回路設計

RCスナバ回路の設計計算|抵抗値とコンデンサ容量の決め方、損失を例題で図解|計算ツール付き

RCスナバ回路の設計計算を表すアイキャッチ。大きなサージとリンギングのある波形が、抵抗とコンデンサでなめらかな波形になる

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お悩み
こんなふうに思っていませんか?
  • スナバの抵抗とコンデンサ、何Ω・何pFにすればいいの?
  • 計算式はあるけど、寄生インダクタンスLがわからない
  • スナバ抵抗が熱くなる。損失の計算が合っているか不安
この記事でわかること
  • RCスナバでサージとリンギングが減る仕組み
  • C・R・損失の計算式と例題
  • リンギングを測ってLと寄生容量を求める方法
  • 2つの方法をまとめた計算ツール
結論|まず30秒でわかる答え

RCスナバ回路は、スイッチ素子に並列に抵抗Rとコンデンサ Cを直列でつなぎ、ターンオフのサージとリンギングを抑える回路です。Cは配線のインダクタンスLにたまったエネルギーを受け止める大きさ(C≒L×I²÷ΔV²)、Rは振動を止める大きさ(R≒√(L/C)〜2√(L/C))にします。抵抗の損失はP≒C×V²×fswで、½はつきません。実務では、リンギングの周波数を測ってLと寄生容量を求める方法がよく使われます。

RCスナバ回路の設計計算を表すアイキャッチ。大きなサージとリンギングのある波形が、抵抗とコンデンサでなめらかな波形になる
RCスナバでサージとリンギングをなめらかにする
サージ対策の記事(全6本)
  1. パワエレの周辺回路まとめ
  2. スナバ回路とは
  3. RCスナバの設計計算(この記事)
  4. RCDスナバ
  5. アクティブクランプ
  6. TVSダイオード

RCスナバ回路とは?サージとリンギングを抑える

MOSFETやIGBTがオフになると、配線のインダクタンスLに流れていた電流が急に止められ、V=L×dI/dt の電圧(サージ)が出ます。さらに、Lと素子の寄生容量が共振して、電圧がしばらく振動します(リンギング)。

部品役割たとえ
コンデンサCLのエネルギーを受け止め、電圧の上がり方をゆるくする車のバネ
抵抗RLとCのあいだで行き来するエネルギーを熱にして、振動を止めるショックアブソーバー

RCスナバは、スイッチ素子と並列に、RとCを直列にしてつなぎます。Cだけだと振動が止まらず、Rだけだと電流が流れつづけます。両方そろって、サージとリンギングがおさまります。

ハーフブリッジ(上下2つのMOSFETを交互にオン・オフする回路)では、サージとは別に、上下が同時にオンして流れる貫通電流にも注意が要ります。貫通電流はスナバでは防げず、両方をオフにしておく時間(デッドタイム)で防ぎます。しくみと計算はハーフブリッジ・フルブリッジ駆動の基本|貫通電流を防ぐ設計で解説しています。

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RCスナバの役割の図。スナバがないとサージとリンギングが続くが、RCスナバがあると早くおさまる。コンデンサはバネのようにエネルギーを受け止め、抵抗はショックアブソーバーのように振動を熱にして止める
RCスナバはバネとショックアブソーバーの役割

サージ電圧の大きさは、配線の「寄生インダクタンス」で決まります。スナバの容量を決める前に押さえておきたい話です。

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RとCの計算式|C=L×I²÷ΔV²、R=√(L/C)〜2√(L/C)

求めるもの式考え方
コンデンサ容量CC≒L×I²÷ΔV²Lのエネルギー ½LI² を、Cの ½CΔV² で受け止める。ΔV=許容電圧−電源電圧
特性インピーダンスZ₀Z₀=√(L/C)LとCの組み合わせで決まる抵抗の目安
抵抗値RR≒Z₀〜2Z₀2Z₀で臨界減衰(ζ=1)。Z₀でも振動はすばやくおさまる
抵抗の損失PP≒C×V²×fsw毎回、充電で½CV²、放電で½CV²を抵抗が熱にする

減衰係数ζ|Rの大きさで揺れ方が変わる

ζ状態波形
ζ<1不足減衰振動しながらおさまる(リンギングが残る)
ζ=1臨界減衰振動せず、いちばん早くおさまる
ζ>1過減衰振動しないが、Rが大きすぎるとCに電流が流れずスナバが効かない

直列のRLCでは ζ=(R÷2)×√(C/L) です。Rを大きくしすぎるとCがつながっていないのと同じになるので、「大きいほど効く」わけではありません。

RCスナバの計算式の図。C≒L×I²÷ΔV²、Z₀=√(L/C)、R≒Z₀〜2Z₀、損失P≒C×V²×fsw。減衰係数ζが1より小さいと振動し、1で振動せずに早くおさまり、1より大きいとゆっくりになる
RCスナバの計算式:C・R・損失と減衰係数ζ

例題1:Lがわかっているときの計算

L=100nH、オフする電流 I=10A、電源電圧300V、素子にかけてよい電圧400V、スイッチング周波数100kHz。

ステップ計算答え
① ΔV400−300100V
② C100nH×10²÷100²1nF
③ Z₀√(100nH÷1nF)10Ω
④ RZ₀〜2Z₀10〜20Ω
⑤ 損失1nF×300²×100kHz約9W(+リンギング分 ½LI²×fsw=0.5W)

9Wは、スナバとしてはかなり大きな損失です。エネルギーの式で決めたCは、サージを電源電圧の少し上で止めようとするぶん大きくなりがちで、そのぶん損失が増えます。損失が大きすぎるときは、許容電圧を見直すか、RCDスナバやクランプ回路を考えます。

RCスナバの例題1の図。ΔVは100V、コンデンサは1nF、特性インピーダンスは10Ωで抵抗は10〜20Ω、損失は1nF×300²×100kHzで約9W
RCスナバの例題:1nF・10〜20Ω・損失約9W

実務の決め方:リンギングを測ってLと寄生容量を求める

Lは配線や部品の中にあって、計算ではなかなかわかりません。そこで、オシロスコープでリンギングを測って、Lと寄生容量Cpを求める方法がよく使われます。

ステップやること
① 周波数を測るスナバなしで、ターンオフ後のリンギングの周波数 f₀ を測る
② コンデンサを足す素子と並列に小さなコンデンサCaddを足し、周波数 f₁ を測る(f₀の半分くらいになる値をさがす)
③ 寄生容量Cp=Cadd÷((f₀÷f₁)²−1)。ちょうど半分なら Cp=Cadd÷3
④ LL=1÷((2πf₀)²×Cp)
⑤ スナバのRとCR≒√(L/Cp)、C≒Cpの3〜4倍

例題2:f₀=50MHz、100pFを足すと f₁=25MHz(半分)になった。

求めるもの計算答え
寄生容量Cp100pF÷(2²−1)約33pF
L1÷((2π×50MHz)²×33pF)約304nH
R√(304nH÷33pF)約95Ω → 100Ω
C33pF×3〜4120pF
損失(300V・100kHz)120pF×300²×100kHz約1.1W

例題1より、Cがずっと小さく損失も少なくなります。リンギングを止めることが目的なら、この方法のほうが現実的です。

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リンギングを測ってスナバを決める方法の図。50MHzのリンギングに100pFを足して25MHzになれば寄生容量は約33pF。抵抗は約100Ω、コンデンサは寄生容量の3〜4倍で120pF
リンギングを測って寄生容量からスナバを決める

部品の選び方|コンデンサと抵抗の注意点

部品チェック項目選び方
コンデンサ耐圧サージを含む最大電圧より余裕をもたせる
コンデンサ種類セラミック(C0G・NP0など)かフィルム。電解は高い周波数に向かない
抵抗定格電力計算した損失の2倍以上を目安に。温度も確かめる
抵抗種類巻線形はインダクタンスがあるので避ける。無誘導の抵抗を使う
配置配線スナバは素子のすぐ近くに置き、ループを小さくする

計算はスタート地点です。最後は、オシロスコープで波形を見ながらRとCを1段ずつ変えて決めます。

RCスナバの計算ツール

①はLがわかっているとき、②はリンギングを測ったときに使います。最初は記事の例題の数字が入っています。

① Lがわかっているとき
② リンギングを測ったとき(電源電圧と周波数は①の値を使います)

入力すると、その場で計算し直します。入力した数字は画面の中で計算するだけで、どこにも送信されません。計算値は出発点です。最後は実機の波形で確かめてください。

RCスナバ設計のよくある間違い

よくある間違い正しい考え方
損失を ½×C×V²×fsw で見積もる充電と放電の両方で失うので C×V²×fsw
Rは大きいほどよく効く大きすぎるとCに電流が流れず、スナバが効かない
Cは大きいほど安心損失がCに比例して増え、抵抗が焼ける
Lは計算で正確に出せる誤差が大きい。リンギングを測って求める
巻線形の抵抗や電解コンデンサを使う無誘導の抵抗と、セラミック・フィルムのコンデンサを使う
RCスナバ設計のよくある間違いの図。損失はC×V²×fで½はつかない、抵抗は大きすぎると効かない、コンデンサを大きくすると損失が増える、巻線形ではなく無誘導の抵抗を使う
RCスナバ設計のよくある間違い:損失に½はつかない
キャリア
設計の経験を、次のキャリアに活かすなら

回路や基板の設計経験は、メーカーをはじめ多くの企業で求められています。今の職場で経験を積むのも、より広く経験を活かせる職場を探すのも、ひとつの道です。エンジニア向けの転職支援サービスでは、経験を棚卸ししながら求人を探せます。

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よくある質問

Q. RCスナバのCはどう決める?

A. Lがわかるなら C≒L×I²÷ΔV²。実務では、リンギングを測って求めた寄生容量の3〜4倍にする方法もよく使います。

Q. RCスナバのRはどう決める?

A. 特性インピーダンス√(L/C)〜その2倍が目安です。最後は波形を見ながら調整します。

Q. スナバ抵抗の損失の式は?

A. P≒C×V²×fswです。毎回の充電と放電でそれぞれ½CV²ずつ失うので、½はつきません。

Q. 寄生容量はどうやって測る?

A. リンギングの周波数を測り、コンデンサを足して周波数が半分になれば、寄生容量は足した容量の約1/3です。

Q. スナバ回路とクランプ回路の違いは?

A. RCスナバは振動とサージを熱で吸収します。RCDやクランプは決めた電圧以上だけを吸収し、損失を減らせます。

まとめ
  • RCスナバはスイッチと並列。サージとリンギングを抑える
  • C≒L×I²÷ΔV²、R≒√(L/C)〜2√(L/C)
  • 損失は P≒C×V²×fsw(½はつかない)
  • 実務はリンギングを測って寄生容量とLを求める
  • Cは寄生容量の3〜4倍、無誘導の抵抗で
RCスナバ設計のまとめの図。コンデンサはL×I²÷ΔV²、抵抗は√(L/C)からその2倍、損失はC×V²×fsw、実務ではリンギングを測って決める
RCスナバ設計のまとめ:C・R・損失の求め方
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シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーで回路設計・生産技術(品質改善)の実務

メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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