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ノイズとは?「欲しくない電気」のこと
5Vの直流電源をオシロスコープで見ると、まっすぐなはずの線にギザギザ(リプル)や、鋭いトゲ(スパイク)が乗っています。これがノイズです。
静かなカフェで本を読んでいるとき、隣の人の電話や外の工事の音は「ノイズ」です。でも電話をかけている本人にとって、その声は大事な「信号」です。電気のノイズも同じで、ある回路にとっての信号が、別の回路にとってはノイズになります。ノイズは特別な物質ではなく、「その回路にとっていらない変化」という関係の名前です。
| 見え方 | 中身 | 主な原因 |
|---|---|---|
| リプル | スイッチングの周期でくり返す小さな波 | 電源の平滑が足りない |
| スパイク・リンギング | 切りかえの瞬間の鋭いトゲと、そのあとの揺れ | 配線のインダクタンスと急な電流の変化 |
| 外から来るノイズ | 静電気・雷サージ・ほかの機器の電磁波 | ケーブルや空間から入る |
| ランダムなノイズ | 部品の中で生まれる小さなゆらぎ(熱雑音など) | 抵抗や半導体そのもの。微小な信号を測るときに効く |
この記事では、パワエレや基板設計でいちばん問題になる、電流や電圧の急な変化から生まれるノイズを中心に説明します。

パワエレ回路のノイズの多くは、MOSFET がオン・オフするときの電圧と電流の急な変化から生まれます。
Vgs・Vds・Idの3波形で動作を理解する
ノイズが生まれる3つの仕組み
3つに共通するのは「急な変化」です。電流の変化の速さdI/dtと、電圧の変化の速さdV/dtが大きいほど、ノイズは大きくなります。
| 仕組み | 何が起きる | 式 | 対策の向き |
|---|---|---|---|
| ① 配線のインダクタンス | 電流が急に変わると、配線の小さなコイル成分に電圧が出る | V = L × dI/dt | 配線を短く(L↓)、切りかえをゆるやかに |
| ② 磁界による結合(相互誘導) | 電流の変化でできる磁界が、近くの配線のループに電圧を生む | V = M × dI/dt | ループの面積を小さく、配線を離す |
| ③ 電界による結合(浮遊容量) | 電圧が急に変わると、配線どうしの小さな容量を通して電流が流れこむ | I = C × dV/dt | 配線を離す(C↓)、GNDでへだてる |
ノイズの大きさの計算ツール
入力すると、その場で計算し直します。入力した数字は画面の中で計算するだけで、どこにも送信されません。
10nHは、基板の配線ならおよそ1cmほどです。そこに10Aを10nsで切りかえると10Vものノイズ電圧が出ます。400Vを20nsで切りかえるスイッチの配線と、1pFだけ容量でつながった信号線には20mAが流れこみ、1kΩなら20Vにもなります。どちらも、配線の短さや距離がノイズの大きさを決めることを示しています。
寄生インダクタンスとリンギング
隣の配線にノイズが飛び移るクロストーク

ノイズの伝わり方と、EMI・EMS・EMC
ノイズは電線を通って伝わるか(伝導ノイズ)、空間を電磁波として飛ぶか(放射ノイズ)のどちらかで広がります。
| 種類 | 伝わり方 | 規格で見る周波数(目安) | たとえ |
|---|---|---|---|
| 伝導ノイズ | 電源線・信号線を通る | 150kHz〜30MHz | 排水管を通って隣の部屋に流れこむ汚水 |
| 放射ノイズ | 空間を電磁波として飛ぶ | 30MHz以上 | 壁ごしに聞こえる隣の部屋の大声 |
伝導ノイズには、行きと帰りが逆向きに流れるノーマルモード(ディファレンシャルモード)と、行きも帰りも同じ向きに流れて大地へ戻るコモンモードがあります。
| 用語 | 意味 | 立場 |
|---|---|---|
| EMI(エミッション) | 機器がまわりに出すノイズ(電磁妨害) | 加害者 |
| EMS(イミュニティ) | まわりのノイズに耐える力(電磁感受性) | 被害者 |
| EMC | 出しすぎず、耐えられる状態(電磁両立性) | 共存 |
製品を売るためのEMCの規格(CEマーキング、VCCI、FCCなど)では、出すノイズの試験(エミッション)と、耐える試験(イミュニティ)の両方に合格する必要があります。
伝導ノイズと放射ノイズの見分け方と対策
EMC対策をしないと製品が売れない理由

ノイズ対策の考え方|発生源・経路・受ける側の3か所で止める
| 段階 | 考え方 | 主な手段 |
|---|---|---|
| ① 発生源で抑える | そもそも生まない(いちばん効く) | スナバ回路、ゲート抵抗で切りかえをゆるやかに、ループを小さく |
| ② 経路で断つ | 伝わる道をふさぐ | フィルタ、シールド、配線の距離とGNDの引き方 |
| ③ 受ける側で守る | 入ってきても壊れない・誤動作しない | パスコン、TVSダイオード、差動信号 |
パワエレはノイズを生みやすい
パワエレ回路は、高い電圧・大きな電流を、速く切りかえて電力を変換します。大電流の切りかえはdI/dtを、高電圧の切りかえはdV/dtを大きくし、切りかえの回数が多いほどノイズのエネルギーが特定の周波数に集まります。効率を上げようと切りかえを速くするほどノイズが増える、というかねあいがあるので、設計の最初からノイズを考えておく必要があります。
スイッチングノイズとループ面積の関係

ノイズでよくある間違い
| よくある間違い | 正しい考え方 |
|---|---|
| ノイズは外から入ってくるもの | 自分の回路の切りかえが、いちばんのノイズ源になることが多い |
| 電圧が低いからノイズは小さい | 大事なのは大きさより変化の速さ(dI/dt・dV/dt) |
| あとからフィルタを足せば直る | 発生源で抑えるのがいちばん安くよく効く。設計の最初に考える |
| GNDは0Vでどこでも同じ | GNDも配線なので、電流が流れれば電圧が出てノイズの通り道になる |
| オシロで見えたものが全部ノイズ | プローブのGNDリードが長いと、測り方そのものがノイズを拾う |
GNDは0Vの線ではなく電流の帰り道

ノイズの伝わり方で必ず出てくる、コモンモードとノーマルモードの違いは次の記事で。
「行きと帰りが同じ向き」が厄介な理由
よくある質問


