(浮いている)とは何か
- 浮いた端子がノイズを拾い、ICを熱くする理由
- プルアップ・プルダウンの役割と抵抗値の決め方
- 抵抗値から電流と立ち上がり時間を出す計算ツール
フローティングとは、回路で「浮いている」と呼ぶ状態のことで、ICの入力端子などが電源(VCC)にもGNDにもつながっておらず、電圧が決まっていない状態です。電流がほとんど流れないハイインピーダンスなので、まわりのノイズを拾って電圧がふらつき、デジタルICでは誤動作や、CMOSの貫通電流による発熱の原因になります。抵抗でVCCかGNDにつなぐプルアップ・プルダウンで電圧を決めて防ぎます。

フローティングとは?「浮いている」状態の正体
回路の「浮いている」とは、ある端子の電圧を決めるつながりがどこにもない状態です。たとえば、マイコンの入力端子に何もつながっていないと、その端子はVCCでもGNDでもなく、電圧が決まりません。ひもの切れた風船のように、まわりの影響でふらふら動きます。
| 用語 | 意味 | 使われ方 |
|---|---|---|
| フローティング(浮き) | 端子がどこにもつながらず、電圧が決まっていない | 「この入力、浮いてる」 |
| ハイインピーダンス(Hi-Z) | 電流がほとんど流れない、つながっていないのに近い状態 | 出力をOFFにした3ステートの状態、測定器の入力 |
| オープン | 線が切れていて、電流が流れない | 断線、スイッチOFF |
3つは厳密には意味がちがいますが、入力端子について言うときは、どれも「電圧が決まらない」という同じ困りごとにつながります。インピーダンスは交流での電流の流れにくさで、ハイインピーダンスは「とても流れにくい」という意味です。
インピーダンスと抵抗の違い

浮いた端子は何がいけないのか
① ノイズを拾う「アンテナ」になる
まわりの空間には、スイッチング電源・モーター・無線などの電磁波がいつも飛んでいます。浮いた端子につながる配線は小さなアンテナになり、このノイズを拾います。端子がVCCやGNDに低いインピーダンスでつながっていれば、ノイズはそこへ逃げて消えますが、浮いていると逃げ場がなく、ノイズがそのまま端子の電圧になります。
浮いた端子をテスターで測ると、0.5Vだったり2Vだったりと、測るたびにちがう値が出ます。値が決まらないこと自体が、浮いている証拠です。
② HIGHかLOWか決まらず、誤動作する
デジタルICの入力は、電圧をHIGH(1)かLOW(0)に分けて読みます。3.3V系のLVTTL/LVCMOS(JEDECの規格)なら、2.0V以上がHIGH、0.8V以下がLOWで、その間は「どちらかわからない」範囲です(0.7VCC・0.3VCCで決めるICもあります)。浮いた端子はこの範囲をうろうろするので、マイコンがボタンを押していないのに押したと読む、といった誤動作が起きます。
③ CMOSの貫通電流で熱くなる
CMOSの入力は、VCC側のPチャネルとGND側のNチャネルのMOSFETが組になっています。HIGHかLOWなら片方だけがONですが、中間の電圧だと両方が少しずつONになり、VCCからGNDへ電流が流れっぱなしになります。これが貫通電流で、消費電流がふえ、ICが熱くなり、長く続くと劣化の原因になります。
MOSFETがON・OFFするしくみ

プルアップとプルダウン|抵抗1本で電圧を決める
浮かないようにするには、抵抗でVCCかGNDにつないで、何もしないときの電圧を決めておきます。
| 方法 | つなぎ方 | 何もしないとき | よく使う場面 |
|---|---|---|---|
| プルアップ | 端子とVCCの間に抵抗 | HIGH | 押すとGNDにつながるボタン、リセット端子、I²C、オープンドレイン出力 |
| プルダウン | 端子とGNDの間に抵抗 | LOW | 押すとVCCにつながるボタン、イネーブル端子、起動時のモード設定 |
ボタンを押すとLOWになる回路なら、離しているあいだはプルアップ抵抗がHIGHに引き上げます。押すとボタンがGNDにつなぐので、抵抗を通ってVCC/Rの電流が流れ、端子はLOWになります。抵抗がないと、押した瞬間にVCCとGNDがショートしてしまうので、抵抗が必要です。
オープンドレイン出力にはプルアップが必須
オープンドレイン(オープンコレクタ)の出力は、GNDへ引き下げるスイッチしか持っていません。LOWにはできますが、HIGHにする力がないので、OFFにすると浮きます。I²Cのように、何台ものICが同じ線をLOWに引ける通信では、この形と外付けのプルアップ抵抗が前提になっています。

プルアップ抵抗の値の決め方
よく使われるのは1k〜100kΩで、迷ったら10kΩが出発点です。ただ、値は次の3つのバランスで決まります。
| 見ること | 抵抗を小さくすると | 抵抗を大きくすると |
|---|---|---|
| 消費電流(LOWのとき I=VCC/R) | ふえる(3.3V・1kΩで3.3mA) | へる(3.3V・100kΩで33μA) |
| 立ち上がりの速さ(R×端子と配線の容量) | 速い | 遅い。速い信号では波形がなまる |
| ノイズへの強さ・漏れ電流での電圧の下がり | 強い・下がりにくい | 弱い・漏れ電流×Rで電圧が下がる |
たとえばI²Cは、通信速度ごとに立ち上がり時間の上限(標準モードで1000ns、ファストモードで300ns)があり、バスの容量が大きいほど小さい抵抗が必要です。一方、LOWのときに流せる電流(多くは3mA)の上限があるので、小さくしすぎることもできません。電池で動く機器では、押しボタンのプルアップを100kΩ前後にして待機の電流をへらすこともあります。
マイコンの内蔵プルアップ
多くのマイコンは、設定で入力端子に内蔵のプルアップ(またはプルダウン)をつなげます。部品が1つへりますが、値は数十kΩと大きめで、ばらつきも大きいのがふつうです。ノイズの多いパワエレの基板や、長い配線の先のスイッチでは、外付けの抵抗のほうが安心です。
マイコンの入出力の基本

プルアップ抵抗の計算ツール
電源電圧と抵抗値、端子と配線の容量などを入れてください。LOWのときの電流、VIHに届くまでの時間、漏れ電流による電圧の下がりを出します。
入力すると、その場で計算し直します。入力した数字は画面の中で計算するだけで、どこにも送信されません。
使わない端子と、もう1つの「フローティング」
使わない入力端子の処理
| 端子 | 処理のしかた |
|---|---|
| ロジックICの使わない入力 | VCCかGNDに直接、または抵抗を通してつなぐ(データシートの指示に従う) |
| マイコンの使わないGPIO | 出力にしてLOWにするか、内蔵プルアップ・プルダウンを有効にする |
| オペアンプの使わない回路 | ボルテージフォロワにして入力を固定する(データシートの推奨に従う) |
GNDから浮いた電源・測定
「フローティング」は、もう1つの意味でも使われます。出力がGND(大地)に対して決まっていない電源や、大地から絶縁して測る測定を、フローティング電源・フローティング測定と呼びます。たとえば、ハーフブリッジのハイサイドのゲート電圧は、スイッチのたびに大きく動く点を基準にしているので、オシロスコープのプローブのGND(大地につながっている)を直接つなぐと短絡してしまいます。差動プローブや絶縁したプローブで「浮かせて」測ります。
GND共通の制約を外す差動プローブ

フローティングのよくある間違い
| よくある間違い | 正しい考え方 |
|---|---|
| 使わない入力は放っておいてよい | 浮くとノイズで誤動作し、貫通電流で熱くなる。必ず処理する |
| 浮いた端子は0Vになっている | 電圧は決まらず、ノイズでふらつく |
| プルアップは小さいほど安心 | LOWのときの電流と消費電力がふえる。LOWで流せる電流にも上限 |
| プルアップは大きいほど省エネでよい | 立ち上がりが遅れ、ノイズや漏れ電流に弱くなる |
| 内蔵プルアップがあれば外付けは不要 | 内蔵は数十kΩで大きめ。ノイズの多い所は外付けが安心 |

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よくある質問
- フローティング=端子の電圧を決めるつながりがない状態(ハイインピーダンス)
- 浮いた端子はノイズを拾い、誤動作やCMOSの貫通電流の原因になる
- プルアップ(VCCへ)・プルダウン(GNDへ)の抵抗で電圧を決める
- 抵抗値は消費電流・立ち上がり・ノイズのバランス。迷ったら10kΩから
- 使わない端子も処理する。GNDから浮いた電源・測定という意味もある

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プルアップ抵抗と入力の静電容量で、信号が立ち上がるまでの時間(時定数)が決まります。
メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。
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