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回路図レビューは、電源とGND → ICのピン → 部品の向きと値 → 保護 → 図面の順に、20項目を上から見ます。印刷して使える1枚のチェックリストと、誤りを12か所しこんだ練習の回路図を用意しました。
回路図レビューは、回路図を描き終えて、基板を作る前にやる点検です。ここで見つけた誤りは、線を1本描き直すだけで直せます。
この記事では、新人がつまずきやすい所を20項目のチェックリストにしました。読み終えたら、自分の回路図に当てはめて点検できます。

回路図レビューとは?作る前に誤りを見つける場
回路図レビューは、回路図・部品表・データシートを見比べて、作る前に誤りを探す点検です。見つけるのが早いほど、直す手間は小さくなります。
回路図の誤りは、基板ができてから見つかると、基板を作り直すことになります。量産のあとなら、製品の回収にもつながります。回路図の段階なら、直すのは線1本です。
レビューでは、回路図だけでなく、部品表(BOM)とデータシートも横に置きます。部品の耐圧やピン番号は、回路図だけでは確かめられないからです。
つまり、レビューは「直すのがいちばん安い時」に誤りを見つける作業。図は手間の大きさを表したイメージです。

回路図レビューのチェックリスト20項目:5つのグループ
20項目は、電源とGND・ICのピン・部品の向きと値・保護・図面の5つに分かれます。上から順に見るのがコツです。
順番には理由があります。電源とGNDが正しくないと、ICは動きません。ICが動く前提が整ってから、ピンの処理や部品の向きを見ます。最後に、図面として読める形になっているかを見ます。
| 番号 | 確かめること | 見る所・目安 |
|---|---|---|
| A-1 | 電源の線の名前がそろっている | 「+5V」と「5V」は別の線になる |
| A-2 | すべての IC の GND ピンがつながっている | GND は電流の帰り道 |
| A-3 | 電源の入口に逆接続の保護がある | +と−を逆に挿しても壊れない |
| A-4 | 部品の耐圧に余裕がある | 使う電圧は耐圧の80%以下が目安 |
| A-5 | 消費電流と発熱を見積もった | 電源とレギュレータが足りるか |
| B-6 | IC ごとにパスコン 0.1µF がある | 電源ピンのすぐ近くに置く |
| B-7 | 使わない入力ピンをつないだ | VCC か GND へ。浮かせない |
| B-8 | リセットなどの端子を処理した | データシートの指示どおりに |
| B-9 | 入力にプルアップがある | スイッチ・I2C・オープンドレイン |
| B-10 | ピン番号をデータシートと照合した | パッケージ違いでピンが変わる |
| C-11 | 向きのある部品の向きが正しい | LED・ダイオード・電解コンデンサ |
| C-12 | LED とベースに電流を決める抵抗 | 抵抗なしは大きな電流が流れる |
| C-13 | 抵抗の電力は定格の50%以下 | P=I×I×R で確かめる |
| C-14 | トランジスタ・IC は定格の中 | 電流・電圧・温度 |
| C-15 | つなぐ信号の電圧がそろっている | 3.3V の IC に5V を入れない |
| D-16 | コイルにダイオードがある | リレー・モータの逆起電力 |
| D-17 | 外につながる端子に保護がある | 静電気・過電圧・ショート |
| E-18 | 部品番号に重複・抜けがない | R1 が2つあると部品表が狂う |
| E-19 | 全部品に値・耐圧・型番がある | 値のない部品は買えない |
| E-20 | 版数・日付・変更点を書いた | どの版をレビューしたか残す |
つまり、20項目は「電源 → ピン → 向き → 保護 → 図面」の順。下の印刷用の1枚にも同じ順で並べました。

例題:誤りを12か所しこんだ回路図
ここからは、12Vのアダプタで動くマイコンの回路図を使って練習します。この回路図には、誤りが12か所あります。
回路の中身は次のとおりです。12V を5V のレギュレータで下げてマイコンに入れ、マイコンの端子で LED・スイッチ・リレーを使います。リレーは12V のコイル(Omron G5V-1 12VDC、コイルの電流12.5mA)です。
まずは答えを見ずに、自分で探してみてください。ヒントは「電源 → GND → ピン → 向き → 保護 → 図面」の順に見ることです。
回路図を「電源・GND・信号の流れ」の順に読む4ステップがわかる
つまり、レビューは「探す練習」で上達します。見つけた数を数えてから、次の答えに進みましょう。

答え:12か所の誤りとチェックリストの項目
12か所の誤りは、すべて20項目のどれかに当てはまります。チェックリストを上から順に当てれば、見落としにくくなります。
| 番号 | 誤り | チェックリスト |
|---|---|---|
| 1 | C1 の耐圧が10V(12V の線) | 項目4 |
| 2 | 電源の名前が「+5V」と「5V」で別の線 | 項目1 |
| 3 | マイコンの GND ピンがつながっていない | 項目2 |
| 4 | マイコンにパスコンがない | 項目6 |
| 5 | スイッチの入力にプルアップがない | 項目9 |
| 6 | 使わない入力ピン P4 が浮いている | 項目7 |
| 7 | LED の向きが逆 | 項目11 |
| 8 | トランジスタにベース抵抗がない | 項目12 |
| 9 | リレーのコイルにダイオードがない | 項目16 |
| 10 | 部品番号 R1 が2つある | 項目18 |
| 11 | 電源の入口に逆接続の保護がない | 項目3 |
| 12 | C2 に値が書いていない | 項目19 |
いくつ見つかりましたか。電源の名前(②)・GND(③)・未使用ピン(⑥)は、図の上では「何かが足りない」だけなので、見落としやすい誤りです。描かれているものより、描かれていないものを探すのがコツです。
つまり、誤りは「間違って描いた所」と「描き忘れた所」の2種類。後者はチェックリストがないと見つけにくいのです。

項目1・2:電源の線の名前と、GNDのつながり
電源の線は、名前が1文字違うだけで別の線になります。GND ピンは、IC にいくつあっても全部つなぎます。
項目1:電源の名前がそろっているか(誤り②)
回路図では、離れた所の線を、同じ名前の記号でつなぎます。例の回路図では、レギュレータの出口が「+5V」、マイコンの VCC が「5V」になっていました。CAD は2つを別の線として扱うので、マイコンに電源が届きません。
確かめ方は、CAD で線の名前(ネット名)の一覧を出し、似た名前がないかを見ることです。「+5V」「5V」「VCC」「5V0」のように、同じつもりの名前が混ざっていないかを確かめます。
項目2:GND ピンがつながっているか(誤り③)
例の回路図では、マイコンの GND ピンがどこにもつながっていませんでした。GND は電流の帰り道です。帰り道がないと、電源をつないでも電流が流れず、IC は動きません。
GND を「0Vの線」ではなく「電流の帰り道」として理解できる
つまり、電源は「名前」、GND は「本数」を確かめる。どちらも、描かれていない所に誤りがあります。

項目3〜5:逆接続の保護・耐圧・消費電流
電源の入口には逆接続の保護を入れ、部品の耐圧は使う電圧に余裕を持たせます。例の C1 は、耐圧10V に12V がかかっていました(使用率120%)。
項目3:逆接続の保護(誤り⑪)
AC アダプタの+と−を逆に挿すと、回路に逆向きの電圧がかかります。例の回路図には、それを止める部品がありませんでした。直した版では、入口にダイオード D1(1N4001)を入れました。逆向きの電圧は、ダイオードが止めます。
ダイオードを入れると、その分だけ電圧が下がります。1N4001 は、1A 流したとき最大1.0V です。12V が約11V になっても、5V を作るには十分です。
逆接続の保護3方式(ダイオード・FET・ブリッジ)を損失で比べる
項目4:耐圧に余裕があるか(誤り①)
使用率が100% を超えると、耐圧を超えています。この記事では80% 以下を目安にします。耐圧25V のコンデンサなら、12V ÷ 25V = 48% で余裕があります。
部品を定格ギリギリで使わない「ディレーティング」の考え方と目安がわかる
項目5:消費電流と発熱を見積もったか
回路図には、電流の大きさは描かれていません。レギュレータが足りるか、熱くならないかは、部品ごとの電流を足して確かめます。手順は連載の別の記事にまとめました。
部品表から電流を足して、電源とレギュレータの発熱を確かめる5ステップ
つまり、電源の入口は「逆に挿しても壊れないか」、部品は「使う電圧が耐圧の80%以下か」で見る。

項目6:ICの電源ピンごとにパスコン0.1µF
IC の電源ピンのすぐ近くには、パスコン(0.1µF のセラミックコンデンサ)を置きます。例のマイコンには、パスコンがありませんでした(誤り④)。
IC は、動くたびに一瞬だけ多くの電流を使います。電源から遠いと、この一瞬の電流が間に合わず、電圧が下がります。マイコンでは、電圧が下がるとリセットすることがあります。
パスコンは、IC のすぐ横で電気をためておき、一瞬の電流を出す役目です。たとえば TI のロジック IC 74HC04 のデータシートは、VCC のピンごとに0.1µF を推奨しています。
パスコンが IC のすぐ横に必要な理由を、電流の流れから理解できる
つまり、IC が1つあればパスコンも1つ以上。電源ピンが複数ある IC は、ピンごとに置きます。

項目7・8:使わない入力ピンとリセット端子
使わない入力ピンは、VCC か GND につなぎます。浮いたままだと、電圧が H と L のあいだをさまよい、誤動作や電流の増加の原因になります(誤り⑥)。
入力ピンは、ほとんど電流が流れません。そのため、何もつながないと、周りのノイズで電圧がふらふら動きます。これを「浮いている(フローティング)」と呼びます。
TI の 74HC04 のデータシートにも、「使わない入力は VCC か GND につなぐ。浮かせてはいけない」と書かれています。マイコンの場合は、データシートに書かれた未使用ピンの扱い(内部のプルアップを使う・出力にする など)に従います。
項目8:リセットなどの端子
リセット(RST)・イネーブル(EN)・チップセレクト(CS)のように、IC の動きを止める端子は、どちらの電圧で動くかが決まっています。データシートの指示どおりに、抵抗でつなぎます。例の回路図では、RST は10kΩ でプルアップしてありました。
つまり、入力ピンは1本ずつ「どこにつながっているか」を確かめる。答えが「どこにも」なら、それが誤りです。図の電圧の動きはイメージです。

項目9:スイッチの入力にはプルアップ抵抗
スイッチを GND につなぐ入力には、プルアップ抵抗(例では10kΩ)が要ります。押していないときの電圧を5V に決めるためです(誤り⑤)。
例の回路図では、スイッチ SW1 が P3 と GND のあいだにだけ入っていました。押すと0V になりますが、離すと P3 は何にもつながらず、浮いてしまいます。
直した版では、P3 と +5V のあいだに R2(10kΩ)を入れました。離しているときは5V(H)、押すと0V(L)になります。押したときに流れる電流は、5V ÷ 10kΩ = 0.5mA です。
プルアップとプルダウンの選び方と、抵抗値の決め方がわかる
つまり、スイッチの入力は「押していないときに何V か」を答えられるかで確かめる。答えられなければ、プルアップが足りません。

項目10・11:ピン番号と、向きのある部品
ピン番号はデータシートと1本ずつ照らし合わせ、LED・ダイオード・電解コンデンサ・トランジスタは向きを確かめます。例の LED D2 は、向きが逆でした(誤り⑦)。
項目10:ピン番号
同じ型番でも、パッケージ(形)が違うとピン番号が変わることがあります。回路図の部品(シンボル)のピン番号を、使うパッケージのデータシートのピン表と見比べます。
項目11:向きのある部品
LED は、三角の向き(アノードからカソード)にだけ電流が流れます。例の回路図では、D2 の三角が上(電流が来る R1 の側)を向いていました。これでは電流が流れず、LED は点きません。
| 部品 | 回路図で見る所 |
|---|---|
| LED・ダイオード | 三角の向き。三角の先の線がカソード |
| 電解コンデンサ | +の側が、電圧の高い側につながっているか |
| トランジスタ | C(コレクタ)と E(エミッタ)が入れ替わっていないか |
| IC | 1番ピンの位置と、ピン番号 |
つまり、向きのある部品は「電流が流れる向き」を指でなぞって確かめる。逆向きの部品は、動かないか、壊れます。

項目12〜15:電流を決める抵抗・抵抗の電力・定格・信号の電圧
LED とトランジスタのベースには、電流を決める抵抗が要ります。例の Q1 には、ベース抵抗がありませんでした(誤り⑧)。
項目12:電流を決める抵抗
トランジスタのベースとエミッタのあいだは、ダイオードと同じ形をしています。抵抗なしでマイコンの端子につなぐと、電流を決める部品がなく、マイコンの端子とトランジスタに大きな電流が流れます。
リレーのコイルの電流は12.5mA です。2N3904 の hFE を小さめの60 とすると、ぎりぎりのベース電流は 12.5 ÷ 60 ≒ 0.21mA。0.91mA はその約4.4倍で、連載のベース抵抗の記事の目安(3倍以上)に入ります。
マイコンでトランジスタを動かすときの、ベース抵抗の決め方を3ステップで
項目13・14:抵抗の電力と、部品の定格
抵抗には、使ってよい電力(定格電力)があります。LED の R1 は、電流が(5 − 2.0)÷ 330 ≒ 9.1mA、電力が 0.0091² × 330 ≒ 0.027W です。1/8W(0.125W)の抵抗なら、定格の約22% で、目安の50% 以下に入ります。トランジスタや IC も、電流・電圧・温度が定格の中かを確かめます。
項目15:信号の電圧
3.3V で動く IC の入力に、5V の信号を入れてよいかは、データシートの入力電圧の上限で決まります。電源の違う IC どうしをつなぐ線は、1本ずつ確かめます。
つまり、「電流を決める部品はあるか」「電力は定格の50%以下か」「電圧は上限の中か」の3つを、数字で確かめる。

項目16・17:コイルのダイオードと、外の端子の保護
リレーやモータのコイルには、逆向きのダイオードを並べます。例の K1 には、ダイオードがありませんでした(誤り⑨)。
コイルは、流れている電流を急に止められると、高い電圧を出します。これを逆起電力と呼びます。トランジスタが OFF になった瞬間、この電圧がトランジスタにかかり、壊すことがあります。
直した版では、コイルと並べてダイオード D3(1N4001)を入れました。向きは、カソード(線の側)を +12V に、アノードをトランジスタの側にします。OFF の瞬間の電流は、ダイオードを通ってコイルに戻り、電圧は12V の少し上で止まります。
リレーやモータの逆起電力を、ダイオードで逃がす仕組みがわかる
項目17:外につながる端子
コネクタのように外とつながる端子には、静電気・高い電圧・ショートが入ってくることがあります。保護の部品(抵抗・ダイオード・TVS ダイオードなど)が入っているかを確かめます。
つまり、保護は「コイル」と「外とつながる端子」の2か所を見る。どちらも、なくても最初は動くので見落としやすい所です。図の電圧はイメージです。

項目18〜20:部品番号・値・版数
部品番号に重複や抜けがないか、すべての部品に値・耐圧・型番が書いてあるか、どの版の回路図かを確かめます。例では R1 が2つあり(誤り⑩)、C2 に値がありませんでした(誤り⑫)。
部品表(BOM)は、回路図から作ります。同じ番号が2つあると、部品表や組み立ての指示で、どちらの R1 かわからなくなります。値のない部品は、そもそも買えません。
コンデンサは値だけでなく耐圧、抵抗は電力、IC は型番まで書きます。レビューでは「この部品を、この回路図だけで注文できるか」を考えると、書き忘れに気づけます。
項目20:版数・日付・変更点
回路図には、版数(Rev.)と日付、前の版からの変更点を書きます。レビューで指摘を受けて直したら版を上げ、「どの版をレビューしたか」を記録に残します。
つまり、図面は「ほかの人が読んで、注文して、組み立てられるか」で確かめる。番号・値・版数の3つです。

12か所を直した回路図
12か所を直すと、部品が5つ増え(D1・C3・R2・R3・D3)、名前・向き・番号・値・つなぎ方が直ります。
| 誤り | 直したこと |
|---|---|
| ① C1 の耐圧 | 10V → 25V(使用率48%) |
| ② 電源の名前 | 「5V」を「+5V」にそろえた |
| ③ GND ピン | マイコンの GND を GND につないだ |
| ④ パスコン | C3 0.1µF をマイコンの VCC の横に足した |
| ⑤ プルアップ | R2 10kΩ を P3 と +5V のあいだに足した |
| ⑥ 未使用ピン | P4 を GND につないだ |
| ⑦ LED の向き | 三角を下向き(R1 → GND)にした |
| ⑧ ベース抵抗 | R3 4.7kΩ を足した |
| ⑨ コイルのダイオード | D3 1N4001 をコイルと並べた |
| ⑩ 部品番号 | RST の抵抗を R1 → R4 にした |
| ⑪ 逆接続の保護 | D1 1N4001 を入口に足した |
| ⑫ C2 の値 | 10µF と書いた |
つまり、レビューの結果は「直した版の回路図」と「指摘表」の2つで残す。次の節の進め方につながります。

印刷して使える1枚のチェックリスト
20項目を、A4 の1枚にまとめました。レビューの前に、自分の回路図に当てはめて、□ にチェックを入れていきます。
上の欄に、回路名・版・日付・確認した人を書きます。NG だった項目は、次の節の指摘表に書き写します。
最初は時間がかかりますが、何度か使うと、どの項目で自分が引っかかりやすいかがわかってきます。その項目を、自分用に太字にしておくのもよい方法です。
つまり、チェックリストは「毎回、同じ順で見る」ための道具。順番が決まっていれば、見落としが減ります。

回路図レビューの進め方:4ステップと指摘表
回路図レビューは、①前日に資料を配る②チェックリストで上から見る③指摘表に書く④直して版を上げる、の4ステップで進めます。
指摘は「どこが・なぜ・どう直す」の3つをそろえて書きます。「C1 がおかしい」ではなく「C1 の耐圧10V が12V より低い(項目4)→ 25V 品に変える」と書くと、直す人も確かめる人も迷いません。
レビューの進め方の全体(誰が・いつ・何を決めるか)は、品質管理の DR(デザインレビュー)の考え方と同じです。基板の段階の点検は、パワエレ基板のチェックリストにまとめています。
つまり、レビューは「見つける → 書く → 直す → 閉じる」で1回。指摘表が残れば、次の設計にも生かせます。


