回路設計

ラインフィルタ(EMIフィルタ)とは?Xコンデンサ・Yコンデンサ・コモンモードチョークの役割

ラインフィルタとは何かを表すアイキャッチ。ノイズの乗った電源線がラインフィルタを通ると、きれいな電力だけが電源回路に入る

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お悩み
こんなふうに思っていませんか?
  • ラインフィルタが何をしていて、なぜ電源の入口に入るのか知りたい
  • XコンデンサとYコンデンサの違いがわからない
  • コモンモードチョークがどうやってノイズを止めるのか知りたい
この記事でわかること
  • ラインフィルタとは何か、入口に置く2つの理由
  • ノーマルモードとコモンモード、2つのノイズ
  • 3つの部品の役割と、XとYの安全上のちがい
  • カットオフ周波数と漏れ電流の計算ツール
結論|まず30秒でわかる答え

ラインフィルタ(EMIフィルタ)とは、電源の入口(ACラインの直後)に入れて、外から入るノイズを止め、機器の中で出たノイズが電源線から外に出ていくのも止める回路です。中身は主に3つで、L-N間のXコンデンサがノーマルモードノイズを、L・Nと大地の間のYコンデンサと、L・Nを同じコアに巻いたコモンモードチョークがコモンモードノイズを受け持ちます。

ラインフィルタとは何かを表すアイキャッチ。ノイズの乗った電源線がラインフィルタを通ると、きれいな電力だけが電源回路に入る
ラインフィルタでノイズを除いて電源回路へ

ラインフィルタとは?電源の「玄関」でノイズを止める

家に入るとき、玄関で靴を脱いで泥を持ちこまないようにします。ラインフィルタは、電源の玄関にあたる回路です。コンセントから来るACラインの直後に置き、50/60Hzの電力はそのまま通し、それより高い周波数のノイズだけを止めます。

大事なのは、止めるノイズが2つの向きにあることです。1つは、ほかの機器から電源線を伝わって入ってくるノイズ。もう1つは、自分の中のスイッチング電源が出したノイズが、電源線を伝わって外に出ていくノイズです。スイッチング電源の中ではMOSFETが高速でON・OFFしていて、このときの急な電流・電圧の変化がノイズになります。

置く場所理由
ACラインの直後(整流回路より前)規格で測るのは、電源線に出ていく伝導ノイズ。線の出口で止めないと意味がない
機器の中に入る前外から来るノイズが整流回路や制御回路に入る前に止められる

電源線に出るノイズ(伝導ノイズ)は、150kHz〜30MHzの範囲で測られ、上限が決まっています。EUのCEマーキングや米国のFCCのように法律で求める地域があり、日本ではVCCI(業界の自主規制)への適合を取引先から求められることが多く、ラインフィルタはそのための基本の部品です。

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ラインフィルタは電源の玄関という図。ACライン、ラインフィルタ、整流回路、スイッチング電源の順に並び、ラインフィルタが外から入るノイズと中から出るノイズの両方を止める
ラインフィルタは外からと中からのノイズを止める電源の玄関

止めるノイズは2種類|ノーマルモードとコモンモード

項目ノーマルモード(ディファレンシャルモード)コモンモード
流れ方LからNへ、ふつうの電流と同じ道を行き来するLとNの両方を同じ向きに流れ、大地(アース)を通って戻る
主な原因スイッチングのときの急な電流の変化(dI/dt)急な電圧の変化(dV/dt)が、浮遊容量を通って大地へもれる
効く部品Xコンデンサ(+コモンモードチョークの漏れインダクタンス)Yコンデンサ+コモンモードチョーク
たとえ行きと帰りの水道管の中で、水圧があばれる行きと帰りの両方の管から、地面へ水がもれる

コモンモードノイズがやっかいなのは、回路図に描かれていない浮遊容量(部品と筐体や大地の間にできる、見えないコンデンサ)を通って流れることです。どこを通っているのかが見えにくく、ケーブルがアンテナになって放射ノイズの原因にもなります。

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行きと帰りが同じ向きのノイズ

ノーマルモードとコモンモードの2つのノイズの図。ノーマルモードはLとNの間を逆向きに行き来し、コモンモードはLとNを同じ向きに流れ、浮遊容量を通って大地から戻る
ノーマルモードとコモンモードの2つのノイズ

ラインフィルタの中身|3つの部品の役割

部品つなぐ場所効くノイズ容量・値の目安しくみ
XコンデンサL−N間ノーマルモード0.1〜1μF程度高い周波数だけをL−N間で短絡し、負荷側へ行かせない
YコンデンサL−大地、N−大地(2個)コモンモード1〜4.7nF程度コモンモードノイズを大地へ逃がす
コモンモードチョークLとNに直列(1つのコアに2巻線)コモンモード(ノーマルにも少し)数mH〜数十mH程度同じ向きの電流にだけ大きなインダクタンスになる

コモンモードチョークのしくみ

1つのリング状のコアに、LとNの線を、ふつうの電流が流れたときに磁束が打ち消し合う向きで巻いてあります。

流れる電流コアの中の磁束結果
ふつうの電流(LとNで逆向き)打ち消し合うインダクタンスがほぼなく、電力はそのまま通る
コモンモードノイズ(LとNで同じ向き)強め合う大きなインダクタンスになり、ノイズを止める

2つの巻線は完全には結合しないので、少しだけ打ち消し切れない分(漏れインダクタンス)が残ります。この漏れインダクタンスとXコンデンサの組み合わせが、ノーマルモードノイズにも効きます。ふつうの電流で磁束が打ち消し合うので、大きな電流を流してもコアが飽和しにくいのも、この部品のよいところです。

典型的な並び

ACライン → Xコンデンサ → コモンモードチョーク → Yコンデンサ(2個)・Xコンデンサ → 整流回路、という並びがよく使われます。チョークの前後にコンデンサを置くことで、LとCを何段か重ねたフィルタになり、減衰を大きくできます。

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ラインフィルタの3つの部品の図。XコンデンサはL−N間でノーマルモード、YコンデンサはL・Nと大地の間でコモンモード、コモンモードチョークはL・Nに直列でコモンモードを受け持つ
Xコンデンサ・Yコンデンサ・コモンモードチョークの役割

XコンデンサとYコンデンサは「こわれ方」の決まりがちがう

同じコンデンサでも、つなぐ場所がちがうので、こわれたときに起きることがちがいます。そのため、どちらも安全規格(IEC 60384-14)で認定されたクラスの部品を使います。ふつうのコンデンサで代用してはいけません。

部品もし短絡したら設計の考え方
Xコンデンサ(X1・X2クラス)L−N間がショートし、大電流が流れる前のヒューズで切る。雷などのサージにも耐えるクラスを選ぶ
Yコンデンサ(Y1・Y2クラス)電源の電圧が筐体に出て、感電する短絡しない(こわれても開放になる)ように作られた部品を使う

Yコンデンサは容量を大きくできない

Yコンデンサには、ふだんから50/60Hzの小さな電流が大地へ流れます。これが漏れ電流(接触電流)で、I=2πfCVで計算できます。4.7nFに100V・50Hzなら約0.15mAです。アースのない機器でこの電流が大きいと、筐体にさわったときにピリッと感じるので、安全規格で上限が決まっています。だからYコンデンサは数nFにおさえられ、コモンモードの対策はコモンモードチョークが主役になります。

Xコンデンサには放電抵抗を入れる

プラグを抜いたあとも、Xコンデンサには電気が残ります。容量が大きいと、プラグの刃にさわってしびれることがあります。そこでXコンデンサに並列に放電抵抗を入れ、決まった時間内に電圧が下がるようにします。放電の時間は安全規格で決まっています。

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漏れ電流の正体

XコンデンサとYコンデンサの安全のちがいの図。Xは短絡したらヒューズで切り、放電抵抗を入れる。Yは短絡すると感電するので短絡しない認定品を使い、漏れ電流のため容量は数nFまで
Xコンデンサは放電抵抗、Yコンデンサは漏れ電流に注意

ラインフィルタの計算ツール|カットオフ周波数と漏れ電流

部品の値を入れてください。コモンモードとノーマルモードのカットオフ周波数、伝導ノイズの測定帯の下限(150kHz)での減衰の目安、Yコンデンサの漏れ電流を出します。

入力すると、その場で計算し直します。入力した数字は画面の中で計算するだけで、どこにも送信されません。

市販のラインフィルタの選び方

見るところ確かめること
定格電流機器の最大の入力電流(突入電流ではなく実効値)より大きいか。周囲温度で下がる品もある
定格電圧AC100V・200Vの両方で使うなら、250Vなど高いほうに合うか
減衰特性カタログのグラフで、困っている周波数(例:150kHz〜数MHz)でコモン・ノーマルとも何dB効くか
漏れ電流Yコンデンサの分の漏れ電流が、製品の安全規格の上限に収まるか。医療機器などは特に小さい
取り付け金属の筐体に面でアースし、入力側と出力側の線を離す。線が近いとノイズが飛び移る

ラインフィルタでよくある間違い

よくある間違い正しい考え方
フィルタは整流のあとでもよい電源線に出るノイズを止めるので、ACラインの直後に置く
Yコンデンサは大きいほどよく効く漏れ電流の上限があるので数nFまで。コモンはチョークが主役
Yコンデンサをふつうのコンデンサで代用短絡しないY1・Y2クラスの認定品を使う
フィルタの入力と出力の線をいっしょに束ねる線どうしでノイズが飛び移る。入出力は離す
アースをつながなくてもYコンデンサは効くYコンデンサはアース(筐体)につないで初めてノイズを逃がせる
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入力フィルタの配置とパターン

ラインフィルタのよくある間違いの図。ACラインの直後に置く、Yコンデンサは漏れ電流で数nFまで、入力と出力の線は離す、Yコンデンサは筐体アースが必要
ラインフィルタで起きやすい4つの間違い

よくある質問

Q. ラインフィルタとは簡単にいうと?

A. 電源の入口に入れて、外から入るノイズと、中から電源線に出ていくノイズの両方を止める回路です。

Q. XコンデンサとYコンデンサの違いは?

A. XはL−N間でノーマルモード、YはL・Nと大地の間でコモンモードに効きます。Yは感電を防ぐため容量が小さく制限されます。

Q. コモンモードチョークの原理は?

A. LとNを同じコアに巻き、ふつうの電流では磁束が打ち消し合い、同じ向きのノイズでは強め合ってインダクタンスで止めます。

Q. ラインフィルタはどこに付ける?

A. ACラインの直後、整流回路より前です。電源線に出ていくノイズを止めるため、線の出口に置きます。

Q. EMIフィルタとノイズフィルタは同じ?

A. 電源の入口に入れるものは、ラインフィルタ・EMIフィルタ・ノイズフィルタと、ほぼ同じ意味で呼ばれます。

まとめ
  • ラインフィルタ=電源の玄関。外からのノイズと、中から出るノイズの両方を止める
  • ACラインの直後、整流回路より前に置く
  • Xコンデンサ(L−N)はノーマルモード、Yコンデンサとコモンモードチョークはコモンモード
  • Yは短絡しない認定品で、漏れ電流のため数nFまで。Xには放電抵抗
  • 選ぶときは定格電流・電圧・減衰特性・漏れ電流・取り付けを確かめる
ラインフィルタのまとめの図。電源の入口に置く、Xコンデンサはノーマルモード、Yコンデンサとコモンモードチョークはコモンモード、Yは漏れ電流に注意
ラインフィルタの要点:電源の入口に置く
この記事の理解を深める本と道具
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メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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