※本記事にはプロモーション(広告)が含まれています。
- 回路設計の新人として配属されたが、何から勉強すればいいかわからない
- 覚えることが多すぎて、順番が決められない
- 先輩に聞く前に、どこでつまずきやすいかを知っておきたい
- 最初の1年で覚えることを、4つの段階に分けた順番
- なぜその順番なのか(前の段が次の段の材料になる理由)
- 段階ごとのつまずきやすい所と、防ぎ方
- この順番で読める連載「回路設計の入門」の記事
回路設計の新人が最初の1年で覚える順番は、①回路図を読む・テスターで測る(1〜3か月)→ ②値を決める(4〜6か月)→ ③データシートを読んで部品を選ぶ(7〜9か月)→ ④試作して確かめ、レビューを受ける(10〜12か月)の4段階です。
月の区切りは目安で、大事なのは順番です。読めない回路の値は決められず、値が決まらないと部品は選べないからです。
わからない言葉が出てきたら、ここに戻ってきてください。本文でも、初めて出たところで言い換えます。
| 回路図 | 部品のつながりを記号で描いた図 |
| テスター | 電圧・電流・抵抗・導通を測る道具(マルチメータとも呼ぶ) |
| 導通 | 線や部品が電気的につながっていること |
| データシート | 部品メーカーが出す説明書。定格や特性の数字が載っている |
| 絶対最大定格 | 瞬時でも超えてはいけない上限(電圧・電流・温度など) |
| 定格電力 | その部品が熱で傷まずに使える電力の上限 |
| E24系列 | 売っている抵抗の値の並び(1.0・1.1・1.2・1.3・1.5…) |
| 試作 | 本番の前に、確かめるために作る1台目 |
| レビュー | 設計の内容を、ほかの人に確かめてもらうこと |
回路設計の新人は、何から勉強すればいいのでしょうか。回路図、部品、計算、測定器、基板、規格。覚えることが一度に押し寄せるので、はじめは戸惑って当然です。
この記事では、回路設計の仕事の流れに沿って、最初の1年で覚えることを4つの段階に並べました。段階ごとに、つまずきやすい所と防ぎ方を、具体的な数字で示します。

回路設計の新人が最初の1年で覚える順番(全体像)
最初の1年は、読む・測る → 値を決める → 部品を選ぶ → 作って確かめる、の4段階で進めます。回路設計の仕事の流れと同じ順番です。
| 時期(目安) | 段階 | 覚えること |
|---|---|---|
| 1〜3か月 | 読む・測る | 回路図を電源から読む・記号と部品を見分ける・テスターで電圧と導通を測る |
| 4〜6か月 | 値を決める | 電流から・電圧から・時間から、抵抗やコンデンサの値を計算する |
| 7〜9か月 | 部品を選ぶ | データシートを読む・定格に余裕を持たせる・手に入る部品を選ぶ |
| 10〜12か月 | 作って確かめる | 試作して評価する・レビューを受ける・決めた理由を書き残す |
月の区切りは目安です。配属先によっては、はじめから試作の手伝いをすることもあります。そのときも、手を動かしながら「読む → 決める → 選ぶ」の順に頭の中を整理すると、覚えたことがつながります。
つまり、1年の目標は「1つの回路を、読んで、値を決めて、部品を選んで、作って確かめる」を一人で通せることです。

なぜこの順番?前の段が、次の段の材料になる
この順番にする理由は、前の段で覚えたことが、次の段の材料になるからです。読めない回路の値は決められず、値が決まらないと部品は選べません。
LED を点ける回路で考えます。
回路図で、LED と抵抗がどこにつながっているかを見つける
LED に流す電流から、抵抗の値を計算する(例:140Ω)
売っている値(150Ω)と、熱に耐える大きさ(1/8W)の抵抗を選ぶ
組んで電圧を測り、計算どおりの電流が流れているかを確かめる
料理で言えば、レシピを読む → 分量を決める → 材料を買う → 作って味見する、の順番です。レシピが読めないうちに材料を買いに行くと、何を何グラム買えばいいかわかりません。
つまり、どの段階も「前の段の答え」を使って進みます。順番を飛ばすと、覚えたことがばらばらになりやすいのです。

1〜3か月:回路図は「電源 → GND → 信号」の順に読む
回路図は、記号を全部覚えてから読むものではありません。電源の流れ、GND のつながり、信号の流れの3つを、順にたどって読みます。
電気がどこから来て、何V に変わるかを追う。例:AC アダプタの 5V → 電源IC で 3.3V → マイコンへ
すべての部品の GND(電圧の基準で、電流の帰り道)が、1本につながっているかを確かめる
入口(センサやスイッチ)から出口(LED やモーター)へ、信号の通り道を追う
3色のペンで、電源を赤、GND を青、信号を橙になぞると、回路のかたまりが見えてきます。記号は、なぞりながら1つずつ覚えれば十分です。
抵抗の記号には、長方形のものとギザギザのものがあります。規格の新旧や、国による違いです。見慣れない記号は、部品表(どの記号がどの部品かの一覧)と見比べて確かめます。
GND が「0V の線」ではなく「電流の帰り道」である理由がわかる
つまり、最初の3か月は「回路図を色でなぞれる」ことが目標です。

1〜3か月:テスターで測る3つ(電圧・導通・抵抗)
テスターで最初に覚えるのは、電圧・導通・抵抗の3つです。電源を入れて測るのは電圧だけで、導通と抵抗は電源を切って測ります。
| 測るもの | 電源 | 使い方 |
|---|---|---|
| 電圧(DCV) | 入れて測る | 赤のテスト棒を測りたい点、黒を GND に当てる。例:3.3V の電源なら 3.30V 前後 |
| 導通(ブザー) | 切って測る | 線がつながっているかを音で確かめる。はんだ付けの不良や断線を探す |
| 抵抗(Ω) | 切って測る | 部品の値や、ショート(つながってはいけない所がつながる)していないかを確かめる |
組んだ回路に電源を入れる前に、電源と GND の間の抵抗を測ります。0Ω に近ければショートを疑います。大きなコンデンサがある回路では、はじめは小さく出て、だんだん上がることがあります。
測った値がずれる理由(誤差)を、図で整理できる
つまり、テスターは「電源を入れる前」と「入れた後」で測るものが違います。この使い分けが、最初の3か月のもう1つの目標です。

4〜6か月:値の決め方は3つの型(電流・電圧・時間)
抵抗やコンデンサの値の決め方は、電流から決める・電圧から決める・時間から決める、の3つの型に分けられます。どれもオームの法則の仲間です。
型1:電流から決める(LED の抵抗)
5V の電源で、赤い LED(電圧は例として 2.0V)に 10mA 流したい
抵抗にかかる電圧 = 5 − 2.0 = 3.0V
抵抗 = 3.0V ÷ 0.010A = 300Ω(E24 にある値)
型2:電圧から決める(分圧)
5V の信号を、3.3V のマイコンが受けられる電圧に下げたい
上に 10kΩ、下に 20kΩ をつなぐ
出力 = 5V × 20kΩ ÷ (10kΩ + 20kΩ) ≒ 3.33V
分圧の公式を、例題で1から確かめられる
型3:時間から決める(RC)
電源を入れたあと、電圧をゆっくり上げたい
10kΩ と 1μF を組み合わせる
時定数 = 10,000Ω × 0.000001F = 0.01秒(10ms)。この時間で約63%まで上がる
つまり、値を決めるときは、まず「この部品で何を決めたいか(電流・電圧・時間)」を書きます。型が決まれば、式も決まります。

4〜6か月のつまずき:単位の桁(k・m・μ)
値を決める段階でいちばん多いつまずきは、単位の桁のまちがいです。mA や μF を、A や F に直さずに計算すると、答えが1000倍以上ずれます。
| 記号 | 読み方 | 意味 | 例 |
|---|---|---|---|
| k | キロ | × 1,000 | 10kΩ = 10,000Ω |
| m | ミリ | ÷ 1,000 | 20mA = 0.02A |
| μ | マイクロ | ÷ 1,000,000 | 1μF = 0.000001F |
| n | ナノ | ÷ 1,000,000,000 | 100nF = 0.1μF |
よくあるまちがいの例
3V を 20mA で割って抵抗を出すとき、20mA を 20 のまま計算すると、3 ÷ 20 = 0.15Ω になります。正しくは 3V ÷ 0.02A = 150Ω です。1000倍小さい答えになってしまいました。
計算する前に、すべてを A・V・Ω・F の単位にそろえます。答えが出たら、もう一度 k・m・μ に戻して「その値の部品は売っていそうか」を考えます。0.15Ω の抵抗で LED を点けることはまずないので、ここで気づけます。
つまり、「単位をそろえてから計算し、答えが現実的かを見る」。この2つで、桁のまちがいはほぼ防げます。

7〜9か月:データシートは決まった順番で読む
データシートは、1ページ目 → 絶対最大定格 → 推奨動作条件 → 電気的特性 → グラフ、の順に読みます。はじめから全部を読もうとしないことが大切です。
特長と用途を読み、自分の使い方に合う部品かを確かめる
瞬時でも超えてはいけない上限(電圧・電流・温度など)。ここを超える使い方は、どんなに短い時間でもしない
ふだんはこの範囲で使う、という条件。載っていない部品もある
min(最小)・typ(代表)・max(最大)の数字と、その数字を測ったときの条件(温度・電圧・電流)を読む
温度や電流で、値がどう変わるかを見る
typ は「よくある値」で、保証ではありません。足りないと困る数字は最小、大きすぎると困る数字は最大で計算します。
ダイオードを例に、データシートの5つの大事な数字の読み方がわかる
つまり、データシートは「上限 → ふだんの範囲 → 数字の幅」の順に読めば、迷いません。

7〜9か月:部品を選ぶときの3つの確認
値が決まったら、定格に余裕があるか、手に入るか、形と大きさが合うか、の3つを確かめて部品を選びます。
確認1:定格に余裕があるか
LED の抵抗の例で、150Ω の抵抗に 2.8V かかり、約18.7mA 流れるとします。抵抗で熱になる電力は 2.8V × 18.7mA ≒ 52mW です。
1/8W(125mW)の抵抗なら、52 ÷ 125 ≒ 42% で使うことになります。定格ぎりぎりではなく、余裕を持たせて使うのが基本です。どこまで余裕を取るかの目安は、職場ごとに決まっていることが多いので、先に確かめます。
確認2:手に入るか
量産する製品では、同じ部品を何年も買い続けます。複数の販売店で買えるか、生産終了の予定がないかを確かめます。
確認3:形と大きさ
穴に挿す部品(リード部品)か、基板の表面に載せる部品(表面実装)かを選びます。基板に載る大きさか、自分たちの設備ではんだ付けできるかも確かめます。
つまり、部品選びは「値」だけでは終わりません。余裕・入手・形の3つを確かめて、はじめて部品表に書けます。

10〜12か月:試作して確かめる(電源を入れる前の3つ)
試作では、いきなり電源を入れません。ショート・部品の向き・電源の電流制限の3つを確かめてから、電流を絞って電源を入れます。
電源と GND の間の抵抗をテスターで測る
LED・ダイオード・電解コンデンサ・IC は、向きを逆にすると動かないか壊れる。印や足の長さを確かめる
電源装置の電流の上限を小さめにしてから入れる。もし何かがおかしくても、大きな電流が流れ続けない
電源を入れたら、電圧が計算どおりか、電源の表示の電流がおかしくないか、部品が熱くなっていないか(素手でさわる前に温度計で)を確かめます。オシロスコープがあれば、波形も見ます。
基板にしたあと、はんだ付けのどこに不良が出やすいかがわかる
つまり、「確かめてから電源を入れる」を習慣にすれば、試作で部品を焼くことはぐっと減ります。

10〜12か月:レビューは「なぜその値か」を書いて受ける
設計レビューでは「なぜその値か」を必ず聞かれます。回路図や設計メモの数字の横に、計算と理由を1行書いておくと、聞かれる前に答えがそろいます。
例えば、LED の抵抗 R1 が 150Ω なら、次のように書いておきます。
(5 − 2.0 − 0.2) ÷ 20mA = 140Ω → 150Ω(電流を減らす側)/ 52mW ÷ 1/8W = 約42%
メモがないと、レビューで聞かれてからその場で計算し直すことになります。メモがあれば、確認する人も計算を追えるので、レビューが早く進みます。半年後に自分で見直すときにも役に立ちます。
レビューの前に、自分で確かめておく20の項目がわかる
つまり、レビューは「数字+理由」で受ける。理由を書く習慣は、1年目でいちばん差がつく所です。

回路設計の新人がつまずきやすい所5つと、防ぎ方
新人がつまずきやすいのは、GND のつなぎ忘れ・部品の向き・単位の桁・typ 値での計算・確かめずに電源を入れる、の5つです。どれも確かめる順番を決めておけば防げます。
| つまずき | 起きること | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| GND をつなぎ忘れる | 電源が2つある回路で、動かない | すべての GND を1本にまとめる |
| 部品の向きを逆にする | LED が光らない・部品が壊れる | 印・足の長さ・帯を確かめる |
| 単位の桁をまちがえる | 答えが1000倍ずれる | A・V・Ω・F にそろえてから計算する |
| typ の値で計算する | 動く個体と動かない個体が出る | 厳しい側(最小・最大)で計算する |
| 確かめずに電源を入れる | 部品が焼ける | 電源を入れる前の3つを確かめる |
5つのうち4つは、計算や知識ではなく「確かめる手順」の問題です。チェックの順番を紙に書いて、作業のたびに見る。それだけで多くは防げます。
つまり、つまずきは「知らない」より「確かめ忘れ」から起きます。順番を決めておくことが、いちばんの対策です。

回路設計の勉強に使う資料と道具
勉強の資料は、部品メーカーのデータシートとアプリケーションノートが基本です。道具は、無料のシミュレーターと、テスター・ブレッドボードから小さく始められます。
| 資料・道具 | 何がわかるか | 費用 |
|---|---|---|
| データシート | 部品の定格・特性の数字。すべての計算の出どころ | 無料(メーカーの公式サイト) |
| アプリケーションノート | メーカーが出す使い方の手引き。推奨の回路と注意点 | 無料 |
| シミュレーター(例:LTspice) | 部品を買う前に、回路の動きを画面で試せる | 無料 |
| 回路図CAD(例:KiCad) | 回路図と基板の図を描ける | 無料 |
| テスター・ブレッドボード | 計算と実物を比べられる | 手ごろな値段でそろう |
最初の一歩は、職場で使っている部品のデータシートを1枚、最後まで読むことです。わからない言葉に印をつけ、1つずつ調べていくと、半年で読める量がぐっと増えます。
つまり、教材の中心は「メーカーの一次資料」。そこに、計算と実物で確かめる道具を足していきます。

この1年の順番で読める連載「回路設計の入門」
連載「回路設計の入門」は、この記事の4段階と同じ順番で読めるように並べています。今いる段階の記事から読み始めて大丈夫です。
- 回路図の読み方
- 回路図記号の早見表
- データシートの読み方
- 回路が動かないときの切り分け
- 抵抗値の決め方3つの型
- LEDの抵抗の計算
- 分圧回路の抵抗の選び方
- RC時定数の決め方
- ベース抵抗の計算(公開中。下の「次に読むべき記事」から読めます)
- 抵抗・コンデンサの表記の読み方
- 部品表(BOM)と部品の探し方
- LDOとDC-DCの選び方
- ヒューズの選び方
- LTspice入門
- KiCadで最初の1枚
- ブレッドボードで動いて基板で動かない理由
- 回路図レビューのチェックリスト
- 部品が壊れる原因と防ぎ方
印のない記事は準備中です。公開したら、この一覧からリンクします。題や順番は変わることがあります。
電験三種などで電気の理論を勉強したことがある人は、もう1本の入口「電験三種の知識は回路設計でどう使う?」もあわせて読むと、知っている計算がどこで使えるかがわかります(準備中)。
つまり、迷ったら上から順に。1本ずつ、図と計算で確かめながら進めましょう。

よくある質問(FAQ)
- 最初の1年は、読む・測る → 値を決める → 部品を選ぶ → 作って確かめる、の4段階
- 回路図は電源 → GND → 信号の順に、色でなぞって読む
- 値の決め方は、電流から・電圧から・時間からの3つの型。単位はそろえてから計算
- データシートは、絶対最大定格 → 推奨動作条件 → 電気的特性の順に読む
- 電源を入れる前の3つ(ショート・向き・電流制限)と、「数字+理由」のメモを習慣にする
次の一歩として、職場で使っている回路図を1枚選び、電源を赤・GND を青・信号を橙でなぞってみてください。どこに何があるかが見えたら、最初の段階はもう始まっています。
- 東芝デバイス&ストレージ「ダイオードの技術資料の絶対最大定格にはどのような項目がありますか?」:絶対最大定格は瞬時でも超えてはならない最大値であること、電圧・電流・温度などで規定されること
- KiCad EDA 公式サイト:無料のオープンソースの回路図・基板CAD
法令・規格・資料は改訂されることがあります。実務で使うときは、発行元の最新版で確かめてください。
「回路設計の新人が最初の1年で覚えること」を、工場の設備保全や生産技術の仕事で使う知識につなげたい人に向いています。設備保全や生産技術で働く電気エンジニアが、1年目に押さえたい基本をカラーの図解でまとめた本です(技術評論社)。
回路の電圧や導通を自分の手で確かめるなら、手元にテスターが1台あると便利です。三和電気計器のデジタルマルチメータ(テスター)CD772です。電圧や抵抗などを測れます。
「回路設計の新人が最初の1年で覚えること」は、回路シミュレータで電圧や電流の波形を見ながら確かめると理解が深まります。無料の回路シミュレータLTspiceを使って、電子回路を学べる本です(オーム社、渋谷道雄 著)。
メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。
次に読むべき記事
ここまでで、最初の1年で何をどの順に覚えるかがわかりました。まずは連載の1本目で、1つの回路を読む・決める・選ぶ・作るまで通してみましょう。
テーマ別に、もっと深く学ぶ
気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめて学ぶ人向けにやさしく書いています。