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- 高圧受電設備の単線結線図で、PAS・VCT・DS・CBなどの略号の役割がわからない
- 断路器と遮断器と負荷開閉器の違いがいつも混ざる
- 負荷を増やしたとき、変圧器の容量が足りるかの計算に自信がない
- 受電点から変圧器までの機器の並びと役割
- 断路器・遮断器・負荷開閉器の違い
- 変圧器容量の確認計算と、過去問のひっかけ
工場やビルの敷地の片すみにある金属の箱、キュービクルは、電験三種に合格したあと電気主任技術者として最もよく向き合う設備のひとつです。試験でも、機器の役割や保護のしくみが毎年のように出題されています。この記事では、電気の流れに沿って機器を一つずつたどります。
高圧受電設備は、電力会社の6.6kVの高圧配電線から電気を受け取り、工場やビルで使える低い電圧に変えて配る設備で、箱に収めたものをキュービクルと呼びます。受電点から順に、構内の地絡を切り離す区分開閉器(架空ならPAS、地中ならUGS)、取引用の計器用変成器(VCT)、点検のときに回路を切り離す断路器(DS)、雷の異常電圧を逃がす避雷器(LA)、事故電流を切る遮断器(CB)、変圧器、力率を改善する進相コンデンサ(SC)が並びます。
高圧受電設備とは?キュービクルの役割
電気を多く使う工場やビルは、家庭のように100V・200Vで受け取るのではなく、6.6kVの高圧のまま受け取り、自分の敷地の中で変圧して使います。そのための設備が高圧受電設備です。機器を金属の箱にまとめたものをキュービクル式と呼び、場所をとらず安全なので広く使われています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 受け取る電圧 | 6.6kV(三相3線式) |
| 使う人 | 工場・ビル・病院・学校など、電気を多く使う需要家 |
| 持ち主 | 原則として需要家(自家用電気工作物) |
| 保安 | 電気主任技術者を選任(または外部委託)して管理する |
高圧受電設備は、マンションの受水槽とポンプ室のようなものです。水道局(電力会社)から太い管(高圧)で水を受け取り、建物の中で使いやすい水圧(低圧)にして各部屋に配ります。受け取った後の設備の管理は、建物の持ち主の責任になります。
つまり、高圧受電設備は「電力会社と需要家の境目」にある設備です。どこからが需要家の責任か(責任分界点)を、まず意識しておきましょう。

受電点から変圧器まで:機器の並びと役割
CB形と呼ばれる代表的な高圧受電設備では、電気は次の順に機器を通ります。略号と役割をセットで押さえます。
| 順番 | 略号 | 名前 | 役割 |
|---|---|---|---|
| ① | PAS/UGS | 区分開閉器(架空は気中開閉器、地中は地中線用負荷開閉器) | 責任分界点の近くに置き、構内で地絡が起きたら自動で開いて、配電線へ事故を広げない |
| ② | VCT | 電力需給用計器用変成器 | 電力会社との取引用の電力量計に、電圧と電流を小さくして渡す |
| ③ | DS | 断路器 | 点検・修理のときに、電流が流れていない状態で回路を切り離す |
| ④ | LA | 避雷器 | 雷や開閉による異常電圧を大地へ逃がす(A種接地工事) |
| ⑤ | CB | 遮断器 | 短絡や地絡の事故電流を切る(保護継電器と組み合わせる) |
| ⑥ | LBS | 高圧交流負荷開閉器 | 負荷電流を開閉する。限流ヒューズ(PF)と組み合わせて変圧器などを守る |
| ⑦ | T | 変圧器 | 6.6kVを、210V・105Vなど使う電圧に下げる |
| ⑧ | SC・SR | 進相コンデンサ・直列リアクトル | 力率を改善する。直列リアクトルは高調波や突入電流をおさえる |
遮断器が事故電流をどうやって切るのか、種類と消弧のしくみがわかります
PASやUGSには、構内の地絡を検出して自動で開く制御装置がついています。構内の事故で配電線全体が停電する「波及事故」を防ぐのが、いちばん大切な役割です。

断路器・遮断器・負荷開閉器の違い:切れる電流で区別する
3つとも「回路を切る」機器ですが、切ってよい電流の大きさがまったく違います。ここが最もよく問われるポイントです。
| 機器 | 切れる電流 | 主な使い方 |
|---|---|---|
| 断路器(DS) | 電流が流れていないとき(無負荷)だけ | 点検・修理のときに、回路を電源から切り離す |
| 負荷開閉器(LBS) | ふだんの負荷電流まで | 負荷の入り切り。短絡電流は切れないので、限流ヒューズと組み合わせる |
| 遮断器(CB) | 短絡電流などの事故電流まで | 事故のときに保護継電器の指令で自動で切る |
水道にたとえると、断路器は「水を止めてから外す配管の継ぎ手」、負荷開閉器は「ふだん使う蛇口」、遮断器は「水道管が破裂したときにも閉められる緊急遮断弁」です。継ぎ手を水が流れたまま外すと、水が噴き出して危険です。
断路器は、電流が流れているときに開くと、アークが出てとても危険です。必ず遮断器や負荷開閉器で電流を止めてから開きます。「遮断器は点検・修理のときに電源から切り離すために使う」という説明は断路器のことで、実際の過去問で誤りの選択肢になりました。

保護のしくみ:短絡と地絡をどう見つけるか
高圧受電設備では、計器用変成器で電圧と電流を小さくし、保護継電器が事故を見つけて遮断器に「切れ」と指令します。
| 事故 | 見つける装置 | ポイント |
|---|---|---|
| 短絡 | 変流器(CT)+過電流継電器(OCR) | 大きな電流が流れたら、遮断器を切る |
| 地絡 | 零相変流器(ZCT)+地絡継電器(GR)または地絡方向継電器(DGR) | 3本の電流の合計(零相電流)が0でなくなったら、遮断器やPASを切る |
過電流継電器や地絡方向継電器など、保護継電器の種類と動作がわかります
方向を見ない地絡継電器は、構内の高圧ケーブルが「長い」と、外の配電線で起きた地絡でも、ケーブルの静電容量を通って大きな零相電流が流れ、不要に動作することがあります。そのため、ケーブルが長い需要家では、電流の向きで構内か構外かを見分ける地絡方向継電器を使います。
6.6kVの高圧配電線は、多くが非接地方式です。地絡のときに流れる電流は小さいので、短絡とは別に、零相変流器で「3本の合計のわずかなずれ」を見張る必要があります。

CB形とPF・S形:受電設備の2つの形
高圧受電設備には、主な遮断装置に遮断器を使う「CB形」と、限流ヒューズ(PF)と高圧交流負荷開閉器(LBS)を組み合わせて使う「PF・S形」があります。
| 項目 | CB形 | PF・S形 |
|---|---|---|
| 主な遮断装置 | 遮断器(CB)+保護継電器 | 限流ヒューズ(PF)+負荷開閉器(LBS) |
| 短絡のとき | 保護継電器の指令で遮断器が切る | 限流ヒューズが溶けて切る |
| 使われる規模 | 比較的大きな設備 | 受電設備容量300kVA以下の小さな設備 |
| 特徴 | 細かく保護を調整できる | 構成が簡単で安い |
CB形は、異常を見張る係(保護継電器)と、指示で扉を閉める係(遮断器)がいる大きな建物の防災センター。PF・S形は、熱で自動的に溶けて閉まる防火シャッター(ヒューズ)だけで守る小さな建物、というイメージです。
実際にどちらを使うかは、高圧受電設備規程や電力会社との協議で決まります。数値の区分は規程や電力会社の資料で確認してください。

計算してみる:負荷を増やしても変圧器は足りる?
負荷を増やすときは、変圧器の容量(kVA)を超えないか確かめます。力率が違う負荷を足すときは、kVAどうしを単純に足すのではなく、有効電力(kW)と無効電力(kvar)に分けて足します。
皮相電力 S = √(有効電力P² + 無効電力Q²)
例題:300kVAの変圧器に50kWを増設
いまの負荷は200kW(力率0.8、遅れ)です。ここに50kW(力率1)の負荷を増やします。
いまの負荷の皮相電力:200 ÷ 0.8 = 250kVA
いまの負荷の無効電力:力率0.8なら無効電力は有効電力の0.75倍(sinθ÷cosθ=0.6÷0.8)なので、200 × 0.75 = 150kvar
増設後の有効電力:200 + 50 = 250kW。無効電力は力率1の負荷では増えないので150kvarのまま
増設後の皮相電力:√(250² + 150²)= √(62,500 + 22,500)= √85,000 = 約291.5kVA
300kVA以内なので、変圧器は足ります
250kVAと50kWを単純に足すと300になり、ぎりぎりに見えます。実際は、力率の違う電力はベクトルで足すので、約291.5kVAにおさまります。
進相コンデンサで余裕をつくる
100kvarの進相コンデンサを入れると、遅れの無効電力が 150 − 100 = 50kvar に減ります
皮相電力:√(250² + 50²)= √(62,500 + 2,500)= √65,000 = 約255kVA
291.5kVAから約255kVAへ下がり、変圧器に約45kVAの余裕ができました
進相コンデンサや分路リアクトルなど、調相設備のしくみがわかります

電験三種の過去問で問われているポイント
高圧受電設備は、機器の役割を問う論説問題と、変圧器や遮断器の容量を求める計算問題の両方で出題されています。
| 年度・問題 | 形式 | ポイント |
|---|---|---|
| 令和6年度下期 問11 | 論説(誤りを選ぶ) | 高圧受電設備の機器。誤りは「遮断器(CB)は点検・修理の際に電源から開放する目的で用いる」(それは断路器) |
| 令和7年度下期 問7 | 論説(誤りを選ぶ) | 配電線と高圧受電設備の保護。誤りは「地絡過電流継電器は構内ケーブルのこう長が短い場合に不要動作する」(正しくは長い場合) |
| 令和7年度下期 問13・令和7年度上期 問17 | 計算 | 変圧器に増設できる負荷や、負荷を追加したときの過負荷の防止 |
| 令和7年度下期 問12・令和6年度上期 問16・令和5年度上期 問16 | 計算 | 変圧器の二次側に置く遮断器の定格遮断電流(短絡電流) |
ポイント1:略号と役割の「入れ替え」に注意
令和6年度下期は、LA・LBS・VCT・SCの説明が正しく、CBの説明だけが断路器の役割にすり替えられていました。「DSは無負荷、LBSは負荷電流、CBは事故電流」と、切れる電流で区別しておけば見抜けます。
ポイント2:地絡の不要動作は「ケーブルが長い」
令和7年度下期は、地絡過電流継電器の不要動作の条件を「短い」に変えたひっかけでした。ケーブルが長いほど静電容量が大きく、外部の地絡で流れる電流も大きくなる、と理由で覚えます。
ポイント3:容量の計算はkWとkvarに分けて足す
負荷の増設や過負荷の問題は、この記事の例題のように、有効電力と無効電力に分けて足し、最後に皮相電力に直すのが基本です。遮断器の定格遮断電流は、変圧器の%インピーダンスから短絡電流を求める計算になります。

よくある間違い・つまずきポイント
1. 断路器で負荷電流を切れると考える
断路器は無負荷のときだけ開閉できます。負荷電流は負荷開閉器、事故電流は遮断器で切ります。
2. PASは短絡電流も切れると考える
PASは構内の地絡を切り離すのが主な役割で、大きな短絡電流を切る能力はありません。短絡は変電所や構内の遮断器で切ります。
3. 力率の違う負荷のkVAを単純に足す
有効電力と無効電力に分けて足し、最後に √(P²+Q²) で皮相電力に直します。
4. 進相コンデンサは有効電力を減らすと考える
進相コンデンサが減らすのは遅れの無効電力です。有効電力は変わらず、皮相電力と電流が減ります。
5. 地絡継電器の不要動作はケーブルが短いと起きると考える
不要動作が起きやすいのは、構内の高圧ケーブルが長いときです。その対策が地絡方向継電器です。

よくある質問
まとめ:電気の流れに沿って、略号と役割をセットで覚える
- 並び:PAS/UGS → VCT → DS → LA → CB → LBS(PF) → 変圧器 → SC・SR
- DS=無負荷で切り離す/LBS=負荷電流/CB=事故電流
- PAS・UGS=構内の地絡を切り離し、波及事故を防ぐ
- 地絡は零相変流器で見張る。ケーブルが長いと地絡方向継電器
- 容量の確認はkWとkvarに分けて足す(例:約291.5kVA、コンデンサで約255kVA)
まずは受電点から変圧器まで、機器の略号を順番に書き出して、それぞれの役割を一言で言えるか試してみてください。単線結線図が読めるようになると、試験だけでなく現場でも大きな武器になります。

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電験三種の試験でどう問われるかは、過去問で確かめるのがいちばんの近道です。電験三種の過去10年分の試験問題をまとめた過去問題集です(2026年度版)。
メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。
電験三種は、電気設備の保安を監督する資格です。キュービクルのような自家用電気工作物で工事そのものをするのは電気工事士で、最大電力500kW未満の自家用電気工作物の工事には、第一種電気工事士の資格が要ります(一部の工事を除く)。独学が不安なら、講義と問題演習がセットになった通信講座を使う方法もあります。
SATの電験三種講座(第三種電気主任技術者講座)は、フルカラーのテキストと講義動画で学べて、メールなどで質問もできます。
SATの第一種電気工事士講座は、学科(筆記)と技能の両方を、テキストと講義動画で学べます。技能試験の候補問題の解説もあります。合格したあと免状を受け取るには、実務経験が要ります。
料金や内容は、それぞれ公式サイトで確かめてください。
次に読むべき記事
ここまでで、高圧受電設備の機器の並びと役割、変圧器容量の確認のしかたがわかりました。次は、受電設備の機器そのものや、保護、変圧器の運転へと、変電の知識を深めていきましょう。
テーマ別に、もっと深く学ぶ
気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめて学ぶ人向けにやさしく書いています。