回路設計

逆接続保護回路の3方式|損失の比べ方と突入電流の抑え方

DCプラグが挿さった基板のDCジャック、ダイオード、電解コンデンサ、小さなトランジスタ、光る緑のLEDの写真に、逆接続の保護回路・PchMOSFETなら0.05W・損失:ダイオード1.1W→MOSFET 0.05W の文字

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逆接続保護回路は、直列ダイオード・PchMOSFET・ダイオードブリッジの3方式で、12V・1A なら損失はダイオード(1N4007)1.1W、PchMOSFET 0.05W と20倍以上ちがいます。選び方は早見表、電源を入れた瞬間の突入電流の抑え方は突入電流の節へ。

結論|まず30秒でわかる答え

12V・1A のとき、損失は ダイオード(1N4007)1.1W、ショットキー(SS34)0.5W 以下、PchMOSFET(DMP3056L)0.05W、ブリッジ(DF10S)2.2W。電流が大きいなら PchMOSFET が有利です。
電源を入れた瞬間の突入電流(例では24A)は、NTC サーミスタ・抵抗+リレー・ソフトスタートで抑えます。

この記事に出てくる言葉

わからない言葉が出てきたら、ここに戻ってきてください。本文でも、初めて出たところで言い換えます。

逆接続電源のプラスとマイナスを逆につなぐこと。逆接ともいう
損失部品の中で電気が熱に変わる量。単位は W(ワット)
電圧の下がり(降下)部品を電流が通るときに失われる電圧。ダイオードなら約0.5〜1.1V
PchMOSFET電圧でON・OFF するスイッチの部品(P チャネル形)。ON のときの抵抗がとても小さい
ボディダイオードMOSFET の中に必ずできてしまうダイオード。向きに意味がある
ダイオードブリッジダイオード4個の組み合わせ。入力の向きが逆でも出力の向きをそろえる
突入電流電源を入れた瞬間、空のコンデンサを充電するために一瞬だけ流れる大きな電流
NTC サーミスタ温度が上がると抵抗が下がる部品。冷たいときの抵抗で突入電流を抑える

AC アダプタのプラグや電池は、向きを間違えて挿されることがあります。プラスとマイナスが逆になると、電解コンデンサや IC がこわれることがあります。これを防ぐのが逆接続保護回路です。

この記事では、12V の AC アダプタで動く基板を例に、3つの方式の損失と温度を実在の部品の数字で計算して比べます。後半では、電源を入れた瞬間の突入電流の抑え方も扱います。

DCプラグが挿さった基板のDCジャック、ダイオード、電解コンデンサ、小さなトランジスタ、光る緑のLEDの写真に、逆接続の保護回路・PchMOSFETなら0.05W・損失:ダイオード1.1W→MOSFET 0.05W の文字

電源の入口で起きる2つの事故:逆接続と突入電流

電源の入口では、逆接続(プラスとマイナスを逆に挿す)と突入電流(入れた瞬間の大きな電流)の2つが起きやすくなります。どちらも、電源をつないだ瞬間に起きる事故です。

逆接続:逆の電圧で部品がこわれる

電解コンデンサには向き(極性)があり、逆の電圧がかかるとこわれることがあります。IC やマイコンも、電源の端子に逆の電圧がかかると、中の回路に大きな電流が流れてこわれることがあります。

突入電流:入れた瞬間に大きな電流

電源の入口には、電圧を安定させるための大きなコンデンサがあります。空のコンデンサにつないだ瞬間は、充電のために大きな電流が一瞬流れます。コネクタに火花が出たり、ヒューズが切れたり、電源の電圧が一瞬落ちたりします。

たとえると

逆接続は「水道の管を逆向きにつなぐ」こと、突入電流は「空のバケツに蛇口を全開にして水を入れた瞬間」の勢いです。前者は向きで防ぎ、後者は勢いをゆるめて防ぎます。

つまり、逆接続は「向き」の事故、突入電流は「勢い」の事故。防ぐ部品も別々です。

2枚のカード。逆接続(電解コンデンサやICがこわれる。ダイオード・PchMOSFET・ダイオードブリッジで防ぐ)と、突入電流(コネクタに火花・ヒューズが切れる・電圧が落ちる。サーミスタ・抵抗+リレー・ソフトスタートで抑える)

この記事の例:12VのACアダプタで動く基板

例にするのは、12V の AC アダプタのプラグを挿して動き、ふだん1.0A が流れ、入口に470µF の電解コンデンサがある基板です。

項目この記事の例
電源直流12V の AC アダプタ(プラグを差す)
ふだんの電流1.0A
入口のコンデンサ470µF(電解コンデンサ)
回路の抵抗0.5Ω(電源の出口・ケーブル・コンデンサを合わせたイメージ)

逆接続の保護は、プラグのすぐ後ろに入れます。逆の電圧が、コンデンサや IC に届く前に止めるためです。突入電流の対策は、コンデンサの手前に入れます。

つまり、入口の順番は「プラグ → 逆接続の保護 → 突入の対策 → コンデンサ → 基板」が基本の形です。

直流12VのACアダプタ、逆接続の保護、突入電流の対策、470µFのコンデンサ、ふだん1.0Aの基板の回路図と、回路の抵抗0.5Ω(イメージ)などの条件の表

方式1:ダイオードを直列に1本入れる

いちばん簡単なのは、プラスの線にダイオードを1本入れる方法です。正しく挿せば電流が流れ、逆に挿せばダイオードが電流を止めます。ただし、ダイオードで電圧が下がり、熱が出ます。

ダイオードは、電流を一方向にだけ流す部品です。アノード(三角の側)からカソード(線の側)へは流れ、逆向きには流れません。この性質で、逆に挿したときの電流を止めます。

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ダイオードの損失
損失 = 電圧の下がり × 電流 = 1.1V × 1A = 1.1W(1N4007)
部品(1A のとき)電圧の下がり(最大)損失基板にかかる電圧
1N4007(ふつうのダイオード)1.1V1.1W10.9V
SS34(ショットキー)0.5V 以下0.5W 以下11.5V 以上

ショットキーダイオードは、電圧の下がりが小さい種類です。SS34 のデータシートの値は3A のときの最大0.5V なので、1A ではもっと小さくなります。

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つまり、直列ダイオードは「部品1個で確実」。そのかわり、電流×電圧の下がりの分だけ熱になります。

入力のプラス側にダイオードを直列に入れた回路図。正しく挿すと電流が流れ、逆に挿すと流れない。1N4007は1.1V・1.1W・基板に10.9V、SS34は0.5V以下・0.5W以下・11.5V以上の表

方式2:PchMOSFETを入口に入れる(向きが大事)

PchMOSFET を入口に入れると、ON のときは小さな抵抗(DMP3056L なら最大50mΩ)だけになり、1A で0.05V・0.05W しか失いません。逆に挿すと OFF になって電流を止めます。

MOSFET は、ゲート(G)とソース(S)の間の電圧で ON・OFF するスイッチです。P チャネル形(PchMOSFET)は、ゲートがソースより低い電圧になると ON になります。

正しく挿したとき

はじめはボディダイオードを通って S 側に電圧が出る。G は入力のマイナス(0V)につながっているので、G-S の間に約−12V がかかり ON。ボディダイオードは ON の MOSFET で短絡される

逆に挿したとき

G と S が同じ電圧のままなので OFF。ボディダイオードも逆向きなので、電流は流れない

MOSFET の損失
損失 = 電流² × ON の抵抗 = 1² × 0.050Ω = 0.05W
注意|D を入力側、S を基板側に

向きを逆に付けると、ボディダイオードが逆接続のときにも電流を流してしまい、保護になりません。回路図の D・S と、部品のピン配置を必ず照らし合わせます。

POINT|G-S の電圧の上限

DMP3056L の G-S の電圧の上限は±25V です。12V なら直接つなげますが、24V のように上限に近い電源では、G と S の間にツェナーダイオードと抵抗を入れて、G-S の電圧をおさえます。

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つまり、PchMOSFET は「部品が少し増えるかわりに、損失がダイオードの約20分の1」。電池や大きな電流の回路に向きます。

PchMOSFETのDを入力のプラス、Sを基板、Gを100kΩで入力のマイナスにつないだ回路図とボディダイオード。正しく挿すとG-Sに−12VでON、逆に挿すとOFF。DMP3056Lは最大50mΩ・G-Sの上限±25V・1Aで0.05V・0.05W

方式3:ダイオードブリッジならどちら向きに挿しても動く

ダイオードブリッジは、入力の向きがどちらでも、出力の向きをそろえます。そのかわり、電流はいつもダイオード2個を通るので、DF10S なら1.1V×2=2.2V 下がり、1A で2.2W の熱になります。

ブリッジは、交流を直流にする整流でよく使う部品です。直流の入力に使うと、プラスとマイナスのどちらを逆に挿しても、基板には正しい向きの電圧がかかります。

「向きを気にせず挿せる」のが最大の利点です。ただし、電圧の下がりと熱が3方式でいちばん大きく、12V が9.8V まで下がります。

注意|入力のマイナスと基板の GND が同じにならない

ブリッジの後ろの GND(基板の0V)は、入力のマイナスとダイオード1個ぶんずれます。ほかの機器や測定器と GND をつなぐ回路では、思わぬ電流が流れることがあります。

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つまり、ブリッジは「向きを決められない入力」のための方式。損失が大きいので、電流の小さい回路に向きます。

ダイオード4個のブリッジの回路図。入力AとBのどちらがプラスでも上の点がプラス、下の点がマイナスになり基板へ。よいところ(向きを気にせず挿せる)と弱いところ(DF10Sなら1.1V×2=2.2V、1Aで2.2W、入力の−と基板のGNDが同じにならない)

3方式の損失の比べ:12V・1AならPchMOSFETが最小

12V・1A で比べると、損失は ブリッジ2.2W > 1N4007 1.1W > SS34 0.5W 以下 > PchMOSFET 0.05W です。

方式(部品)電圧の下がり損失基板にかかる電圧
ダイオード(1N4007)1.1V1.10W10.90V
ショットキー(SS34)0.5V 以下0.50W 以下11.50V 以上
ブリッジ(DF10S)2.2V2.20W9.80V
PchMOSFET(DMP3056L)0.05V0.05W11.95V

ダイオードの損失は「電圧の下がり×電流」なので、電流に比例して増えます。MOSFET の損失は「電流²×ON の抵抗」なので、電流が2倍なら4倍になりますが、もとが小さいので、数アンペアまではダイオードより有利です。

つまり、損失を比べるときは「ダイオードは V×I、MOSFET は I²×R」。式を分けて計算します。

損失の横棒グラフ。整流ダイオード1N4007 1.10W(基板に10.90V)、ショットキーSS34 0.50W(11.50V)、ダイオードブリッジDF10S 2.20W(9.80V)、PchMOSFET DMP3056L 0.05W(11.95V)

損失を温度に直す:上がる温度=熱抵抗×損失

損失に熱抵抗をかけると、部品の温度がまわりより何℃上がるかがわかります。ブリッジは約+88℃、1N4007 は約+55℃、PchMOSFET は約+4.5℃ です。

温度の上がり方
上がる温度(℃)= 熱抵抗(℃/W)× 損失(W)
部品損失熱抵抗(データシート)上がる温度
1N40071.10W50℃/W+55.0℃
SS340.50W 以下55℃/W+27.5℃ 以下
DF10S2.20W40℃/W+88.0℃
DMP3056L0.05W91℃/W+4.5℃

箱の中が40℃なら、ブリッジは128℃近くになります。熱抵抗は基板の銅箔の広さで変わる目安なので、余裕が少ないときは、銅箔を広げるか方式を変えます。

つまり、電流が1A を超えるあたりから、ダイオードの熱が無視できなくなる。PchMOSFET が選ばれる理由です。

温度上昇の棒グラフ。1N4007 1.10W×50℃/W=+55.0℃、SS34 0.50W×55℃/W=+27.5℃、DF10S 2.20W×40℃/W=+88.0℃、DMP3056L 0.05W×91℃/W=+4.5℃

早見表:逆接続保護回路の3方式の選び方

迷ったら、電流が小さく安くしたいならダイオード、電流が大きい・電池で動かすなら PchMOSFET、向きを決められない入力ならブリッジ、と選びます。

方式(部品)下がる電圧損失(12V・1A)部品の数向いている所
ダイオード(1N4007)1.1V1.1W1個電流が小さい・安い
ショットキー(SS34)0.5V 以下0.5W 以下1個電圧を下げたくない
PchMOSFET(DMP3056L)0.05V0.05W2〜3個電流が大きい・電池
ブリッジ(DF10S)2.2V2.2W1個向きを決められない入力

PchMOSFET の部品の数は、ゲートの抵抗と、必要ならツェナーダイオードを足した数です。数字はデータシートの最大値で計算しました。

POINT|逆接続の保護はほかの保護と役目が違う

逆接続の保護は「向き」を守るものです。ショートで電源から切り離すのはヒューズ、静電気や雷のような一瞬の高い電圧を逃がすのは TVS ダイオードです。入口には、役目の違う部品を組み合わせて入れます。

つまり、逆接続の保護は「電流の大きさ」と「向きを決められるか」の2つで選べます。

早見表。ダイオード1N4007 1.1V・1.1W・1個・電流が小さい、ショットキーSS34 0.5V以下・0.5W以下・1個・電圧を下げたくない、PchMOSFET DMP3056L 0.05V・0.05W・2〜3個・電流が大きい・電池、ブリッジDF10S 2.2V・2.2W・1個・向きを決められない入力

突入電流:空のコンデンサにつないだ瞬間の大きな電流

空のコンデンサにつないだ瞬間、電流は「電圧÷回路の抵抗」まで跳ね上がります。12V・抵抗0.5Ω なら24A です。抵抗を10Ω にすると、ピークは1.2A まで下がります。

電源を入れた瞬間、空のコンデンサは電線と同じように見えます。電流を止めるのは、電源の出口・ケーブル・コンデンサ自身の小さな抵抗だけです。この記事では合わせて0.5Ω とします(イメージの値です)。

突入電流のピークと時定数
ピーク = 12V ÷ 0.5Ω = 24A / τ = 0.5Ω × 470µF = 0.235ms

抵抗を10Ω にすると、ピークは12÷10=1.2A、時定数は10×470µF=4.7ms になります。ピークが下がるかわりに、充電に時間がかかります。

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つまり、突入電流は「抵抗を入れてピークを下げる」か「電圧をゆっくり上げる」かで抑えます。次の3つの方法は、この考え方の使い分けです。

コンデンサの充電電流の時間変化(縦は対数)。対策なし(0.5Ω)はピーク24A・τ=0.235ms、10Ωを入れるとピーク1.2A・τ=4.7ms。0.5Ωはイメージ

対策1:NTCサーミスタ 冷たいと抵抗が大きく、温まると小さい

NTC サーミスタは、冷たいときは抵抗が大きく(Vishay SL1010003 は25℃で10Ω)、電流が流れて温まると小さくなります(3A で0.28Ω)。電源を入れた瞬間だけ突入電流を抑え、そのあとは損失を小さくできます。

AC100V の電源の入口では、整流したあとのピークが約141V になります。10Ω のサーミスタを入れると、突入電流のピークは141÷10=約14.1A に抑えられます。このとき470µF にたまる電気は4.7J で、SL10 の上限17J に入ります。

一方、12V の小さな基板には向きません。データシートでは1.5A で0.71Ω なので、1A ではそれより大きい抵抗が残り、0.7V 以上下がるからです。電圧の低い回路では、その下がりが大きく効きます。

注意|電源を切ってすぐ入れ直すと効かない

サーミスタは温まったまま電源を入れ直すと、抵抗が小さいままなので突入電流を抑えられません。SL10 の熱時定数は30秒です。入り切りの多い機器では、ほかの方法と組み合わせます。

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つまり、NTC サーミスタは「AC100V の入口の定番」。12V の基板では、次の2つのほうが向きます。

Vishay SL1010003の抵抗の棒グラフ(25℃で10Ω、1.5Aで0.71Ω、3Aで0.28Ω)と、AC100Vなら141V÷10Ω=14.1A・470µFの電気4.7J<上限17J、12Vの基板では0.7V以上下がる、熱時定数30秒

対策2:抵抗+リレー 充電が終わったら抵抗を短絡する

はじめは10Ω の抵抗を通して充電し(ピーク1.2A)、充電が終わったらリレーの接点で抵抗を短絡(ショート)します。5τ=23.5ms たてば、コンデンサは約99%まで充電されます。

1. 抵抗で充電する

電源を入れると、10Ω を通ってコンデンサが充電される。ピークは12÷10=1.2A

2. 時間を待つ

τ=10Ω×470µF=4.7ms。5τ=23.5ms で約99%

3. リレーで短絡する

リレーの接点を ON にして、抵抗を通らない道を作る。ふだんの損失はほぼ0

抵抗で熱になるエネルギー
½ × C × V² = ½ × 470µF × 12² = 0.0338J

抵抗で抑えて充電すると、コンデンサにたまる電気と同じだけの熱が、抵抗に出ます。一瞬の熱なので、パルスに強い抵抗を選びます。

つまり、抵抗+リレーは「抑える」と「損失0」を両立できる。そのかわり、リレーとタイミングの回路の分、部品が増えます。

10Ωの抵抗とそれに並列のリレーの接点、470µFのコンデンサ、基板の回路図と、充電の電流が1.2Aから減り5τ(23.5ms)でリレーをONにするグラフ。抵抗の熱は½×470µF×12²=0.0338J

対策3:ソフトスタート 電圧をゆっくり上げる

ソフトスタートは、基板の電圧をゆっくり上げる方法です。充電の電流は「C×電圧の上がる速さ」なので、12V を10ms かけて上げれば、470µF×12V÷10ms=0.56A に抑えられます。

ソフトスタートの充電電流
I = C × ΔV ÷ Δt = 470µF × 12V ÷ 10ms = 0.564A

作り方は2つあります。1つは、電圧の上がる速さを決められる専用の IC(ロードスイッチやホットスワップ IC など)を使う方法です。もう1つは、MOSFET のゲートにコンデンサと抵抗を付けて、ゆっくり ON にする方法です。

PchMOSFET を使えば、逆接続の保護とソフトスタートを1つの MOSFET で兼ねる回路も作れます。

注意|ゆっくり ON の間、MOSFET は熱を出す

電圧をゆっくり上げている間、MOSFET には電圧と電流が同時にかかり、熱が出ます。データシートの安全動作領域(SOA)のグラフで、その電流と時間に耐えるかを確かめます。専用の IC を使うと、この確かめが楽になります。

つまり、ソフトスタートは「12V などの直流の基板」に向く方法。ピークを計算どおりに決めやすいのが利点です。

基板の電圧が10msかけて12Vまで上がるグラフと、その間の充電の電流が0.56Aで一定のグラフ。I=C×ΔV÷Δt=470µF×12V÷10ms=0.564A。専用ICかMOSFETをゆっくりONにする、SOAを確かめる

突入電流の対策3つの比べと選び方

AC100V の電源の入口なら NTC サーミスタ、大きな電源やインバータなら抵抗+リレー、12V などの直流の小さな基板ならソフトスタートが向いています。

方式よいところ気をつけること向いている所
NTC サーミスタ部品1個・安いふだんも損失。入れ直しに弱いAC100V の電源の入口
抵抗+リレーON のあとは損失ほぼ0部品が多い・タイミングの回路大きな電源・インバータ
ソフトスタートピークを決めやすいMOSFET の熱(SOA)12V などの直流の基板

どれも「充電の電流を小さく、時間を長く」する工夫です。コンデンサにためる電気(½CV²=0.0338J)は変わらないので、抵抗やサーミスタで抑える方法では、その分の熱が部品に出ます。

確かめ:最低限ここだけ

1. 逆接続の確かめ

電流を制限した電源で、わざと逆に挿して電流が流れないこと・部品が熱くならないことを確かめる

2. 突入電流の確かめ

コンデンサの電気を抜いてから電源を入れ、入口の電流をオシロスコープで測ってピークを確かめる

余裕があれば

電源の入り切りをくり返して、サーミスタが温まったときや、リレーが入る前に切ったときの電流も確かめます。

つまり、方式は「電源の種類」で選び、最後は実物で逆挿しと入り切りの試験をします。

比較表。NTCサーミスタ(部品1個・安い/ふだんも損失・入れ直しに弱い/AC100Vの電源の入口)、抵抗+リレー(ONのあとは損失ほぼ0/部品が多い/大きな電源・インバータ)、ソフトスタート(ピークを決めやすい/MOSFETの熱/12Vなどの直流の基板)

電源の入口の保護の並び方:役目の違う部品を組み合わせる

電源の入口には、ヒューズ・逆接続の保護・TVS ダイオード・突入電流の対策・コンデンサを、役目ごとに組み合わせます。1つの部品で全部は守れません。

部品守るもの
ヒューズ部品がこわれてショートしたとき、電源から切り離す
逆接続の保護プラスとマイナスを逆に挿したとき、電流を流さない
TVS ダイオード静電気や雷などの一瞬の高い電圧を逃がす
突入電流の対策入れた瞬間のコンデンサの充電の電流を小さくする

並べる順番は回路と電源で変わります。たとえば、逆接続の保護をヒューズの後ろに置けば、MOSFET がこわれてショートしたときもヒューズが切れて守れます。

つまり、入口の保護は「何から守るか」を1つずつ書き出し、部品を割り当てていくと整理できます。

入力12Vジャック→ヒューズ→逆接続の保護→TVS→突入の対策→コンデンサ470µFの並びの例と、それぞれの役目(ショートで切り離す・逆に挿したとき流さない・一瞬の高い電圧を逃がす・充電の電流を小さくする)

逆接続・突入電流の対策のよくある失敗3つ

よくある失敗は、PchMOSFET の向きを逆に付ける・NTC サーミスタが入れ直しで効かない・ブリッジの後ろの GND がずれる、の3つです。

失敗1:PchMOSFET の向きを逆に付ける

D と S を逆に付けると、ボディダイオードが逆接続のときにも電流を流してしまいます。回路図では正しく見えても、部品のピン配置を取り違えていることがあります。D を入力側、S を基板側に付け、逆挿しの試験で確かめます。

失敗2:NTC サーミスタが入れ直しで効かない

電源を切ってすぐ入れ直すと、温まったサーミスタの抵抗が小さいままなので、突入電流を抑えられません。入り切りの多い機器では、冷める時間を考えるか、ほかの方法を使います。

失敗3:ブリッジの後ろの GND がずれる

ブリッジの後ろの GND は、入力のマイナスとダイオード1個ぶんずれます。パソコンや測定器と GND をつなぐ回路では、思わぬ電流が流れて誤動作することがあります。

つまり、どれも「回路図では正しく見える」失敗。実物で逆挿しと入り切りの試験をすると見つかります。

3枚のカード。MOSFETのDとSを逆に付けるとボディダイオードが逆接続でも流してしまう(Dを入力側に)、NTCサーミスタは温まったまま入れ直すと抵抗が小さいまま(冷める時間を考える)、ブリッジの後ろのGNDは入力の−と同じでない(測定器や通信に注意)

よくある質問(FAQ)

Q. 逆接続保護回路はどの方式がよい?

A. 電流が小さいなら直列ダイオード、電流が大きいなら損失の小さいPchMOSFET、向きを決められない入力ならダイオードブリッジです。

Q. ダイオードで逆接続を防ぐと損失は?

A. 損失は電圧の下がり×電流です。1N4007で12V・1Aなら1.1V×1Aで約1.1W、ショットキーならその半分以下です。

Q. PchMOSFETの向きはどうする?

A. D(ドレイン)を入力側、S(ソース)を基板側にし、Gは抵抗で入力のマイナスにつなぎます。逆だと保護になりません。

Q. ダイオードブリッジの欠点は?

A. 電流がいつもダイオード2個を通るので、電圧が約2V下がり熱が大きいことです。基板のGNDも入力の−とずれます。

Q. 突入電流はどう抑える?

A. NTCサーミスタ、抵抗+リレー、ソフトスタートの3つです。直流の小さな基板ではソフトスタートが使いやすい方法です。

Q. NTCサーミスタは12Vの基板に使える?

A. 使えますが向きません。温まっても抵抗が残り、1Aで0.7V以上下がります。交流100Vの電源の入口でよく使われます。

まとめ
  • 逆接続保護回路は、直列ダイオード・PchMOSFET・ダイオードブリッジの3方式
  • 12V・1A の損失:1N4007 1.1W、SS34 0.5W 以下、DF10S 2.2W、DMP3056L 0.05W
  • ダイオードは V×I、MOSFET は I²×R で損失を計算し、熱抵抗をかけて温度に直す
  • PchMOSFET は D を入力側、S を基板側に。G は抵抗で入力のマイナスへ
  • 突入電流は12V÷0.5Ω=24A(イメージ)。サーミスタ・抵抗+リレー・ソフトスタートで抑える
  • AC100V の入口は NTC サーミスタ、12V の基板はソフトスタートが向く

次の一歩として、手元の基板の入口の電流と電圧を書き出し、3方式の損失をこの記事の式で計算してみてください。1W を超えるなら、PchMOSFET を考えるタイミングです。

参考にした資料

法令・規格・資料は改訂されることがあります。実務で使うときは、発行元の最新版で確かめてください。

この記事の理解を深める本と道具
おすすめの本

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シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

テーマ別に、もっと深く学ぶ

気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめて学ぶ人向けにやさしく書いています。

つまずきやすい「違い」を一気に解決
ショットキーと整流ダイオードの違い|置き換えの判断と使い分けを図解
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ショットキーと整流ダイオードの違い|置き換えの判断と使い分けを図解

ショットキーとふつうのダイオードの違いと、置き換えてよいかの判断

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ハイサイドとローサイドの違い|ハイサイドのゲート駆動が難しい理由と3つの解決策
違いがわかる
ハイサイドとローサイドの違い|ハイサイドのゲート駆動が難しい理由と3つの解決策

電源側(ハイサイド)と GND 側(ローサイド)でスイッチを入れる違い

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半導体素子の比較表|ダイオード・サイリスタ・GTO・BJT・MOSFET・IGBTの違い
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半導体素子の比較表|ダイオード・サイリスタ・GTO・BJT・MOSFET・IGBTの違い

ダイオード・MOSFET などの半導体の違いを1枚の表で

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コンデンサの種類と違い|電解・セラミック・フィルムの特徴と見分け方・選び方
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コンデンサの種類と違い|電解・セラミック・フィルムの特徴と見分け方・選び方

入口の電解コンデンサと、ほかのコンデンサの違いと選び方

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計算力アップ・資格対策
電力の公式が混乱する人へ|P=VI・I²R・V²/Rの使い分け完全整理
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電力の公式が混乱する人へ|P=VI・I²R・V²/Rの使い分け完全整理

損失の計算に使う P=V×I と P=I²×R の使い分けを練習できる

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熱抵抗とは?|「熱のオームの法則」で完全理解する熱設計の核心
計算力アップ
熱抵抗とは?|「熱のオームの法則」で完全理解する熱設計の核心

損失を温度に直す「熱のオームの法則」を例題で

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平滑コンデンサとは?役割と容量の決め方、リップル電圧の計算を図解|計算ツール付き
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平滑コンデンサとは?役割と容量の決め方、リップル電圧の計算を図解|計算ツール付き

入口のコンデンサの容量と、突入電流の注意を計算ツールで

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抵抗値Ω(オーム)とは?1Ωの意味とkΩ・MΩ、オームの法則の計算例
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抵抗値Ω(オーム)とは?1Ωの意味とkΩ・MΩ、オームの法則の計算例

突入電流のピーク=電圧÷抵抗を、オームの法則から確かめる

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