蓄電池と電力システム

需給調整市場とは?5つの商品の違いを応動時間で図解|蓄電池の参加の計算

夕暮れの系統用蓄電池のコンテナと送電鉄塔の写真に、需給調整市場とは・5つの商品の違い・10秒〜60分・応動時間で5つに分かれるの文字

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需給調整市場とは、電気の使う量と作る量のずれを直す「調整力」を、一般送配電事業者が市場で集める仕組みです。5つの商品(一次・二次①②・三次①②)と応動時間は商品の節、前日取引・30分単位になった変更は変わったことの節へ。

結論|まず30秒でわかる答え

商品は応動時間(指令から出力を変え終えるまでの時間)で5つに分かれ、一次調整力は10秒以内、二次調整力①②は5分以内、三次調整力①は15分以内、三次調整力②は60分以内です。2026年度からは全商品が前日取引・30分単位・最低1MW で入札します。

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需給調整市場とは?「調整力」を買う市場

電気は、使う量(需要)と作る量(供給)を毎秒そろえないと、周波数が乱れます。そのずれを直すために、出力を上げ下げしてもらう約束が「調整力」で、それを送配電事業者が買うのが需給調整市場です。

電気はためにくいので、発電所は今使われている量と同じだけを、その瞬間に作り続けています。予報より暑くてエアコンが増えた、発電機が急に止まった、雲で太陽光が減った——こうしたずれが起きると、交流の周波数(東日本50Hz・西日本60Hz)が動きます。

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周波数を守る責任は、地域の送配電網を持つ一般送配電事業者にあります。事業者は、ずれたときに「出力を上げて(または下げて)ください」と頼める相手をあらかじめ確保しておきます。この「頼めば出力を変えてくれる能力」が調整力で、kW(どれだけ変えられるか)で取引します。

言葉意味
調整力指令に応じて出力を上げ下げできる能力(kW)
応動時間指令や周波数の変化を受けてから、出力を変え終えるまでの時間
継続時間変えた出力を保ち続ける時間
参加できるもの火力・揚水・蓄電池・自家発・DR(需要を減らす)など、要件を満たすもの
たとえると

満員のバスの運転手が、乗客の乗り降りに合わせてアクセルを細かく調整するようなものです。急な坂(大きなずれ)には瞬時に踏み込む足、ゆるやかな坂には少し遅れて足す足、と役割を分けて用意しておきます。

つまり、需給調整市場は「電気そのもの(kWh)」ではなく、「ずれを直す力(kW)」を前もって買う市場です。

使う量(需要)と作る量(供給)を毎秒そろえる。ずれを直す調整力を送配電事業者が前日に市場で集める

需給調整市場の5つの商品:一次・二次①②・三次①②

需給調整市場の商品は、応動時間と指令のしかたで5つに分かれます。どれも入札は30分単位・最低1MW・刻み1kW で、ちがいは「どれだけ速く応えるか」です。

商品英略称応動時間継続時間指令・制御主に直すずれ
一次調整力FCR10秒以内5分以上オフライン(自端制御)電源の脱落などの、ごく短い周期の変動
二次調整力①S-FRR5分以内30分オンライン(LFC信号)短い周期の変動・電源の脱落
二次調整力②FRR5分以内30分オンライン(EDC信号)ゲートクローズ後の予測の外れ(長い周期)
三次調整力①RR15分以内30分オンライン(EDC信号)需要・再エネの予測の外れ、電源の脱落
三次調整力②RR-FIT60分以内30分オンラインFIT特例制度の再エネの予測の外れ

一次調整力は、指令を待たずに、機器が周波数の変化を自分で感じて出力を変えます(自端制御)。二次調整力①は送配電事業者のLFC信号(周波数を戻す自動の指令)で数秒〜数十秒ごとに、二次②と三次①はEDC信号(経済的な配分の指令)で動きます。三次調整力②は、FIT 特例制度の再エネの予測の外れに備える商品です。

POINT|共通の要件

EPRX の第6版では、5商品とも入札時間単位は30分、最低入札量は1MW、刻み幅は1kW です。上げと下げの区分がありますが、現行は「上げ」だけを調達しています。

注意|一次調整力の例外

一次調整力をオフラインで監視する場合(事後にデータを出す)は、応動時間が30秒以内、継続時間の設定なし、と別に決められています。

つまり、5つの商品は「速く短い揺れ」から「遅く長い外れ」までを役割分担していて、速い商品ほど指令がなくても動く仕組みになっています。

一次調整力10秒以内・5分以上、二次調整力①②5分以内・30分、三次調整力①15分以内・30分、三次調整力②60分以内・30分と指令の方法の表

応動時間で並べると役割がわかる:10秒から60分まで

応動時間は10秒から60分まで、約360倍の幅があります。速く応える商品ほど短い周期の揺れを止め、遅い商品は、速い商品が使った分を引き継いで戻す役です。

5つの商品を応動時間の順に並べると、リレーのような分担が見えます。

10秒

電源が急に止まったら、一次調整力がまず周波数の落ち込みを止める。

5分

二次調整力①が周波数を元の値へ戻し、二次②が予測の外れを埋める。

15分

三次調整力①が、需要や再エネの予測の外れ、電源の脱落を引き継ぐ。

60分

三次調整力②が、FIT 特例の再エネの予測の外れに備える。

蓄電池は、電池とPCS(パワーコンディショナ。直流と交流を変換し、出力を制御する装置)で出力を変えます。回転する大きな発電機のように燃料や回転数を変える必要がないので、速い商品に向いています。

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注意|速くても「出し続ける量」は電池次第

応動が速くても、出し続けられる時間は電池にたまっている電力量(kWh)で決まります。次の節で、1MW を入札したときに最低どれだけの kWh が要るかを計算します。

つまり、応動時間は「どの商品に出られるか」、電池の kWh は「出し続けられるか」を決めます。

10秒・5分・15分・60分の対数目盛りに一次・二次①②・三次①②を並べた図と、蓄電池は速いが出し続ける時間はkWhで決まる説明

蓄電池で1MW を入札するのに、最低いくらの電力量が要るか

1MW(1,000kW)を継続時間ぶん出し続けるのに最低限いる電力量は、一次調整力(5分)で約83kWh、二次①〜三次②(30分)で500kWh です。実際には損失と残量の余裕が加わります。

公式
電力量(kWh)= 出力(kW)× 継続時間(時間)
STEP 1

継続時間を「時間」に直す:30分 = 30÷60 = 0.5時間、5分 = 5÷60 ≒ 0.083時間

STEP 2

二次①〜三次②:1,000kW × 0.5時間 = 500kWh

STEP 3

一次調整力:1,000kW × 5÷60時間 = 約83kWh

ここで出したのは、1つのコマ(30分)を出し切るための下限です。実際の蓄電池では、次の分が上乗せになります。

上乗せになるものなぜ
充電と放電の損失電池とPCSで熱になる分がある
使わない残量の幅電池を傷めないよう、満充電と空の近くを避けて使うことが多い
コマが続くときの充電次の30分に備えて充電する時間と電気が要る
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つまり、kW で入札しても、蓄電池の設計では kWh を合わせて考える必要があります。kW と kWh の両方で蓄電池の大きさを表すのはこのためです。

1MWで一次調整力5分なら約83kWh、二次①〜三次②の30分なら500kWh。損失と余裕は別

2026年度から変わったこと:前日取引・30分単位・低圧の参入

2026年度から、一次〜三次①の複合商品も前日取引になり、入札時間単位は3時間から30分に変わりました。低圧の受電点で計るリソースも、全商品に参入できるようになりました。

前日取引と30分単位

OCCTO の資料(2026年6月)によると、2024年度に全商品の取引が始まったものの、応札が足りず募集量に届かないことで調達の費用が高くなっていました。そこで、応札を増やす手の1つとして、2026年度から複合商品の取引を週間から前日へ前倒しし、入札時間単位を3時間から30分にしました。

項目2026年度の要件(EPRX 第6版)
取引の時期前日(入札受付 11時30分〜14時、約定 15時まで)
入札時間単位30分
最低入札量・刻み1MW・1kW

低圧の小さな蓄電池は「束ねて」参加する

OCCTO の整理では、低圧の受電点で計るリソースは2026年度から全商品に「リスト・パターン」(複数の地点をまとめて登録する方式)で参入できます。最低入札量は1MW なので、小さな蓄電池は束ねて使います。たとえば1か所 40kW(例)なら、1,000÷40 = 25か所で1MW になります。複数の小さなリソースを1つの群として扱う「群管理」も整理されました。束ねて制御する事業者をアグリゲーターと呼びます。

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つまり、2026年度は「前日・30分・低圧も参加」の3点が大きな変わり目です。古い解説を読むときは、この3点が反映されているかを確かめてください。

40kWの蓄電池25か所をアグリゲーターがまとめて1MWの入札にする図と、低圧受電点計測は2026年度から全商品に参入可

需給調整市場のよくある勘違い4つ

需給調整市場の解説には、2025年度以前の要件のままのものがあります。3時間ブロック・週間取引・三次②の古い要件・低圧は参加できない、の4つは今の要件と違います。

勘違い今の要件・考え方
入札は3時間ブロック、複合商品は週間で取引2026年度から全商品が前日取引・30分単位
三次調整力②は応動45分・継続3時間(古い資料)EPRX 第6版では応動60分以内・継続30分
低圧の小さな蓄電池は参加できない低圧の受電点計測で、2026年度から全商品に参入可(束ねて1MW 以上)
参加すれば必ずもうかる応札不足や価格の上限など、制度は見直しが続いている。仕組みとリスクを分けて見る
注意|この記事は投資をすすめるものではない

需給調整市場や蓄電所への投資の是非は、この記事では扱いません。制度・価格・要件は見直しが続いているので、判断に使うときは EPRX と OCCTO の最新の資料で確かめてください。

つまり、需給調整市場を調べるときは、資料の日付と「何年度の要件か」をまず確かめることがいちばんの近道です。

3時間ブロック・週間取引→前日・30分、三次②の応動45分・継続3時間→60分・30分、低圧は参加不可→参入可、必ずもうかる→制度は見直し中

よくある質問(FAQ)

Q. 需給調整市場とは何ですか?

A. 電気の需要と供給のずれを直す調整力を、一般送配電事業者が前日に市場で集める仕組みです。2021年度に始まりました。

Q. 需給調整市場の5つの商品は何が違いますか?

A. 応動時間が違い、一次は10秒以内、二次①②は5分以内、三次①は15分以内、三次②は60分以内に応えます。

Q. 需給調整市場の最低入札量はいくらですか?

A. EPRXの第6版の要件では、5商品とも最低入札量は1MW、刻み幅は1kWで、入札は30分単位です。

Q. 蓄電池は需給調整市場に参加できますか?

A. 要件を満たせば参加できます。1MWを30分出すには最低500kWhが要り、実際は損失や余裕の分が加わります。

Q. 低圧の蓄電池も需給調整市場に参加できますか?

A. 2026年度から、低圧の受電点で計るリソースも全商品に参入できます。小さな蓄電池は束ねて1MW以上にします。

まとめ
  • 需給調整市場は、需要と供給のずれを直す「調整力(kW)」を一般送配電事業者が買う市場
  • 応動時間で5つ:一次10秒・二次①②5分・三次①15分・三次②60分(以内)
  • 2026年度は全商品が前日取引・30分単位・最低1MW・刻み1kW
  • 1MW を30分出し続けるには、最低500kWh(損失・余裕は別)
  • 低圧の小さな蓄電池も束ねて参加できる(40kW なら25か所で1MW)
  • 資料の日付と年度を必ず確かめる。投資の判断はこの記事の範囲外

次の一歩として、EPRX の「商品要件と取引スケジュール」の表を開き、この記事の表と見比べてみてください。最新の版で数字が変わっていないかを確かめる習慣がつきます。

調整力の市場、5商品の応動時間、前日・30分・1MW、500kWh、低圧の束ね、一次資料で確かめるの6つのまとめ
参考にした資料

法令・規格・資料は改訂されることがあります。実務で使うときは、発行元の最新版で確かめてください。

S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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