回路設計

フリーホイールダイオードとは?モータ・リレーの逆起電力を逃がす仕組み

暗い背景に青い小型リレーと銀の帯のついた黒いダイオードの写真に、回路設計の入門・フリーホイールダイオードとは?・帯は+側・OFFの瞬間の高い電圧を逃がす の文字

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お悩み
こんなふうに思っていませんか?
  • リレーの回路図で、コイルの横に逆向きのダイオードがあるのはなぜ?
  • フリーホイールダイオード・フライホイールダイオード・還流ダイオード、呼び方が多くて混乱する
  • ダイオードの向きをどちらにすればいいか、自信がない
  • 1N4148 と 1N4007、どれを選べばいいかわからない
この記事でわかること
  • OFF の瞬間に高い電圧が出る理由(水道のたとえ1つで)
  • ON のときと OFF の瞬間の電流の道と、向きの覚え方
  • 付け忘れ・逆向き・位置違いの失敗と、その確かめ方
  • 耐圧・電流・速さの選び方と、用途別の早見表
結論|まず30秒でわかる答え

フリーホイールダイオードは、リレーやモータのコイルに並列に、帯(カソード)を電源の+側へ向けてつなぐダイオードです。
スイッチを OFF にした瞬間、コイルは電流を流し続けようとして高い電圧(逆起電力)を出します。ダイオードがその電流をコイルとの輪に逃がし、トランジスタを守ります。
12V の小型リレーなら、1N4148 か 1N4007 で足ります。

この記事に出てくる言葉

わからない言葉が出てきたら、ここに戻ってきてください。本文でも、初めて出たところで言い換えます。

コイル電線をぐるぐる巻いた部品。リレー・モータ・ソレノイドの中にある。電流の変化を嫌う
逆起電力コイルの電流を急に止めたとき、コイルが出す電圧。止めるのが速いほど高い
スイッチ素子電流を ON/OFF する部品。トランジスタや MOSFET(エムオーエスフェット)
アノード・カソードダイオードの2本の足。電流はアノード→カソードにだけ流れる。帯の側がカソード
並列部品の両端どうしをつなぐこと。この記事ではコイルの両端にダイオードをつなぐ
耐圧(VR)ダイオードが逆向きに耐えられる電圧
平均電流(IF(AV))ダイオードに流し続けてよい電流の平均
逆回復時間(trr)ダイオードが「流れる」から「止まる」に切り替わるまでの時間
ツェナーダイオード逆向きに決まった電圧(ツェナー電圧 Vz)をかけると電流が流れ出すダイオード
PWM1秒に何千回も ON/OFF を繰り返して、モータの速さなどを変える動かし方

フリーホイールダイオードは、回路図ではダイオード1個だけの小さな部品です。けれど、付け忘れたり向きを間違えたりすると、トランジスタが壊れたり、電源がショートしたりします。

この記事では、12V のリレーをトランジスタで ON/OFF する回路を1つ決めて、最初から最後までその回路で説明します。中学の理科(電流・電圧)がわかれば読めるように書きました。

暗い背景に青い小型リレーと銀の帯のついた黒いダイオードの写真に、回路設計の入門・フリーホイールダイオードとは?・帯は+側・OFFの瞬間の高い電圧を逃がす の文字

フリーホイールダイオードとは:コイルの横の「逆向きのダイオード」

フリーホイールダイオードとは、コイル(リレー・モータ・ソレノイド)の両端に、ふだんは電流が流れない向きでつなぐダイオードです。

この記事で使う回路は次のとおりです。マイコンの合図でトランジスタが ON になると、+12V からリレーのコイルを通って GND へ電流が流れ、リレーが動きます。

部品この記事で使う値役目
リレーのコイル12V・400Ω(例)→ 30mA電流が流れると磁石になり、接点を動かす
トランジスタ2N3904(NPN)マイコンの合図で、コイルの電流を ON/OFF する
ベース抵抗1.6kΩマイコンから流す合図の電流を決める
フリーホイールダイオード1N4148 か 1N4007OFF の瞬間の電流の逃げ道
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呼び方はいろいろ。すべて同じもの

フリーホイールダイオードは、フライホイールダイオード・還流ダイオード・FWD とも呼ばれます。どれも同じ使い方を指します。

「フリーホイール」は、ペダルを止めても車輪が回り続ける自転車のしくみの名前です。スイッチを切っても、コイルの電流がダイオードを通って回り続けることから、こう呼ばれます。

つまり、フリーホイールダイオードは「コイルと並列・ふだんは流れない向き」の2つを守ってつなぐ、保護のためのダイオードです。

+12Vからリレーのコイルを通ってトランジスタ2N3904のコレクタへつながる回路で、コイルの両端にダイオードを並列につなぎ、カソードを+12V側に向けた図。右に実物のダイオードの帯がカソードで、回路記号の棒と同じ側であることと、つなぎ方の3点

なぜ OFF の瞬間に高い電圧が出るのか:水道のたとえ

コイルは「電流の変化を嫌う」部品です。流れている電流を急に止めると、止めまいとして高い電圧(逆起電力)を出します。

コイルに電流が流れると、まわりに磁気ができ、そこにエネルギーがたまります。電流を止めようとすると、コイルはためたエネルギーで電流を流し続けようとします。

たとえると

長い水道管を、水が勢いよく流れているとします。弁を急に閉めると、行き場をなくした水が弁を叩いて「ガツン」と大きな圧力が出ます。これをウォーターハンマーと呼びます。水が電流、管の水の勢いがコイル、弁を閉めることがスイッチの OFF、ガツンという圧力が逆起電力にあたります。

では、弁の手前に「ぐるっと回って戻る逃げ道の管」があったらどうでしょう。弁を閉めても水は輪の中を回り、だんだん勢いをなくして止まります。ガツンは起きません。この逃げ道が、フリーホイールダイオードです。

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つまり、逆起電力は「急に止めたこと」への反動です。逃げ道を用意して、ゆっくり止まらせればよいのです。

水道管のたとえの3コマ。弁が開いて水が流れている(ON)、弁を急に閉めてガツンと圧力が跳ね上がる(OFF・逆起電力)、弁の手前に輪になった逃げ道の管があると水が回りながらゆっくり止まる(ダイオード)。下に水の流れ=電流、水の勢い=コイル、弁を閉める=スイッチOFF、圧力=逆起電力、逃げ道=ダイオードの対応

どれくらい高くなる? V=L×(電流の変化÷時間)で計算する

コイルが出す電圧は、電流の変化の大きさに比例し、止めるのにかかった時間に反比例します。止める時間が100分の1になれば、電圧は100倍です。

公式
V = L ×(電流の変化 ÷ かかった時間)

L はインダクタンスといい、コイルの「電流の変化の嫌いさ」の大きさです。単位は H(ヘンリー)です。

例として、L=0.1H(説明のための例)のコイルに流れていた 30mA を 0 にする場合を計算します。

止めるのにかかった時間計算コイルに出る電圧
1ms(1000分の1秒)0.1 × 0.03 ÷ 0.0013V
0.1ms0.1 × 0.03 ÷ 0.000130V
10µs(10万分の1秒)0.1 × 0.03 ÷ 0.00001300V
1µs(100万分の1秒)0.1 × 0.03 ÷ 0.0000013,000V

トランジスタは、1µs ほどの速さで電流を切ることができます。そのため、何も対策しないと電圧はどこまでも上がろうとします。実際には、どこかで電流が流れ出すところ(多くは、トランジスタが耐えきれなくなるところ)まで上がります。

リレーメーカーの TE Connectivity は、対策のない 12V のリレーは電源を切ったときに 1,000〜1,500V の電圧を出す可能性がある、と説明しています。

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つまり、電源が 12V でも、コイルを急に切ると何百V・何千V にもなりうる。この電圧からスイッチ素子を守るのがダイオードの役目です。

L=0.1H(例)のコイルの30mAを止める時間ごとの電圧の横棒グラフ。1msで3V、0.1msで30V、10µsで300V、1µsで3,000V。2N3904の耐圧40Vの線つき

ダイオードがないと、OFF の瞬間に何が起きるか

ダイオードがないと、逆起電力が電源の 12V に上乗せされて、トランジスタのコレクタにかかります。耐圧を超えると、トランジスタが壊れます。

1. 電流の道が消える

トランジスタが OFF になり、コイルの電流の行き場がなくなる

2. コイルが下の端を押し上げる

コイルは電流を同じ向きに流し続けようとして、下の端(トランジスタ側)を+、上の端(電源側)を−にする電圧を出す

3. コレクタに高い電圧

コレクタの電圧は「12V+逆起電力」になる。2N3904 が耐えられる 40V(VCEO)を簡単に超える

4. 壊れる・ノイズが出る

トランジスタが壊れたり、急な電圧の変化がノイズになって、マイコンが誤動作したりする

注意|逆起電力の向き

OFF の瞬間、コイルの「トランジスタ側の端」が+になります。ON のとき+だった電源側が、OFF の瞬間には相対的に−になる。向きが逆転するので「逆」起電力と呼びます。

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つまり、守りたいのはトランジスタ(スイッチ素子)です。コイルそのものが壊れるわけではありません。

ダイオードのないリレーの駆動回路で、OFFの瞬間にコイルの下の端(コレクタ側)が+、上の端が−になり、コレクタの電圧が跳ね上がる図。右にコレクタの電圧の波形のイメージ(ONで約0.2V、OFFの瞬間に40Vの耐圧を超え、そのあと12V)

ON のときと OFF の瞬間:電流の道を色で追う

ON のときは「+12V→コイル→トランジスタ→GND」。OFF の瞬間は「コイル→ダイオード→コイル」の輪。ダイオードに電流が流れるのは、OFF のあとだけです。

ON のとき(赤)OFF の瞬間(オレンジ)
電流の道+12V → コイル → トランジスタ → GNDコイル → ダイオード → コイル(輪)
ダイオード逆向きなので流れない順向きになり流れる
コイルの下の端(コレクタ)約0.2V12V+約1V=約13V で止まる
コイルの電流30mA30mA から、だんだん減って0へ

OFF の瞬間、コイルの下の端は+になろうとします。けれど、電源の電圧より約1V 高くなったところで、ダイオードが ON になって電流を流します。そのため、コレクタの電圧は約13V で止まり、40V まで上がりません。

輪の中を回る電流は、ダイオードの約1V とコイルの抵抗で少しずつエネルギーを熱として失い、やがて0になります。電源には戻りません。

つまり、ダイオードは「コレクタの電圧を 12V+約1V で頭打ちにする部品」です。

2枚組の回路図。左のONのときは赤い矢印で+12Vからコイル、トランジスタ、GNDへ30mAが流れ、ダイオードは逆向きで流れない。右のOFFの瞬間はオレンジの矢印でコイルを下へ、ダイオードを上へ通ってコイルに戻る輪を電流が回り、コイルの下の端が+、コレクタは12V+約1V=約13Vで止まる

波形で見る:ダイオードがあるとき・ないとき

ダイオードがあると、OFF の瞬間の電圧は約13V で止まります。そのかわり、コイルの電流はすぐには0にならず、ゆっくり減ります。

ダイオードなしダイオードあり
コレクタの電圧一瞬で耐圧を超えるほど跳ね上がる約13V で止まり、やがて 12V
コイルの電流一瞬で0ゆっくり減って0
トランジスタ壊れるおそれ安全

電流がゆっくり減る速さは、コイルのインダクタンス L と抵抗 R で決まります。L÷R が大きいコイルほど、ゆっくり減ります。

この「ゆっくり」が、あとで説明するフリーホイールダイオードの弱点(リレーが離れるのが遅れる)につながります。

つまり、ダイオードは電圧の跳ね上がりを止める代わりに、電流を長く残します。これが、ほかの保護方法との違いになります。

上はコレクタの電圧、下はコイルの電流の波形のイメージ。ダイオードなしは電圧が40Vを超えて跳ね上がり電流は一瞬で0、ダイオードありは電圧が約13Vで止まり電流は30mAからゆっくり減る

向きの覚え方:帯は「ふだん電圧が高い側」

ダイオードの帯(カソード)は、ふだん(ON のとき)電圧が高い側の、コイルの端に向けます。トランジスタが GND 側にある回路なら、電源の+側です。

① 帯=カソード

ダイオードの胴にある1本の帯の側がカソード。回路記号の「棒」の側です

② ふだんは流れない向き

ON のときに電流が流れない向きにつなぐ。電源の+にカソード、という形になる

③ スイッチが電源側でも同じ考え

スイッチが電源側(ハイサイド)にあるときは、コイルの上の端(スイッチ側)にカソード、下の端(GND)にアノード

注意|交流のコイルには使えない

交流は電流の向きが1秒に100回以上(50Hzで100回、60Hzで120回)入れ替わります。ダイオードがふだんも導通してしまうので、交流のコイルにはフリーホイールダイオードは使えません。RC スナバやバリスタを使います。

品種によっては、ダイオードが中に入ったリレーやリレーモジュールもあります。その場合はコイルに+と−の向きが決まっているので、データシートの向きどおりにつなぎます。

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つまり、迷ったら「ON のとき、このダイオードに電流は流れないか?」と指でたどります。流れるなら向きが逆です。

スイッチがGND側(ローサイド)の回路ではダイオードの帯を+12V側、スイッチが電源側(ハイサイド)の回路では帯をコイルの上のスイッチ側・アノードをGNDに向けた2つの回路図。右に帯=カソード=記号の棒、ふだんは流れない向き、交流のコイルには使えないの3点

よくある失敗3つ:付け忘れ・逆向き・位置違い

フリーホイールダイオードの失敗は、付け忘れ・向きが逆・スイッチと並列につなぐ、の3つが代表です。

失敗1:付け忘れる

OFF のたびに、コレクタに高い電圧がかかります。1回で壊れることもあれば、ON/OFF を繰り返すうちに傷むこともあります。リレーやモータを動かす回路では、まずダイオードがあるかを確かめます。

失敗2:向きを逆にする

帯を GND 側(トランジスタ側)に向けると、ON にしたとたん、+12V → ダイオード → トランジスタ → GND と、コイルを通らずに電流が流れます。電源のショートです。

コイルにはほとんど電圧がかからないのでリレーは動かず、ダイオードやトランジスタが熱くなって壊れます。

失敗3:スイッチ(トランジスタ)と並列につなぐ

ダイオードをコレクタと GND の間(帯をコレクタ側)につなぐ間違いです。OFF の瞬間にコレクタが+に跳ね上がっても、このダイオードには逆向きの電圧なので電流が流れません。守れません。

MOSFET の中にあるダイオード(ボディダイオード)が役に立たないのも同じ理由です。必ず、コイルの両端につなぎます。

つまり、回路図を描いたら、ON の道と OFF の道を指でたどります。「ON で流れない・OFF で輪ができる」なら正解です。

よくある失敗3つの回路図。付け忘れはOFFの瞬間に高い電圧、向きが逆はONにしたとたん+12Vからダイオードとスイッチを通って電源がショート、スイッチと並列(カソードがスイッチの上・アノードがGND)はOFFの高い電圧に対して逆向きで電流が流れず守れない

選び方は3つ:耐圧・電流・速さ

フリーホイールダイオードは、耐圧(逆電圧)・平均電流・速さ(逆回復時間)の3つを、データシートで確かめて選びます。

① 耐圧:電源電圧の3倍以上を目安に

ON のとき、ダイオードには電源の 12V が逆向きにかかります。パナソニックのリレーの資料では、トランジスタでリレーを動かすときのダイオードの逆方向の電圧を「電源電圧の約3倍」としています。

例:12V × 3 = 36V 以上。1N4148(100V)も 1N4007(1000V)も足ります。

② 電流:コイルの電流と同じか、それ以上

OFF の瞬間、コイルに流れていた電流がそのままダイオードに流れます。同じ資料では、平均の電流の定格を「コイル電流と同等」としています。

例:12V ÷ 400Ω = 30mA 以上。1N4148(平均150mA)も 1N4007(1A)も足ります。

③ 速さ:ON/OFF の回数で決める

リレーのように1秒に数回までの ON/OFF なら、速さを気にしなくて構いません。一般整流用の 1N4007 で十分です。

PWM で1秒に何千回も ON/OFF するモータでは、ダイオードが「流れる」から「止まる」に切り替わる時間(逆回復時間 trr)が効いてきます。遅いと、次に ON にした瞬間にダイオードを通して大きな電流が流れ、損失やノイズが増えます。ショットキーバリアダイオードや高速用(UF4007 など)を選びます。

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つまり、12V の小型リレーなら「1N4148 か 1N4007」で迷う必要はありません。電流が大きいときと PWM のときだけ、もう一度データシートを見ます。

12Vリレー(コイル400Ω・30mA)の例でダイオードを選ぶ3枚のカード。耐圧は電源の3倍の36V以上で1N4148の100V・1N4007の1000Vとも可、電流は30mA以上で1N4148の平均150mA・1N4007の1Aとも可、速さは1秒に数回なら一般用、PWMなら1N4148の4ns・UF4007の75ns・ショットキーのSS14

早見表:何に使う?でフリーホイールダイオードを選ぶ

答えだけ知りたい人向けの早見表です。どの行も、耐圧は電源の3倍以上・平均電流はコイル電流以上、を満たしているかを確かめてから使ってください。

使い方コイルの電流選ぶ種類型番の例(最大定格)
小型リレー(5〜24V)〜100mA小信号用か一般整流用1N4148(100V・平均150mA)、1N4007(1000V・1A)
リレー・ソレノイド(ときどき ON/OFF)〜1A一般整流用1N4007(1000V・1A)
PWM で動かすモータ・ソレノイド〜1Aショットキーか高速用12V 以下:SS14(40V・1A)/24V:UF4007(1000V・1A・trr 75ns)
1A を超えるもの1A 超電流の大きい品種コイル電流以上の平均電流の品種をデータシートで選ぶ

コイルの電流は「電源電圧 ÷ コイルの抵抗」で求めます。コイルの抵抗は、リレーやソレノイドのデータシートに載っています。

POINT|ショットキーの注意

ショットキーバリアダイオードは VF(流れるときの電圧)が小さく、切り替わりも速い一方、耐圧が低めで、温度が上がると漏れる電流が増えます。SS14 は 25℃ で 0.2mA、100℃ で 6.0mA まで漏れることがあります(データシートの最大値)。

つまり、迷ったら 1N4007。PWM ならショットキーか高速用。1A を超えたら電流の定格から選び直す、の3通りで足ります。

フリーホイールダイオードの早見表。小型リレー(5〜24V・〜100mA)は1N4148か1N4007、ときどきON/OFFするリレー・ソレノイド(〜1A)は1N4007、PWMで動かすモータ・ソレノイド(〜1A)は12V以下ならSS14、24VならUF4007、1Aを超えるものは電流の大きい品種をデータシートで選ぶ

リレー・モータ・ソレノイドでの使い分け

どれも直流のコイルなので、つなぎ方は同じです。違うのは、電流の大きさと、ON/OFF の回数です。

リレーDC モータ(PWM)ソレノイド
電流(目安)数十mA数百mA〜数A数百mA〜数A
ON/OFF の回数ときどき1秒に何千回ときどき
選ぶダイオード1N4148・1N4007ショットキー・高速用電流の大きい一般整流用
気をつけること接点が離れるのが遅れるOFF のたびに電流が流れるので発熱と平均電流戻りを速くしたいならツェナーや抵抗を足す
身の回りの例エアコン・給湯器・自動車の電装おもちゃ・ロボット・ファン洗濯機の給水弁・自動販売機

PWM で動かすモータでは、ダイオードは OFF のたびに電流を流します。ときどき流れるだけのリレーと違い、ダイオードの発熱と平均電流を必ず確かめます。

モータの回る向きを変える回路(Hブリッジ)では、4つのスイッチ素子それぞれのダイオードが、同じ逃げ道の役目をします。

つまり、「コイルが入っていて、直流で ON/OFF する」回路には、ほぼ必ずフリーホイールダイオードか、その代わりの保護が要ります。

リレー・DCモータ(PWM)・ソレノイドの3列の比較。リレーは数十mA・ときどき・1N4148か1N4007・接点が離れるのが遅れる、モータは数百mA〜数A・1秒に何千回・ショットキーか高速用・発熱と平均電流、ソレノイドは数百mA〜数A・ときどき・電流の大きい一般整流用・戻りを速くするならツェナーか抵抗

弱点:OFF してからリレーが離れるまでが遅くなる

フリーホイールダイオードを付けると、コイルの電流がゆっくり減るので、リレーの接点が離れるのが遅れます。

輪の中で電圧を食うのは、ダイオードの約1V とコイルの抵抗だけです。電流を減らす力が弱いので、電流がなかなか減りません。リレーは、電流がある程度まで減ってはじめて接点を離します。

パナソニックや TE のリレーの資料は、ダイオードで復帰(接点が離れること)が遅れると、接点の電気的な寿命が短くなったり、軽く溶着したりすることがある、と注意しています。

POINT|困らない場面も多い

ランプやヒーターのように、リレーが少し遅れて離れても問題のない使い方なら、ダイオードだけで構いません。大きな電流の接点を開閉するリレーや、すぐに止めたいソレノイドで、次の節の方法を考えます。

つまり、ダイオードは「電圧を一番低く抑える代わりに、切れるのが遅い」方法です。遅れが困るかどうかで、次の一手を決めます。

OFFしたあとのコイルの電流のイメージのグラフ。ダイオードだけはゆっくり減り、ダイオード+ツェナーは速く減る。リレーが離れる電流の線に届くまでの時間の差が遅れ

速く切りたいとき:ツェナー・TVS・抵抗を組み合わせる

電流を速く減らすには、輪の中に「電圧を食う部品」を足します。ただし、そのぶんスイッチ素子にかかる電圧は高くなります。

方法つなぎ方スイッチにかかる電圧12V の例
ダイオード+ツェナーダイオードとツェナーを向かい合わせに直列にして、コイルと並列12V+Vz+約1VVz=24V なら約37V
双方向 TVS双方向の TVS をコイルと並列12V+クランプ電圧TVS の品種で決まる
抵抗+ダイオード抵抗とダイオードを直列にして、コイルと並列12V+電流×R+約1V400Ω なら 12+12+1=約25V

TE はリレーの接点の寿命のために、ダイオードとツェナーを直列にしてコイルと並列につなぐ方法を勧めています。パナソニックの資料にも、ダイオードだけで遅れすぎる場合に効果がある、と書かれています。

注意|耐圧を計算し直す

Vz=24V のツェナーを足すと、OFF の瞬間のコレクタは約37V になります。2N3904 の 40V ではほとんど余裕がありません。60V 級の MOSFET など、耐圧の高いスイッチ素子に替えます。ツェナー電圧は、使うリレーのメーカーの推奨値を確かめて決めます。

パナソニックの資料には、ツェナーダイオードをトランジスタのコレクタとエミッタの間(回路電圧の2倍以上)に付けて遅れを短くする方法も載っています。

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ツェナーダイオードの向きと、ツェナー電圧の決め方がわかる

つまり、「速く切る」と「スイッチにかかる電圧」は引き換えです。速くしたぶん、スイッチ素子の耐圧に余裕を持たせます。

コイルと並列につなぐ3つの方法の回路図。ダイオードとツェナーを向かい合わせに直列にするとスイッチには12V+Vz+約1V(Vz24Vなら約37V)、双方向TVSなら12V+クランプ電圧、抵抗とダイオードを直列にすると12V+電流×R+約1V(400Ω・30mAなら約25V)

スナバ・TVS・バリスタとの違い:守るのはスイッチの側

逆起電力の対策は、ダイオードのほかに RC スナバ・TVS・バリスタがあります。どれも「コイルの電流の逃げ道」を作り、スイッチ(トランジスタやリレーの接点)を守る部品です。

方法使える電源スイッチにかかる電圧(12V の例)主な使い道
ダイオードだけ直流だけ約13V(いちばん低い)リレー・小さなモータ
ダイオード+ツェナー直流だけ12+Vz+約1V早く離したいリレー・ソレノイド
双方向 TVS直流・交流12+クランプ電圧向きを決めたくない所
RC スナバ直流・交流R と C の値しだい交流のコイル・接点の保護
バリスタ直流・交流高め交流 100V・200V の機器

直流のコイルを ON/OFF するなら、まずフリーホイールダイオードです。交流のコイルにはダイオードが使えないので、RC スナバかバリスタを使います。

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RC スナバがサージ電圧を吸収する仕組みがわかる

つまり、「直流ならダイオード、遅れが困るならツェナー、交流なら RC スナバかバリスタ」と覚えておけば、最初の選択で迷いません。

コイルの逆起電力の対策の比較表。ダイオードだけは直流だけ・約13V・遅い、ダイオード+ツェナーは直流だけ・12+Vz+約1V・速い、双方向TVSは直流と交流・12+クランプ電圧・速い、RCスナバは直流と交流・RとCの値しだい、バリスタは直流と交流・高め・交流100V・200Vの機器

組んだら確かめる:テスターで向き、オシロで電圧

最低限、電源を入れる前にテスターで向きを確かめます。余裕があれば、オシロスコープで OFF の瞬間のコレクタの電圧を見ます。

最低限ここだけ:テスターで向きを見る

ダイオードレンジ

テスターをダイオードのレンジ(→|の記号)にする。電源は切っておく

順向き

赤をアノード、黒をカソード(帯の側)に当てる。0.5〜0.7V 前後の数字が出れば、帯がカソード

逆向き

赤と黒を入れ替えると OL(流れない)。基板に付けたあとは、帯が+12V 側かを目でも確かめる

余裕があれば:オシロで OFF の瞬間を見る

当て方

プローブの先端をコレクタ、GND クリップをエミッタ(GND)に当てる

見るもの

OFF にした瞬間、約13V で平らに止まっていれば OK。40V を超える山が出ていたら、向きか位置を見直す

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オシロスコープとは?仕組みと使い方の基本・テスターとの違い

オシロスコープの基本の使い方と、テスターとの違いがわかる

つまり、向きはテスター、効き目はオシロ。この2つで、フリーホイールダイオードが正しく働いているかを確かめられます。

左はテスターのダイオードレンジで、赤をアノード・黒を帯のカソードに当てると0.6前後、逆に当てるとOLと表示される図。右はオシロのプローブをコレクタ、GNDクリップをエミッタに当て、OFFの間の電圧が約13Vで平らになる波形

よくある質問(FAQ)

Q. フリーホイールダイオードとは何ですか?

A. リレーやモータのコイルに並列につなぐ保護用のダイオードです。OFFの瞬間の逆起電力の電流をコイルとの輪に逃がし、スイッチ素子を守ります。

Q. フリーホイールダイオードの向きはどちら?

A. 帯(カソード)を、ふだん電圧が高い側に向けます。スイッチがGND側の回路なら電源の+側です。逆にすると電源がショートします。

Q. フライホイールダイオード・還流ダイオードとの違いは?

A. 同じものです。呼び方が違うだけで、どれもコイルの電流をダイオードに還流させる使い方を指します。FWDとも書きます。

Q. 1N4148と1N4007はどちらを使えばいい?

A. 12Vで数十mAの小型リレーなら、どちらでも足ります。コイルの電流が150mAを超えるなら、1Aまで流せる1N4007を選びます。

Q. ダイオードを付けるとリレーが遅くなる?

A. なります。電流がゆっくり減るので、接点が離れるまでが遅れます。速くしたいときはツェナーダイオードを直列に足します。

Q. 交流のコイルにも使えますか?

A. 使えません。交流は電流の向きが入れ替わるので、ダイオードがふだんも導通します。交流のコイルにはRCスナバかバリスタを使います。

Q. MOSFETの中のダイオードで代わりになる?

A. なりません。中のダイオードはドレインとソースの間にあり、OFFの瞬間の高い電圧の向きには流れないので、コイルの電流を逃がせません。

まとめ
  • コイルは電流の変化を嫌う。急に切ると、高い電圧(逆起電力)を出す
  • フリーホイールダイオードは、コイルと並列・帯(カソード)を+側につなぐ
  • ON では流れず、OFF の瞬間だけ「コイル→ダイオード→コイル」の輪で電流を逃がす
  • コレクタの電圧は 12V+約1V で止まる。守っているのはスイッチ素子
  • 選び方は耐圧(電源の3倍以上)・平均電流(コイル電流以上)・速さ(PWM なら速い品種)
  • 弱点は復帰の遅れ。速くしたいならツェナー・TVS・抵抗を足し、スイッチの耐圧を計算し直す

次の一歩として、手元のリレーのデータシートでコイルの抵抗を確かめ、「電源÷抵抗」でコイル電流を計算してみてください。その電流と電源電圧の3倍がわかれば、ダイオードはこの記事の早見表から選べます。

参考にした資料

法令・規格・資料は改訂されることがあります。実務で使うときは、発行元の最新版で確かめてください。

この記事の理解を深める本と道具
おすすめの本

電源回路の設計を、要求仕様から短時間でまとめる実務の考え方まで知りたい人に向いています。要求仕様どおりの電源を短時間で設計するための、電源回路設計の本です(CQ出版、馬場清太郎 著)。

おすすめの本

パワーエレクトロニクスの基本から順に学び直したいときに向いています。パワーエレクトロニクスの基本を、つまずいている人向けにやさしく解説した入門書です(オーム社)。

おすすめの本

パワーエレクトロニクスの全体を、図でつかみたいときに向いています。パワーエレクトロニクスを、カラーの図解で解説した本です。

おすすめの道具

回路の電圧や導通を自分の手で確かめるなら、手元にテスターが1台あると便利です。三和電気計器のデジタルマルチメータ(テスター)CD772です。電圧や抵抗などを測れます。

S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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