回路設計

電池で動かす回路の設計|何時間もつかの計算と電池の選び方

単3電池2本の電池ケースから赤と黒の線で小さな基板につながり緑のLEDが光る写真に、電池で動かす回路・何時間もつ?・5か月・時間=容量÷平均電流の文字

※本記事にはプロモーション(広告)が含まれています。

電池で動かす回路が何時間もつかは、もつ時間=使える容量(mAh)÷平均電流(mA)で計算します。単3アルカリ2本・平均 0.52mA の例では約4000時間(約5か月)で、計算は3ステップ、電池ごとの目安は早見表にあります。

結論|まず30秒でわかる答え

1分に1秒だけ 30mA で起き、残りは 20µA で寝る回路なら、平均は約0.52mA。単3アルカリ2本(使える容量 2100mAh)で約4000時間、約5か月です。
あわせて、電池の電圧が下がっても回路が動くか(レギュレータの選び方)を確かめます。

この記事に出てくる言葉

わからない言葉が出てきたら、ここに戻ってきてください。本文でも、初めて出たところで言い換えます。

mAh(ミリアンペアアワー)電池の容量の単位。何 mA を何時間流せるかを、かけ算で表す
平均電流時間で変わる電流を、ならした値。電池の寿命はこれで決まる
スリープ(寝る)マイコンがほとんどの動きを止めて、電流を小さくしている状態
放電カーブ電池を使っていくと、電圧がどう下がるかを表したグラフ
止まる電圧これより電池の電圧が下がると、回路が正しく動かなくなる電圧
LDO(エルディーオー)電圧を下げて一定にする部品の1つ。差の電圧を熱にして捨てる
静止電流レギュレータ自身が、いつも使っている電流。電池の回路では寿命に効く
昇圧・昇降圧電圧を上げる回路と、上げも下げもできる回路
保護回路リチウムイオン電池の充電しすぎ・使いすぎ・流れすぎを止める回路

電池で動かす回路は、コンセントにつなぐ回路とちがって「いつか電池が切れる」回路です。だから設計の最初に、何時間もつかを計算しておく必要があります。

この記事では、電池で動かす回路の設計を、例の温度センサーを使って順に説明します。電池の数字は、Energizer・Panasonic のデータシートの値を使います。

単3電池2本の電池ケースから赤と黒の線で小さな基板につながり緑のLEDが光る写真に、電池で動かす回路・何時間もつ?・5か月・時間=容量÷平均電流の文字

この記事の例:単3電池2本で動く温度センサー

1分ごとに1秒だけ起きて温度を測って送り、残りの59秒は寝て待つ回路を例にします。単3アルカリ2本で、約5か月もつ計算になります。

マイコン(小さなコンピュータの IC)と温度センサーを、単3アルカリ電池2本(直列で 3.0V)で動かします。マイコンは 1.8〜3.6V で動く品を選び、電池から直接つなぎます。

電流の数字は、この記事の例として決めた値です。起きている間(温度を測って無線で送る間)は 30mA、寝ている間は 20µA(0.02mA)とします。実際の値は、使う部品のデータシートと測定で確かめます。

POINT|電池の回路は「寝かせる」が基本

ずっと起きて 30mA を流し続けると、同じ電池でも約70時間(3日足らず)で切れます。1分に1秒だけ起きるようにすると、約4000時間(約5か月)もちます。同じ部品でも、動かし方で寿命が約58倍変わります。

つまり、電池の回路では「何 mA 流れるか」だけでなく「どれだけの時間流れるか」を一緒に考えます。

単3アルカリ2本で1.8〜3.6Vで動くマイコンと温度センサーを直接動かす例。起きている30mA・1秒、寝ている20µA・59秒、平均0.52mA、2100mAh÷0.52≒4000時間≒約5か月

mAh は「電流×時間」の量:もつ時間=容量÷電流

mAh(ミリアンペアアワー)は、電流と時間のかけ算です。2000mAh なら、100mA で約20時間、20mA で約100時間流せます。

もつ時間の式
もつ時間〔h〕= 容量〔mAh〕÷ 電流〔mA〕

電池の容量は、タンクに入った水の量にたとえられます。電流は、蛇口から出る水の勢いです。勢いを半分にすれば、同じタンクで2倍の時間、水を出せます。

2000mAh の電池なら、2000÷100=20 で、100mA を約20時間。2000÷20=100 で、20mA を約100時間です。

注意|mAh は「電圧」を含まない

mAh は電流と時間だけの量です。電池が持っているエネルギー(Wh、ワットアワー)は、mAh×電圧で決まります。1.2V の 2000mAh と 3.6V の 2000mAh では、エネルギーが3倍ちがいます。

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つまり、容量を電流で割れば時間が出ます。ただし、その「電流」をどう決めるかが次の問題です。

2000mAhなら100mAで約20時間、20mAで約100時間、2mAで約1000時間の棒と、もつ時間=容量÷電流の式

電流は「寝ている時間」と「起きている時間」でちがう

電池で動かす回路の電流は、ずっと同じではありません。起きている短い時間に大きく流れ、寝ている長い時間は小さく流れます。寿命は、その平均で決まります。

例の回路の電流を時間で描くと、1分ごとに高さ 30mA・幅1秒の細い山が立ち、その間はほとんど0に見えるほど小さな 20µA が続きます(図はイメージ)。

電池から見ると、この山とすそが全部合わさって減っていきます。山の面積をならして、1分間に平らに流したと考えた高さが「平均電流」です。

たとえると

毎日のお金の使い方に似ています。ふだんは少ししか使わなくても、たまの大きな買い物が月の合計の大部分になることがあります。電池も、たまの「起きている時間」が合計の大部分を決めます。

つまり、電池の寿命は「いちばん大きな電流」ではなく「ならした平均の電流」で決まります。

1分ごとに30mA・1秒の山が立ち、残りは20µA。平均約0.52mAの点線(イメージ)

平均電流の計算:起きている分と寝ている分を足す

平均電流=(起きている電流×時間+寝ている電流×時間)÷1周期 です。例の回路では約0.52mA になります。

平均電流の式
平均電流 =(起きている電流×時間 + 寝ている電流×時間)÷ 1周期の時間

1周期(1回の「起きる+寝る」)は60秒です。起きている時間が1秒、寝ている時間が59秒です。

起きている分:30mA×1秒÷60秒=0.50mA

寝ている分:0.02mA×59秒÷60秒=約0.020mA

合計:0.50+0.020=約0.52mA。平均の約96% は、1秒しかない「起きている分」です。

POINT|効くのは「起きている時間を短く・回数を少なく」

例の回路で、起きている時間を1秒から0.5秒にすると、平均は約0.27mA になり、寿命はほぼ2倍です。寝ている電流を 20µA から 10µA に減らしても、平均は約0.51mA で、ほとんど変わりません。どこを減らすと効くかは、2つの分を比べればわかります。

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つまり、平均電流は2つの分の足し算です。大きいほうを先に減らすと、電池が長くもちます。

平均電流=(30×1+0.02×59)÷60。起きている分0.50mA(約96%)、寝ている分0.020mA(約4%)

何時間もつかを出す3ステップ

STEP1 で平均電流を出し、STEP2 で使える容量を決め、STEP3 で割り算をして、電池の電圧が下がっても回路が動くかを確かめます。

STEP 1

平均電流を出す:起きている電流×時間+寝ている電流×時間を、1周期の時間で割ります。例では約0.52mA です。

STEP 2

使える容量を決める:データシートの容量に、この記事では 0.7 をかけます(目安)。止まる電圧・温度・電池のばらつき・自然に減る分を見込んだ係数です。例では 3000×0.7=2100mAh です。

STEP 3

割って、電圧も確かめる:2100÷0.52≒4000時間(約5か月)。そのうえで、電池の電圧が下がりきるまで回路が動くかを確かめます(後の節)。

係数の 0.7 は、この記事の目安です。寒い所で使う、電池が古い、止まる電圧が高い、といった条件では、もっと小さく見込みます。

つまり、「平均電流」「使える容量」「電圧の範囲」の3つがそろえば、何時間もつかが決まります。

STEP1 平均電流(0.52mA)、STEP2 使える容量×0.7(2100mAh)、STEP3 割って電圧を確かめる(約4000時間)

アルカリ電池の容量は、流す電流が大きいほど減る

アルカリ電池は、流す電流が大きいと使える容量が減ります。単3アルカリ(Energizer E91)は、25mA で約3000mAh、500mA では約1500mAh です。

Energizer の単3アルカリ「E91」のデータシートには、0.8V まで流し続けたときの容量のグラフがあります。読み取ると、25mA で約3000mAh、100mA で約2500mAh、250mA で約2000mAh、500mA で約1500mAh です(グラフの読み取りなので目安)。

電流が大きいと、電池の中の化学反応が追いつかず、電池の中の抵抗(内部抵抗)でも電圧が下がるので、早めに止まる電圧に届いてしまいます。

ニッケル水素電池やリチウムイオン電池は、アルカリ電池より内部抵抗が小さく、大きな電流でも容量が減りにくい電池です。モーターや無線の送信のように大きな電流が流れる回路では、この差が効いてきます。

注意|容量は「どんな条件で測ったか」とセットで見る

データシートの容量は、決まった電流・温度・止める電圧で測った値です。ニッケル水素の NH15-2000 の 2000mAh は「400mA で 1.0V まで」の値です。自分の回路の条件と近いかを確かめます。

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つまり、電流の小さな回路は容量をほぼ使い切れますが、電流の大きな回路では、データシートの大きな数字をそのまま使えません。

単3アルカリE91の容量。25mAで約3000、100mAで約2500、250mAで約2000、500mAで約1500mAh(グラフの読み取り)

電池の種類で、電圧の下がり方(放電カーブ)がちがう

アルカリ電池はだんだん電圧が下がり、ニッケル水素電池は平らに続いて最後に急に下がります。リチウムイオン電池は 4.2V から少しずつ下がり、最後に急に下がります。

各社のデータシートのグラフを読み取って、横軸を「使った割合」にそろえて並べました(形のイメージ)。

アルカリ(1本 1.5V):だんだん下がる

新品の約1.5V から少しずつ下がり、半分を使ったころには約1.3V、終わりのほうで 1V を下回ります。電圧を見れば、残りがおおよそわかります。

ニッケル水素(1本 1.2V):平らで、最後に急に落ちる

約1.25V でほぼ平らに続き、最後に急に下がります。乾電池用の機器に使うと、最初から 1.2V なので少し低めですが、途中で下がりにくいのが良い点です。

リチウムイオン(1本 3.6V):4.2V から下がって、最後に急に落ちる

満充電の約4.2V から約3.5V まで少しずつ下がり、最後に急に下がります。1本で 3.6V(公称)あるので、3.3V の回路にちょうどよく見えますが、次の節のように注意が要ります。

つまり、電池を選ぶときは「何 V の電池か」だけでなく「どこまで下がるか」を見ます。

アルカリ(E91・50mA)はだんだん下がり、ニッケル水素(NH15・200mA)は約1.25Vで平らで最後に急に下がる。リチウムイオン(NCR18650B・0.2C)は4.15Vから下がる

電池の組み合わせで、電圧の範囲が決まる

電池を何本つなぐかで、新品のときと終わりのときの電圧の範囲が決まります。3.3V の LDO を使うなら、入力は約3.54V 以上が要ります。

1本の電圧の範囲を、この記事では次の目安で考えます。アルカリ 1.6→0.9V、ニッケル水素 1.4→1.0V、リチウムイオン 4.2→3.0V(止める電圧は回路で決めます)。

電池電圧の範囲(目安)3.3V の LDO で使えるか
アルカリ 2本3.2→1.8V使えない(いつも足りない)
アルカリ 3本4.8→2.7V途中まで(約73%)
ニッケル水素 3本4.2→3.0V途中まで
ニッケル水素 4本5.6→4.0V最後まで使える
リチウムイオン 1本4.2→3.0V途中まで(約70%)

3.3V の LDO に要る入力は、3.3V+ドロップアウト電圧(LDO が出力を保つのに最低限いる差)です。TLV755P は 500mA で最大 0.238V なので、3.3+0.238=約3.54V としました(小さな電流ではもっと小さくて済みます)。

アルカリ3本なら、1本あたり約1.18V を下回ると 3.3V を保てません。E91 の放電カーブで計算すると、使えるのは約73% です。リチウムイオン1本は約3.54V までなので、約70% です(どちらも読み取ったカーブから計算した目安)。

つまり、電池の電圧の範囲が「必要な電圧の線」をまたぐかどうかで、使い切れるかが決まります。

アルカリ2本3.2→1.8V、3本4.8→2.7V、ニッケル水素3本4.2→3.0V、4本5.6→4.0V、リチウムイオン1本4.2→3.0Vの帯と、3.3VのLDOに要る約3.54Vの線

電池の電圧の範囲で、レギュレータを選ぶ

電池の電圧がいつも必要な電圧より上なら LDO、いつも下なら昇圧、線をまたぐなら昇降圧か、出力の電圧を下げる、が基本です。

いつも上:LDO(静止電流の小さい品)

ニッケル水素4本(5.6→4.0V)から 3.3V を作るなら、最後まで入力が 3.54V より上なので LDO で使えます。電流が小さい回路なら、熱の問題もほとんど出ません。

いつも下:昇圧(ブースト)か、直接つなぐ

アルカリ2本(3.2→1.8V)では、3.3V は作れません。3.3V がどうしても要るなら、電圧を上げる昇圧の回路(ブーストコンバータ)を使います。例のように、1.8〜3.6V で動くマイコンを選んで電池から直接つなげば、レギュレータが要らず、むだも出ません。

線をまたぐ:昇降圧か、出力を下げる

リチウムイオン1本(4.2→3.0V)は、はじめは 3.3V より上、終わりは下です。最後まで使い切るなら、上げも下げもできる昇降圧の回路を使います。または、部品が許すなら出力を 3.0V にするなど、必要な電圧を下げる方法もあります。

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つまり、先に電池の電圧の範囲を書き出し、必要な電圧と比べてから、レギュレータの方式を決めます。

いつも3.54Vより上ならLDO、いつも3.3Vより下なら昇圧か直接、またぐなら昇降圧か低い出力

電池の回路は、レギュレータの「静止電流」で寿命が変わる

レギュレータは、自分自身もいつも電流を使います(静止電流)。電池の回路では、この電流が寿命を大きく左右します。

例の回路(平均 0.52mA)をニッケル水素4本(2000mAh×0.7=1400mAh)で動かし、3.3V の LDO を足す場面で比べます。

TLV755P(静止電流 25µA=0.025mA):平均=0.52+0.025≒0.545mA、1400÷0.545≒2570時間=約107日。

LM1117(静止電流 5mA):平均=0.52+5=5.52mA、1400÷5.52≒254時間=約11日。

LM1117 は、USB や AC アダプタで動かす回路では定番の LDO です。ところが、静止電流 5mA は、例の回路が平均で使う電流の約10倍です。回路が寝ていても、レギュレータが電池を食べてしまいます。

POINT|データシートの「Quiescent current(静止電流)」を見る

電池の回路でレギュレータを選ぶときは、データシートの Quiescent current(IQ)を必ず見ます。µA 台の品を選ぶと、レギュレータが寿命をほとんど縮めません。

つまり、電池の回路では「出せる電流」より先に「自分が使う電流」でレギュレータを選びます。

ニッケル水素4本で例の機器にLDOを足すと、TLV755P(25µA)で約107日、LM1117(5mA)で約11日

リチウムイオン電池には、保護回路と充電 IC が要る

リチウムイオン電池は、充電しすぎ・使いすぎ・流れすぎで傷んだり、発熱したりします。充電は専用の充電 IC で行い、電池には保護回路をつけます。

充電:定電流→定電圧で 4.20V まで

NCR18650B のデータシートでは、充電は「定電流・定電圧(CC-CV)で 4.20V」と決められています。はじめは一定の電流で充電し、4.20V に届いたら電圧を一定に保って、電流が小さくなったら止めます。

この手順を自動でやるのが充電 IC です。Microchip の MCP73831 は 4.20V で充電し、充電の電流を抵抗1本(PROG の抵抗)で決めます。電流〔mA〕=1000÷抵抗〔kΩ〕で、10kΩ なら 100mA、2kΩ なら約500mA です。

保護:過充電・過放電・過電流で切る

TI の BQ2970 のような保護 IC は、電池の電圧と電流を見張り、外付けの MOSFET(電気で ON/OFF するスイッチ)2個で電流を止めます。BQ29700 なら、4.275V を超えると充電を、2.8V を下回ると放電を止めます。流れすぎやショートでも切ります。

注意|保護回路のないセルを、ふつうの電源で充電しない

リチウムイオン電池を、定電圧の電源や他の種類の電池の充電器で充電してはいけません。初めて使うなら、保護回路のついた電池パックと、データシートどおりの充電 IC を使います。充電の温度(NCR18650B は 0〜45℃)も守ります。

つまり、リチウムイオン電池は「充電 IC+保護回路」がセットです。自分で一から作らず、決まった部品を組み合わせます。

USB 5V→充電IC(MCP73831、4.20Vまで定電流→定電圧)→電池パック(保護回路BQ2970とMOSFET2個、セル1本3.6V)→回路

リチウムイオン電池の電圧:使ってよい範囲は決まっている

リチウムイオン電池は、4.2V を超えて充電せず、空っぽ(2.5V)まで使い切らないのが基本です。回路で止める電圧を決めておきます。

NCR18650B のデータシートでは、充電は 4.20V まで、放電の試験は 2.50V までです。公称の電圧は 3.6V で、ふだんはこの近くで使います。

保護回路は、その外側で働く最後の砦です。BQ29700 の例では、4.275V で充電を、2.8V で放電を止めます。保護回路が働く前に、回路の側でも止める電圧(例:3.0V でマイコンを止める)を決めておくと、電池が傷みにくくなります。

POINT|電池の電圧をマイコンで見張る

電池の電圧を抵抗2本で分けてマイコンの A/D 変換(電圧を数字に変える機能)で測れば、「電池が少ない」を知らせたり、止める前にデータを保存したりできます。分ける抵抗にもいつも電流が流れるので、大きめの抵抗にして電流を小さくします。

つまり、充電の上限と使う下限は、データシートと保護回路の値で決まっています。回路でもその内側で止めます。

リチウムイオンの電圧。4.275V 保護回路が充電を止める、4.20V 充電の上限、3.6V 公称、2.8V 保護回路が放電を止める、2.5V 放電の終わり

早見表:平均電流と電池から、もつ時間の目安

平均電流がわかれば、電池1本あたりのもつ時間の目安がわかります。使える容量はデータシートの容量×0.7 で計算しました。

平均電流単3アルカリ(3000mAh)単3ニッケル水素(2000mAh)18650 リチウムイオン(3200mAh)
0.1mA約2.4年約1.6年約2.6年
0.5mA約6か月約4か月約6か月
1mA約3か月約58日約3か月
5mA約18日約12日約19日
10mA約9日約6日約9日
50mA約42時間約28時間約45時間

容量は、E91(25mA・0.8V まで)、NH15-2000(定格)、NCR18650B(定格)の値です。いずれも電池1本で計算しました。直列に2本つないでも、mAh は1本分のままです(電圧が2倍になります)。

1年を超える値は、電池が使わなくても少しずつ減る分(自己放電)で短くなります。ニッケル水素は自己放電が大きい種類があるので、何か月も使う回路では、自己放電の少ない品を選ぶか、アルカリやリチウム一次電池を考えます。

つまり、平均電流が 1mA なら単3で約3か月、0.1mA なら1年を超えるのが目安です。

平均電流0.1〜50mAごとの、単3アルカリ・単3ニッケル水素・18650リチウムイオンのもつ時間の早見表

確かめ:電池と回路の間にテスターを入れて電流を測る

計算に使った「寝ている電流」と「起きている時間」が設計どおりかを、実物で測って確かめます。

最低限ここだけ(2つ)

1つ目は寝ている電流です。テスター(電圧や電流を測る道具)を電流のレンジにして、電池の+と回路の+の間に割り込ませます(直列)。µA のレンジで、20µA 前後になっているかを見ます。思ったより大きければ、どこかの部品が寝ていません。

2つ目は、電池の電圧が下がったときに動くかです。電源装置で電圧を少しずつ下げ、止まる電圧(例では 1.8V)近くでも、温度を測って送れるかを確かめます。

余裕があれば

起きている 1秒の電流の形は、テスターでは速すぎて読めません。小さな抵抗(例:1Ω)を電池と回路の間に入れ、その両端の電圧をオシロスコープで見ると、山の高さと幅がわかります。

注意|電流計を電圧のように当てない

電流のレンジのまま、電池の+と−に直接当てると、電池をショートさせてしまいます。電流は必ず「通り道に割り込ませて」測ります。

つまり、計算は「見当」、測定が「答え合わせ」です。特に寝ている電流は、必ず一度測ります。

電池の+とテスターの赤、テスターの黒と基板の+をつなぎ、電池の−を基板の−へ。テスターは0.020mAを表示(イメージ)

電池で動かす回路のよくある失敗4つ

多い失敗は、レギュレータの静止電流・止まる電圧の見落とし・大きな電流による容量の減り・リチウムイオンの扱いの4つです。

失敗1:レギュレータが電池を食う

静止電流 5mA の LDO を使うと、回路が寝ていても電池が減り続けます。例では寿命が約107日から約11日になります。µA 台の品を選びます。

失敗2:止まる電圧を見ていない

容量を使い切る前に、電池の電圧が回路の動く下限を下回ります。3.3V の LDO にアルカリ3本では、約73% のところで 3.3V を保てなくなります。

失敗3:大きな電流で容量が減る

アルカリ電池は 500mA だと容量が約半分です。モーターや無線の送信のように山が大きい回路では、容量を小さめに見込むか、ニッケル水素やリチウムイオンを選びます。

失敗4:リチウムイオンを直に充電する

保護回路のないセルを、ふつうの電源で充電してはいけません。充電 IC と保護回路をセットで使います。

つまり、平均電流の計算に加えて、「レギュレータの電流」「電圧の範囲」「大きな電流」「リチウムイオンの扱い」の4つを確かめれば、電池の回路は大きく外しません。

よくある失敗4つ。レギュレータが電池を食う、止まる電圧を見ていない、大きな電流で容量が減る、リチウムイオンを直に充電

よくある質問(FAQ)

Q. 電池で何時間もつかはどう計算する?

A. もつ時間=使える容量÷平均電流で計算します。使える容量は、データシートの容量に0.7程度をかけて見込みます。

Q. 平均電流はどう出す?

A. 起きている電流×時間と寝ている電流×時間を足し、1周期の時間で割ります。例では約0.52mAです。

Q. mAhとは何?

A. 電流と時間のかけ算で表す電池の容量です。2000mAhなら、100mAを約20時間流せる量になります。

Q. 電池の回路でLDOを選ぶときの注意は?

A. 静止電流の小さい品を選ぶことです。静止電流5mAの品では、寝ている回路でも電池が早く減ります。

Q. リチウムイオン電池1本で3.3Vの回路は動く?

A. 動きますが、LDOだと約3.5Vを下回ると3.3Vを保てません。最後まで使うなら昇降圧を考えます。

Q. リチウムイオン電池に保護回路は必要?

A. 必要です。充電しすぎ・使いすぎ・流れすぎを止めるためで、充電も専用の充電ICで行います。

まとめ
  • もつ時間=使える容量÷平均電流。容量はデータシートの値×0.7 が目安
  • 平均電流=(起きている電流×時間+寝ている電流×時間)÷1周期
  • 効くのは、起きている時間を短く・回数を少なくすること
  • 電池の種類で電圧の下がり方がちがう。電圧の範囲を先に書き出す
  • いつも上なら LDO、いつも下なら昇圧、またぐなら昇降圧
  • 電池の回路では、レギュレータの静止電流を必ず見る
  • リチウムイオンは充電 IC と保護回路をセットで使う

次の一歩として、手元の回路の「起きている電流と時間」「寝ている電流」を書き出し、平均電流を計算してみてください。電池の容量×0.7 を割れば、何時間もつかの見当がつきます。

参考にした資料

法令・規格・資料は改訂されることがあります。実務で使うときは、発行元の最新版で確かめてください。

この記事の理解を深める本と道具
おすすめの道具

回路の電圧や導通を自分の手で確かめるなら、手元にテスターが1台あると便利です。三和電気計器のデジタルマルチメータ(テスター)CD772です。電圧や抵抗などを測れます。

おすすめの本

電源回路の設計を、要求仕様から短時間でまとめる実務の考え方まで知りたい人に向いています。要求仕様どおりの電源を短時間で設計するための、電源回路設計の本です(CQ出版、馬場清太郎 著)。

S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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直列と並列の違い|電池はどっちが長持ち?電圧・電流・合成抵抗を図解(計算ツール付き)

電池を直列と並列につないだとき、電圧と持ち時間がどう変わるかがわかる

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コンデンサとは?仕組みと種類、電池(バッテリー)との3つの違いを図解
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コンデンサとは?仕組みと種類、電池(バッテリー)との3つの違いを図解

電気をためるコンデンサと電池は何がちがうのか、3つの点で整理できる

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電池の種類一覧|一次電池・二次電池・燃料電池の違いと特徴を比較表で図解
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電池の種類一覧|一次電池・二次電池・燃料電池の違いと特徴を比較表で図解

一次電池・二次電池・燃料電池のちがいと、それぞれの電圧を比較表で見られる

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ショットキーと整流ダイオードの違い|置き換えの判断と使い分けを図解
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ショットキーと整流ダイオードの違い|置き換えの判断と使い分けを図解

電池の逆挿し対策にも使うショットキーと、ふつうのダイオードのちがいがわかる

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計算力アップ・資格対策
電力と電力量の違い|P=VIとW=Ptを完全マスター
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電力と電力量の違い|P=VIとW=Ptを完全マスター

電力 P=VI と電力量 W=Pt の計算を、例題で確かめられる

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テブナンの定理とは?求め方3ステップと例題を図解|開放電圧・内部抵抗と計算ツール付き
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テブナンの定理とは?求め方3ステップと例題を図解|開放電圧・内部抵抗と計算ツール付き

電池の内部抵抗で電圧が下がる計算を、テブナンの定理で解ける

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電圧降下とは?原因と計算式・許容値をやさしく図解|計算ツール付き
計算力アップ
電圧降下とは?原因と計算式・許容値をやさしく図解|計算ツール付き

電池から回路までの配線で電圧がどれだけ下がるかを計算できる

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ヒューズの選び方|定格電流・溶断特性・突入電流の3点で決める
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ヒューズの選び方|定格電流・溶断特性・突入電流の3点で決める

電池の回路の入口に入れるヒューズの定格を、電流と突入電流から計算できる

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-回路設計
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