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ブレッドボードで動いた回路が基板で動かない理由は、線の長さ・GND の帰り道・パスコンの距離・部品の向きなど、回路図に出ない「形」が変わるからです。確かめる順は目 → テスター → オシロ、発注前の点検はチェック5つへ。
ブレッドボードで動いた回路は、基板にしても動くと思いがちです。回路図が同じなら、部品のつながりは同じだからです。
ところが基板では、線の長さや道すじ、つなぎ目の作り方、部品の足の位置が変わります。この記事では、その違いを5つの理由に分け、数字の目安と確かめ方を、はじめての人向けに順に説明します。

結論:基板で動かない理由は5つ。回路図は同じでも「形」が変わる
ブレッドボードで動いて基板で動かない理由は、配線の寄生成分・抵抗・GND の帰り道・パスコンの距離・部品の向きとフットプリントの5つに分けられます。
| 理由 | 何が起きる | まず見る所 |
|---|---|---|
| ① 配線の寄生成分 | 長い線がコイルになり、急な電流でスパイク(とがった電圧)が出る | 速い信号・電源の線の長さ |
| ② 抵抗 | はんだ不良でつながったり切れたり、細いパターンで電圧が下がる | はんだの形・パターンの太さ |
| ③ GND の帰り道 | 大きな電流と GND を共有して、0V が浮く | モーターや LED の GND の道 |
| ④ パスコンの距離 | IC から遠くて、電源のゆれを吸えない | 電源ピンとパスコンの距離 |
| ⑤ 部品の向き・フットプリント | 足の番号が違い、つながりが変わる | データシートのピンの表 |
このうち、はじめての基板で一番多いのは⑤(足の取り違え)と②(はんだ)です。目で見てわかるので、最初に確かめます。①③④は、速い信号や大きな電流を使う回路で効いてきます。
つまり、「回路図が同じだから大丈夫」ではなく、「形が変わったところ」を順に疑います。

ブレッドボードと基板では、何が変わるのか
ブレッドボードは、ジャンパー線とばねの接点で部品をつなぎます。基板は、銅のパターンとはんだでつなぎます。つながる相手は同じでも、線の長さ・太さ・道すじ・つなぎ目・足の位置が変わります。
| ブレッドボード | 基板 | |
|---|---|---|
| 線 | ジャンパー線(直径0.4〜0.7mm) | 銅のパターン(幅も長さも設計しだい) |
| つなぎ目 | ばねの接点ではさむ | はんだで固定する |
| GND | レール(長い金具)に各自つなぐ | パターンやベタGND の引き方しだい |
| 部品の足 | 挿すときに目で見て向きを決める | フットプリントの位置に決まる |
ブレッドボードで動いたのは、その「形」でたまたま条件がそろっていたから、ということもあります。基板で形が変わると、そろっていた条件がくずれます。

理由① 配線の寄生成分:線は小さなコイルとコンデンサ
線は、ただの導線ではなく「小さなコイル」でもあります。直径0.5mm の線なら、10cm で約119nH(1mm あたり約1nH が目安)。となりの線との間には、小さなコンデンサもできます。
回路図にはない、この小さなコイルやコンデンサを「寄生成分」と呼びます。ゆっくり変わる信号ではほとんど効きませんが、電流が急に変わると、コイルの性質が電圧を生みます。
0.1A の電流が10ns(1億分の1秒)で切り替わると、10cm の線だけで約1.2V のスパイクが立つ計算です(イメージ)。5V や 3.3V の回路では、マイコンのリセットや、クロックの数え間違いの原因になります。
| 線の長さ(直径0.5mm) | インダクタンスの目安 |
|---|---|
| 3mm | 約1.5nH |
| 3cm | 約28nH |
| 10cm | 約119nH |
ブレッドボードでは、となりの列の金具どうしの間にも約2〜5pF のコンデンサがあります(DigiKey の測定)。5pF は1MHz で約32kΩ の通り道になるので、抵抗の大きい所や速い信号では無視できません。
基板では、この大きさと場所が変わります。基板で線が長くなった所や、行きと帰りの線が離れて輪が大きくなった所で、ブレッドボードでは出なかったスパイクやリンギング(波のゆれ)が出ることがあります。
配線1cm で何nH になるか、サージの電圧をどう計算するかが図でわかる
つまり、速い信号・電源・大きな電流を切り替える線は「短く・行きと帰りを近く」が基本です。

線の長さとインダクタンス:長いほど、スパイクが大きくなる
線のインダクタンスは、長さにほぼ比例して大きくなります。電流の変わり方が同じなら、スパイクの大きさもインダクタンスに比例します。
オシロスコープで波を見ると、角のところで上下にゆれる「リンギング」として見えます。プローブの GND の線が長いと、測る側でもリンギングが出るので注意します。
波形にリンギングが出るとき、配線のせいかプローブのせいかを見分ける方法がわかる

理由② 抵抗:細いパターンは、ジャンパー線より抵抗が大きい
基板の細いパターンは、ブレッドボードのジャンパー線より抵抗が大きくなりがちです。幅0.3mm・長さ10cm のパターンは約164mΩ で、1A 流すと約0.16V 下がります。
| 線(長さ10cm) | 抵抗 | 1A のときの電圧の下がり |
|---|---|---|
| ジャンパー線(直径0.64mm) | 約5.3mΩ | 約5.3mV |
| パターン 幅1mm | 約49mΩ | 約49mV |
| パターン 幅0.3mm | 約164mΩ | 約164mV |
パターンの銅の厚さは、よくある基板で35μm(0.035mm)です。ジャンパー線より断面がずっと小さいので、同じ長さでも抵抗が大きくなります(銅の抵抗率から計算した目安)。
モーターや LED をたくさん光らせる回路では、電流の大きい線が細いと、IC に届く電圧が下がって止まることがあります。電流の大きい線は、太く・短くします。

はんだ付けの不良も「つなぎ目の抵抗」
つなぎ目にも抵抗があります。ブレッドボードではばねの接点、基板でははんだです。はんだがうまくのっていないと、つながったり切れたりして、動いたり止まったりします。
| はんだの形 | 見分け方 | 起きること |
|---|---|---|
| よいはんだ | 山のすそが広がり、ランド(銅の丸)と足をぬらしている | しっかりつながる |
| イモはんだ | 丸く盛り上がるだけで、すそが広がらない | つながったり切れたりする |
| ブリッジ | となりのランドとはんだでつながっている | つながってはいけない所がつながる |
ブレッドボードの接点も、抜き差しをくり返すとゆるみます。BB830 というブレッドボードのデータシートでは、定格は 36V・2A です。大きな電流を流す回路は、ブレッドボードの段階から無理をさせないようにします。
はんだを見たら、テスターの導通(音が鳴るモード)で、足とパターンの先がつながっているかを確かめます。

理由③ GNDの帰り道:大きな電流と同じ線を使っていないか
電流は、必ず GND を通って電源の − に帰ります。モーターのような大きな電流と、センサーやマイコンが GND の線を共有すると、その線の抵抗で GND が浮き、0V が 0V でなくなります。
ブレッドボードでは、部品ごとに GND の線を太いレールにつなぐことが多く、帰り道が自然に分かれています。基板で GND を1本の細いパターンで「数珠つなぎ」にすると、モーターの電流がセンサーの GND の道を通るようになります。
0.1V は小さく見えますが、10ビット・5V の A/D 変換では1目盛りが 5V÷1024≒4.9mV なので、約20目盛りのずれです(例の数字)。モーターが回るたびに、センサーの値がゆれます。
| モーター停止 | モーター回転 | |
|---|---|---|
| 共通の線で下がる電圧 | 0V | 0.1V |
| センサーの GND(電源から見て) | 0V | 0.1V 浮く |
| A/D の値のずれ(10ビット・5V) | 0 | 約20目盛り |
パワーGND と信号GND の分け方、1点アース・スター接続の引き方が手順でわかる
つまり、GND は「線」ではなく「電流の帰り道」。大きな電流の帰り道と、小さな信号の基準を同じ道にしないことが大事です。

GNDが浮くと何が起きる? センサーの値・通信・リセット
GND が浮くと、センサーの値がゆれるだけでなく、マイコンどうしの通信の「0」と「1」の判定がずれたり、リセットの端子が一瞬「押された」と取り違えられたりします。
テスターで確かめるなら、モーターを回した状態で、電源の GND とセンサーの GND の間の電圧を測ります。0V から離れていたら、GND の道を共有しているサインです。

理由④ パスコンの距離:ICから遠いと、間の線がじゃまをする
パスコンは、IC の電源ピンのすぐ横に置きます。10MHz では、3cm の線は約1.8Ω になり、0.1μF のコンデンサ(約0.16Ω)より大きくなります。線がじゃまをして、パスコンが効かなくなります。
| パスコンまでの線(10MHz) | 線の通りにくさ | 0.1μF の通りにくさ | 効き目 |
|---|---|---|---|
| 3mm | 約0.09Ω | 約0.16Ω | 効く |
| 3cm | 約1.8Ω | 約0.16Ω | 線がじゃまをする |
パスコンは、IC が急に電流を使ったときに、近くから電流を出してあげる「小さな電池」の役目です。間の線が長いと、線のインダクタンスが電流の急な変化をじゃまするので、電池が遠くにあるのと同じになります。
MCP6002 というオペアンプのデータシートでは、0.01〜0.1μF のパスコンを電源ピンから2mm 以内に置くように書かれています。電源ピンだけでなく、GND ピンまでの帰りの線も短くします。
パスコンをなぜ IC のすぐ近くに置くのか、離すと何が起きるのかが図でわかる
つまり、パスコンは「容量」より先に「距離」。電源ピンと GND ピンの両方のすぐ横に置きます。

パスコンの効き目は、線のインダクタンスで決まる
コンデンサと線のインダクタンスを合わせた「通りにくさ(インピーダンス)」を周波数で描くと、遠いパスコンは数MHz から上で通りにくさが大きくなり、ただのコイルのようになります(グラフはイメージ)。
近いパスコンは、もっと高い周波数まで通りにくさが小さいままです。IC が出す速いノイズを吸えるかどうかは、この差で決まります。

見落としやすい:モジュール基板に載っていた部品の写し忘れ
ブレッドボードでは、センサーなどを小さな基板に載せた「モジュール」を使うことがよくあります。モジュールには、パスコン・プルアップ抵抗・レギュレータ・レベル変換などの小さな部品が、最初から載っていることがあります(どれが載っているかは商品ごとに違います)。
自分の基板にセンサーの IC だけを載せると、これらの部品がなくなります。プルアップ抵抗がないと通信が止まり、パスコンがないと動きが不安定になります。モジュールの回路図を見て、載っていた部品を全部写します。

理由⑤ 部品の向き・フットプリント:同じ形でも、足の並びが違う
基板では、部品の足の位置がフットプリント(はんだ付けする場所の並び)で決まります。同じ形の部品でも、品番によって足の並びが違います。ブレッドボードでは挿すときに目で見て直せますが、基板では直せません。
よくある例が、3本足のレギュレータです。TI のデータシートでは、LM7805 は 1番が入力・2番が GND・3番が出力ですが、LM1117 は 1番が GND(可変の品種は ADJ)・2番が出力・3番が入力です。
| 品番 | 1番 | 2番 | 3番 |
|---|---|---|---|
| LM7805 | 入力 | GND | 出力 |
| LM1117 | GND(ADJ) | 出力 | 入力 |
7805 用に作ったフットプリントに LM1117 を付けると、入力と出力が逆になります。どちらも同じ TO-220 という形なので、見た目では気づきません。
フットプリント・ランド・パッドの違いと、部品をのせる「足場」の考え方がわかる
つまり、フットプリントは「形」でなく「品番」で選び、データシートのピンの表と1本ずつ照らし合わせます。

フットプリントの取り違え3つ:足の順番・極性・裏から見た図
| 取り違え | 例 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 足の順番 | 同じ TO-92 のトランジスタでも E-B-C・E-C-B・C-B-E がある | 品番のデータシートのピンの表で確かめる |
| 極性 | LED・ダイオード・電解コンデンサの向き | シルク(基板の白い印)の印と、部品の印をそろえる |
| 裏から見た図 | コネクタのピン配置が「裏から見た図」で描かれている | 表から見た図か、裏から見た図かを確かめる(左右が反対) |
データシートのピン配置の図には、「Top View(上から見た図)」「Bottom View(下から見た図)」のような書き添えがあります。フットプリントを作るときは、この書き添えを必ず読みます。
データシートを読む順番と、ピン配置の図の見方がわかる

基板で動かないときに確かめる順:目 → テスター → オシロ
基板で動かないときは、電源を入れる前に目で見て、次にテスター、最後にオシロスコープの順で確かめます。電源を入れたら、IC の電源ピンの根元の電圧から見ます。
電源・GND・リセット・信号の順に、原因をしぼりこむ一般の手順は、切り分けの記事にまとめています。
電源→GND→リセット→信号の順に、テスターとオシロで原因をしぼる7ステップがわかる

基板を発注する前のチェック5つ
基板を作り直すと、お金も日数もかかります。発注する前に、ブレッドボードとの違い(線の長さ・太さ・GND・パスコン・足)を先につぶしておきます。
| 確かめること | 目安・見る所 | |
|---|---|---|
| ① | 速い信号・大きな電流の線は短いか | クロック・電源・モーターの線 |
| ② | 電流の大きい線は太いか | 1A なら幅を広く(計算で確かめる) |
| ③ | 大きな電流の GND は別の道か | センサー・A/D と共有しない |
| ④ | パスコンは電源ピンのすぐ横か | 電源ピンと GND ピンの両方が近いか |
| ⑤ | フットプリントの足の番号は正しいか | データシートの表と1本ずつ照合 |
回路図そのものの見落とし(電源・GND・未接続のピン・定格)は、回路図レビューのチェックリストで確かめます。このページの5つは、その「基板の形」版です。


