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需給調整市場とは、電気の使う量と作る量のずれを直す「調整力」を、一般送配電事業者が市場で集める仕組みです。5つの商品(一次・二次①②・三次①②)と応動時間は商品の節、前日取引・30分単位になった変更は変わったことの節へ。

需給調整市場とは?「調整力」を買う市場
電気は、使う量(需要)と作る量(供給)を毎秒そろえないと、周波数が乱れます。そのずれを直すために、出力を上げ下げしてもらう約束が「調整力」で、それを送配電事業者が買うのが需給調整市場です。
電気はためにくいので、発電所は今使われている量と同じだけを、その瞬間に作り続けています。予報より暑くてエアコンが増えた、発電機が急に止まった、雲で太陽光が減った——こうしたずれが起きると、交流の周波数(東日本50Hz・西日本60Hz)が動きます。
周波数(Hz)が何を表すのかと、東西で50Hz・60Hz に分かれている理由がわかります
周波数を守る責任は、地域の送配電網を持つ一般送配電事業者にあります。事業者は、ずれたときに「出力を上げて(または下げて)ください」と頼める相手をあらかじめ確保しておきます。この「頼めば出力を変えてくれる能力」が調整力で、kW(どれだけ変えられるか)で取引します。
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| 調整力 | 指令に応じて出力を上げ下げできる能力(kW) |
| 応動時間 | 指令や周波数の変化を受けてから、出力を変え終えるまでの時間 |
| 継続時間 | 変えた出力を保ち続ける時間 |
| 参加できるもの | 火力・揚水・蓄電池・自家発・DR(需要を減らす)など、要件を満たすもの |
つまり、需給調整市場は「電気そのもの(kWh)」ではなく、「ずれを直す力(kW)」を前もって買う市場です。

需給調整市場の5つの商品:一次・二次①②・三次①②
需給調整市場の商品は、応動時間と指令のしかたで5つに分かれます。どれも入札は30分単位・最低1MW・刻み1kW で、ちがいは「どれだけ速く応えるか」です。
| 商品 | 英略称 | 応動時間 | 継続時間 | 指令・制御 | 主に直すずれ |
|---|---|---|---|---|---|
| 一次調整力 | FCR | 10秒以内 | 5分以上 | オフライン(自端制御) | 電源の脱落などの、ごく短い周期の変動 |
| 二次調整力① | S-FRR | 5分以内 | 30分 | オンライン(LFC信号) | 短い周期の変動・電源の脱落 |
| 二次調整力② | FRR | 5分以内 | 30分 | オンライン(EDC信号) | ゲートクローズ後の予測の外れ(長い周期) |
| 三次調整力① | RR | 15分以内 | 30分 | オンライン(EDC信号) | 需要・再エネの予測の外れ、電源の脱落 |
| 三次調整力② | RR-FIT | 60分以内 | 30分 | オンライン | FIT特例制度の再エネの予測の外れ |
一次調整力は、指令を待たずに、機器が周波数の変化を自分で感じて出力を変えます(自端制御)。二次調整力①は送配電事業者のLFC信号(周波数を戻す自動の指令)で数秒〜数十秒ごとに、二次②と三次①はEDC信号(経済的な配分の指令)で動きます。三次調整力②は、FIT 特例制度の再エネの予測の外れに備える商品です。
つまり、5つの商品は「速く短い揺れ」から「遅く長い外れ」までを役割分担していて、速い商品ほど指令がなくても動く仕組みになっています。

応動時間で並べると役割がわかる:10秒から60分まで
応動時間は10秒から60分まで、約360倍の幅があります。速く応える商品ほど短い周期の揺れを止め、遅い商品は、速い商品が使った分を引き継いで戻す役です。
5つの商品を応動時間の順に並べると、リレーのような分担が見えます。
蓄電池は、電池とPCS(パワーコンディショナ。直流と交流を変換し、出力を制御する装置)で出力を変えます。回転する大きな発電機のように燃料や回転数を変える必要がないので、速い商品に向いています。
PCS の中心にあるインバーターが、直流を交流に変えるしくみと PWM がわかります
つまり、応動時間は「どの商品に出られるか」、電池の kWh は「出し続けられるか」を決めます。

蓄電池で1MW を入札するのに、最低いくらの電力量が要るか
1MW(1,000kW)を継続時間ぶん出し続けるのに最低限いる電力量は、一次調整力(5分)で約83kWh、二次①〜三次②(30分)で500kWh です。実際には損失と残量の余裕が加わります。
ここで出したのは、1つのコマ(30分)を出し切るための下限です。実際の蓄電池では、次の分が上乗せになります。
| 上乗せになるもの | なぜ |
|---|---|
| 充電と放電の損失 | 電池とPCSで熱になる分がある |
| 使わない残量の幅 | 電池を傷めないよう、満充電と空の近くを避けて使うことが多い |
| コマが続くときの充電 | 次の30分に備えて充電する時間と電気が要る |
蓄電所の大きさを kW と kWh の2つで表す理由と、容量の計算がわかります
つまり、kW で入札しても、蓄電池の設計では kWh を合わせて考える必要があります。kW と kWh の両方で蓄電池の大きさを表すのはこのためです。

2026年度から変わったこと:前日取引・30分単位・低圧の参入
2026年度から、一次〜三次①の複合商品も前日取引になり、入札時間単位は3時間から30分に変わりました。低圧の受電点で計るリソースも、全商品に参入できるようになりました。
前日取引と30分単位
OCCTO の資料(2026年6月)によると、2024年度に全商品の取引が始まったものの、応札が足りず募集量に届かないことで調達の費用が高くなっていました。そこで、応札を増やす手の1つとして、2026年度から複合商品の取引を週間から前日へ前倒しし、入札時間単位を3時間から30分にしました。
| 項目 | 2026年度の要件(EPRX 第6版) |
|---|---|
| 取引の時期 | 前日(入札受付 11時30分〜14時、約定 15時まで) |
| 入札時間単位 | 30分 |
| 最低入札量・刻み | 1MW・1kW |
低圧の小さな蓄電池は「束ねて」参加する
OCCTO の整理では、低圧の受電点で計るリソースは2026年度から全商品に「リスト・パターン」(複数の地点をまとめて登録する方式)で参入できます。最低入札量は1MW なので、小さな蓄電池は束ねて使います。たとえば1か所 40kW(例)なら、1,000÷40 = 25か所で1MW になります。複数の小さなリソースを1つの群として扱う「群管理」も整理されました。束ねて制御する事業者をアグリゲーターと呼びます。
電気が足りなくなりそうなとき、国と広域機関がどう需給を調整するのかがわかります
つまり、2026年度は「前日・30分・低圧も参加」の3点が大きな変わり目です。古い解説を読むときは、この3点が反映されているかを確かめてください。

需給調整市場のよくある勘違い4つ
需給調整市場の解説には、2025年度以前の要件のままのものがあります。3時間ブロック・週間取引・三次②の古い要件・低圧は参加できない、の4つは今の要件と違います。
| 勘違い | 今の要件・考え方 |
|---|---|
| 入札は3時間ブロック、複合商品は週間で取引 | 2026年度から全商品が前日取引・30分単位 |
| 三次調整力②は応動45分・継続3時間(古い資料) | EPRX 第6版では応動60分以内・継続30分 |
| 低圧の小さな蓄電池は参加できない | 低圧の受電点計測で、2026年度から全商品に参入可(束ねて1MW 以上) |
| 参加すれば必ずもうかる | 応札不足や価格の上限など、制度は見直しが続いている。仕組みとリスクを分けて見る |
つまり、需給調整市場を調べるときは、資料の日付と「何年度の要件か」をまず確かめることがいちばんの近道です。

よくある質問(FAQ)


