回路設計

エンコーダとは?インクリメンタルとアブソリュートの違い・A相B相と4逓倍

エンコーダとはのアイキャッチ。サーボモーターの後ろに付いたロータリーエンコーダの写真

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エンコーダとは、モーターなどの軸の回転を、パルスやコードの電気信号に変えて、角度・位置・速さを測るセンサーです。エンコーダー、ロータリーエンコーダとも呼びます。回転の量に応じたパルスを出して数えるインクリメンタル形と、軸の位置ごとに決まったコードを出すアブソリュート形があります。

サーボモーターの軸の後ろ、工場のコンベアの軸の端、プリンターの紙送り。回転を正確に止めたい所には、たいていエンコーダが付いています。

この記事を書いたのは、「エンコーダとは」で調べる人が多いと、検索の数字でわかったからです。このブログには、パルスで回す側(モーター)の記事はあるのに、回転を測る側がありませんでした。仕組み・2つの種類・A相とB相・計算の順に進みます。

エンコーダとはのアイキャッチ。サーボモーターの後ろに付いたロータリーエンコーダの写真

エンコーダの仕組み:回転を「数えられる信号」に変える

エンコーダは、軸と一緒に回る円板の模様を読み取り、回転を電気のパルスやコードに変えます。読み取り方には、光を使う光学式と、磁石とホールセンサを使う磁気式があります。

光学式は、細いすき間(スリット)が円周に並んだ円板を軸と一緒に回し、光が通るか通らないかを受光素子で読み取ります。すき間が来れば光が通って1、来なければ0。これが電気のパルスになります。

磁気式は、軸に付けた磁石の回転で変わる磁場を、ホールセンサ(磁場を電気に変える素子)で測ります。ifm の解説によると、光学式はガラスの円板のすき間を通る光で、磁気式はホール効果で信号を作ります。

たとえると

インクリメンタル形は「歩数計」、アブソリュート形は「住所」です。歩数計は、スタートから何歩進んだかはわかっても、電池が切れると今どこにいるかがわからなくなる。住所は、いつ見てもその場所がどこかわかります。

光学式ロータリーエンコーダの仕組み。すき間の並んだ円板を光源と受光素子ではさみ、回転をパルスに変える

インクリメンタル形とアブソリュート形の違い

インクリメンタル形は回転の量に応じたパルスを出し、受ける側が数えて位置を出します。アブソリュート形は軸の位置ごとに決まったコードを出すので、電源を切っても位置がわかり、原点復帰が要りません。

インクリメンタル形アブソリュート形
出すもの回転の量に応じたパルス位置ごとに決まったコード(絶対番地)
位置の知り方パルスを数える(カウンタ)コードをそのまま読む
電源を切ったとき位置がわからなくなる位置がわかる
電源を入れたとき原点復帰が必要原点復帰が要らない
出力A相・B相・Z相のパルスパラレル・シリアル・フィールドバス

ifm「インクリメンタル式エンコーダ」「アブソリュート式エンコーダ」と、オムロン「技術編 ロータリエンコーダ」の分解能の定義から作った。

アブソリュート形には、1回転の中の位置がわかるシングルターンと、何回転したかまでわかるマルチターンがあります。シングルターンは、軸が360°以上回らない場面で使われます(ifm)。

アブソリュートのコードには、隣の位置に移るとき1ビットだけ変わるグレイコードがよく使われます。ふつうの2進数だと、7(0111)から8(1000)へ移るとき4ビットが同時に変わる。読み取りの一瞬のずれで、まったく違う値を読むおそれがあるのです。

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A相・B相・Z相の役割:方向と原点を知る

インクリメンタル形のエンコーダは、A相・B相・Z相の3つの信号を出すものが多く、A相とB相は電気角で90°ずれています。どちらが先に変わるかで回転方向が、1回転に1回出るZ相で原点がわかります。

信号役割
A相回転の量に応じたパルス
B相A相と電気角で90°ずれたパルス。A相とどちらが先かで回転方向がわかる
Z相1回転に1回だけ出るパルス。原点を決める

A相だけでは、軸がどちらに回っているのかわかりません。パルスの数は、右に回しても左に回しても同じだからです。そこで、少しずらした B相を一緒に出します。

一方の向きに回すと A相が先に立ち上がり、逆に回すと B相が先になります(どちらを正転と呼ぶかは機種の決まり)。受ける側は「A相が変わった瞬間の B相が1か0か」を見て、数を足すか引くかを決めます。東京工業大学の演習資料も、この方法で回転方向を判別しています。

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分解能と4逓倍:同じエンコーダで細かく測るしくみ

エンコーダの分解能は、軸1回転で出るパルス数(P/R)です。A相とB相の立ち上がりと立ち下がりを全部数える4逓倍にすると、同じエンコーダで1回転のカウントが4倍になります。

1逓倍

A相の立ち上がりだけを数える。1,000P/R なら1回転 1,000カウント。1カウントは 360°÷1,000=0.36°

2逓倍

A相の立ち上がりと立ち下がりを数える。1回転 2,000カウント

4逓倍

A相と B相の立ち上がりと立ち下がりを全部数える。1回転 4,000カウント。1カウントは 360°÷4,000=0.09°

4逓倍で増えるのは、エンコーダのパルスではありません。受ける側(カウンタや PLC)が数える「エッジ」の数です。エンコーダ自体は同じ1,000P/R のまま。

ではカタログの「1,000P/R」は、逓倍の前か後か。調べると、キヤノンのエンコーダの製品比較は「パルス/1回転」と「パルス/1回転(4逓倍後)」を別の欄に書き分けていました。オムロンの技術資料も、分解能を「軸1回転で出力されるパルス数」と定義しています。筆者は、ただの「P/R」は逓倍前の数と読みます。

エンコーダの1逓倍・2逓倍・4逓倍のカウント。A相と B相の立ち上がりと立ち下がりを全部数えると4倍

エンコーダの計算:出力周波数・回転速度・移動量

エンコーダの出力周波数は「回転速度÷60×分解能」で求めます。1,000P/R のエンコーダを3,000min⁻¹ で回すと A相は50kHz で、これが受ける側の入力の最高周波数以下かを確かめます。

出力周波数
f[Hz]= N[min⁻¹]÷ 60 × P[P/R]

例1:1,000P/R を3,000min⁻¹ で回す

3,000min⁻¹ は1秒に 3,000÷60=50回転。1回転で1,000パルスなので、50×1,000=50,000Hz、つまり50kHz です。4逓倍で数えるなら、1秒に 200,000カウント。

例2:周波数から回転速度を出す

500P/R のエンコーダの A相が20kHz なら、1秒に 20,000÷500=40回転。1分では 40×60=2,400min⁻¹ です。逆に 2,400÷60×500 と計算すると20,000Hz に戻ります。

例3:ボールねじの1カウントの移動量

リード10mm(1回転で10mm 進む)のボールねじに、1,000P/R のエンコーダを4逓倍で使います。1回転 4,000カウントなので、10mm÷4,000=0.0025mm=2.5μm が1カウントの移動量です。

カタログの値で検算する

キヤノンの製品比較の例(81,000P/R・最高応答周波数 0.5MHz)を式に入れると、0.5MHz÷81,000×60 ≒ 370rpm。カタログの最高応答回転数は360rpm でした。式で出した値より少し低い、余裕を持った値です。

確かめること理由
エンコーダの最高応答周波数超えるとパルスが出きらず、数え落とす
受ける側(カウンタ・PLC)の入力の最高周波数超えると数え落とす。4逓倍ではカウントの速さが4倍
必要な分解能オムロンの資料は、機械の総合精度の1/2〜1/4 になる分解能を選ぶのがよいとしている

計算の数値は例です。最高応答周波数や入力の周波数は機種で違うので、使う機器のカタログで確かめてください。

エンコーダの計算例。1,000P/R・毎分3,000回転で50kHz、500P/R・20kHzで毎分2,400回転、リード10mmのボールねじで2.5μm

出力回路の種類と、よくある間違い

インクリメンタル形の出力回路には、オープンコレクタ(NPN・PNP)、電圧出力、ラインドライバがあります。配線が長い・ノイズが多い所では、A と A反転の2本で送るラインドライバが向きます。

出力回路特徴向いている場面
オープンコレクタ(NPN・PNP)受ける側の電源とプルアップ抵抗で信号を作る近い距離、PLC の入力
電圧出力エンコーダの中にプルアップがある近い距離、簡単な回路
ラインドライバA と A反転の2本(差動)で送る長い配線、ノイズの多い工場

どこまで配線を延ばせるかは、出力回路と機種で違います。手元で確かめていない値は、ここでは言えません。カタログの「ケーブル長」の欄を見てください。

よくある間違い正しくは
インクリメンタル形なのに、電源を切っても位置が残ると思う位置はわからなくなる。原点復帰が要る
P/R と4逓倍のカウントを混同するカタログの P/R は逓倍前。4逓倍は受ける側で4倍
応答周波数を確かめずに速く回すf=N÷60×P が最高応答周波数以下か確かめる
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エンコーダはどこで使われる?サーボモーターの「目」

エンコーダは、サーボモーターの位置・速度の検出、コンベアや回転テーブルの位置決め、紙送りなどで使われます。とくにサーボモーターでは、モーターの後ろに付いて回転を測り、アンプが指令とのずれを直します。

サーボモーターは、エンコーダで測った位置を、指令した位置と比べてずれを直しながら回ります。目で確かめながら歩く人に近い動き方です。反対に、ステッピングモーターはエンコーダなしで、送ったパルスの数だけ回る前提で動かします。

2つのモーターの違いと選び方は、同じ筆者が運営する工場の機械と制御のブログ「機械と制御の教科書」のサーボモーターとステッピングモーターの違いで詳しく解説しています。

よくある質問(FAQ)

Q. エンコーダとは何ですか?

A. 軸の回転を、パルスやコードの電気信号に変えて、角度・位置・速さを測るセンサーです。モーターの制御によく使います。

Q. インクリメンタルとアブソリュートの違いは?

A. インクリメンタルはパルスを数えて位置を出し、電源を切ると位置を失います。アブソリュートは位置ごとのコードを出します。

Q. A相とB相の役割は?

A. A相とB相は電気角で90°ずれたパルスで、どちらが先に変わるかで回転方向がわかります。Z相は1回転に1回の原点の信号です。

Q. 4逓倍とは?

A. A相とB相の立ち上がりと立ち下がりを全部数えて、1回転のカウントを4倍にする、受ける側の数え方です。

Q. エンコーダの回転速度の計算方法は?

A. 回転速度[min⁻¹]=出力周波数[Hz]÷分解能[P/R]×60 で求めます。

まとめ:エンコーダは回転を数える「目」

まとめ
  • エンコーダは、軸の回転を電気信号に変えて角度・位置・速さを測るセンサー
  • インクリメンタル形はパルスを数える。電源を切ると位置を失い、原点復帰が要る
  • アブソリュート形は位置ごとのコード。シングルターンとマルチターンがある
  • A相・B相の90°のずれで回転方向、Z相で原点、4逓倍でカウントが4倍
  • f=N÷60×P が、エンコーダと受ける側の最高周波数以下かを確かめる

手元の機械にエンコーダがあれば、銘板やカタログで P/R と出力回路を見てください。P/R がわかれば、回転速度から出力周波数を計算して、PLC の入力が足りるかを確かめられます。

参考にした資料

(2026年10月に確認)

法令・規格・資料は改訂されることがあります。実務で使うときは、発行元の最新版で確かめてください。

この記事の理解を深める本と道具
おすすめの本

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S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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