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高圧受電設備の全停電は、負荷側から配線用遮断器→真空遮断器→区分開閉器→断路器の順に開き、検電・放電のあと短絡接地器具を付けます。手順は全停電作業の手順、6%の直列リアクトルと高調波の計算は高調波の節へ。

高圧受電設備の主な機器と役割
工場やビルのキュービクルを点検するときは、設備全体を止める「全停電」をします。まず、電気の流れに沿って並ぶ機器と、それぞれが何を切れるのかを押さえます。
| 機器 | 置かれる場所 | 切れる電流 |
|---|---|---|
| PAS(区分開閉器、DGR付き) | 電柱の上(責任分界点) | 負荷電流(地絡のときは自動で開く) |
| DS(断路器) | キュービクルの入口 | 電流はほぼ切れない(無負荷のときに切り離す) |
| VCB(真空遮断器) | DSのすぐ後 | 負荷電流も事故電流(短絡電流)も切れる |
| MCCB(配線用遮断器) | 変圧器の二次側(低圧) | 低圧の負荷電流・短絡電流 |
ポイントは断路器は電流を切れないことです。電流が流れている状態で開くと、アークが出て大事故になります。
遮断器の種類と特徴

全停電作業の手順
順番の理由
| 手順 | 理由 |
|---|---|
| 負荷側(MCCB)から切る | 低圧の負荷を先に切ると、上流の遮断器は小さな電流を切るだけで済む |
| 遮断器 → 断路器の順 | 断路器は電流を切れない。遮断器で電流をなくしてから開く |
| 検電してから接地 | 電気が来ていないことを確かめずに接地すると、短絡事故になる |
| 残留電荷を放電 | ケーブルやコンデンサには、電源を切っても電荷が残る |
| 短絡接地は電源側 | 誤って通電されたり、ほかの電路からの誘導があったりしても、作業者を守るため |
復電するときは、短絡接地器具を外したことを確かめてから、逆の順(DS → PAS → VCB → MCCB)で入れます。断路器は、遮断器を入れる前に入れます。
高圧受電設備とは

労働安全衛生規則で決まっていること
| 条文 | 決まり |
|---|---|
| 第339条第1項第一号 | 開路に使った開閉器に、作業中、施錠するか、通電禁止の表示をするか、監視人を置く |
| 第339条第1項第二号 | 電力ケーブル・電力コンデンサなどの残留電荷を安全な方法で確実に放電させる |
| 第339条第1項第三号 | 高圧・特別高圧だった電路は、検電器具で停電を確認し、誤通電・混触・誘導による感電を防ぐため短絡接地器具で確実に短絡接地する |
| 第339条第2項 | 通電する前に、感電のおそれがないことと短絡接地器具を外したことを確認する |
| 第340条 | 断路器など負荷電流を切るためでない開閉器を開くときは、パイロットランプなどで無負荷であることを確認させる |
感電はなぜ起きる

電験三種の過去問で確かめる
令和4年度下期 問9
| 空欄 | 答え | ポイント |
|---|---|---|
| (ア)を全て開放する | 配線用遮断器(MCCB) | 負荷側から切る |
| (イ)を開放する | 真空遮断器(VCB) | 断路器より先 |
| (ウ)を開放する | 断路器(DS) | 遮断器・PASのあと |
| DSの(エ)に短絡接地器具 | 電源側 | 誤通電や誘導から守る |
手順の中には「DGR付PASを開放する」「DSの電源側及び負荷側を検電して無電圧を確認する」「通電を禁止する表示をする」も書かれていました。実際の作業では、現場ごとの手順書に従います。
全停電の手順の並べ替えチェック
下のカードを、正しい順にクリックしてください。まちがえると、そこで教えます。
令和4年度下期 問9の手順にそって並べています。実際の作業は、現場ごとの手順書に従ってください。
全停電作業のよくある間違い
| よくある間違い | 正しい考え方 |
|---|---|
| 断路器を先に開く | 断路器は電流を切れない。遮断器のあと |
| 電源側(PAS)から切る | 負荷側(MCCB)から切る |
| 検電せずに接地する | 検電で無電圧を確認してから |
| 短絡接地は負荷側 | 断路器の電源側 |
| 電源を切れば残留電荷はない | ケーブル・コンデンサには残るので放電する |
| 復電は同じ順 | 逆の順。短絡接地器具を外したことを確認してから |

ここからは、全停電作業の手順とあわせて出る決まりを、1つずつ節にまとめます。どの節も、条文の数字・図・過去問の順に読めます。
変圧器の絶縁油の劣化と試験|絶縁破壊電圧・全酸価・油中ガス分析
絶縁油の役割と劣化のしくみ
油入変圧器の中は、鉄心と巻線が絶縁油にひたっています。絶縁油には、巻線どうしや巻線と鉄心を絶縁する役目と、巻線の熱を外へ運ぶ冷却の役目があります。
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劣化の原因:酸化
| 原因 | 内容 |
|---|---|
| 主な原因 | 油に溶け込んだ空気中の酸素による酸化 |
| 加速させるもの | 運転による温度上昇(もっとも大きい) |
| ほかに加速させるもの | 銅などの金属、水分、光、部分放電や局部過熱 |
酸化でできた物質が、さらに酸化を進めます。だから劣化は、ある程度進むと速くなります。

劣化すると変わる性質
| 性質 | 劣化すると | 困ること |
|---|---|---|
| 酸価(全酸価) | 上がる(酸性の物質が増える) | 金属や絶縁紙をいためる |
| 抵抗率(体積抵抗率) | 下がる | 電気が漏れやすくなる |
| 絶縁破壊電圧(耐圧) | 下がる | 絶縁が破れやすくなる |
| スラッジ(沈殿物) | できる | 巻線や放熱器にたまり、冷却が悪くなる |
覚え方は「酸価は上がる、ほかは下がる」です。平成26年度・平成19年度の穴埋めでは、酸価が上がると抵抗率が下がる、という部分が空欄になりました。

絶縁油の診断方法と劣化を防ぐ工夫
| 診断方法 | やり方 | わかること |
|---|---|---|
| 絶縁破壊電圧試験(絶縁耐力試験) | 油を容器にとり、電極間に電圧を上げていって破壊する電圧を測る | 絶縁の強さ |
| 全酸価試験 | 油をアルカリの溶液で中和滴定し、酸の量を測る | 酸化(劣化)の進み具合 |
| 油中ガス分析 | 油に溶けたガスを取り出し、ガスクロマトグラフで分析する | 変圧器内部の異常(放電・過熱)。アセチレンは放電などのしるし |
| 部分放電測定 | 部分放電のパルスや超音波をとらえる | 絶縁の内部の弱いところ |
自家用の保守点検では、絶縁破壊電圧試験と全酸価試験がよく行われます。油中ガス分析は、油の劣化だけでなく、変圧器の中で起きている異常を外から見つけられるのが強みです。
劣化を防ぐ工夫
| 工夫 | ねらい |
|---|---|
| コンサベータ(窒素封入・隔膜式) | 油が空気に触れないようにする |
| 吸湿呼吸器(シリカゲル) | 変圧器が「息をする」ときの空気から湿気を取る |
| 温度の管理 | 過負荷を避け、油の温度を上げすぎない |

電験三種の過去問で確かめる
| 年度 | 空欄の答え |
|---|---|
| 平成26年度 問8 | 絶縁耐力(試験)・抵抗率・空気・温度 |
| 平成19年度 問10 | 酸価度(試験)・抵抗率・温度 |
どちらも「保守点検では絶縁耐力試験と酸価度試験を行う」「酸価が上がると抵抗率と耐圧が下がり、スラッジができる」「主な原因は空気中の酸素による酸化で、温度上昇で促進される」という同じ文章からの出題です。
高圧進相コンデンサの劣化診断|素子短絡で電流が1.5倍・1.15倍になる理由と2端子法
高圧進相コンデンサのつくりと劣化
工場やビルの高圧受電設備には、力率を改善するための進相コンデンサがあります。中身は、薄いフィルムと電極を巻いた素子をいくつか直列につないだもので、それを3相分Y結線しています(中性点は接地しません)。
長く使うと、素子の絶縁が弱って電極どうしがつながる素子短絡が起きることがあります。1つの素子が短絡すると、その相の静電容量が大きくなり、3相のバランスがくずれます。そのまま使い続けると、残りの素子に高い電圧がかかって次々に壊れたり、ケースが膨らんだりします。
| 点検のしかた | わかること |
|---|---|
| 各相の電流を測る | 相ごとの電流のちがい(バランスのくずれ) |
| 相間の静電容量を測る(2端子法など) | どの相の静電容量が変わったか |
| 外観を見る | ケースの膨らみ・油もれ |

素子が短絡すると電流が1.5倍・1.15倍になる理由
1相2素子のコンデンサで、R相の素子が1つ短絡したとします。素子1個の静電容量を C とすると、健全な相は2個直列で C/2、R相は1個だけになって C(2倍)です。
手順1:中性点の電位がずれる
各相のアドミタンス(電流の流れやすさ)は静電容量に比例するので、R相:S相:T相 = 2:1:1 です。中性点を接地していないので、中性点の電位 VN は、各相の起電力をアドミタンスで重みづけした平均になります。
ES + ET = −ER を使いました。中性点が R相の方向へ 1/4 だけずれます。
手順2:各相の電圧と電流
例:6.6kV・50kvar のコンデンサ

2端子法で、どの相が壊れたかを見つける
コンデンサを回路から切り離し、3つの端子のうち1つを開放して、残り2つの端子の間の静電容量を測るのが2端子法です。2つの相の静電容量が直列につながった値が測れます。
| 測る端子 | 健全なとき | R相の1素子が短絡したとき |
|---|---|---|
| R − S | C/2 と C/2 の直列 → C/4 | C と C/2 の直列 → C/3(大きくなる) |
| S − T | C/4 | C/4(変わらない) |
| T − R | C/4 | C/2 と C の直列 → C/3(大きくなる) |
短絡した相を含む2つの組だけが大きくなり、含まない組(S−T)は健全なときと同じです。つまり「大きくなった2組に共通する相」が、素子短絡を起こした相です。

電験三種の過去問で確かめる
平成25年度 問11・令和8年度上期 問13(同じ問題)
三相3線式50Hz・使用電圧6.6kVの高圧電路に、定格電圧6.6kV・定格容量50kvar・Y結線・1相2素子の進相コンデンサ(直列リアクトルなし)。
| 問われたこと | 答え | |
|---|---|---|
| (a) | R相の素子が短絡したときの各相の電流 | R相 6.6A、S相・T相 5.0A |
| (b) | 2端子法(1端子開放)で、相間の静電容量がいちばん小さい組 | S−T間(短絡したR相を含まない組) |
(a) は「中性点がずれる」ことに気づけば、ベクトルの計算だけで解けます。(b) は直列の合成静電容量の計算です。
高調波の流出電流の計算|6%直列リアクトルと第5調波の分流
高調波とは?どこから出てくるのか
インバータやパソコンの電源は、電流をきれいな正弦波ではなく、とがった形で流します。このゆがんだ電流は、基本波(50Hz・60Hz)の整数倍の周波数の正弦波に分けられます。これが高調波で、5倍なら第5調波です。
高調波電流が配電系統に流れ出すと、電圧がひずみ、ほかの需要家のコンデンサが過熱したり、機器が誤動作したりします。電力科目や法規の電気施設管理で、計算と正誤の両方が出ます。
| ポイント | |
|---|---|
| 出てくる場所 | インバータ・整流器・パソコンなどの電子機器 |
| よく問題になる次数 | 三相では第5調波・第7調波(第3調波は零相なので高圧側に現れにくい) |
| 対策 | 直列リアクトル付きコンデンサ、受動フィルタ(吸収)、能動フィルタ(逆の高調波を出して打ち消す) |

第n次高調波のリアクタンスと6%直列リアクトル
リアクトルのリアクタンスは XL=2πfL で周波数に比例、コンデンサのリアクタンスは XC=1/(2πfC) で周波数に反比例します。
6%直列リアクトルが第5調波に効く理由
力率改善用のコンデンサには、コンデンサのリアクタンスの6%の直列リアクトルを付けるのが一般的です。第5調波で比べると、
直列リアクトルがないと、コンデンサは高調波に対してインピーダンスが小さい(容量性)ままです。配電系統の誘導性リアクタンスと並列共振して、高調波を拡大することがあります。6%なら √(1/0.06)≒4.1 より上の次数、つまり第5調波以上で誘導性になり、共振を避けられます。

配電系統へ流れ出す高調波電流(分流の法則)
高調波を出す負荷を電流源とみなします。電流源から見ると、配電系統側とコンデンサ設備側が並列につながっていて、電流が2つに分かれます。
ZLは配電系統側、ZCはコンデンサ設備側(直列リアクトル+コンデンサ)の第n次のインピーダンスです。分子には相手側(コンデンサ設備)のインピーダンスが来ます。コンデンサ設備のインピーダンスが大きいほど、高調波電流は配電系統へ流れ出します。
手順
%インピーダンスで与えられたときも、同じ基準容量どうしなら、そのまま比で計算できます。

電験三種の過去問で確かめる
平成18年度 問13・令和7年度上期 問12(同じ問題)
6,600V受電、負荷500kV·A、6%直列リアクトル付きコンデンサ。第5調波電流は定格電流の15%。配電線路側 j6×n %、コンデンサ設備 j50×(6n−100/n) %(10MV·A基準)。
コンデンサ設備のインピーダンス(500%)が配電線路(30%)よりずっと大きいので、高調波電流のほとんどが配電系統へ流れ出します。
令和2年度 問13:流出電流の上限から発生量を逆算
平成22年度 問10:正誤のポイント
| 記述 | 正誤 |
|---|---|
| 直列リアクトルのないコンデンサ設備は、電圧ひずみを拡大することがある | 正しい |
| 低圧側の第3調波は零相なので、高圧側に現れにくい | 正しい |
| 発生源が変圧器の低圧側にあるとき、流出抑制用コンデンサは高圧側に置くほうが効果的 | 誤り(低圧側のほうが効果的) |
| 対策には受動フィルタと能動フィルタがある | 正しい |
よくある質問


