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LDO(エルディーオー、低ドロップアウトレギュレータ)は入力と出力の差の電圧を熱にして捨てる部品、DC-DC コンバータはスイッチの ON・OFF で電圧を変える部品です。どちらにするかは損失=(入力−出力)×電流で決まり、5V→3.3V の判断は早見表と3ステップで確かめられます。
マイコンやセンサーを動かすとき、USB の 5V から 3.3V を作る場面はとても多くあります。そのとき最初に迷うのが、LDO と DC-DC のどちらを使うかです。
この記事では、5V→3.3V を例に、どちらを選ぶかを「熱の計算」で決める手順を説明します。部品の数字は、TI の LDO「TLV755P」と DC-DC「TLV62569」のデータシートの値を使います。

LDO と DC-DC は、電圧の下げ方がちがう
LDO は電流の通り道をしぼって電圧を下げ、しぼった分を熱で捨てます。DC-DC はスイッチを速く入れたり切ったりして、コイルとコンデンサで平らにならします。
LDO:しぼって、差を熱で捨てる
LDO の中には、電流の通り道をしぼるトランジスタ(電気の流れを調整する部品)があります。出力が 3.3V になるように、しぼり具合を自動で調整し続けます。
5V を 3.3V にするなら、差の 1.7V 分はトランジスタの中で熱になります。部品が少なく、出力も静かですが、差の分は必ず熱になります。
DC-DC:速く ON/OFF して、ならす
DC-DC(ここでは電圧を下げる「降圧型」)は、スイッチを1秒間に何十万回〜何百万回も入れたり切ったりします。TLV62569 なら約150万回(1.5MHz)です。
スイッチが入っている時間の割合で、平均の電圧が決まります。そのでこぼこを、コイル(電流の変化をなまらせる部品)とコンデンサ(電気をためる部品)で平らにします。差を熱で捨てないので、むだが少なくなります。
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つまり、LDO は「簡単だけど差を熱で捨てる」、DC-DC は「部品は多いがむだが少ない」方式です。

LDO の損失=(入力 − 出力)× 電流
LDO で熱になる電力は、損失=(入力の電圧−出力の電圧)×電流 で計算できます。5V→3.3V なら 1.7V×電流 です。
LDO では、入ってきた電流と出ていく電流はほぼ同じです(IC 自身が使う電流はとても小さい)。電流は同じで、電圧だけが 5V から 3.3V に下がります。電力は電圧×電流なので、下がった電圧の分の電力が熱になります。
100mA(0.1A)のとき:損失=(5−3.3)×0.1=1.7×0.1=0.17W。
1A のとき:損失=(5−3.3)×1=1.7×1=1.7W。電流が10倍になると、熱も10倍になります。
TLV755P は IC 自身も電流を使います(静止電流、標準で 25µA)。この分の熱は 5V×0.000025A=0.000125W で、100mA のときの 0.17W と比べると無視できるほど小さい値です。
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つまり、LDO の熱は「電圧の差」と「電流」のかけ算で決まります。どちらかが大きいと、熱が大きくなります。

効率で比べる:LDO は約66%、DC-DC は90%を超える
LDO の効率は、出力÷入力の電圧の比が上限です。5V→3.3V なら 3.3÷5=66% で、電流を変えてもほぼ変わりません。DC-DC は約90〜95%です。
効率は「入ってきた電力のうち、出力に届いた割合」です。LDO は入力と出力の電流がほぼ同じなので、効率=(3.3V×電流)÷(5V×電流)=3.3÷5=0.66(66%)になります。
DC-DC の効率は、データシートのグラフで確かめます。TLV62569 の 3.3V 出力(入力5V)のグラフを読むと、100mA〜1A で約95%、2A で約92%です(グラフの読み取りなので目安です)。
つまり、5V→3.3V の LDO は入力の約3分の1を熱で捨て、DC-DC は5%前後しか捨てません。

熱で決める:TJ=周囲の温度+損失×θJA
LDO が使えるかどうかは、IC の中の温度(TJ)が上限を超えないかで決めます。TJ=周囲の温度+損失×θJA で計算します。
θJA は「1W の熱で、IC の中が周りより何℃上がるか」を表す数字です。データシートの「Thermal Information(熱の情報)」の表に載っています。
TLV755P の θJA は、ふつうの SOT-23(5本足の小さな形)で 231.1℃/W、裏に放熱用の金属がついた形(放熱パッドつき)を TI の評価基板にのせたときで 60.3℃/W です。
周囲50℃ の箱の中で計算する
100mA・SOT-23:TJ=50+0.17×231.1=50+39.3=約89℃。推奨の上限 125℃ より低いので使えます。
300mA・SOT-23:TJ=50+0.51×231.1=50+117.9=約168℃。上限を大きく超えるので使えません。
300mA・放熱パッドつき:TJ=50+0.51×60.3=50+30.8=約81℃。同じ LDO でも、形と基板を変えれば使えます。
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つまり、同じ電流でも、IC の形と基板で温度は大きく変わります。損失を出したら、必ず温度に直して確かめます。

LDO と DC-DC の比較:効率・熱・ノイズ・部品の数
熱と効率では DC-DC が有利、ノイズと部品の少なさでは LDO が有利です。どちらが良いかではなく、条件で使い分けます。
| 比べる点 | LDO | DC-DC |
|---|---|---|
| 効率(5V→3.3V) | 約66%(出力÷入力が上限) | 約90〜95%(TLV62569 の例) |
| 熱 | (入力−出力)×電流 | 1A の例で LDO の約10分の1 |
| ノイズ(出力のゆれ) | 小さい | スイッチの速さのゆれ(リプル)が出る |
| 部品の数(基本の回路) | IC+コンデンサ2個 | IC+コイル+コンデンサ2個+抵抗2本 |
| 基板・設計 | 小さく、配置も簡単 | 部品の置き方でノイズが変わる |
| 向く場面 | 小さな電流・小さな電圧の差 | 大きな電流・大きな電圧の差・電池 |
値段は品や買う数で変わるので、この記事では比べません。ただ、DC-DC はコイルと部品が増える分、部品代と基板の面積は増えるのがふつうです。
つまり、迷ったら「熱が問題にならないなら LDO、熱が問題なら DC-DC」と考えると、ほとんどの場面で決まります。

ノイズ:DC-DC の出力には、スイッチのゆれが乗る
DC-DC の出力には、スイッチの速さ(TLV62569 なら約1.5MHz)で上下する小さなゆれ(リプル)が乗ります。LDO はスイッチがないので、このゆれがありません。
DC-DC は、スイッチを入れたり切ったりしてできたでこぼこを、コイルとコンデンサでならします。ならしても、完全には平らになりません。この残りのゆれがリプルです。
マイコンやデジタルの回路なら、少しのゆれは問題になりにくいことが多いです。一方で、小さな電圧を測るセンサーや、音声の回路、A/D 変換(電圧を数字に変える回路)の基準の電圧には、ゆれが測定値のばらつきとして出てきます。
LDO は入力のゆれをある程度おさえる力もあります。データシートでは PSRR(電源のゆれをどれだけ減らせるか)として載っていて、TLV755P は 100kHz で 46dB(ゆれを約200分の1)です。
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つまり、ノイズに弱い回路には LDO、ノイズに強い回路には DC-DC が向きます。

部品の数:データシートの基本の回路で比べる
データシートの基本の回路では、LDO は IC とコンデンサ2個の3個、DC-DC は IC・コイル・コンデンサ2個・抵抗2本の6個です。
TLV755P は、入力と出力に 1µF のセラミックコンデンサをつけるだけで動きます。EN(動かす・止めるを決める端子)は入力につなげば、いつも動きます。
TLV62569 は、入力に 4.7µF、出力に 10µF のコンデンサ、2.2µH のコイル、出力の電圧を決める抵抗2本(R1・R2)が要ります。R1 と R2 の比を変えると、出力の電圧を変えられます。
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つまり、DC-DC は部品が倍になるうえ置き方にも気をつかいます。熱の問題がないなら、LDO のほうが手軽です。

LDO か DC-DC かを決める3ステップ
STEP1 で損失を計算し、STEP2 で温度を計算し、温度が大丈夫なら STEP3 でノイズ・電池・大きさを見て決めます。
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入力の電圧が変わる場合は、いちばん高いときで損失を計算します。たとえば、ふだんは 5V でも、ときどき 5.5V まで上がるなら、(5.5−3.3)×電流 です。
つまり、まず熱で「LDO が使えるか」をふるいにかけ、残ったら使いやすさで決めます。

電流と電圧差で決めるマップ(目安)
横を電流、縦を電圧の差にすると、損失が同じ所は斜めの線になります。損失 0.3W の線より下なら LDO、1W の線より上なら DC-DC が目安です。
損失=電圧の差×電流 なので、電流が10倍になれば、同じ損失になる電圧の差は10分の1です。マップの斜めの線は、損失 0.3W と 1W の線です。
0.3W は、SOT-23 の LDO(θJA 231℃/W)を周囲50℃ で使うときの上限((125−50)÷231≒0.32W)から決めました。1W は、放熱パッドつき(60℃/W)でも上限が約1.2W になることから決めた目安です。
| 場所 | 損失 | 選び方 |
|---|---|---|
| 青(左下) | 0.3W 以下 | LDO でよい(小さな形でも熱は問題になりにくい) |
| オレンジ(真ん中) | 0.3〜1W | 温度を計算して決める(形と基板しだい) |
| 緑(右上) | 1W を超える | DC-DC が基本 |
この目安は、周囲の温度や基板で変わります。境目の近くでは、必ず STEP2 の温度の計算をします。
つまり、「電流×電圧の差」を出して、マップのどこに入るかを見れば、最初の見当がつきます。

5V→3.3V の具体例:100mA・300mA・1A
5V→3.3V では、100mA は LDO、300mA は IC の形と基板しだい、1A は DC-DC です。
例1:100mA(センサーと小さなマイコン)
損失=1.7×0.1=0.17W。SOT-23 の TLV755P で、周囲50℃ のとき TJ=50+0.17×231.1≒89℃。100℃ 以下なので、LDO で決まりです。
例2:300mA(無線の送信があるマイコン)
損失=1.7×0.3=0.51W。SOT-23 では TJ≒168℃ で使えません。放熱パッドつきの形にして、裏の金属を基板の広い銅箔(どうはく:基板の上の銅の膜)につなげば TJ≒81℃ です。
この 60.3℃/W は TI の評価基板での値なので、自分の基板では変わります。基板が小さいなら、DC-DC にしたほうが安心です。
例3:1A(表示器やモーターの制御もある基板)
LDO なら損失は 1.7W。TLV755P は 500mA までなので、そもそも使えません。仮に 1A 以上流せる LDO でも、1.7W の熱を逃がすには大きな形と放熱の工夫が要ります。
DC-DC なら、効率を約95%として、損失=3.3W×(1÷0.95−1)=3.3×0.0526≒0.17W。LDO の約10分の1です。DC-DC を選びます。
つまり、同じ 5V→3.3V でも、電流で答えが変わります。「何 mA 流れるか」を先に決めることが大切です。

1A では、熱が約10倍ちがう
5V→3.3V・1A では、LDO の損失は 1.7W、DC-DC は約 0.17W です。熱の量が約10倍ちがいます。
DC-DC の損失は、出力の電力と効率から計算します。出力の電力は 3.3V×1A=3.3W。効率95% なら入力の電力は 3.3÷0.95≒3.47W。差の 3.47−3.3=0.17W が損失です。
この 0.17W には、IC だけでなくコイルの熱も入っています。仮に全部が IC の熱になっても、TLV62569(SOT-23、θJA 188.2℃/W)の温度上昇は 0.174×188.2≒33℃(丸める前の 0.174W で計算)で、周囲50℃ なら約83℃ です。
入力の電流も変わります。LDO は入力も 1A ですが、DC-DC は 3.47W÷5V≒0.69A で済みます。電池や USB の電流の上限が気になるときにも、DC-DC が有利です。
つまり、電流が大きいほど DC-DC の良さが効いてきます。1A を超えるなら、まず DC-DC で考えます。

電圧差が大きいとき・ノイズも嫌うとき
12V→3.3V のように電圧の差が大きいと、小さな電流でも LDO の損失が大きくなります。静かさも要るときは、DC-DC で少し上まで下げてから、最後に LDO で整えます。
12V→3.3V・100mA の LDO の損失は、(12−3.3)×0.1=0.87W。効率は 3.3÷12≒28% で、入力の7割以上が熱になります。マップではオレンジの帯で、大きな形と放熱が必要です。
この場合は DC-DC を使います。TLV62569 は入力が 5.5V までなので使えません。12V なら、たとえば入力 4.5〜17V の TPS563201 のような品を選びます。
DC-DC のあとに LDO を足す(2段にする)
センサーのようにゆれを嫌う回路では、DC-DC で 3.8V まで下げ、最後を LDO で 3.3V にする方法があります。LDO の損失は(3.8−3.3)×0.5A=0.25W で済みます。
このとき、LDO の入力(3.8V)が出力(3.3V)+ドロップアウト電圧より高いことを確かめます。TLV755P は 500mA で最大 0.238V なので、3.3+0.238=3.538V 以上が必要で、3.8V なら足ります。
つまり、電圧の差が大きいときは DC-DC が先。静かさも要るなら、DC-DC と LDO を組み合わせます。

早見表:5V→3.3V の LDO で大丈夫か(周囲50℃)
5V→3.3V で SOT-23 の LDO を使うなら、約120mA までが安心です。放熱パッドつきでも 300mA までが目安で、500mA なら DC-DC です。
| 電流 | LDO の損失 | TJ(SOT-23) | TJ(放熱パッドつき) | 判断 |
|---|---|---|---|---|
| 50mA | 0.09W | 70℃ | 55℃ | LDO でよい |
| 100mA | 0.17W | 89℃ | 60℃ | LDO でよい |
| 200mA | 0.34W | 129℃ | 71℃ | 放熱パッドつきなら LDO |
| 300mA | 0.51W | 168℃ | 81℃ | 放熱パッドつきなら LDO |
| 500mA | 0.85W | 246℃ | 101℃ | DC-DC |
| 1A | 1.70W | — | — | DC-DC(この LDO は 500mA まで) |
| 2A | 3.40W | — | — | DC-DC(この LDO は 500mA まで) |
θJA は TLV755P の値(SOT-23 231.1℃/W、放熱パッドつき 60.3℃/W〈TI の評価基板〉)。TJ=50+損失×θJA で計算しました。判断は TJ 100℃ 以下を目安にしています。
SOT-23 で TJ が 100℃ になる電流は、(100−50)÷231.1÷1.7≒0.127A(約127mA)です。
θJA やドロップアウト電圧が、データシートのどの表に・どんな条件で載っているかがわかる
つまり、5V→3.3V なら「100mA は LDO、500mA 超は DC-DC、その間は形と基板しだい」と覚えておけば、まず外しません。

確かめ:計算のあと、実物で測る
計算で決めたら、試作の基板で、最大の電流を流したときの IC の表面の温度と、出力の電圧を測ります。
最低限ここだけ(2つ)
1つ目は温度です。いちばん多く電流が流れる動きをさせて、IC の上に温度計(熱電対など)を当て、表面の温度を測ります。中の温度は、表面の温度+ψJT×損失 で見積もれます。ψJT(プサイ ジェイティー)は表面と中の温度差の目安で、TLV755P の SOT-23 は 28.4℃/W です。
2つ目は出力の電圧です。入力がいちばん低くなる条件(電池が減ったときなど)で、出力が 3.3V を保てているかを測ります。
余裕があれば
DC-DC なら、出力のゆれ(リプル)をオシロスコープで見ます。プローブの GND のクリップは短くし、出力のコンデンサのすぐそばで測ります。ふたを閉めた箱の中でもう一度温度を測ると、本番に近い確かめになります。
つまり、計算は「見当」、実物の測定が「答え合わせ」です。特に境目の近くでは、必ず測ります。

よくある失敗4つ
LDO と DC-DC の選び方で多い失敗は、電圧差が足りない・平均の電流で計算する・θJA の条件を見ない・DC-DC を離して置く、の4つです。
失敗1:LDO の電圧の差が足りない
LDO は、入力が出力+ドロップアウト電圧より高くないと、出力を保てません。たとえば、電池の電圧が 3.5V まで下がる機器で 3.3V を作ると、差は 0.2V しかありません。500mA のときの最大 0.238V に足りず、出力が下がります。
失敗2:平均の電流で計算する
熱は、いちばん多く電流が流れるときで決まります。無線の送信やモーターの動き出しなど、一瞬でも大きな電流が流れる時間が長いなら、その電流で計算します。
失敗3:θJA の条件を見ない
θJA は、基板の大きさや銅の量で大きく変わります。同じ TLV755P でも、231℃/W と 60℃/W の値があります。データシートの表の下の注(どんな基板で測ったか)を必ず読みます。
失敗4:DC-DC の部品を離して置く
入力のコンデンサとコイルを IC から離すと、大きな電流が流れる輪が大きくなり、ノイズが増えます。データシートのレイアウトの例をまねて置きます。
つまり、計算は「最大の電流」「使う形の θJA」で行い、LDO は電圧の差、DC-DC は置き方に気をつけます。


