回路設計

トランジスタとMOSFETどっち?マイコンでON/OFFする選び方

白いブレッドボードに立つ3本足の黒い部品2つと光る赤いLEDの写真に、マイコンでON/OFF・トランジスタvs MOSFET・損失P=I²×RDS(on)の文字

※本記事にはプロモーション(広告)が含まれています。

トランジスタとMOSFETのどっちを使うかは負荷の電流で決まり、100mA くらいまでならどちらでも、超えるならロジックレベルの MOSFET が基本です。電流ごとの答えは早見表、3.3V で ON できる品番の見分け方はロジックレベルMOSFETの節へ。

結論|まず30秒でわかる答え

100mA くらいまでの小さな負荷なら、どちらでも動きます。
100mA を超えるなら、マイコンの電圧で ON できるロジックレベルの MOSFETが基本です。3.3V のマイコンなら、RDS(on)(オン抵抗)が VGS=2.5V の条件で書かれた品番(例:AO3400A、48mΩ 以下)を選びます。
ゲート抵抗 220Ω とプルダウン 100kΩ を付ければ、2A を流しても損失は 2²×0.048=0.19W です。

この記事に出てくる言葉

わからない言葉が出てきたら、ここに戻ってきてください。本文でも、初めて出たところで言い換えます。

バイポーラ トランジスタベースに電流を流すと ON になる部品(この記事では「トランジスタ」)
MOSFET(モスフェット)ゲートに電圧をかけると ON になる部品
ゲート・ドレイン・ソースMOSFET の3本の足。G は合図を入れる足、D は負荷側、S は GND 側
VGSゲートとソースの間の電圧。マイコンの出力の電圧がそのままかかる
VGS(th)MOSFET に電流が流れはじめる電圧(しきい値)。ON の電圧ではない
RDS(on)(オン抵抗)ON のときの MOSFET の抵抗。小さいほど熱くならない
ロジックレベル5V や 3.3V のマイコンの電圧で ON できる MOSFET の呼び名
プルダウン抵抗で線を GND へ引き、何もつながないときを 0V にすること
損失部品の中で熱になる電力

トランジスタと MOSFET、マイコンで ON/OFF するならどっちを使うか。回路を作りはじめると、最初に迷うところです。

この記事では、ベース抵抗の計算の記事と同じ「3.3V のマイコンで負荷を動かす」場面で、2つの部品を実在の型番のデータシートの数字で比べます。

白いブレッドボードに立つ3本足の黒い部品2つと光る赤いLEDの写真に、マイコンでON/OFF・トランジスタvs MOSFET・損失P=I²×RDS(on)の文字

この記事で作るもの:同じ LED を2つの部品で点ける

左はトランジスタ(2N3904)、右は MOSFET(AO3400A)で、3.3V のマイコンから同じ LED を点ける回路です。部品の数はほとんど同じで、違うのは「何を流すか」です。

どちらも、マイコンの端子は「合図」を出すだけです。LED に流れる電流は、5V の電源から部品を通って GND へ流れます。部品は、その道をつないだり切ったりするスイッチの役です。

トランジスタMOSFET
部品の例2N3904(NPN)AO3400A(N チャネル)
マイコンとの間ベース抵抗 Rb 2.4kΩゲート抵抗 Rg 220Ω+プルダウン 100kΩ
ON にする方法ベースに電流 1.08mA を流しつづけるゲートに 3.3V をかける
LED の側5V → 150Ω → LED → コレクタ5V → 150Ω → LED → ドレイン

トランジスタの側は、ベース抵抗の計算の記事で 2.4kΩ を出した回路そのものです。まだ読んでいない人は、先にそちらを読むと、この記事の比べ方がすっと入ります。

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つまり、どちらも「マイコンの合図で、別の電源の電流をつなぐスイッチ」です。違いは、合図に電流が要るか、電圧だけでよいかです。

3.3Vのマイコンから2N3904とベース抵抗2.4kΩでLEDを点ける回路と、AO3400Aとゲート抵抗220Ω・プルダウン100kΩでLEDを点ける回路の比較

トランジスタとMOSFETの違い:電流で動くか、電圧で動くか

トランジスタは、ON のあいだずっとベースに電流(この例で 1.08mA)を流しつづけます。MOSFET は、ゲートに電圧をかけた一瞬だけ電流が流れ、あとはほとんど流れません。

トランジスタ(バイポーラ トランジスタ)は、ベースに流した電流の何倍かの電流を、コレクタからエミッタへ流す部品です。ベースの電流を止めると、OFF になります。だから ON のあいだは、マイコンがベースに電流を出しつづけます。

MOSFET は、ゲートに電圧をかけると、ドレインとソースの間がつながる部品です。ゲートは中で絶縁されていて、小さなコンデンサのようになっています。電圧をかけた瞬間にそのコンデンサへ電気がたまるあいだだけ電流が流れ、たまってしまえば流れません。

たとえると

トランジスタは、手で押さえているあいだだけ水が出る蛇口です。手を離すと止まります。MOSFET は、ひねって開けておく蛇口です。開けるときに少し力が要りますが、開けたあとは手を離しても出つづけます。

東芝の MOSFET のゲート駆動の資料も、MOSFET は「電圧駆動であり、ゲートに直流電流は流れません」と書いています。ON のあいだに流れるのは、ゲートの漏れ電流(AO3400A で最大 100nA=0.0001mA)だけです。

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MOSFET の中で、ゲートの電圧が電流の通り道を作るしくみを図で

つまり、マイコンの端子から見ると、トランジスタは「ずっと電流を出す相手」、MOSFET は「電圧をかけるだけの相手」です。

ベース電流はONのあいだ1.08mAを流しつづけ、ゲート電流は切り替えの一瞬だけ最大15mA流れてONのあいだは0.0001mA以下になるグラフ(イメージ)

足の名前の対応:ゲート・ドレイン・ソース

MOSFET の3本の足は、ゲート(G)・ドレイン(D)・ソース(S)です。回路の中の位置は、トランジスタのベース・コレクタ・エミッタと同じと考えて大丈夫です。

役目トランジスタMOSFET
合図を入れるベース Bゲート G
負荷の電流が入るコレクタ Cドレイン D
GND へ出るエミッタ Eソース S
ON にする条件ベース電流 Ib を流すゲートとソースの間に電圧 VGS をかける

AO3400A のような小さな MOSFET は、SOT-23 という3本足の小さなパッケージに入っています。データシートの上から見た図では、1番がゲート、2番がソース、3番がドレインです。ただし足の並びは品番ごとに違うことがあるので、必ずその品番のデータシートで確かめます。

つまり、G は B、D は C、S は E の位置。ローサイド(負荷の下)に置くときは、S を GND につなぎます。

NPNトランジスタとNチャネルMOSFETの回路記号の足の名前、SOT-23を上から見た1番ゲート・2番ソース・3番ドレインの図と対応表

VGS(th) は ON になる電圧ではない

VGS(th)(しきい値)は、MOSFET にほんの少し電流が流れはじめる電圧です。AO3400A では、0.25mA が流れるときの電圧が VGS(th) です。しっかり ON するかは、RDS(on) が書かれた行の VGS の条件で確かめます。

MOSFET を選ぶとき、いちばん多い読み違いがここです。AO3400A のデータシートでは、VGS(th) は「VDS=VGS、ID=250µA」の条件で、最小 0.65V・代表 1.05V・最大 1.45V です。

250µA は 0.25mA です。LED の 20mA や、モーターの 500mA とは桁が違います。VGS(th) の電圧では、MOSFET はやっと「流れはじめた」だけで、スイッチとしては半分も ON していません。

注意

「VGS(th) が 2.5V だから、3.3V のマイコンなら ON できる」は誤りです。VGS(th) の最大が 2.5V の部品は、3.3V では電流が少ししか流れない個体があってもおかしくありません。

東芝の資料も、MOSFET を ON させるには「ゲートしきい値電圧 Vth より十分大きいゲート電圧」が必要だと書いています。どれくらい大きければよいかは、次の節の RDS(on) の行で確かめます。

つまり、VGS(th) は「流れはじめ」。ON の確かめに使うのは、RDS(on) の行に書かれた VGS の条件です。

ゲートの電圧と流れる電流のグラフ(イメージ)。VGS(th)1.05Vでは0.25mAだけ、2.5VにRDS(on)の保証の行があり、マイコンの3.3Vの線

ロジックレベルMOSFETの見分け方:RDS(on) の VGS の条件を見る

ロジックレベル MOSFET かどうかは、データシートの RDS(on) が、マイコンの電圧以下の VGS(3.3V なら 2.5V、5V なら 4.5V)で書かれているかで見分けます。AO3400A は 2.5V の行があり、2N7002 は 5V と 10V だけです。

RDS(on)(オン抵抗)は、ON のときの MOSFET の抵抗です。データシートでは、必ず「VGS=何V、ID=何A のとき」という条件つきで書かれています。この条件の VGS が、マイコンが出せる電圧以下なら、その抵抗で ON できることが保証されています。

見る行AO3400A2N7002(Diodes)
VGS(th)(流れはじめ)0.65〜1.45V1.0〜2.5V
RDS(on) VGS=2.5V48mΩ 以下(3A)書かれていない
RDS(on) VGS=4.5V / 5V32mΩ 以下(5A)7.5Ω 以下(50mA)
RDS(on) VGS=10V26.5mΩ 以下(5.7A)5.0Ω 以下(0.5A)
流せる電流 ID5.7A115mA(DigiKey の表示)
VGS の最大±12V±20V
VDS の最大30V60V

AO3400A は、VGS=2.5V で 3A を流しても 48mΩ 以下と書かれています。3.3V はそれより高いので、3.3V のマイコンで直接 ON できます。

2N7002 は、RDS(on) が 5V と 10V でしか書かれていません。5V のマイコンなら使えますが、3.3V では「ON できるか」の保証がありません。小さな MOSFET の定番ですが、3.3V で使うときは注意が要ります。

POINT

同じ「2N7002」でも、メーカーや品番の末尾で数字が違います。例えば秋月電子の通販では、2N7002 は 60V・115mA、2N7002K は 60V・300mA として売られています。必ず買う品番のデータシートで確かめます。

つまり、3.3V のマイコンなら「RDS(on) に 2.5V の行がある」品番を選ぶのが確実です。

AO3400Aと2N7002のVGS(th)、VGS2.5V・4.5V・10VのRDS(on)、ID、VGSとVDSの最大の比較表。2N7002は2.5Vの行が書かれていない

マイコンで直接動かせるか:3つの確かめ

①RDS(on) の VGS の条件がマイコンの電圧以下か、②その RDS(on) で損失を計算して小さいか、③VDS と VGS の最大が足りるか、の3つを確かめます。

STEP 1 VGS の条件

RDS(on) の行の VGS が、マイコンの出力の電圧以下かを見ます。3.3V のマイコンなら 2.5V の行、5V のマイコンなら 4.5V の行があれば合格です。

STEP 2 電流と損失

その行の RDS(on) を使って、損失 P=I²×RDS(on) を計算します。AO3400A で 2A なら、2×2×0.048=0.19W です。

STEP 3 電圧の上限

VDS の最大が負荷の電源より大きいか(AO3400A は 30V)、VGS の最大がマイコンの電圧より大きいか(±12V)を確かめます。

「ロジックレベル」は、ロジック(デジタル回路)の電圧で ON できる MOSFET の呼び名です。ただ、呼び名だけで決めると 4.5V 向けの品番を 3.3V で使ってしまうことがあります。必ず STEP 1 の行を見ます。

通販サイトで探すときは、DigiKey の「駆動電圧(最大Rdsオン、最小Rdsオン)」の欄が便利です。2N7002 のページでは「5V、10V」、2.5V で ON できる品番では 2.5V などが表示されます。この欄で絞り込めば、STEP 1 を一度に済ませられます。

つまり、VGS の条件 → 損失 → 電圧の上限、の順に3つ見れば、マイコンで直接動かせるかがわかります。

1.VGSの条件、2.電流と損失(2Aなら4×0.048=0.19W)、3.電圧の上限(AO3400Aは30V・±12V)の3枚のカードとDigiKeyの駆動電圧の欄の説明

ゲート抵抗とプルダウン:2本の抵抗の役目と値

ゲート抵抗(220Ω)は、ON・OFF の切り替えの一瞬に流れる電流を抑えます。プルダウン(100kΩ)は、マイコンが合図を出していないあいだ、ゲートを 0V にして OFF を保ちます。

MOSFET のゲートは小さなコンデンサなので、電圧をかけた瞬間は、抵抗がないと大きな電流が流れようとします。ゲート抵抗を入れると、その一瞬の電流の上限が決まります。

ゲート抵抗で決まる一瞬の電流の上限
3.3V ÷ 220Ω = 15mA

切り替えにかかる時間の目安は、ゲート抵抗×入力の容量です。AO3400A の入力の容量(Ciss)は 630pF(代表値)なので、220Ω×630pF≒0.14µs です。LED やモーターを ON/OFF するには十分な速さです。

プルダウンは、ゲートとソース(GND)の間に入れる抵抗です。ON のあいだは 3.3V÷100kΩ=33µA が流れますが、ゲートの電圧は 3.3×100k÷(100k+220)≒3.29V で、ほとんど下がりません。

抵抗この記事の値役目大きすぎ・小さすぎると
ゲート抵抗 Rg220Ω切り替えの一瞬の電流を抑える大きすぎると切り替えが遅く熱い/小さすぎると一瞬の電流が大きい
プルダウン100kΩ合図がないとき OFF を保つ小さすぎると ON 中の電流が増える/大きすぎるとノイズに弱い

東芝の資料(2.2節)も、3.3V のマイコンから MOSFET を直接動かす例に、ゲート抵抗と「入力信号がオープンになった場合にゲート・ソース間を 0V にする抵抗」の2本を入れています。値はこの記事の目安で、100Ω〜1kΩ・10kΩ〜100kΩ くらいの中から選ばれることが多いです。

つまり、ゲート抵抗は「一瞬の電流のブレーキ」、プルダウンは「何もしないときは OFF」の保険です。

マイコン3.3Vからゲート抵抗220ΩでAO3400Aのゲートへ、ゲートから100kΩでGNDへつなぐ回路図と、15mA・0.14µs・33µA・3.29Vの説明

プルダウンがないと、電源を入れた瞬間に負荷が動くことがある

多くのマイコンは、電源を入れてプログラムが始まるまで、端子が「浮いた」状態(どこにもつながっていない入力)です。プルダウンがないとゲートも浮き、負荷が一瞬動いたり、MOSFET が半分 ON のまま熱くなったりします。

電源を入れた直後やリセット中は、マイコンの端子は入力の状態になっていることが多いです。入力の端子は、ほとんど電流を流さないので、外から見ると何もつながっていないのと同じです。

MOSFET のゲートは電流を流さないので、浮いたゲートの電圧は、ノイズや近くの線の電圧で決まってしまいます。VGS(th) を少し超えると、負荷が一瞬動いたり、半分だけ ON の状態で MOSFET が熱くなったりします。

プルダウンを入れておけば、マイコンが合図を出すまで、ゲートは GND(0V)に引かれて OFF のままです。モーターやヒーターのように、勝手に動くと困る負荷では必ず入れます。

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つまり、プルダウンは「プログラムが動きだすまでの OFF」を守る部品です。リセット中の端子の状態は、マイコンのデータシートで確かめます。

電源ON・リセット中・プログラム開始の流れと、プルダウンなしではゲートが浮いて負荷が一瞬動く、100kΩがあればOFFのままの比較(イメージ)

損失の比較:20mA・500mA・2A で計算する

損失は、トランジスタが VCE(sat)×I、MOSFET が I²×RDS(on) です。20mA では 6mW と 0.019mW、500mA では 500mW と 12mW。2A は小さなトランジスタでは流せず、AO3400A なら 192mW です。

ON のときに部品の中で熱になる電力(損失)を計算して比べます。トランジスタは ON でも VCE(sat)(飽和したときに残る電圧)が残り、MOSFET は RDS(on) の抵抗が残ります。

損失の式
トランジスタ:P = VCE(sat) × I / MOSFET:P = I² × RDS(on)
負荷の電流トランジスタMOSFET(AO3400A)
20mA(LED)2N3904:0.02 × 0.3 = 6mW0.02² × 0.048 = 0.019mW
500mAMMBT2222A:0.5 × 1.0 = 500mW0.5² × 0.048 = 12mW
2A小さなトランジスタでは流せない2² × 0.048 = 192mW

VCE(sat) と RDS(on) は、どちらもデータシートの最大値です。2N3904 の VCE(sat) は 10mA で 0.2V、50mA で 0.3V の保証なので、20mA は安全側の 0.3V で計算しました。AO3400A の RDS(on) は VGS=2.5V の最大 48mΩ です。3.3V はそれより高いので、実際はもう少し小さくなります。

MMBT2222A は、流せる電流(IC)が 600mA の小さなトランジスタです。500mA で VCE(sat) は最大 1.0V なので、損失は最大 0.5W になります。

つまり、電流が大きくなるほど差が開きます。500mA では 42倍の差です。

損失の棒グラフ。20mAで2N3904は6mW・AO3400Aは0.019mW、500mAでMMBT2222Aは500mW・AO3400Aは12mW、2AでAO3400Aは192mW

マイコンの端子が出す電流:負荷が大きいとトランジスタは足りない

トランジスタは、負荷の電流が大きいほどベース電流も増えます。500mA では 37.5mA〜50mA が必要で、マイコンの端子1本では出せません。MOSFET のゲート電流は、負荷の大きさに関係なくほぼ 0 です。

トランジスタのベース電流は、ベース抵抗の計算の記事と同じ考え方で、負荷の電流÷hFE(最小値)×余裕の倍率で決まります。

20mA(2N3904)

ベース抵抗の計算の記事のとおり、Rb 2.4kΩ で Ib=(3.3−0.7)÷2.4kΩ=1.08mA。マイコンの端子で出せます。

500mA(MMBT2222A)

hFE の最小は 40(500mA)。500÷40=12.5mA、余裕3倍で 37.5mA。データシートの VCE(sat) の保証の条件は Ib=50mA です。

2A

小さなトランジスタでは流せません。大きなトランジスタやダーリントン(2段にしたもの)が要り、回路が複雑になります。

マイコンの端子から出せる電流は、品種にもよりますが数mA〜十数mA ほどです。500mA の負荷をトランジスタで動かすには、トランジスタをもう1段足すなどの工夫が要ります。MOSFET なら、ゲートに 3.3V をかけるだけです。

つまり、100mA を超えるあたりから、MOSFET のほうが回路がずっと簡単になります。

負荷20mAでベース電流1.08mA、500mAで37.5mA〜50mA、2Aは小さなトランジスタでは流せない、MOSFETのゲート電流はどれも0.0001mA以下の表

熱で確かめる:損失×熱抵抗で温度の上がりを出す

温度の上がりは、損失×熱抵抗で計算します。AO3400A で 2A なら 0.192W×125℃/W≒24℃ で、周りが 25℃ なら約49℃です。MMBT2222A を 500mA で使うと、最大 0.5W で許される損失 0.31W を超えます。

熱抵抗は、「1W の損失で何℃上がるか」を表す数字です。データシートに、基板にのせたときの値が書かれています。

温度の上がり
ΔT = 損失 × 熱抵抗 = 0.192W × 125℃/W ≒ 24℃

AO3400A の 125℃/W は、データシートの定常(ずっと流しつづける)の最大値です。損失は小さいので、2A でも余裕があります。

一方、MMBT2222A の許される損失は 310mW(決められた基板にのせたとき)です。500mA で最大 0.5W の損失が出ると、これを超えてしまいます。

注意

熱抵抗は、基板の銅の広さや、まわりの空気で変わります。ブレッドボードや細い線でつなぐと、データシートより熱くなることがあります。2A を超えるときや、PWM(速い ON/OFF のくり返し)で使うときは、切り替えのときの損失(スイッチング損失)も見ます。

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つまり、損失を出したら、熱抵抗をかけて温度まで確かめます。

AO3400Aで2Aは0.192W×125℃/W≒24℃、MMBT2222Aで500mAは最大0.5Wで許される損失0.31Wを超える、の2枚のカード

早見表:マイコンでON/OFFするならどっち?

100mA くらいまではどちらでもよく、それを超えたらロジックレベルの MOSFET が基本です。速い PWM や大きな電流はゲートドライバ、電源の+側で切るなら P チャネルなどを使います。

負荷選ぶもの例・見る所
〜100mA(LED・小さなブザー)どちらでも2N3904+ベース抵抗/5V のマイコンなら 2N7002
100mA〜1A(リレー・小さなモーター)MOSFETRDS(on) に 2.5V(3.3V のマイコン)か 4.5V(5V)の行がある品番
1A〜数A(LED テープ・ファン)MOSFETRDS(on) と熱を計算(AO3400A で 2A なら 0.19W)
速い PWM・大きな電流ゲートドライバマイコンの端子では切り替えの電流が足りない
電源の+側で切る(ハイサイド)P チャネルなどN チャネル+3.3V では ON できない

電流の区切り(100mA・1A)は、この記事の目安です。どの行でも、モーター・リレー・ソレノイドのようなコイルの負荷には、負荷と逆向きのダイオード(フリーホイールダイオード)を付けます。

つまり、答えだけ欲しいときは、負荷の電流の行を見て、右の列の「見る所」をデータシートで確かめます。

〜100mAはどちらでも、100mA〜1Aと1A〜数AはMOSFET、速いPWM・大きな電流はゲートドライバ、ハイサイドはPチャネルなどの早見表

ブレッドボードで試す:SOT-23 は変換基板にのせる

AO3400A のような SOT-23 の部品は小さすぎて、そのままではブレッドボードに差せません。変換基板(足を太いピンに広げる小さな基板)にはんだ付けしてから差します。

まずは、ベース抵抗の計算の記事と同じ LED(5V・150Ω・約20mA)で試すと、トランジスタの回路と見比べられます。

1. 変換基板を差す

G・S・D の足が、別々の列(縦5つの穴がつながる列)に入るように差します。並びは変換基板の印字とデータシートで確かめます。

2. S を GND へ

S の列から、GND のレールへ線をつなぎます。マイコンの GND も同じ GND のレールへつなぎます。

3. ゲート抵抗とプルダウン

マイコンの出力 → ゲート抵抗 220Ω → G の列。G の列から、プルダウン 100kΩ を GND のレールへ。

4. LED と 150Ω

+5V のレール → 150Ω → LED の長い足、LED の短い足 → D の列。

つまり、S を GND、G に 2本の抵抗、D に負荷、の3か所を正しくつなげば動きます。

ブレッドボードを上から見た配線図。変換基板のAO3400AのG・S・Dの列、ゲート抵抗220Ω、100kΩのプルダウン、LEDと150Ω、マイコンと5V電源

テスターで確かめる:VGS と VDS の2か所

最低限、ON のときに VGS(ゲートとソースの間)が約3.3V、VDS(ドレインとソースの間)が 0.1V 以下かを確かめます。VDS が 1V 近いなら、ON しきれていません。

最低限ここだけ

1. VGS を測る

テスターの黒をソース(GND)、赤をゲートに当てます。マイコンが ON の合図のとき約3.3V、OFF のとき 0V なら OK です。

2. VDS を測る

黒をソース、赤をドレインに当てます。ON のとき、20mA なら約1mV、500mA でも約24mV(I×RDS(on))です。0.1V 以下ならしっかり ON しています(この記事の目安)。

余裕があれば

2A のような大きな電流を流すときは、数分流したあとに MOSFET を指で触れずに、温度計や放射温度計で確かめます。熱で確かめる節の計算(約49℃)と比べて、ずっと熱いなら、配線や基板の熱の逃げ道を見直します。

つまり、VGS で「合図が届いているか」、VDS で「しっかり ON しているか」を確かめます。

MOSFETの回路図と、VGSはONで約3.3V・OFFで0V、VDSはONで0.1V以下・OFFで電源の電圧の表、VDSの目安20mAで1.0mV・500mAで24mV・2Aで96mV

よくある失敗4つ:MOSFET をマイコンで動かすとき

VGS(th) だけで選ぶ・プルダウンがない・電源の+側に N チャネルを置く・コイルの負荷にダイオードを付けない、の4つがよくある失敗です。

1. VGS(th) だけで選ぶ

「VGS(th) が 2.5V で 3.3V より低いから ON できる」と考えると失敗します。VGS(th) は流れはじめの電圧です。RDS(on) の行の VGS の条件を見ます。

2. プルダウンがない

マイコンのリセット中にゲートが浮き、負荷が一瞬動いたり、MOSFET が半分 ON で熱くなったりします。ゲートから GND へ 100kΩ を入れます。

3. 電源の+側に N チャネル(ハイサイド)

負荷の上(電源の+側)に N チャネルの MOSFET を置くと、ソースの電圧が負荷の分だけ持ち上がり、3.3V のゲートでは ON できません。N チャネルは負荷の下(ローサイド)に置きます。+側で切りたいときは P チャネルなどを使います。

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4. コイルの負荷にダイオードを付けない

モーターやリレーは、OFF にした瞬間に逆向きの高い電圧を出します。負荷と逆向きにダイオードを付けて、その電流を逃がします。

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つまり、選ぶとき(RDS(on) の条件)・つなぐとき(プルダウン・ローサイド・ダイオード)の4点を、作る前に確かめます。

VGS(th)だけで選ぶ、プルダウンがない、+側にNチャネル、ダイオードを付けない、の4枚のカード

よくある質問(FAQ)

Q. トランジスタとMOSFET、マイコンでON/OFFするならどっち?

A. 100mA くらいまではどちらでも動きます。それより大きい負荷なら、マイコンの電圧で ON できる MOSFET が基本です。

Q. ロジックレベルMOSFETとは?

A. マイコンの電圧で ON できる MOSFET です。RDS(on) が 4.5V や 2.5V の条件で書かれています。

Q. VGS(th)がマイコンの電圧より低ければ使える?

A. 使えるとは限りません。VGS(th) は流れはじめの電圧です。RDS(on) の行の VGS の条件で ON を確かめます。

Q. MOSFETのゲート抵抗は何Ωにする?

A. マイコンで ON/OFF するなら 100Ω〜1kΩ が目安で、この記事は 220Ω です。一瞬の電流を 15mA 以下に抑えます。

Q. ゲートのプルダウン抵抗は必要?

A. 必要です。マイコンのリセット中に端子が浮き、負荷が勝手に動くのを防ぎます。10kΩ〜100kΩ が目安です。

Q. 2N7002は3.3Vのマイコンで使える?

A. 保証はありません。RDS(on) が 5V と 10V でしか書かれていないためです。3.3V なら 2.5V の行がある品番を選びます。

まとめ
  • トランジスタは電流で、MOSFET は電圧で動く。MOSFET のゲートには ON のあいだほとんど電流が流れない
  • VGS(th) は流れはじめの電圧。ON の確かめは RDS(on) の行の VGS の条件で
  • 3.3V のマイコンなら RDS(on) に 2.5V の行がある品番(例:AO3400A)。2N7002 は 5V 向き
  • ゲート抵抗 220Ω で一瞬の電流を 15mA 以下に、プルダウン 100kΩ で OFF を保つ
  • 損失は 20mA で 6mW と 0.02mW、500mA で 500mW と 12mW、2A は AO3400A で 0.19W(約24℃上昇)
  • 100mA を超えたらロジックレベルの MOSFET が基本。速い PWM・大電流・ハイサイドは別の回路へ

まずは LED 1個で、トランジスタと MOSFET の両方を組んで、VGS と VDS を測ってみてください。データシートのどの行を見るかが、手で覚えられます。

参考にした資料

法令・規格・資料は改訂されることがあります。実務で使うときは、発行元の最新版で確かめてください。

この記事の理解を深める本と道具
おすすめの本

半導体を使った回路を、トランジスタ回路の設計の基本から理解したい人に向いています。トランジスタを使った増幅回路の設計を、実験を通して解説した本です(CQ出版、鈴木雅臣 著)。

おすすめの道具

回路を実際に組んで、電流や電圧を確かめてみたいときに向いています。サンハヤトのブレッドボード SAD-101です。408個の穴に部品を差し込むだけで、はんだ付けをせずに回路を組めます。

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おすすめの道具

回路の電圧や導通を自分の手で確かめるなら、手元にテスターが1台あると便利です。三和電気計器のデジタルマルチメータ(テスター)CD772です。電圧や抵抗などを測れます。

S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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