※本記事にはプロモーション(広告)が含まれています。
- ベース抵抗の計算で、何Ωにすればいいかわからない
- マイコンで LED やリレーを ON/OFF したいが、トランジスタを使ったことがない
- hFE や「飽和」という言葉が出てきて、手が止まった
- トランジスタの3本の足の見分け方と、2本の電流の道
- ベース抵抗の計算の3ステップ(hFE はどの値を使うか)
- LED・リレーの計算例と、3.3V/5V 入力の早見表
- ブレッドボードでの配線と、テスターでの確かめ方
ベース抵抗は、次の3ステップで決めます。
①Ib=Ic÷hFE(データシートの最小値)×3
②Rb=(入力電圧−0.7V)÷Ib
③売っている値(E24系列)の小さい側に丸める
3.3V のマイコンで約20mA の LED を点けるなら、2N3904 で Rb=2.4kΩ です。計算せずに値だけ知りたい人は、記事の中ほどの早見表へどうぞ。
わからない言葉が出てきたら、ここに戻ってきてください。本文でも、初めて出たところで言い換えます。
| トランジスタ | 小さな電流で、大きな電流をON/OFFできる部品。足が3本ある |
| Ib・Ic | Ib=ベースに流す小さな電流(合図)。Ic=コレクタに流れる大きな電流(本番) |
| hFE | Ic が Ib の何倍まで流せるかの数字。同じ型番でもばらつく |
| VBE | ベースとエミッタの間の電圧。ON のときは約0.7V |
| 飽和 | Ib を増やしても Ic が増えない「全開の ON」。スイッチはこの状態で使う |
| VCE(sat) | 飽和したときのコレクタとエミッタの間の電圧。0.1〜0.3V ほど |
| 余裕の倍率 | ぎりぎりの Ib に掛ける倍率。3倍が目安(過駆動係数とも呼ぶ) |
| E24系列 | 売っている抵抗の値の並び(1.0・1.1・1.2・1.3・1.5…) |
| ローサイド | 負荷と GND の間(低い側)でスイッチする置き方 |
ベース抵抗の計算は、回路を触りはじめた人が最初につまずくところです。式はオームの法則だけなのに、「hFE はどの値?」「なぜ3倍?」「計算した値の抵抗が売っていない」と、迷う所がいくつもあるからです。
この記事では、トランジスタを ON/OFF のスイッチとして使う場合に絞ります。部品の足の見分け方から始めて、計算、組み立て、テスターでの確かめまで、1つの回路で通して説明します。

この記事で作るもの:マイコンでLEDを光らせる回路
作るのは、3.3V のマイコンの合図で、5V 電源の LED を点けたり消したりする回路です。部品はトランジスタ1つと抵抗2本、LED 1つです。
マイコンの端子(ピン)から出せる電流は、品種にもよりますが数mA〜十数mA ほどです。LED を何個も点けたり、リレーを動かしたりするには足りません。
そこで、間にトランジスタを入れます。マイコンは小さな合図を出すだけ。LED に流す電流は、5V の電源からトランジスタを通して流します。
| 部品 | この記事で使う値 | 役目 |
|---|---|---|
| トランジスタ | 2N3904(NPN) | 合図を受けて、LED の電流を ON/OFF する |
| ベース抵抗 Rb | 2.4kΩ(この記事で計算する) | マイコンから流す合図の電流を決める |
| LED の抵抗 | 150Ω | LED に流れる電流を約19mA に抑える |
| LED | 赤色 | 光れば成功 |
マイコンの端子から、どれくらいの電流を出せるのかがわかる
つまり、この記事のゴールは「Rb=2.4kΩ」を自分で計算して、理由まで説明できるようになることです。

トランジスタの3本の足(E・B・C)の見分け方
トランジスタの足は、エミッタ(E)・ベース(B)・コレクタ(C)の3本です。2N3904 は、平らな面を手前・足を下にすると、左から E・B・C の順に並んでいます。
はじめにここを間違えると、計算が合っていても回路は動きません。3本の役目は次のとおりです。
| 足 | 読み方 | この記事の回路でつなぐ先 |
|---|---|---|
| E | エミッタ | GND(電源のマイナス) |
| B | ベース | ベース抵抗 Rb を通して、マイコンの端子 |
| C | コレクタ | LED(負荷)を通して、+5V |
回路図の記号では、矢印のついた足がエミッタです。NPN 形は矢印が外向きです。
同じ黒い半円形のケース(TO-92)でも、E-C-B や C-B-E の順に並ぶ品種があります。2N3904 のデータシートにも、同じケースの並び方が何通りも載っています。使う部品のデータシートの図で、必ず確かめてください。
つまり、足は「データシートの図と、平らな面の向き」で確かめる。見た目や前に使った部品の記憶で決めないことです。

トランジスタスイッチとは?2本の電流の道で考える
トランジスタスイッチとは、ベースに小さな電流(Ib)を流している間だけ、コレクタからエミッタへ大きな電流(Ic)を流す使い方です。
回路の中には、電流の道が2本あります。この2本を分けて考えると、ベース抵抗の役目がはっきりします。
マイコン → ベース抵抗 Rb → ベース → エミッタ → GND。約1mA の「合図」の電流です
+5V → 150Ω → LED → コレクタ → エミッタ → GND。LED を光らせる約19mA の電流です
2本の道は、エミッタで合流して GND に流れます。Ib を止めると、Ic も止まります。これがスイッチの動きです。
トランジスタは「水道の蛇口」です。ハンドル(ベース)を少し回すだけで、太い水道管(コレクタ→エミッタ)の水を止めたり流したりできます。
基本の形は「ローサイドスイッチ」
負荷(LED やリレー)を電源側に、トランジスタを GND 側に置きます。GND 側は電圧の低い側なので、ローサイドスイッチと呼びます。NPN 形のトランジスタは、この置き方が基本です。
つまり、ベース抵抗は「道1の電流 Ib を決める部品」です。Ib をいくつにするかが、この記事の計算の中心です。

「飽和」とは?Ibを増やしてもIcが増えなくなる状態
飽和とは、ベース電流を増やしても、コレクタ電流がそれ以上増えなくなった状態です。スイッチとして使うトランジスタは、必ずこの状態で使います。
Ib を0から少しずつ増やしていくと、トランジスタは3つの状態を順に通ります。
| 状態 | Ib と Ic の関係 | スイッチとしては |
|---|---|---|
| 遮断(OFF) | Ib=0。Ic も流れない | OFF の状態 |
| 増幅領域 | Ic=hFE×Ib で、Ib に比例して増える | 中途半端。熱が出る |
| 飽和(全開の ON) | Ic は負荷(LED と抵抗)で決まる上限で頭打ち | ON の状態 |
この記事の回路なら、Ic の上限は約18.7mA です。5V の電源・LED・150Ω の抵抗で決まり、トランジスタがいくら頑張っても、これ以上は流れません。
なぜ飽和させるのか
飽和すると、コレクタとエミッタの間の電圧(VCE)が 0.1〜0.3V ほどまで下がります。トランジスタで熱になる電力は VCE×Ic です。
| 状態 | VCE(例) | トランジスタの発熱 VCE×Ic |
|---|---|---|
| 飽和している | 0.2V | 0.2V×20mA=4mW |
| 飽和していない | 2V | 2V×20mA=40mW(10倍) |
飽和していないと、発熱が増えるうえに、負荷にかかる電圧も減ります。LED が暗い、リレーが動かない、といった不具合の原因になります。
つまり、ベース抵抗の計算は「確実に飽和させる Ib」を求める計算です。そのために、後で出てくる「余裕の倍率」を掛けます。

ベース抵抗の計算は3ステップ
ベース抵抗は、必要なベース電流を求め、その電流が流れる抵抗値を計算し、売っている値に丸める、の3ステップで決めます。
ここでは、この記事の回路(3.3V のマイコンで LED に約20mA)を例に、数字を入れながら進めます。
STEP 1:必要なベース電流 Ib を求める
Ib = Ic ÷ hFE(最小) × 余裕の倍率(3倍)
hFE は「Ic を Ib の何倍まで流せるか」を表す数字です。Ic÷hFE は、ぎりぎり飽和に届く Ib です。
ぎりぎりでは心配なので、3倍の余裕を掛けます。この倍率を「過駆動係数(オーバードライブ)」と呼ぶこともあります。2〜5倍の範囲で、まずは3倍で始めれば多くの場面で困りません。
例:Ic=20mA、hFE=60(なぜ60かは次の章)なら、Ib=20mA÷60×3=1.0mA。
STEP 2:オームの法則でベース抵抗 Rb を計算する
Rb = (Vin − VBE) ÷ Ib
Vin はマイコンの出力電圧(ここでは 3.3V)です。VBE はベースとエミッタの間の電圧で、ON のときは約0.7V かかります。
残りの電圧(3.3−0.7=2.6V)が、ベース抵抗にかかります。だから、2.6V を Ib で割れば抵抗値が出ます。
例:Rb=2.6V÷1.0mA=2.6V÷0.001A=2,600Ω(2.6kΩ)。
STEP 3:売っている値(E24系列)に丸める
2.6kΩ ちょうどの抵抗は売っていません。抵抗は、E24系列という決まった値の並び(…2.2・2.4・2.7・3.0…)で作られています。
ベース抵抗は、計算値より小さい側に丸めます。抵抗が小さいほど Ib が増え、飽和しやすい側に倒れるからです。
例:2.6kΩ → 2.4kΩ。このとき Ib=2.6V÷2,400Ω≒1.08mA と、少し増えます。
E24系列の一覧と、2.4kΩ や 4.7kΩ のような値になっている理由がわかる
つまり、Rb=2.4kΩ。ここまでで計算はできました。次の章からは「なぜ hFE は60なのか」と「本当に大丈夫かの確かめ」を見ていきます。

hFEはどの値を使う?答えは「その電流での最小値」
計算に使う hFE は、データシートに書かれた「実際に流す Ic の条件での最小値」です。代表値(typ)や最大値は使いません。
hFE は、1つの決まった数字ではありません。性質が2つあります。
性質1:同じ型番でも、1個ずつばらつく
2N3904 の hFE は、Ic=10mA の条件で「最小100・最大300」です。同じ袋に入った部品でも、1個ずつ100〜300の間でばらつきます。
どの1個が届いても動くように、いちばん弱い個体(最小値)で計算します。温度が下がると hFE も下がるので、その分も3倍の余裕で吸収します。
性質2:流す電流の大きさで変わる
hFE は、Ic が小さすぎても大きすぎても下がります。2N3904 では、10mA あたりがいちばん大きく、100mA では3分の1以下になります。
つまり、hFE は「いちばん弱い個体が、実際の電流で出せる値」で選ぶ。これがデータシートの最小値です。

データシートの表を読む(2N3904)
2N3904(onsemi)のデータシートには、hFE の最小値が Ic ごとに書かれています(VCE=1V の条件)。
| コレクタ電流 Ic | hFE の最小値 | 読み方 |
|---|---|---|
| 0.1mA | 40 | 電流が小さすぎても下がる |
| 1mA | 70 | |
| 10mA | 100(最大300) | いちばん大きい |
| 50mA | 60 | 電流が増えると下がりはじめる |
| 100mA | 30 | 10mA のときの3分の1以下 |
表にない電流は「両側の小さい方」を使う
20mA や30mA は表にありません。このときは、両側の値(10mA の100と50mA の60)のうち、小さい方の60を使います。
理由は、データシートが保証しているのは表の点の値だけだからです。間を直線で読むと、20mA では約90になりますが、これは保証のない値です。小さい方を使えば、どちらの点よりも下に倒れるので安全です。
部品の紹介ページで「hFE=300」のような大きな値を見かけることがあります。これは最大値や、hFE で選り分けたランクの上の値であることが多いです。スイッチの計算に使うと Ib が足りず、飽和しない部品が出ます。
つまり、2N3904 で 20〜50mA を流すなら hFE=60。早見表もこのルールで作っています。

計算例1:3.3VのマイコンでLED 約20mA を点ける
3.3V のマイコンで、5V 電源の LED に約20mA 流します。答えは、LED の抵抗が150Ω、ベース抵抗が2.4kΩです。
| 条件 | 値 |
|---|---|
| 電源 | 5V |
| LED | 赤色。電圧 VF は例として 2.0V(品種で違う) |
| LED に流したい電流 | 20mA |
| トランジスタ | 2N3904 |
| マイコンの出力 | 3.3V |
まず LED 側(コレクタ側)の抵抗を決める
飽和したトランジスタには、VCE(sat)(飽和したときの VCE)が残ります。2N3904 のデータシートでは、Ic=10mA・Ib=1mA の条件で最大0.2V です。ここでは0.2V で計算します。
LED の抵抗にかかる電圧 = 5 − 2.0 − 0.2 = 2.8V
抵抗値 = 2.8V ÷ 20mA = 2.8 ÷ 0.020 = 140Ω
E24 の大きい側の 150Ω にする。電流 = 2.8 ÷ 150 ≒ 18.7mA
次にベース抵抗を決める
hFE は 60(20mA は表にないので、10mA の100と50mA の60の小さい方)。Ib = 20mA ÷ 60 × 3 = 1.0mA
Rb = (3.3 − 0.7) ÷ 1.0mA = 2.6kΩ
E24 の小さい側の 2.4kΩ にする。Ib = 2.6 ÷ 2,400 ≒ 1.08mA
LED の抵抗は「大きい側」、ベース抵抗は「小さい側」に丸めます。LED は電流を流しすぎたくない部品、ベースは電流を確保したい部品だからです。どちらも「守りたい方向」に丸める、と覚えると迷いません。
つまり、LED の抵抗は140Ω→150Ω(電流を減らす側)、ベース抵抗は2.6kΩ→2.4kΩ(電流を増やす側)。

最後に確かめる:最低限ここだけ見る2項目
計算した値で本当に大丈夫か、確かめます。はじめのうちは、次の2つだけで十分です。
| 確かめること | 計算 | 判定 |
|---|---|---|
| ① 飽和するか | Ic ÷ Ib = 18.7 ÷ 1.08 ≒ 17。使った hFE の60より十分小さい | OK(約3.5倍の余裕) |
| ② マイコンの端子の電流 | Ib ≒ 1.08mA | 多くのマイコンで余裕あり(品種のデータシートで確認) |
①は、「この Ib なら、hFE が17あれば Ic を流しきれる」という意味です。いちばん弱い個体でも hFE は60あるので、確実に飽和します。
余裕があれば確かめる3項目
| 確かめること | 計算 | 判定 |
|---|---|---|
| VBE が高めでも足りるか | VBE を最大の0.85V にすると Ib = (3.3 − 0.85) ÷ 2,400 ≒ 1.02mA | OK(Ic÷Ib ≒ 18) |
| トランジスタの発熱 | 0.2V × 18.7mA + 0.85V × 1.08mA ≒ 4.6mW | OK(定格625mW。温度上昇は約0.9℃) |
| LED の抵抗の発熱 | 2.8V × 18.7mA ≒ 52mW | 1/8W(125mW)品で定格の約42% |
温度上昇は、データシートの熱抵抗(200℃/W)を使って 4.6mW×200℃/W≒0.9℃ と見積もりました。飽和させていれば、小さなトランジスタでも熱はほぼ気になりません。
つまり、Rb=2.4kΩ・LED の抵抗=150Ω で OK。確かめの表までを1セットにすると、レビューで聞かれてもそのまま答えられます。

早見表:2N3904のベース抵抗(入力3.3V・5V)
計算を省きたいときは、この表から選べます。条件は 2N3904、hFE は最小値、余裕の倍率3倍、E24 の小さい側に丸めた値です。
| 流したい Ic | 使う hFE | 必要な Ib | 入力 3.3V の Rb | 入力 5V の Rb |
|---|---|---|---|---|
| 10mA | 100 | 0.3mA | 8.2kΩ(計算 8.67kΩ) | 13kΩ(計算 14.3kΩ) |
| 20mA | 60 | 1.0mA | 2.4kΩ(計算 2.6kΩ) | 4.3kΩ(計算 4.3kΩ) |
| 50mA | 60 | 2.5mA | 1.0kΩ(計算 1.04kΩ) | 1.6kΩ(計算 1.72kΩ) |
| 100mA | 30 | 10mA | 240Ω(計算 260Ω) | 430Ω(計算 430Ω) |
計算はどれも、Ib=Ic÷hFE×3、Rb=(入力電圧−0.7V)÷Ib です。20mA と50mA は、表にない電流のルールどおり hFE=60 を使いました。
100mA では hFE の最小値が30まで下がるので、Ib が約10mA も必要です。マイコンの端子1本では出せないことが多く、データシートの VCE(sat) の保証も50mA までです。100mA 前後を流すなら、電流の大きいトランジスタや MOSFET、ドライバ IC を検討します。
表にない電流のときは、使う hFE だけ決めれば、同じ3ステップで計算できます。別の型番を使うときは、その部品のデータシートの hFE 最小値で計算し直してください。
つまり、20mA 前後の LED なら、3.3V 入力で2.4kΩ、5V 入力で4.3kΩ。迷ったらこの2つを覚えておけば十分です。

計算例2:12Vのリレーを3.3Vのマイコンで駆動する
コイル抵抗400Ω(例)の12Vリレーなら、コイル電流は30mA、ベース抵抗は1.6kΩです。コイルには逆向きのダイオードを必ず並列に入れます。
リレーは、電磁石(コイル)で接点を動かすスイッチです。コイルの値は例として 12V・400Ω にしました。実際の値はリレーのデータシートで確かめます。
コイル電流 = 12V ÷ 400Ω = 30mA(VCE(sat) の0.2〜0.3V は小さいので無視)
30mA は表にないので、hFE は小さい方の60。Ib = 30mA ÷ 60 × 3 = 1.5mA
Rb = (3.3 − 0.7) ÷ 1.5mA ≒ 1.73kΩ
E24 の小さい側の 1.6kΩ にする。Ib ≒ 1.63mA。Ic÷Ib ≒ 18 で、hFE 60より十分小さい
2N3904 のコレクタ電流の定格は200mA なので、30mA は定格の15%です。コレクタとエミッタの間の耐圧(VCEO)は40V で、12V に対して余裕があります。ただしこれは、次のダイオードを入れたときの話です。
フリーホイールダイオードを忘れない
コイルには、電流を流し続けようとする性質があります。トランジスタを OFF にした瞬間、行き場を失った電流が高い電圧(逆起電力)を作り、40V を超えてトランジスタを壊すことがあります。
そこで、コイルと並列にダイオードを入れます。向きは、カソード(帯のある側)を +12V 側にします。OFF の瞬間の電流は、ダイオードを通ってコイルに戻ります。
ダイオードの向きと、なぜ逆起電力が消えるのかを図で確かめられる
つまり、リレーでもベース抵抗の手順は同じ。違うのは、ダイオードが必須になる点です。

ベース−エミッタ間のプルダウン抵抗:入力が浮いたときの対策
ベースとエミッタの間に10kΩ〜47kΩ程度の抵抗(Rbe)を入れると、マイコンの端子が浮いている間も、トランジスタを確実に OFF にできます。
多くのマイコンでは、電源を入れた直後やリセット中、端子がどこにもつながっていない状態になります。これを「浮いている(フローティング)」と言います。
ベースが浮いていると、わずかなノイズでトランジスタが中途半端に ON します。起動の一瞬だけリレーが「カチッ」と動いたり、LED がうっすら光ったりします。
浮いたベースは「ハンドルから手を離した蛇口」です。風が吹くと少し回ってしまいます。Rbe は、ハンドルを「閉」の位置に軽く押さえておくバネの役目をします。
Rbe を入れたときの計算の直し方
Rbe を入れると、ベース電流の一部が Rbe に逃げます。逃げる電流は VBE÷Rbe です。
計算例1に Rbe=10kΩ を入れると、0.7V÷10kΩ=0.07mA が逃げます。ベースに届くのは 1.08−0.07≒1.01mA。Ic÷Ib は 18.7÷1.01≒18.4 で、まだ十分飽和します。
Rbe を小さくしすぎると、逃げる電流が増えて余裕が減ります。値は回路ごとに、この計算で確かめて決めます。
「浮いている」状態がなぜ危ないのか、プルアップ・プルダウンの選び方がわかる
つまり、Rbe は「入力が決まっていない時間」の保険。起動時の誤動作が許されない回路では入れておきます。

ブレッドボードで組んでみる:配線の順番
ブレッドボードは、穴に部品を挿すだけで回路を作れる板です。縦に並んだ5つの穴が中でつながっていることを使って配線します。
穴のつながり方は2種類です。中央の溝をはさんで、上の a〜e の5つの穴と、下の f〜j の5つの穴が、それぞれ縦につながっています。上下の端の電源レールは、横一列がつながっています。
配線の一例を、穴の番号つきで示します(列の番号は一例です)。
5V 電源の+を上の +5V レールに、−を下の GND レールにつなぐ。マイコンの GND も同じ GND レールへ
平らな面を手前にして、h 行の12・13・14列に挿す(左から E・B・C)
12列(E の列)の j 行から、GND レールへ線をつなぐ
2.4kΩ を、13列の d 行と f 行に挿して溝をまたぐ。マイコンの出力を13列の c 行へ
LED の短い足(−)を14列(C の列)、長い足(+)を18列に挿す。150Ω で18列の下と上をつなぎ、18列の a 行から +5V レールへ
マイコンの GND と5V 電源の GND がつながっていないと、Ib が流れる道がなく、LED は点きません。LED の向き(長い足が+)と、トランジスタの平らな面の向きも、電源を入れる前にもう一度確かめます。
つまり、配線は「縦5つがつながる」と「GND を1つにまとめる」の2つを押さえれば、回路図どおりに組めます。

テスターで確かめる:VCEを測れば飽和がわかる
組んだら、ON のときの VCE をテスターで測ります。0.1〜0.3V ほどなら飽和しています。1V 以上残っていれば、Ib が足りていません。
テスターは直流電圧(DCV)のレンジにします。マイコンから ON を出し、電源を入れた状態で測ります。
最低限ここだけ:VCE を測る
赤のテスト棒をコレクタ(C)、黒をエミッタ(E)に当てる。0.1〜0.3V なら飽和している
余裕があれば測る3つ
赤をベース(B)、黒をエミッタ(E)に当てる。0.6〜0.9V ほどなら、ベース電流が流れている
ベース抵抗の両端の電圧を測り、抵抗値で割る(例:2.5V÷2.4kΩ≒1.04mA)。計算と大きく違わないか比べる
入力を0V にして、LED が消えるか(リレーなら戻るか)を確かめる
レビューでは、回路図に Ic・Ib・使った hFE(最小値と条件)・余裕の倍率を書き添えておくと、確認する人が計算を追えます。
テスターで足りないとき、電圧の変化を目で見るための道具がわかる
つまり、計算で決めて、VCE で確かめる。この2つがそろえば、ベース抵抗は自信を持って決められます。

よくある失敗4つ
ベース抵抗まわりの失敗は、抵抗なしの直結・hFE の代表値で計算・ハイサイドに NPN・ダイオードの付け忘れの4つが代表です。
失敗1:ベース抵抗なしでマイコンと直結する
ベースとエミッタの間は、ダイオードと同じつくりです。0.7V を超えると電流が急に増えます。抵抗がないと電流を決めるものがなく、マイコンの端子やトランジスタを傷めます。
失敗2:hFE を代表値や最大値で計算する
計算例1を hFE=300・余裕なしで計算すると、Ib=20mA÷300≒0.067mA、Rb≒39kΩ になります。
ところが、届いた部品の hFE が60だと、流せる Ic は 60×0.067mA≒4mA だけ。LED は暗く、トランジスタは飽和しません。
失敗3:NPN をハイサイドに置く
負荷を GND 側、NPN を電源側に置くと、エミッタの電圧はベースより約0.7V 低いところまでしか上がりません。3.3V のマイコンなら 3.3−0.7=2.6V が上限です。LED は暗くなり、12V のリレーはほぼ動きません。
電源側でスイッチしたいときは、PNP や Pch MOSFET を使う別の回路にします。
失敗4:リレーにダイオードを付け忘れる・向きを逆にする
付け忘れると、OFF の瞬間の逆起電力でトランジスタが壊れることがあります。向きを逆(アノードを +12V 側)にすると、ON にしたとたんにダイオードを通って電源がショートします。カソード(帯)を +12V 側、が正解です。
つまり、失敗の多くは「電流を決める部品がない」か「向き・位置の取り違え」。回路図を描いたら、2本の電流の道を指でたどって確かめると防げます。

よくある質問(FAQ)
- 足は E・B・C。並びは型番で違うので、平らな面の向きとデータシートで確かめる
- トランジスタは GND 側(ローサイド)に置き、飽和させて使う
- STEP 1:Ib=Ic÷hFE(その電流での最小値)×3
- STEP 2:Rb=(入力電圧−0.7V)÷Ib
- STEP 3:E24 の小さい側に丸め、Ic÷Ib と端子の電流を確かめる
- 組んだら、ON のときの VCE が0.1〜0.3V かをテスターで確かめる
次の一歩として、手元の部品のデータシートを開き、hFE の最小値と足の並びを確かめてみてください。この記事の3ステップに数字を入れれば、どの型番でもベース抵抗を決められます。
- onsemi「2N3903, 2N3904 General Purpose Transistors NPN Silicon」データシート(Rev. 9):hFE の最小値(Ic ごと)、VCE(sat)・VBE(sat) の最大値、VCEO・コレクタ電流・許容損失・熱抵抗の定格、TO-92 のピン配置(STYLE 1)
法令・規格・資料は改訂されることがあります。実務で使うときは、発行元の最新版で確かめてください。
半導体を使った回路を、トランジスタ回路の設計の基本から理解したい人に向いています。トランジスタを使った増幅回路の設計を、実験を通して解説した本です(CQ出版、鈴木雅臣 著)。
回路の電圧や導通を自分の手で確かめるなら、手元にテスターが1台あると便利です。三和電気計器のデジタルマルチメータ(テスター)CD772です。電圧や抵抗などを測れます。
回路を実際に組んで、電流や電圧を確かめてみたいときに向いています。サンハヤトのブレッドボード SAD-101です。408個の穴に部品を差し込むだけで、はんだ付けをせずに回路を組めます。
メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。
次に読むべき記事
ここまでで、ベース抵抗を3ステップで決められるようになりました。次は、hFE そのものの意味と、部品を定格ぎりぎりで使わない考え方を押さえると、計算の「なぜ」がつながります。
テーマ別に、もっと深く学ぶ
気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめて学ぶ人向けにやさしく書いています。