※本記事にはプロモーション(広告)が含まれています。
- RC時定数の決め方がわからない。τ=RC は知っているが、R と C をどう選ぶのか
- fc=1÷2πRC の式は覚えたが、その先に進めない
- ボタンのチャタリング対策や、電源を入れてからの遅れを、どれくらいの値で作ればいいのか
- τ(時定数)が「63%たまるまでの時間」であることと、しきい値までの時間の求め方
- RC の値を決める3ステップ(時間 → τ → C → R)
- フィルタ・遅延・チャタリング除去の3つの実例と、部品のばらつき
- 早見表と、オシロスコープでの確かめ方
RC時定数は、次の3ステップで決めます。
①必要な時間を決める(何%に届くまで、何秒か)
②τ(時定数)=時間÷係数で求める(63%なら係数1、しきい値34%なら0.42)
③種類の少ないコンデンサ C を先に選び、抵抗 R=τ÷C を E24 の値に丸める
ノイズを落とすローパスフィルタなら、R=10kΩ・C=0.1μF で τ=1ms、遮断周波数は約159Hzです。値だけ知りたい人は、記事の後半の早見表へどうぞ。
わからない言葉が出てきたら、ここに戻ってきてください。本文でも、初めて出たところで言い換えます。
| RC回路 | 抵抗(R)とコンデンサ(C)を組み合わせた回路 |
| コンデンサ | 電気をためる部品。ためるのに時間がかかる |
| τ(タウ・時定数) | R×C で決まる時間。満タンの約63%までたまる時間 |
| しきい値 | 入力の電圧が「H(高い)」か「L(低い)」かを分ける境目の電圧 |
| ローパスフィルタ | 低い周波数(ゆっくりした変化)だけを通す回路 |
| fc(遮断周波数) | これより高い周波数を落とし始める境目。fc=1÷(2π×R×C) |
| チャタリング | ボタンを押した・離した瞬間に、接点が細かく跳ねてON/OFFをくり返すこと |
| シュミットトリガ | 上がるときと下がるときで、しきい値が別になっている入力 |
| E6・E24 | 売っているコンデンサ・抵抗の値の並び(E6:1・1.5・2.2・3.3・4.7・6.8) |
抵抗とコンデンサを1つずつ組み合わせた RC 回路は、回路図のあちこちに出てきます。ノイズを落とすフィルタ、電源を入れてから少し待つ遅延、ボタンの跳ねを消すチャタリング除去。どれも中身は同じ「R と C で時間を作る回路」です。
τ=R×C という式は、電験や学校の授業で習った人も多いはずです。ところが、実際に部品を選ぶ段になると「何 kΩ と何 μF にすればいいの?」と手が止まります。
この記事では、試験の計算ではなく「部品の値を決める設計」に絞ります。3つの実例で、必要な時間から R と C を選ぶまでを順番に説明します。

この記事で作るもの:RCの3つの実例
この記事では、ノイズを落とすフィルタ、電源を入れてから待つ遅延、ボタンのチャタリング除去の3つを作ります。どれも τ=R×C で時間を決めて部品を選びます。
| 実例 | 使う部品 | 決める時間 |
|---|---|---|
| ① ローパスフィルタ | R 10kΩ・C 0.1μF | τ=1ms(fc 約159Hz) |
| ② 遅延(ディレイ) | R 30kΩ・C 10μF・74HC14 | 約0.1〜0.43秒後に切り替わる |
| ③ チャタリング除去 | R 27kΩ・C 1μF・74HC14 | 5ms の跳ねを無視する |
74HC14 は、入力の電圧で H と L を切り替えるロジック IC です。ゆっくり変わる電圧を受けるのに向いた「シュミットトリガ」という入力を持っています(後の節で説明します)。
つまり、この記事のゴールは「必要な時間」から R と C を自分で選び、ばらつきまで含めて説明できるようになることです。

τ(時定数)は「63%たまるまでの時間」
τ(タウ)=R×C は、コンデンサが満タンの約63%までたまる時間です。5τ たつと約99%で、ほぼ満タンになります。
電池に抵抗とコンデンサをつないでスイッチを入れると、コンデンサの電圧は少しずつ上がります。はじめは速く、満タンに近づくほどゆっくりになります。
この上がり方の速さを決めるのが τ です。単位は秒。10kΩ と 0.1μF なら、10,000Ω×0.0000001F=0.001秒=1ms です。
| 時間 | たまる割合 |
|---|---|
| 1τ | 約63.2% |
| 2τ | 約86.5% |
| 3τ | 約95.0% |
| 4τ | 約98.2% |
| 5τ | 約99.3% |
「63.2%」がなぜ出てくるのかを、1次遅れの考え方から確かめられる
つまり、τ は「どれくらいの速さで変わる回路か」を1つの数字で表したものです。部品を選ぶときは、この τ を目標の時間から逆算します。

たとえると:細いホースで、バケツに水をためる
RC 回路は「細いホースでバケツに水をためる」のと同じです。R はホースの細さ、C はバケツの大きさで、どちらが大きくても、ためるのに時間がかかります。
水道の圧力(電源の電圧)で、細いホース(抵抗)を通してバケツ(コンデンサ)に水をためます。バケツの水位が上がるほど、押し込む力の差が小さくなり、水の入る勢いが弱まります。だから、はじめは速く、だんだんゆっくりたまります。
ホースを細くする(R を大きくする)と、水の勢いが弱くなり、ためるのに時間がかかります。バケツを大きくする(C を大きくする)と、満たす量が増えるので、やはり時間がかかります。
時間が R と C の「かけ算」で決まるのはこのためです。R を2倍にしても、C を2倍にしても、τ は同じように2倍になります。
つまり、同じ τ を作る R と C の組み合わせはたくさんあります。どれを選ぶかは、部品の買いやすさや、回路のほかの条件で決めます。

しきい値までの時間は「τ×係数」で求める
63% 以外の電圧に届くまでの時間は、τ に係数を掛けて求めます。しきい値が電源の34%なら0.42τ、50%なら0.69τ、70%なら1.19τ です。
遅延やチャタリング除去では、コンデンサの電圧が「しきい値」(H と L を分ける境目の電圧)を越えた瞬間に、出力が切り替わります。だから知りたいのは「しきい値に届くまでの時間」です。
時間 = τ × 係数
係数 = −ln(1 − しきい値の割合)
ln は電卓の「ln」キーで計算できる関数です。計算が面倒なら、よく使う値を表から読んでください。
| しきい値(電源に対する割合) | 係数 | 例:τ=10ms のとき |
|---|---|---|
| 34% | 0.42 | 4.2ms |
| 50% | 0.69 | 6.9ms |
| 63% | 1.00 | 10ms |
| 70% | 1.19 | 11.9ms |
| 90% | 2.30 | 23ms |
| 99% | 4.61 | 46ms |
34% と 70% は、この記事で使う 74HC14 のしきい値の範囲です。TI のデータシートでは、電源 4.5V のときに上がる側のしきい値が 1.55〜3.13V。電源に対する割合にすると、約34〜70% です。
スイッチを入れた瞬間に、RC 回路の電圧と電流がどう変わるかを図で確かめられる
つまり、しきい値で動く回路では「τ×係数」が本当の遅れの時間です。しきい値には幅があるので、時間にも幅が出ます。

RCの値を決める3ステップ
RC の値は、①必要な時間を決める → ②τ を計算する → ③C を先に決めて R を E24 から選ぶ、の3ステップで決めます。最後に、部品のばらつきで時間の幅を確かめます。
「何%に届くまでに、何秒か」を決める。フィルタなら fc(どの周波数から落とすか)でもよい
τ=時間÷係数。fc から決めるなら τ=1÷(2π×fc)
C を E6(1・1.5・2.2・3.3・4.7・6.8)から先に決め、R=τ÷C を E24 に丸める
なぜ C を先に決めるのか
コンデンサは、売っている値の種類が抵抗より少ないからです。抵抗は E24 で1桁に24種類ありますが、コンデンサは E6(6種類)や E12(12種類)が中心です。
先に C を決めておけば、R は細かい E24 から近い値を選べます。逆に R を先に決めると、ちょうどよい C が見つからないことがあります。
R を E24 に丸めるときは「守りたい方向」へ丸めます。最低でもこの時間は待ちたいなら、大きい側(時間が長くなる側)に丸めます。
つまり、時間 → τ → C → R の順に決めれば、R と C は1組に絞れます。ここから3つの実例で順に見ていきます。

例1:センサーの信号のノイズを落とす(ローパスフィルタ)
10Hz までのセンサーの信号は通し、20kHz の PWM のノイズは落としたい。fc を約160Hz にして、C=0.1μF・R=10kΩ を選びます。τ=1ms、fc≒159Hz です。
ローパスフィルタは、ゆっくりした変化(低い周波数)は通し、速い変化(高い周波数)は落とす回路です。センサーから ADC までの線に、R を直列、C を GND との間に入れます。
STEP 1:fc を決める
fc(遮断周波数)は「ここから上を落とし始める」境目です。通したい信号(10Hz)より十分上、落としたいノイズ(20kHz)よりずっと下にします。目安として、信号の10倍以上にすると、信号はほとんど減りません。この例では約160Hz にしました。
STEP 2・3:τ → C → R
τ = 1 ÷(2π × fc)= 1 ÷(2π × 160)≒ 1ms
C = 0.1μF(E6)を先に決める
R = τ ÷ C = 1ms ÷ 0.1μF ≒ 9.9kΩ → 10kΩ(E24)
出来上がりは τ=10kΩ×0.1μF=1ms、fc=1÷(2π×1ms)≒159Hz です。
PWM のような速い変化が、なぜノイズとして信号に乗るのかがわかる
つまり、フィルタの RC は「通したい信号」と「落としたいノイズ」の間に fc を置いて決めます。

例1の波形:フィルタの前と後
フィルタを通すと、20kHz のノイズは約0.8% に減り、10Hz の信号はほぼそのまま残ります。
10Hz・振幅0.5V の信号に、20kHz・±0.3V の方形波のノイズが乗っている、というイメージで計算しました。フィルタの前は、ノイズで線が太い帯のように見えます。
フィルタの後は、ノイズが小さくなり、10Hz のなめらかな波だけが残ります。波が少し遅れて見えるのは、フィルタを通ると変化が少し遅れるためです。
ADC の前に入れるフィルタは、ADC が読む速さも考えます。τ=1ms なら、入力が変わってから 5τ=5ms でほぼ追いつきます。それより速く何度も読む使い方では、読む値が遅れます。
つまり、フィルタは「ノイズを落とす代わりに、変化を少し遅らせる」回路です。遅れても困らない範囲で fc を決めます。

fc=1÷(2π×R×C):これより高い周波数を落とす
fc では信号が約71%(−3dB)に、fc の10倍の周波数では約1/10、100倍では約1/100 に減ります。τ と fc は fc=1÷(2π×τ)でつながっています。
| 周波数 | 通る割合(例1:fc≒159Hz) |
|---|---|
| 10Hz(信号) | 約99.8% |
| 159Hz(fc) | 約71%(−3dB) |
| 1kHz | 約16% |
| 20kHz(ノイズ) | 約0.8%(−42dB) |
dB(デシベル)は、割合を表すもう1つの単位です。−20dB が 1/10、−40dB が 1/100 と覚えておけば十分です。
1段の RC フィルタでは、fc より上で周波数が10倍になるごとに、通る割合が約1/10 になります。もっと強く落としたいときは、RC を2段にするなどの方法があります。
つまり、「どの周波数を、どれくらい落としたいか」から fc を決め、τ=1÷(2π×fc)に直してから R と C を選びます。

例2:電源を入れて、約0.1秒以上たってから動かす(遅延)
電源を入れてから、最低でも約0.1秒たってから出力を切り替えたい。R=30kΩ・C=10μF にして、コンデンサの電圧が 74HC14 のしきい値に届くまでの時間で遅れを作ります。
電源を入れた直後は、ほかの回路の電圧が落ち着いていないことがあります。そこで、少し待ってから動かしたい、という場面で使うのが RC の遅延です。
STEP 1〜3
しきい値がいちばん低い 34% でも、100ms 以上かかるようにする
τ ≧ 100ms ÷ 0.42 ≒ 237ms。部品のばらつき(R −1%・C −20%)も見込む
C=10μF を先に決め、R ≧ 237ms ÷(10μF × 0.8 × 0.99)≒ 29.9kΩ → 30kΩ(E24)
出来上がりは τ=30kΩ×10μF=300ms です。部品が表示どおりなら、しきい値に届くのは 0.42×300=127ms から 1.19×300=357ms の間です。
放電用のダイオード
R に並列に、カソード(帯)を +5V 側にしてダイオードを入れています。電源を切ったとき、コンデンサの電気をこのダイオードで電源側へ逃がすためです。理由は「よくある失敗」の節で説明します。
10μF を電解・セラミック・フィルムのどれで選ぶか、違いと選び方がわかる
マイコンのリセット端子に RC をつなぐ場合は、マイコンの中のリセット回路やプルアップ抵抗が働くことがあります。データシートの推奨回路を先に確かめてください。
つまり、遅延の RC は「しきい値がいちばん低くても、必要な時間を下回らない」ように決めます。

例2のばらつき:遅れは約100〜430msの幅になる
抵抗 ±1%、コンデンサ ±20%(例)、しきい値の範囲(電源の約34〜70%)を合わせると、遅れは最短約100ms・標準約243ms・最長約432ms と、4倍以上の幅になります。
| ばらつくもの | 範囲 | 効き方 |
|---|---|---|
| 抵抗 R | ±1%(29.7〜30.3kΩ) | 小さい |
| コンデンサ C | ±20%(例:8〜12μF) | 大きい |
| しきい値 | 電源の約34〜70%(係数0.42〜1.19) | いちばん大きい |
最短 = 0.42 × 29.7kΩ × 8μF ≒ 100ms
最長 = 1.19 × 30.3kΩ × 12μF ≒ 432ms
標準の約243ms は、部品が表示どおりで、しきい値が標準(電源4.5Vで2.5V=約56%)のときの値です。
RC の遅延は、安く簡単に作れる代わりに、時間の精度はよくありません。「0.2秒±10%」のように正確さが要るときは、電圧監視 IC(リセット IC)やタイマー IC、マイコンのタイマーを使います。
つまり、RC の遅延は「最低これだけ待てばよい」用途に向いています。設計では最短の時間で確かめます。

例3:ボタンの「跳ね(チャタリング)」を消す
ボタンの接点は、押した・離した瞬間に数ms 細かく跳ねます。RC で跳ねをならし、シュミットトリガの 74HC14 で受けると、出力は1回だけ切り替わります。
機械のスイッチは、金属の接点がぶつかって跳ね返るので、押した瞬間に ON と OFF を何回もくり返します。これがチャタリングです。マイコンがそのまま読むと、1回押しただけで何回も押したことになります。
跳ねの長さは、スイッチのデータシートに「バウンス時間」として書いてあります。たとえば、オムロンのタクタイルスイッチ B3F は 5ms 以下です。
RC を入れると、跳ねの短い間には、コンデンサの電圧がしきい値まで動きません。跳ねがおさまってから、コンデンサの電圧がゆっくりしきい値を越え、出力が1回だけ切り替わります。
波形は、押したときと離したときに 5ms 跳ねるとして計算したイメージです。
つまり、チャタリング除去の RC は「跳ねが続く時間よりも、しきい値に届くまでの時間を長くする」ように決めます。

例3の回路と計算:跳ね5msに対して、10ms以上待つ
跳ね 5ms に余裕2倍の 10ms を目標にし、C=1μF・R=27kΩ を選びます。しきい値に届くまでは最短約10ms・最長約36ms です。
回路は、+5V から R(27kΩ)でコンデンサを充電し、ボタンを押すと 220Ω を通してコンデンサを放電する形です。コンデンサの電圧を 74HC14 で受けて、マイコンへ渡します。
跳ね 5ms の2倍、10ms の間はしきい値(いちばん低い34%)に届かないようにする
τ ≧ 10ms ÷ 0.42 ≒ 23.7ms。C −10%(例)・R −1% も見込む
C=1μF、R ≧ 23.7ms ÷(1μF × 0.9 × 0.99)≒ 26.6kΩ → 27kΩ(E24 の大きい側)
最短 = 0.42 × 26.7kΩ × 0.9μF ≒ 10.2ms(10ms 以上で OK)
最長 = 1.19 × 27.3kΩ × 1.1μF ≒ 36ms
最長でも 36ms なので、ボタンを押してから反応までの遅れは、人の操作ではほとんど気になりません。
220Ω を入れる理由
ボタンを押した瞬間、コンデンサにたまった電気が接点を通って一気に流れます。220Ω は、その電流を約23mA(5V÷220Ω)までに抑えて、接点を守るための目安の値です。スイッチの定格電流をデータシートで確かめて決めます。
ボタンにプルアップ抵抗が要る理由と、抵抗の値の選び方がわかる
つまり、チャタリング除去の RC は「跳ねの時間×余裕」から τ を出し、C を先に、R を大きい側に選びます。

ゆっくり上がる電圧は、シュミットトリガで受ける
RC でゆっくり変わる電圧を、しきい値が1つの普通の入力で受けると、ノイズで何回も切り替わります。上がるときと下がるときでしきい値が違う「シュミットトリガ」入力で受けます。
しきい値が1つだと、電圧がしきい値の近くをゆっくり通るとき、小さなノイズで上下にまたいでしまいます。そのたびに出力が H と L を行ったり来たりします。
シュミットトリガは、上がるときは高いしきい値、下がるときは低いしきい値で切り替わります。いったん切り替わると、少しのノイズでは戻りません。この2つのしきい値の差を「ヒステリシス」と呼びます。
| 入力の種類 | しきい値 | ゆっくりした電圧を受けると |
|---|---|---|
| 普通の入力 | 1つ | ノイズで何回も切り替わることがある |
| シュミットトリガ入力(74HC14 など) | 上がるときと下がるときで2つ | 1回だけ切り替わる |
マイコンの入力端子にも、シュミットトリガになっているものがあります。使うマイコンのデータシートで確かめ、なっていなければ 74HC14 のような IC を間に入れます。
つまり、RC で時間を作る回路は、受ける側をシュミットトリガにして初めてきれいに動きます。

早見表:τ(時定数)とR・Cの組み合わせ
τ=1ms なら 10kΩ×0.1μF、10ms なら 10kΩ×1μF、100ms なら 10kΩ×10μF、1秒なら 100kΩ×10μF が組み合わせの例です。
| τ | 組み合わせの例 | 別の例 | fc | 34%まで(0.42τ) | 99%まで(4.6τ) |
|---|---|---|---|---|---|
| 1ms | 10kΩ × 0.1μF | 1kΩ × 1μF | 159Hz | 0.42ms | 4.6ms |
| 10ms | 10kΩ × 1μF | 100kΩ × 0.1μF | 15.9Hz | 4.2ms | 46ms |
| 100ms | 10kΩ × 10μF | 100kΩ × 1μF | 1.59Hz | 42ms | 461ms |
| 1s | 100kΩ × 10μF | 1MΩ × 1μF | 0.159Hz | 422ms | 4.6s |
同じ τ でも、R を大きく C を小さくすると、コンデンサは小さく安くなります。ただし R を大きくしすぎると、受ける側の入力のもれ電流(74HC14 は最大±1μA)で電圧がずれます。1MΩ に 1μA が流れると 1V もずれるので、R は 100kΩ くらいまでにしておくと安心です。
R を丸めるときに使う E24 の値の一覧と、並びの理由がわかる
つまり、早見表で τ に近い組み合わせを選び、C の種類と R の大きさの両方に無理がないかを確かめます。

オシロスコープで確かめる:63%になる時間がτ
組んだら、入力に方形波を入れ、コンデンサの電圧が 63% に届くまでの時間をオシロスコープで測ります。例1なら約1ms なら計算どおりです。
ファンクションジェネレータやマイコンから方形波を入れる。周期は τ の10倍以上(例1なら 10ms 以上)
プローブをコンデンサの両端(出力と GND)に当てる。入力も別のチャンネルで見る
入力が上がった瞬間から、出力が 63% に届くまでの時間をカーソルで読む。これが τ
遅延やチャタリング除去では、74HC14 の出力も一緒に見ると、しきい値を越えた瞬間に切り替わる様子がわかります。
τ が短い回路や R が大きい回路では、オシロスコープのプローブの容量や入力抵抗が測定に影響することがあります。測った値が計算と大きく違うときは、プローブの仕様(10:1 のプローブなど)を確かめます。
オシロスコープとテスターの違いと、波形を測る基本がわかる
つまり、RC 回路は「63% までの時間」を1回測れば、計算どおりにできているかがわかります。

よくある失敗:容量が表示より少ない・放電の道がない
RC の時間がずれる失敗は、セラミックコンデンサの容量が電圧で減る「DC バイアス」と、遅延回路で電源を切ったときの「放電の道がない」の2つが代表です。
失敗1:容量が減って、時間が短くなる
容量の大きいセラミックコンデンサは、電圧をかけると容量が減る性質(DC バイアス特性)があります。5V をかけた 10μF が、品種によっては半分以下になることもあります。図はその例として、容量が半分になったときのイメージです。τ も半分になり、遅れの時間が短くなります。
時間を作る C には、DC バイアスのグラフをデータシートで確かめるか、電解コンデンサやフィルムコンデンサ、容量の変化が小さい C0G の品種を選びます。
失敗2:すぐ入れ直すと遅れない
遅延回路で電源を切っても、コンデンサに電気が残っていると、すぐ電源を入れ直したときにはもう電圧が高く、遅れが出ません。
そこで、R に並列にダイオードを入れ、電源を切ったときにコンデンサの電気を電源側へ逃がします。向きは、カソード(帯)を +5V 側、アノードをコンデンサ側にします。逆につなぐと、R がダイオードで短絡されて遅れが作れません。
セラミックコンデンサの容量が、電圧をかけると減る理由と選び方がわかる
つまり、RC の時間は「C が本当にその容量か」と「毎回 0V から始まるか」の2つで崩れます。データシートとダイオードで防ぎます。

よくある質問(FAQ)
- τ=R×C は、満タンの約63%までたまる時間。5τ でほぼ満タン
- しきい値までの時間は τ×係数(34%→0.42、50%→0.69、70%→1.19)
- 決め方は、必要な時間 → τ → C(E6)を先に → R(E24)
- フィルタは fc=1÷(2π×R×C)を、信号とノイズの間に置く
- 遅延・チャタリング除去は、しきい値がいちばん低くても必要な時間を下回らないように
- 受ける側はシュミットトリガ。セラミックの DC バイアスと放電の道に注意
次の一歩として、手元の回路図から RC の組み合わせを1つ探し、τ と fc を計算してみてください。何のための時間なのかがわかると、回路図がぐっと読みやすくなります。
- Texas Instruments「SN54HC14, SN74HC14 Hex Inverters with Schmitt-Trigger Inputs」データシート(SCLS085L):5.5 Electrical Characteristics のしきい値 VT+・VT−(VCC=4.5V・6V)と入力のもれ電流
- オムロン「B3F タクタイルスイッチ」カタログ(Cat. No. A070-E1):Ratings/Characteristics のバウンス時間(5ms 以下)
法令・規格・資料は改訂されることがあります。実務で使うときは、発行元の最新版で確かめてください。
波形を自分の目で確かめるなら、手元にオシロスコープが1台あると便利です。RIGOLのデジタル・オシロスコープ DHO804です。周波数帯域70MHz・4チャンネルで、12ビットの垂直分解能をもちます。
回路を実際に組んで、電流や電圧を確かめてみたいときに向いています。サンハヤトのブレッドボード SAD-101です。408個の穴に部品を差し込むだけで、はんだ付けをせずに回路を組めます。
「RC回路を組んで波形で確かめる」は、回路シミュレータで電圧や電流の波形を見ながら確かめると理解が深まります。無料の回路シミュレータLTspiceを使って、電子回路を学べる本です(オーム社、渋谷道雄 著)。
メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。
次に読むべき記事
ここまでで、RC の値を必要な時間から決められるようになりました。次は、τ と 63% の意味を式から確かめ、時間を作るコンデンサの選び方を押さえると、設計の精度が上がります。
テーマ別に、もっと深く学ぶ
気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめて学ぶ人向けにやさしく書いています。