回路設計

エミッタフォロワの使い方|増幅しないのに何に使う?2N3904で計算

ブレッドボードに挿したTO-92のトランジスタと抵抗、光る赤いLEDの写真に、エミッタフォロワの使い方入門・−0.7V・Vout≒Vin−0.7Vの文字

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エミッタフォロワ(エミッタホロワ)は、ベースに入力してエミッタから出力を取る回路で、出力は入力より約0.7V 低く、電圧は大きくなりません。弱い信号源で重い負荷を動かす中継ぎ役に使い、使いどころはインピーダンス変換の節、部品の値は計算の4ステップで決まります。

結論|まず30秒でわかる答え

エミッタフォロワの使い方の基本は、ベースに入力、エミッタから出力をとり、弱い信号源と重い負荷の間に入れることです。
①出力は入力より約0.7V 低い(Vout ≒ Vin − 0.7V)。電圧は大きくならない
②入力からはごく小さな電流しか取らず、出力からは大きな電流を出せる
③だから、弱い信号源(分圧・センサー)で重い負荷を動かす「中継ぎ役」に使う
5V を10kΩ+10kΩ で分けた2.5V に1kΩ をつなぐと0.42V に下がりますが、2N3904 のエミッタフォロワをはさむと約1.7V を保てます。

この記事に出てくる言葉

わからない言葉が出てきたら、ここに戻ってきてください。本文でも、初めて出たところで言い換えます。

エミッタフォロワベースに入力、エミッタから出力をとるトランジスタの回路。出力が入力に「付いていく(フォロー)」
ベース・エミッタ・コレクタトランジスタの3本の足。B は合図の入口、C は電流の入口、E は電流の出口
VBEベースとエミッタの間の電圧。電流が流れているときは約0.6〜0.7V
hFEエミッタ側の電流が、ベースの電流の何倍になるかの数字。同じ型番でもばらつく
負荷回路の出力につながって電流を使うもの(抵抗・LED・次の回路など)
インピーダンス交流も含めた「電流の流れにくさ」。この記事では抵抗と同じ意味で読んでよい
エミッタ抵抗 REエミッタと GND の間に入れる抵抗。トランジスタに流しておく電流を決める
定格部品が壊れずに使える上限。2N3904 の発熱は625mW(25°C)まで

エミッタフォロワは、トランジスタの回路の中でもいちばん部品が少ない形です。それなのに「増幅しない」と説明されることが多く、何のためにあるのかが見えにくい回路でもあります。

この記事では、理屈は「ベースとエミッタの間は約0.7V」の1つにしぼり、5V と2N3904 で組んで、計算して、測るところまで進みます。

ブレッドボードに挿したTO-92のトランジスタと抵抗、光る赤いLEDの写真に、エミッタフォロワの使い方入門・−0.7V・Vout≒Vin−0.7Vの文字

この記事で作るもの:弱い2.5Vで、1kΩの負荷を動かす

この記事のゴールは、5V を10kΩ と10kΩ で分けて作った2.5V で、1kΩ の負荷に電圧をかける回路です。直接つなぐと0.42V まで下がりますが、トランジスタを1個はさむと約1.7V になります。

抵抗2本で電圧を分ける「分圧」は、ほしい電圧を手軽に作れます。ただし、分圧の抵抗は電流を流す力が弱く、電流をたくさん取る負荷をつなぐと電圧が下がってしまいます。

そこで、分圧と負荷の間にエミッタフォロワをはさみます。分圧からはほとんど電流を取らず、負荷へは5V の電源から電流を流します。

つなぎ方負荷にかかる電圧
何もつながない(分圧だけ)2.50V
1kΩ を直接つなぐ0.42V
エミッタフォロワをはさむ約1.68V(2.5V − 約0.7V)

つまり、エミッタフォロワは電圧を大きくする回路ではなく、「弱い電圧を、電流を出せる電圧に変える」回路です。

5Vを10kΩと10kΩで分けた2.5Vを2N3904のベースに入れ、エミッタと GND の間に1kΩの回路図。右に分圧だけ2.50V、1kΩを直接つなぐと0.42V、フォロワをはさむと1.68Vの棒グラフ

エミッタフォロワの形:入力はベース、出力はエミッタ

エミッタフォロワは、NPN トランジスタのコレクタを電源に直接つなぎ、ベースに入力を入れ、エミッタと GND の間に負荷を置く回路です。コレクタが電源(交流で見ると GND と同じ)に固定されるので「コレクタ接地」とも呼びます。

足つなぐ先役目
ベース(B)入力合図を受け取る。電流はごく少し
コレクタ(C)+5V負荷の電流の入口
エミッタ(E)負荷 → GND出力。負荷へ電流を出す

2N3904 は、平らな面を手前・足を下にすると、左から E・B・C の順です。同じ黒い半円形のケース(TO-92)でも並びが違う品種があるので、使う部品のデータシートで確かめます。

トランジスタをスイッチとして使う記事では、負荷はコレクタ側(電源とコレクタの間)に置きました。エミッタフォロワは負荷をエミッタ側に置く、別の使い方です。

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同じ 2N3904 をスイッチとして使うときの、ベース抵抗の決め方と足の見分け方がわかる

つまり、エミッタフォロワは「C を電源、B を入力、E を出力」。負荷はエミッタと GND の間です。

エミッタフォロワの回路図(入力はベース、コレクタは+5V、出力はエミッタ、負荷はエミッタとGNDの間)と、2N3904の足の並び(平らな面を手前に左からE・B・C)

電流の道:負荷の電流は電源から、入力が出すのはごく少し

負荷へ流れる電流は、+5V からコレクタ、エミッタを通って負荷へ流れます。入力が出すのは、ベースへ流れるわずかな電流だけです。

入力が出す電流
Ib = Ie ÷(hFE + 1)

負荷の電流 Ie が1.68mA、hFE が70なら、入力が出す電流は 1.68mA ÷ 71 ≒ 24µA(0.024mA)です。負荷の電流のおよそ70分の1で済みます。

たとえると

大きな門を、守衛さんが小さなボタンで開け閉めするようなものです。ボタンを押す力(ベースの電流)は小さくても、門を動かす力(負荷の電流)はモーター(電源)が出します。

回路図に、+5Vからコレクタ・エミッタを通って負荷へ流れる大きな電流(赤)と、入力からベースへ流れる小さな電流(オレンジ)の矢印。Ib=Ie÷(hFE+1)

入力と出力の関係:出力は入力より約0.7V低い

エミッタフォロワの出力は、入力より約0.7V 低い電圧になります。入力が1V 上がれば出力もほぼ1V 上がるので、電圧の増幅度は約1倍です。

エミッタフォロワの出力
Vout ≒ Vin − 0.7V

0.7V 下がるのは、ベースとエミッタの間がダイオードと同じつくりだからです。ダイオードに電流を流すには、約0.6〜0.7V の電圧が要ります。

入力が0.6V ほどより低いうちは、ベースに電流が流れず、出力は0V のままです。入力がそれを超えると、出力は「入力−0.7V」で付いていきます。たとえば3.3V を入れると、出力は約2.6V です。

注意|0.7V は目安

0.7V は目安の値で、流れる電流と温度で少し変わります。一般に、温度が上がるとこの電圧は小さくなります。電圧を正確にそろえたいときは、オペアンプのフォロワ(後で説明)を使います。

つまり、出力は「入力−約0.7V」。この1つの式で、エミッタフォロワの出力の電圧は計算できます。

入力電圧と出力電圧のグラフ。オペアンプのフォロワはVout=Vinの点線、エミッタフォロワは約0.7V下の線。3.3V入力で2.6V出力(イメージ)

波形で見る:形はそのまま、0.7V下にずれるだけ

入力が2.5V を中心に±1V でゆれる信号なら、出力は1.8V を中心に±1V でゆれます。波の形と大きさは同じで、高さが0.7V 下にずれるだけです。

電圧が大きくならないので「増幅しない回路」と呼ばれますが、出力からは入力よりずっと大きな電流を出せます。電圧ではなく、電流(電力)を大きくする回路と考えるとわかりやすくなります。

2.5Vを中心に±1Vでゆれる入力の波と、1.8Vを中心に±1Vでゆれる出力の波。差は0.7V(イメージ)

なぜ付いていく?出力が勝手に「入力−0.7V」に戻る

入力を2.5V にしたとき、出力が「入力−0.7V」に落ち着くのは、出力が自分で調整されるしくみがあるからです。

出力が低すぎる(例 1.0V)

ベースとエミッタの間が1.5V に広がり、電流が一気に増える。負荷の電圧が上がる

出力が高すぎる(例 2.0V)

ベースとエミッタの間が0.5V に縮み、電流が減る。負荷の電圧が下がる

ちょうどよい(1.8V)

ベースとエミッタの間が約0.7V になったところで落ち着く

出力(エミッタ)の電圧が動くと、ベースとエミッタの間の電圧が変わり、それが電流を元に戻す向きに働きます。負荷が少し変わっても、出力の電圧はほぼ「入力−0.7V」のままです。

つまり、エミッタフォロワは「出力の電圧で自分の電流を調整する」回路。だから出力が入力に付いていきます。

入力2.5Vで、出力1.0Vならベース−エミッタ間1.5Vで電流が増えて上がる、2.0Vなら0.5Vで電流が減って下がる、1.8Vで0.7Vになり落ち着く、の3つの場面

何に使う?弱い信号源で、重い負荷を動かす(インピーダンス変換)

エミッタフォロワのいちばんの使い道は、電流を出す力の弱い信号源と、電流をたくさん使う負荷の間の「中継ぎ」です。2.5V の分圧に1kΩ をつなぐ例では、直接なら0.42V、はさめば約1.7V になります。

直接つなぐと:0.42Vまで下がる

5V を10kΩ と10kΩ で分けると、何もつながないときは2.5V です。ここに1kΩ の負荷をつなぐと、下の10kΩ と1kΩ が並列になり、約0.91kΩ になります。

電圧は 5V × 0.91 ÷(10+0.91)≒ 0.42V。ほしかった2.5V から大きく下がります。

エミッタフォロワをはさむと:約1.7Vを保てる

間にエミッタフォロワをはさむと、分圧から取る電流は約24µA だけです。負荷の1kΩ には、5V の電源からトランジスタを通って約1.7mA が流れます。出力は 2.5V − 0.7V = 1.8V に近い約1.68V です。

つなぎ方負荷にかかる電圧分圧から取る電流
1kΩ を直接つなぐ0.42V約0.42mA(1kΩ の分)
エミッタフォロワをはさむ約1.68V約24µA

このように「電流を出す力が弱い(内側の抵抗が大きい)もの」を「電流を出す力が強い(内側の抵抗が小さい)もの」に変えることを、インピーダンス変換と呼びます。

つまり、エミッタフォロワは0.7V を失う代わりに、負荷の重さで電圧が崩れない出力を作ります。

左は10kΩ+10kΩの分圧に1kΩを直接つなぎ0.42V、右はエミッタフォロワをはさみ1.68Vの回路の比較。入力の電流は約24µA

入力から見ると、負荷が(hFE+1)倍の大きさに見える

信号源から見ると、エミッタフォロワの先の負荷は、本当の抵抗の(hFE+1)倍の大きさに見えます。入力の電流が負荷の電流の(hFE+1)分の1になるからです。

ベースから見た負荷の大きさ(目安)
約(hFE + 1)× RL

hFE が70なら、1kΩ の負荷は 1kΩ ×(70+1)= 71kΩ に見えます。10kΩ の分圧から見て71kΩ は十分大きいので、分圧の電圧はあまり下がりません。

反対に、出力側から見ると、エミッタフォロワは「電流をたくさん出せる、内側の抵抗が小さい電源」に見えます。

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信号源から直接見ると1kΩ、エミッタフォロワ越しに見ると1kΩ×(70+1)=71kΩに見えることを示す2つの図

計算の4ステップ:出力の電圧・電流・入力の電流・発熱

エミッタフォロワの計算は、①出力の電圧 ②出力の電流 ③入力の電流 ④発熱の4ステップです。ここまでで、部品の値が足りるかを確かめられます。

STEP 1 出力の電圧

Vout = Vin − 0.7V = 2.5 − 0.7 = 1.8V(目安)

STEP 2 出力の電流

Ie = Vout ÷ RL = 1.8V ÷ 1kΩ = 1.8mA

STEP 3 入力の電流

Ib = Ie ÷(hFE+1)= 1.8mA ÷ 71 ≒ 25µA。hFE は 2N3904 の1mA での最小値70を使う

STEP 4 発熱

P =(電源 − 出力)× Ie =(5 − 1.8)× 1.8mA ≒ 5.8mW。定格625mW よりずっと小さいので OK

STEP 3 の入力の電流は、分圧の電圧を少し下げます。分圧の内側の抵抗(10kΩ と10kΩ の並列で5kΩ)に約24µA が流れると、約0.12V 下がります。これも入れて計算すると、ベースは約2.38V、出力は約1.68V です(python で計算)。

hFE は最小値で計算しました。実際の部品は hFE がもっと大きいことが多く、hFE が200なら出力は約1.76V になります。最小値で計算しておけば、どの1個が届いても足ります。

POINT|hFE は「その電流での最小値」

hFE は同じ型番でもばらつき、流す電流でも変わります。2N3904 では、1mA で最小70、10mA で最小100、100mA で最小30です(データシート)。実際に流す電流に近い条件の最小値を使います。

4ステップのカード。出力1.8V、出力の電流1.8mA、入力の電流1.8mA÷71≒25µA、発熱3.2V×1.8mA≒5.8mW。分圧が0.12V下がりベース2.38V・出力1.68Vの確かめ

エミッタ抵抗REの決め方:下に振れる分の電流を流しておく

信号をコンデンサ越しに負荷へ渡すときは、エミッタと GND の間にエミッタ抵抗 RE を入れます。RE は「信号が下に振れたときに、出力を下へ引っ張れるだけの電流」を流しておくように決めます。目安の式は、下に振れる限界 ≒ Iq ×(RE∥RL)です。

ここまでの例は、負荷そのものがエミッタと GND の間にありました。負荷そのものがエミッタ抵抗の役目をしています。ところが、音の信号のように0V を中心にゆれる信号は、コンデンサで直流を止めて渡すことが多く、その場合は別にエミッタ抵抗 RE を入れます。

トランジスタは、エミッタから電流を「出す」ことはできますが、「吸い込む」ことはできません。信号が下に振れるとき、出力を下へ引っ張るのは RE だけです。そのため、RE に流しておく電流 Iq(何も信号がないときの電流)が少ないと、波形の下が切れてしまいます。

計算例:±1Vの信号を、1kΩの負荷に渡す

STEP 1 ふだんの出力の電圧

ベースを10kΩ+10kΩ で2.5V にすると、エミッタは約1.8V

STEP 2 RE 1kΩ で試す

Iq = 1.8V ÷ 1kΩ = 1.8mA。RE と RL の並列は500Ω。下の限界 = 1.8mA × 500Ω = 0.90V。1V に届かず、下が切れる

STEP 3 RE 470Ω にする

Iq = 1.8V ÷ 470Ω ≒ 3.83mA。並列は約320Ω。下の限界 = 3.83mA × 320Ω ≒ 1.22V。1V より大きいので OK

STEP 4 発熱を確かめる

P =(5 − 1.8)× 3.83mA ≒ 12.3mW。小さいので OK

RE をいくつまで大きくできるかは、1.8 × RL ÷(RE+RL)≧ 1V から RE ≦ 800Ω と出せます。余裕をみて、その下の470Ω を選びました。ベースの電流で分圧が少し下がる分も入れて python で計算すると、470Ω で約1.11V、1kΩ で約0.86V で、結論は同じです。

注意|RE を小さくしすぎない

RE を小さくするほど下へ振れる力は増えますが、Iq が増えてトランジスタの発熱と消費電流が増えます。振れ幅に少し余裕がある値で止めます。

つまり、RE は「Iq ×(RE∥RL)が、下に振りたい幅より大きい」ように決めます。足りないと波形の下が切れます。

コンデンサで信号を入出力するエミッタフォロワの回路図と、RE 1kΩでは下の限界0.90Vで波形の下が切れ、RE 470Ωでは限界1.22Vで±1Vが通る波形の比較

発熱と定格:P=(電源−出力)×電流で確かめる

エミッタフォロワのトランジスタは、電源と出力の電圧の差に、流れる電流をかけた分だけ熱を出します。2N3904 の上限は625mW(25°C)なので、目安としてその半分以下で使います。

トランジスタの発熱
P = VCE × Ie =(電源 − 出力)× 出力の電流
場面出力・電流発熱判断
5V・負荷1kΩ(例1)1.8V・1.8mA5.8mW問題なし
5V・負荷100Ω1.8V・18mA58mW問題なし
12V・負荷100Ω(入力5V)4.3V・43mA331mW半分を超える。電源を下げるか大きい部品に
出力を GND に短絡(5V)0V・約108mA(hFE 300 の例)約540mW定格に近い。短絡させない

2N3904 のデータシートでは、周りの温度と部品の間の熱抵抗(RθJA)が200°C/W です。1W で200°C 上がる計算なので、331mW なら約66°C 上がります。周りが25°C を超えると、上限は1°C あたり5.0mW ずつ下がり、50°C では500mW です。

「半分以下」は余裕をみた目安です。実際の基板では、近くの部品の熱や風通しでも変わります。

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つまり、電源と出力の差が大きく、電流が多いほど熱くなります。短絡は電源の電圧が全部トランジスタにかかるので、いちばん危険です。

4つの場面の発熱の棒グラフ。5V・1kΩで5.8mW、5V・100Ωで58mW、12V・100Ωで331mW、出力の短絡で約540mW。定格625mWと半分の線

オペアンプのボルテージフォロワとの使い分け

電圧をそのまま正確に渡したいならオペアンプのボルテージフォロワ、大きな電流を出したいならエミッタフォロワ、と使い分けます。

エミッタフォロワオペアンプのフォロワ
出力の電圧入力 − 約0.7V入力と同じ
入力の電流出力の電流 ÷(hFE+1)ほぼ0(pA〜nA)
出せる電流(目安)数十〜100mA 級(2N3904 の定格は200mA)数mA〜20mA ほど(MCP6002 の短絡電流は 5.5V で標準±23mA)
下へ引く力RE まかせあり
温度で0.7V が変わるほぼ変わらない
部品トランジスタ1個IC と電源

オペアンプのフォロワは、入力の電流がほぼ0で、出力は入力とぴったり同じ電圧です。そのかわり、オペアンプの出力から出せる電流は多くありません。

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つまり、「正確さ」はオペアンプ、「電流の大きさ」はトランジスタ。数mA までの信号ならオペアンプ、数十mA を出すならエミッタフォロワが目安です。

エミッタフォロワとオペアンプのフォロワの比較表。出力の電圧、入力の電流、出せる電流、下へ引く力、温度、部品

いいとこ取り:オペアンプの帰還の中にトランジスタを入れる

両方の良いところを合わせる回路もあります。オペアンプの出力でトランジスタのベースを動かし、オペアンプの−入力に戻す線をエミッタからとります。

オペアンプは「+と−を同じにする」ように出力を動かすので、エミッタの電圧が入力と同じ2.5V になるまで、ベースを約3.2V まで上げます。0.7V のずれはオペアンプが消し、負荷の電流(2.5V ÷ 100Ω = 25mA)はトランジスタが電源から流します。

電流を多く流す定電圧の回路や、LED を一定の電流で光らせる回路などで使われる形です。この記事では考え方だけを紹介します。

オペアンプの出力でNPNトランジスタのベースを動かし、エミッタから−入力へ戻す回路図。入力2.5Vで出力2.5V、負荷100Ωに25mA

ブレッドボードで組む:2N3904のエミッタフォロワ

ブレッドボードでは、2N3904 を平らな面を手前にして挿し、左から E・B・C の列にします。C を +5V、B を10kΩ+10kΩ の分圧、E と GND の間に1kΩ をつなぎます。

① トランジスタを挿す

平らな面を手前にして、下半分の h 行の12・13・14列に挿す。12列が E、13列が B、14列が C

② C を +5V へ

14列の下(f 行)と上(d 行)を線でつなぎ、上の14列の a 行から +5V のレールへ

③ 分圧を作る

10kΩ を上の14列(+5V)と下の13列(B)の間に、もう1本の10kΩ を13列と17列の間に。17列は GND のレールへ

④ 負荷をつなぐ

1kΩ を12列(E)と8列の間に。8列を GND のレールへ

ブレッドボードは、縦5つの穴(a〜e、f〜j)がつながっています。中央の溝をまたいだ上と下はつながっていないので、14列の上と下は線でつなぎます。

抵抗の色は、10kΩ が茶・黒・橙、1kΩ が茶・黒・赤(4本目は誤差の金)です。

ブレッドボードの配線図。2N3904をh行の12(E)・13(B)・14(C)列に挿し、14列を+5Vレールへ、10kΩを+5Vの14列と13列の間、もう1本の10kΩを13列とGNDの間、1kΩを12列とGNDの間

組んだら測る:BとEの電圧と、その差

テスターの黒を GND に当てたまま、赤で B・E・C の電圧を測ります。

測る所例(計算のイメージ)見る点
① B(13列)約2.38V2.5V より少し低い
② E(12列)約1.68V①より約0.7V 低い
③ ①−②約0.70V0.6〜0.7V なら付いていっている
④ C(14列)5.00V電源と同じ

E が0V のままなら、足の並びか C の配線を見直します。E と B がほぼ同じ電圧なら、B と E がつながってしまっていないかを確かめます。数値は hFE 70 で計算したイメージで、実際は部品のばらつきで少しずれます。

回路図と測る所の表。B 約2.38V、E 約1.68V、差 約0.70V、C 5.00V(イメージ)

よくある失敗4つ:0.7V・短絡・足の並び・下が切れる

エミッタフォロワでつまずく原因は、0.7V 下がるのを忘れる・出力の短絡・足の並びの取り違え・波形の下が切れるの4つが代表です。

失敗1:0.7V下がるのを忘れる

3.3V のマイコンの信号で、負荷に3.3V をかけたいのに、出力は約2.6V にしかなりません。0.7V 分を見込んで入力を決めるか、オペアンプを使います。

失敗2:出力をGNDに短絡する

テスターの棒などで出力を GND に触れると、電源の電圧が全部トランジスタにかかります。5V でも数百mW の熱になります。電流を制限する抵抗を入れるか、短絡させない配線にします。

失敗3:足の並びの取り違え

2N3904 は平らな面を手前にして左から E・B・C ですが、同じ形のケースで並びの違う品種があります。部品を変えたら、データシートの図で確かめます。

失敗4:波形の下が切れる

コンデンサ越しに信号を渡すとき、RE が大きすぎると下へ引く電流が足りず、波形の下が平らに切れます。Iq ×(RE∥RL)が振れ幅より大きくなるように RE を決めます。

つまり、動かないときは「B と E の差が約0.7V か」を最初に測ると、原因を早くしぼれます。

4つの失敗。3.3V入力で2.6Vしか出ない、出力をGNDに短絡して発熱、足の並びの取り違え、REが大きすぎて波形の下が切れる

よくある質問(FAQ)

Q. エミッタフォロワの使い方は?

A. 弱い信号源と電流を多く使う負荷の間に入れて使います。入力の電流は小さく、出力からは大きな電流を出せます。

Q. エミッタフォロワは増幅しないのに何に使う?

A. 電圧は約1倍ですが電流を大きくできます。分圧やセンサーの電圧を下げずに負荷へ渡す中継ぎに使います。

Q. エミッタフォロワの出力電圧は?

A. 入力より約0.7V低い電圧です。0.7Vは目安で、流れる電流と温度で0.6〜0.7Vほど変わります。

Q. エミッタ抵抗はどう決める?

A. 信号が下に振れる分の電流を流しておくように決めます。下の限界≒Iq×(RE∥RL)が振れ幅を超える値にします。

Q. エミッタフォロワとボルテージフォロワの違いは?

A. トランジスタは0.7V下がるが大きな電流を出せ、オペアンプは入力と同じ電圧だが出せる電流は小さめです。

Q. エミッタフォロワの発熱の計算は?

A. 電源と出力の電圧の差に出力の電流をかけます。2N3904は625mW(25°C)が上限で、半分以下を目安にします。

まとめ
  • エミッタフォロワは、ベースに入力・エミッタから出力。C は電源、負荷は E と GND の間
  • 出力は入力より約0.7V 低い(Vout ≒ Vin − 0.7V)。電圧は約1倍
  • 入力の電流は負荷の電流の(hFE+1)分の1。弱い信号源で重い負荷を動かせる
  • 例:10kΩ+10kΩ の2.5V に1kΩ。直接なら0.42V、はさめば約1.7V
  • RE は Iq ×(RE∥RL)が振れ幅を超えるように。発熱は(電源−出力)×電流
  • 電圧の正確さならオペアンプ、電流の大きさならエミッタフォロワ

次の一歩として、手元の回路図から「エミッタに負荷がつながったトランジスタ」を1つ探し、ベースの電圧から0.7V 引いて、出力の電圧を計算してみてください。

参考にした資料

法令・規格・資料は改訂されることがあります。実務で使うときは、発行元の最新版で確かめてください。

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回路の電圧や導通を自分の手で確かめるなら、手元にテスターが1台あると便利です。三和電気計器のデジタルマルチメータ(テスター)CD772です。電圧や抵抗などを測れます。

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シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

テーマ別に、もっと深く学ぶ

気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめて学ぶ人向けにやさしく書いています。

つまずきやすい「違い」を一気に解決
半導体素子の比較表|ダイオード・サイリスタ・GTO・BJT・MOSFET・IGBTの違い
違いがわかる
半導体素子の比較表|ダイオード・サイリスタ・GTO・BJT・MOSFET・IGBTの違い

ダイオード・BJT・MOSFET など、半導体の部品の違いを1つの表で整理できる

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FET(電界効果トランジスタ)とは?接合形・MOS形の種類と動作原理を図解
違いがわかる
FET(電界効果トランジスタ)とは?接合形・MOS形の種類と動作原理を図解

トランジスタ(BJT)と FET の違い。FET で同じ回路を作るとどうなるかにつながる

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ダイオードの特徴と特性|整流作用・順方向電圧0.7V・種類を図解
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ダイオードの特徴と特性|整流作用・順方向電圧0.7V・種類を図解

「0.7V」の正体、ダイオードの順方向電圧の意味がわかる

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直流と交流の違いとは?なぜ家のコンセントは交流なのか
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直流と交流の違いとは?なぜ家のコンセントは交流なのか

直流と交流の違い。RE の章の「コンデンサで直流を止める」の前提になる

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計算力アップ・資格対策
トランジスタ増幅回路の計算|hパラメータ等価回路で電圧増幅度を求める方法
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エミッタフォロワの増幅度を h パラメータで式から確かめられる

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分圧・分流の法則|公式と覚え方、分圧回路・分流器の計算を例題で図解
計算力アップ
分圧・分流の法則|公式と覚え方、分圧回路・分流器の計算を例題で図解

10kΩ+10kΩ の分圧の計算の土台を、例題で練習できる

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合成抵抗の求め方|直列・並列・和分の積からブリッジ回路まで例題で図解(計算ツール付き)
計算力アップ
合成抵抗の求め方|直列・並列・和分の積からブリッジ回路まで例題で図解(計算ツール付き)

「10kΩ と1kΩ の並列で約0.91kΩ」を自分で計算できる

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電力と電力量の違い|P=VIとW=Ptを完全マスター
計算力アップ
電力と電力量の違い|P=VIとW=Ptを完全マスター

発熱 P=VI の計算と、電力と電力量の違いがわかる

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データシートの読み方|読む順番6ステップとmin・typ・maxの意味
計算力アップ
データシートの読み方|読む順番6ステップとmin・typ・maxの意味

hFE の最小値や定格を、データシートのどこで読むかがわかる

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