電力科目の解説

高圧受電設備とは?キュービクルの機器構成とPAS・UGSの役割

高圧受電設備とは何か。キュービクルの機器構成とPAS・UGSの役割

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お悩み
こんなふうに思っていませんか?
  • 高圧受電設備の単線結線図で、PAS・VCT・DS・CBなどの略号の役割がわからない
  • 断路器と遮断器と負荷開閉器の違いがいつも混ざる
  • 負荷を増やしたとき、変圧器の容量が足りるかの計算に自信がない
この記事でわかること
  • 受電点から変圧器までの機器の並びと役割
  • 断路器・遮断器・負荷開閉器の違い
  • 変圧器容量の確認計算と、過去問のひっかけ

工場やビルの敷地の片すみにある金属の箱、キュービクルは、電験三種に合格したあと電気主任技術者として最もよく向き合う設備のひとつです。試験でも、機器の役割や保護のしくみが毎年のように出題されています。この記事では、電気の流れに沿って機器を一つずつたどります。

結論|まず30秒でわかる答え

高圧受電設備は、電力会社の6.6kVの高圧配電線から電気を受け取り、工場やビルで使える低い電圧に変えて配る設備で、箱に収めたものをキュービクルと呼びます。受電点から順に、構内の地絡を切り離す区分開閉器(架空ならPAS、地中ならUGS)、取引用の計器用変成器(VCT)、点検のときに回路を切り離す断路器(DS)、雷の異常電圧を逃がす避雷器(LA)、事故電流を切る遮断器(CB)、変圧器、力率を改善する進相コンデンサ(SC)が並びます。

高圧受電設備とは?キュービクルの役割

電気を多く使う工場やビルは、家庭のように100V・200Vで受け取るのではなく、6.6kVの高圧のまま受け取り、自分の敷地の中で変圧して使います。そのための設備が高圧受電設備です。機器を金属の箱にまとめたものをキュービクル式と呼び、場所をとらず安全なので広く使われています。

項目内容
受け取る電圧6.6kV(三相3線式)
使う人工場・ビル・病院・学校など、電気を多く使う需要家
持ち主原則として需要家(自家用電気工作物)
保安電気主任技術者を選任(または外部委託)して管理する
たとえると

高圧受電設備は、マンションの受水槽とポンプ室のようなものです。水道局(電力会社)から太い管(高圧)で水を受け取り、建物の中で使いやすい水圧(低圧)にして各部屋に配ります。受け取った後の設備の管理は、建物の持ち主の責任になります。

つまり、高圧受電設備は「電力会社と需要家の境目」にある設備です。どこからが需要家の責任か(責任分界点)を、まず意識しておきましょう。

受電点から変圧器まで:機器の並びと役割

CB形と呼ばれる代表的な高圧受電設備では、電気は次の順に機器を通ります。略号と役割をセットで押さえます。

順番略号名前役割
①PAS/UGS区分開閉器(架空は気中開閉器、地中は地中線用負荷開閉器)責任分界点の近くに置き、構内で地絡が起きたら自動で開いて、配電線へ事故を広げない
②VCT電力需給用計器用変成器電力会社との取引用の電力量計に、電圧と電流を小さくして渡す
③DS断路器点検・修理のときに、電流が流れていない状態で回路を切り離す
④LA避雷器雷や開閉による異常電圧を大地へ逃がす(A種接地工事)
⑤CB遮断器短絡や地絡の事故電流を切る(保護継電器と組み合わせる)
⑥LBS高圧交流負荷開閉器負荷電流を開閉する。限流ヒューズ(PF)と組み合わせて変圧器などを守る
⑦T変圧器6.6kVを、210V・105Vなど使う電圧に下げる
⑧SC・SR進相コンデンサ・直列リアクトル力率を改善する。直列リアクトルは高調波や突入電流をおさえる
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POINT

PASやUGSには、構内の地絡を検出して自動で開く制御装置がついています。構内の事故で配電線全体が停電する「波及事故」を防ぐのが、いちばん大切な役割です。

断路器・遮断器・負荷開閉器の違い:切れる電流で区別する

3つとも「回路を切る」機器ですが、切ってよい電流の大きさがまったく違います。ここが最もよく問われるポイントです。

機器切れる電流主な使い方
断路器(DS)電流が流れていないとき(無負荷)だけ点検・修理のときに、回路を電源から切り離す
負荷開閉器(LBS)ふだんの負荷電流まで負荷の入り切り。短絡電流は切れないので、限流ヒューズと組み合わせる
遮断器(CB)短絡電流などの事故電流まで事故のときに保護継電器の指令で自動で切る
たとえると

水道にたとえると、断路器は「水を止めてから外す配管の継ぎ手」、負荷開閉器は「ふだん使う蛇口」、遮断器は「水道管が破裂したときにも閉められる緊急遮断弁」です。継ぎ手を水が流れたまま外すと、水が噴き出して危険です。

注意|ここで間違えやすい

断路器は、電流が流れているときに開くと、アークが出てとても危険です。必ず遮断器や負荷開閉器で電流を止めてから開きます。「遮断器は点検・修理のときに電源から切り離すために使う」という説明は断路器のことで、実際の過去問で誤りの選択肢になりました。

保護のしくみ:短絡と地絡をどう見つけるか

高圧受電設備では、計器用変成器で電圧と電流を小さくし、保護継電器が事故を見つけて遮断器に「切れ」と指令します。

事故見つける装置ポイント
短絡変流器(CT)+過電流継電器(OCR)大きな電流が流れたら、遮断器を切る
地絡零相変流器(ZCT)+地絡継電器(GR)または地絡方向継電器(DGR)3本の電流の合計(零相電流)が0でなくなったら、遮断器やPASを切る
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注意|ここで間違えやすい

方向を見ない地絡継電器は、構内の高圧ケーブルが「長い」と、外の配電線で起きた地絡でも、ケーブルの静電容量を通って大きな零相電流が流れ、不要に動作することがあります。そのため、ケーブルが長い需要家では、電流の向きで構内か構外かを見分ける地絡方向継電器を使います。

POINT

6.6kVの高圧配電線は、多くが非接地方式です。地絡のときに流れる電流は小さいので、短絡とは別に、零相変流器で「3本の合計のわずかなずれ」を見張る必要があります。

CB形とPF・S形:受電設備の2つの形

高圧受電設備には、主な遮断装置に遮断器を使う「CB形」と、限流ヒューズ(PF)と高圧交流負荷開閉器(LBS)を組み合わせて使う「PF・S形」があります。

項目CB形PF・S形
主な遮断装置遮断器(CB)+保護継電器限流ヒューズ(PF)+負荷開閉器(LBS)
短絡のとき保護継電器の指令で遮断器が切る限流ヒューズが溶けて切る
使われる規模比較的大きな設備受電設備容量300kVA以下の小さな設備
特徴細かく保護を調整できる構成が簡単で安い
たとえると

CB形は、異常を見張る係(保護継電器)と、指示で扉を閉める係(遮断器)がいる大きな建物の防災センター。PF・S形は、熱で自動的に溶けて閉まる防火シャッター(ヒューズ)だけで守る小さな建物、というイメージです。

実際にどちらを使うかは、高圧受電設備規程や電力会社との協議で決まります。数値の区分は規程や電力会社の資料で確認してください。

計算してみる:負荷を増やしても変圧器は足りる?

負荷を増やすときは、変圧器の容量(kVA)を超えないか確かめます。力率が違う負荷を足すときは、kVAどうしを単純に足すのではなく、有効電力(kW)と無効電力(kvar)に分けて足します。

公式
皮相電力 S = √(有効電力P² + 無効電力Q²)

例題:300kVAの変圧器に50kWを増設

いまの負荷は200kW(力率0.8、遅れ)です。ここに50kW(力率1)の負荷を増やします。

STEP 1

いまの負荷の皮相電力:200 ÷ 0.8 = 250kVA

STEP 2

いまの負荷の無効電力:力率0.8なら無効電力は有効電力の0.75倍(sinθ÷cosθ=0.6÷0.8)なので、200 × 0.75 = 150kvar

STEP 3

増設後の有効電力:200 + 50 = 250kW。無効電力は力率1の負荷では増えないので150kvarのまま

STEP 4

増設後の皮相電力:√(250² + 150²)= √(62,500 + 22,500)= √85,000 = 約291.5kVA

STEP 5

300kVA以内なので、変圧器は足ります

250kVAと50kWを単純に足すと300になり、ぎりぎりに見えます。実際は、力率の違う電力はベクトルで足すので、約291.5kVAにおさまります。

進相コンデンサで余裕をつくる

STEP 1

100kvarの進相コンデンサを入れると、遅れの無効電力が 150 − 100 = 50kvar に減ります

STEP 2

皮相電力:√(250² + 50²)= √(62,500 + 2,500)= √65,000 = 約255kVA

STEP 3

291.5kVAから約255kVAへ下がり、変圧器に約45kVAの余裕ができました

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電験三種の過去問で問われているポイント

高圧受電設備は、機器の役割を問う論説問題と、変圧器や遮断器の容量を求める計算問題の両方で出題されています。

年度・問題形式ポイント
令和6年度下期 問11論説(誤りを選ぶ)高圧受電設備の機器。誤りは「遮断器(CB)は点検・修理の際に電源から開放する目的で用いる」(それは断路器)
令和7年度下期 問7論説(誤りを選ぶ)配電線と高圧受電設備の保護。誤りは「地絡過電流継電器は構内ケーブルのこう長が短い場合に不要動作する」(正しくは長い場合)
令和7年度下期 問13・令和7年度上期 問17計算変圧器に増設できる負荷や、負荷を追加したときの過負荷の防止
令和7年度下期 問12・令和6年度上期 問16・令和5年度上期 問16計算変圧器の二次側に置く遮断器の定格遮断電流(短絡電流)

ポイント1:略号と役割の「入れ替え」に注意

令和6年度下期は、LA・LBS・VCT・SCの説明が正しく、CBの説明だけが断路器の役割にすり替えられていました。「DSは無負荷、LBSは負荷電流、CBは事故電流」と、切れる電流で区別しておけば見抜けます。

ポイント2:地絡の不要動作は「ケーブルが長い」

令和7年度下期は、地絡過電流継電器の不要動作の条件を「短い」に変えたひっかけでした。ケーブルが長いほど静電容量が大きく、外部の地絡で流れる電流も大きくなる、と理由で覚えます。

ポイント3:容量の計算はkWとkvarに分けて足す

負荷の増設や過負荷の問題は、この記事の例題のように、有効電力と無効電力に分けて足し、最後に皮相電力に直すのが基本です。遮断器の定格遮断電流は、変圧器の%インピーダンスから短絡電流を求める計算になります。

よくある間違い・つまずきポイント

1. 断路器で負荷電流を切れると考える

断路器は無負荷のときだけ開閉できます。負荷電流は負荷開閉器、事故電流は遮断器で切ります。

2. PASは短絡電流も切れると考える

PASは構内の地絡を切り離すのが主な役割で、大きな短絡電流を切る能力はありません。短絡は変電所や構内の遮断器で切ります。

3. 力率の違う負荷のkVAを単純に足す

有効電力と無効電力に分けて足し、最後に √(P²+Q²) で皮相電力に直します。

4. 進相コンデンサは有効電力を減らすと考える

進相コンデンサが減らすのは遅れの無効電力です。有効電力は変わらず、皮相電力と電流が減ります。

5. 地絡継電器の不要動作はケーブルが短いと起きると考える

不要動作が起きやすいのは、構内の高圧ケーブルが長いときです。その対策が地絡方向継電器です。

よくある質問

Q. 高圧受電設備とは何ですか?

A. 電力会社の6.6kVの高圧配電線から電気を受け、工場やビルで使える電圧に変えて配る設備です。箱に収めたものをキュービクルと呼びます。

Q. PASとUGSの違いは何ですか?

A. どちらも責任分界点の近くに置く区分開閉器で、架空の引込みにはPAS、地中の引込みにはUGSを使います。

Q. 断路器と遮断器の違いは何ですか?

A. 断路器は電流が流れていないときに回路を切り離す機器、遮断器は短絡などの事故電流まで切ることができる機器です。

Q. VCTとは何ですか?

A. 電力需給用計器用変成器のことで、電力会社との取引用の電力量計に、電圧と電流を小さくして渡す機器です。

Q. PF・S形とは何ですか?

A. 限流ヒューズと高圧交流負荷開閉器を組み合わせた受電設備の形です。受電設備容量300kVA以下の小さな設備で使われます。

まとめ:電気の流れに沿って、略号と役割をセットで覚える

この記事の要点
  • 並び:PAS/UGS → VCT → DS → LA → CB → LBS(PF) → 変圧器 → SC・SR
  • DS=無負荷で切り離す/LBS=負荷電流/CB=事故電流
  • PAS・UGS=構内の地絡を切り離し、波及事故を防ぐ
  • 地絡は零相変流器で見張る。ケーブルが長いと地絡方向継電器
  • 容量の確認はkWとkvarに分けて足す(例:約291.5kVA、コンデンサで約255kVA)

まずは受電点から変圧器まで、機器の略号を順番に書き出して、それぞれの役割を一言で言えるか試してみてください。単線結線図が読めるようになると、試験だけでなく現場でも大きな武器になります。

この記事の理解を深める本と道具
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シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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次に読むべき記事

ここまでで、高圧受電設備の機器の並びと役割、変圧器容量の確認のしかたがわかりました。次は、受電設備の機器そのものや、保護、変圧器の運転へと、変電の知識を深めていきましょう。

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