※本記事にはプロモーション(広告)が含まれています。
電子部品が壊れる原因は、過電圧・サージ、熱、静電気(ESD)、逆接続、はんだ・機械の5つで、どれも部品の限界(定格)を超えたときに起きます。原因ごとの防ぎ方は一覧の節にまとめました。
電子部品が壊れると、「運が悪かった」で片づけたくなります。でも多くの場合、どの限界を超えたかを順に考えると、原因と防ぎ方が見えてきます。
この記事では、壊れる原因を5つに分け、それぞれ「何が起きるか」と「設計でどう防ぐか」を、データシートの数字を使って説明します。

電子部品が壊れる原因は5つ:どれも限界を超えると壊れる
電子部品が壊れる原因は、過電圧・サージ、熱、静電気、逆接続、はんだ・機械の5つにまとめられます。どれも、部品が耐えられる限界を超えたときに壊れます。
部品には、データシートに「ここまでなら大丈夫」という限界の値が書いてあります。電圧・電流・温度・機械の力のどれかが、その値を超えると壊れます。
| 原因 | 何が起きる | 設計で防ぐ |
|---|---|---|
| 1 過電圧・サージ | 電圧が耐圧を一瞬でも超える | 定格の余裕・ダイオード・TVS |
| 2 熱 | 温度が上限を超える・寿命が縮む | 電力と熱抵抗で温度を計算 |
| 3 静電気 | 数kV がピンに飛び込む | 入口に TVS と抵抗・扱い方 |
| 4 逆接続 | 逆向きに大きな電流が流れる | ダイオード・FET・挿し間違えない形 |
| 5 はんだ・機械 | 温度の上下と曲げで割れる | 置き場所・固定・温度差 |
つまり、壊れる原因は「どの限界を超えたか」で5つに分けられる。この順に1つずつ見ていきます。

その場で壊れるもの・使ううちに壊れるもの
過電圧・静電気・逆接続は、その場で壊れることが多い原因です。熱とはんだの割れは、使ううちに少しずつ進み、あとで壊れます。
その場で壊れる原因は、一瞬でも限界を超えると起きます。たとえば、電源にとげのような高い電圧が乗った瞬間や、+と−を逆に挿した瞬間です。
あとで壊れる原因は、「疲れ」がたまって起きます。温度の高い所で使い続けると部品の寿命が縮み、温度の上下をくり返すと、はんだに少しずつひびが入ります。
つまり、その場で壊れるものは「一瞬も超えない」、あとで壊れるものは「余裕を持って疲れをためない」で防ぐ。

原因1 過電圧:絶対最大定格を一瞬でも超えない
データシートの絶対最大定格は「一瞬でも超えると壊れることがある値」です。たとえば TI の 74HC04 は、電源電圧の推奨が2〜6V、絶対最大定格が7V です。
データシートには、電圧の値が2種類書いてあります。「推奨動作条件」は、性能を約束する範囲です。「絶対最大定格」は、超えると壊れることがある限界です。
TI のデータシートには「絶対最大定格を超えるストレスは、部品に永久的な損傷を与えることがある」と書かれています。推奨の範囲で使い、絶対最大定格との間は、とげのような電圧のための余裕として残します。
| 74HC04 の電源電圧 | 値 | 意味 |
|---|---|---|
| 推奨動作条件 | 2〜6V | この範囲なら性能を約束 |
| 絶対最大定格 | 7V | 一瞬でも超えると壊れることがある |
| 5V で使うと | 余裕2V | 電源にとげが乗っても7V 未満に収める |
データシートの推奨・絶対最大定格・min・typ・max の読み方を順番に
つまり、設計の電圧は「推奨の範囲」で決め、絶対最大定格は「絶対に触れない線」として扱う。

サージ:一瞬だけ出る高い電圧の出どころ
サージは、ふだんの電圧が定格の中でも、一瞬だけ高い電圧が出ることです。リレーやモータを切った瞬間、ケーブルの抜き差し、雷や電源の入切が代表です。
いちばん身近なのは、リレーやモータのコイルです。コイルは、流れている電流を急に止められると、高い電圧を出します(逆起電力)。この電圧が、コイルを動かしているトランジスタにかかります。
長いケーブルも、抜き差しの瞬間に電圧が跳ねることがあります。外から入る雷のとげは、家庭の機器でも起きる問題です。
つまり、サージは「どこでとげが出るか」を先に探す。コイル・ケーブル・外の電源の3つが出どころです。

サージを防ぐ3つの部品:ダイオード・TVS・直列の抵抗
コイルには逆向きのダイオード、外の端子には TVS ダイオード、IC の入力には直列の抵抗を入れて、とげを逃がす・小さくします。
コイル:逆向きのダイオード
コイルと並べて、カソード(線の側)を電源の+側に向けたダイオードを入れます。切った瞬間の電流が、ダイオードを通ってコイルに戻るので、高い電圧が出ません。
リレーやモータの逆起電力を、ダイオードで逃がす仕組みがわかる
外の端子:TVS ダイオード
TVS ダイオードは、ふだんは電流を流さず、高い電圧が来たときだけ電流を GND へ逃がします。コネクタのすぐ近くに置きます。
IC の入力:直列の抵抗
IC の入力ピンの手前に抵抗を入れると、とげが来たときに流れ込む電流が小さくなります。次の節で、どれくらいの抵抗が要るかを計算します。
つまり、とげは「逃がす(ダイオード・TVS)」と「絞る(抵抗)」の2つで防ぐ。

計算:入力に12Vが来たら、抵抗で電流を絞る
5V で動く IC の入力に12V の信号が来ると、IC の中のダイオードを通って VCC へ電流が流れます。74HC04 はこの電流の限界が±20mA なので、抵抗は315Ω 以上、余裕を見て数kΩ 以上にします。
多くの IC の入力ピンには、中に保護のダイオードがあります。入力が VCC より高くなると、このダイオードを通って VCC へ電流が流れます。
| 抵抗 R | 流れる電流 | 判定(限界±20mA) |
|---|---|---|
| 0Ω(直結) | 抵抗がないので制限なし | NG |
| 330Ω | 19.1mA | 限界ぎりぎり |
| 1kΩ | 6.3mA | 限界の内側 |
| 10kΩ | 0.63mA | 十分に余裕 |
0.7V はダイオードの電圧の目安です。流れ込んだ電流で VCC の電圧が持ち上がることもあるので、抵抗はあくまで「もしもの守り」です。電圧の違う信号をつなぐときは、レベル変換や分圧で、IC の電源電圧以下にするのが基本です。
つまり、入力の抵抗は「(入ってくる電圧 − VCC − 0.7)÷ 限界の電流」より大きくする。限界ぎりぎりではなく、余裕を持って選びます。

原因2 熱:チップの温度=まわりの温度+熱抵抗×電力
部品の温度は、まわりの温度+熱抵抗×電力で計算します。LM1117 で12V から3.3V に下げて0.2A 流すと、チップは約147℃になり、上限の125℃を超えます。
リニアレギュレータの電力は(入力 − 出力)× 電流です。12V → 3.3V・0.2A なら(12 − 3.3)× 0.2 = 1.74W。SOT-223 の LM1117 の熱抵抗は61.6℃/W なので、1.74 × 61.6 ≒ 107℃上がります。まわりが40℃ なら約147℃です。
同じ電流でも、5V → 3.3V なら(5 − 3.3)× 0.2 = 0.34W、約61℃で済みます。電圧の差を小さくするのが、いちばん効く対策です。計算を簡単にするため、レギュレータ自身の電流の分は省きました。
熱抵抗を「熱のオームの法則」として、温度の計算をもう一歩深く
3端子レギュレータが熱いときの計算と、放熱の4つの手当て
つまり、熱は「電力 × 熱抵抗」で温度に直し、上限と比べる。電圧の差が大きいなら、DC-DC コンバータを考えます。

熱と寿命:電解コンデンサは10℃下がると寿命が約2倍
電解コンデンサの寿命は、温度で大きく変わります。10℃下がるごとに寿命が約2倍になる「10℃2倍則」で見積もると、105℃・2000時間の品でも、65℃で使えば約32,000時間です。
電解コンデンサは、中の液が少しずつ抜けて寿命を迎えます。温度が高いほど、液が早く抜けます。日本ケミコンの資料では、60〜95℃の範囲で、温度が10℃下がると寿命がほぼ2倍になるとしています。
| 使う温度 | 寿命の目安 | 年に直すと |
|---|---|---|
| 105℃ | 2,000時間 | 約0.2年 |
| 95℃ | 4,000時間 | 約0.5年 |
| 85℃ | 8,000時間 | 約0.9年 |
| 75℃ | 16,000時間 | 約1.8年 |
| 65℃ | 32,000時間 | 約3.7年 |
これは目安の計算です。リプル電流(コンデンサに流れる交流の電流)による発熱は、この表では入れていません。日本ケミコンの資料は、推定寿命の上限を15年としています。
リプル電流による発熱まで入れて、電解コンデンサの寿命を計算する手順
つまり、熱は「その場で壊す」だけでなく「寿命を縮める」。電解コンデンサは、熱い部品から離して置きます。

原因3 静電気:人の体は数kVにもなり、ピンに一気に流れ込む
人の体にたまる静電気は、数kV になることがあります。部品の静電気への強さは「人体モデル(HBM)」で書かれ、74HC04 は±2000V です。
床を歩いたり、服がこすれたりすると、人の体に静電気がたまります。絶縁性のよい靴をはいていると、簡単な動作でも体の電圧が数kV になることがあります。
部品の強さを試す人体モデルは、100pF にためた電気を1.5kΩ を通して部品に流す試験です。2000V なら、ピークの電流は 2000 ÷ 1500 ≒ 1.3A。時定数は 1.5kΩ × 100pF = 150ns なので、ほんの一瞬ですが、IC の中の細い配線には大きな電流です。
TI のデータシートの注記には、人体モデル500V なら、ふつうの静電気対策をした工場で安全に作れる、という JEDEC の資料の考え方が書かれています。裏を返すと、対策なしで素手で扱うのは危ないということです。
人の体に静電気がたまり、バチッとくる仕組みを基礎から
つまり、静電気は「人が感じない電圧でも部品には高い」。部品の強さはデータシートの ESD 定格で確かめます。

静電気を防ぐ:入口で止める・近くで逃がす・扱いで減らす
静電気は、コネクタのすぐ近くの TVS ダイオードで逃がし、IC の手前の抵抗で絞り、作るときはリストストラップなどで体の静電気を逃がして防ぎます。
保護の部品は、静電気が入ってくる場所(コネクタ)のすぐ近くに置きます。TVS が IC より遠いと、静電気が先に IC に届いてしまうからです。
作るとき・直すときは、リストストラップで体を GND につなぎ、部品は静電気を逃がす袋やトレーで運びます。空気が乾いた日は、特に静電気がたまりやすくなります。
TVS ダイオードをどこに、どの向きで入れるかの具体的な入れ方
つまり、静電気は「入口で逃がす」設計と「たまらないように扱う」作業の両方で防ぐ。

原因4 逆接続:+と−を逆につなぐと何が起きるか
電源の+と−を逆につなぐと、IC の中のダイオードを通って大きな電流が流れます。電解コンデンサは、逆向きの電圧で漏れ電流が増え、ふくらんだり壊れたりします。
IC の VCC に−、GND に+がかかると、IC の中の保護のダイオードが順方向になり、電流を止めるものがなくなります。電源の能力いっぱいまで電流が流れ、IC が焼けることがあります。
電解コンデンサは、向きが決まった部品です。日本ケミコンの資料では、逆向きの電圧が1V 程度でも容量が減り、2〜3V で寿命が短くなり、さらに高いと圧力弁が開く・壊れることがあるとしています。
つまり、逆接続は「電流を止めるものがない」状態を作る。電源の入口で止めるのが、いちばん確実です。

逆接続を防ぐ3つの方法:ダイオード・FET・挿し間違えない形
いちばん簡単なのは、電源の入口に直列のダイオードを入れることです。1N4001 なら、0.2A で失う電力は1.0V × 0.2A = 0.2W 以下です。
ダイオードは、正しい向きの電流だけを通します。逆に挿すと、電流が止まります。代わりに、ダイオードの分だけ電圧が下がり(1N4001 は1A で最大1.0V)、その分が熱になります。
電流が大きい・電圧に余裕がないときは、P チャネル MOSFET を使う方法があります。電圧の下がりが小さい代わりに、部品と考えることが増えます。どちらの場合も、コネクタを挿し間違えない形にすると、そもそも逆になりにくくなります。
| 方法 | よい所 | 気をつける所 |
|---|---|---|
| 直列のダイオード | 簡単・安い | 電圧が約1V 下がり、熱になる |
| P チャネル MOSFET | 電圧の下がりが小さい | 部品と考えることが増える |
| 挿し間違えない形 | そもそも逆にならない | 形だけでは防げないこともある |
逆接続の保護3方式を、損失の計算で比べて選べる
つまり、まずはダイオード1本。電流が大きくなったら FET を考え、コネクタの形でも防ぐ。

原因5 はんだ・機械:温度の上下と基板の曲げで割れる
はんだは、温度の上下をくり返すと少しずつひびが入ります。積層セラミックコンデンサは、基板が曲がると割れることがあります。
部品と基板は、温度で伸びる量が違います。温度が上がり下がりするたびに、そのずれがはんだにかかり、少しずつひびが広がります。これを、はんだクラックと呼びます。
積層セラミックコンデンサ(チップの小さなコンデンサ)は、硬くて曲げに弱い部品です。村田製作所は、割れの主な原因として、実装のときの力と熱、実装したあとの基板のたわみを挙げています。基板を割る・ねじで締める・落とす、のような場面で曲がります。
どちらも、割れ始めはまだつながっていることがあり、「ときどき動かない」という見つけにくい不具合になります。
温度サイクルではんだが割れる仕組みと、寿命の考え方
つまり、はんだと機械の故障は「使ううちに割れる」。温度の差と曲げの力を、置き場所で小さくします。

はんだ・機械の故障を防ぐ:置き場所と固定
割れやすい部品を、曲がりやすい所に置かないのが基本です。基板を割る線(分割線)の近くは避け、大きな部品の影に入るように置きます。
ねじ穴と重い部品の固定は、一般的な設計の工夫です。部品ごとの細かい決まりは、メーカーの注意書き(使用上の注意)で確かめます。
5つのほかに:湿気で起きる故障
湿気の多い所で電圧がかかり続けると、基板の上で金属が少しずつ伸びて、隣の線とつながる故障もあります(イオンマイグレーション)。高い電圧の線どうしの間隔や、基板の表面を守るコーティングで防ぎます。
水分と電圧で金属が伸びてショートする故障の仕組みと防ぎ方
つまり、機械の故障は「どこに置くか」で大きく変わる。基板の形を決めるときに、部品の置き場所まで一緒に考えます。

電子部品が壊れる原因5つと防ぎ方の一覧
5つの原因は、どれも「限界の手前で使う」ことで防げます。原因ごとに、設計で使う手当てを1枚の表にまとめました。
過電圧と静電気と逆接続は「入口で守る」、熱は「計算して余裕を持つ」、はんだと機械は「置き場所で力と温度差を減らす」が、それぞれの考え方の中心です。
つまり、原因がわかれば、手当ては選べる。壊れたときも、この表を逆にたどれば原因の候補がしぼれます。

設計レビューで確かめる5つの問い
設計レビューでは、5つの問いに数字で答えられるかを確かめます。1つでも答えられなければ、そこが壊れる場所の候補です。
| 問い | 確かめること |
|---|---|
| 1 一番高い電圧は、耐圧の80%以下? | サージも入れて考える |
| 2 一番熱い部品は、上限の何℃手前? | まわりの温度は高めに見る |
| 3 外につながる端子に、保護はある? | コネクタのすぐ近くに |
| 4 電源を逆に挿したら、何が起きる? | 止める部品はあるか |
| 5 割れやすい所に、チップ部品はない? | 分割線・ねじ穴・重い部品 |
1つでも「わからない」があれば、そこが壊れる場所の候補です。回路図のレビューでは、この5つの問いを、チェックリストの「定格」「保護」の項目と合わせて確かめます。
つまり、壊れない設計は「限界を知る → 余裕を持つ → 入口で守る」の3つ。数字で答えられる設計にしておけば、壊れたときも原因を早く見つけられます。


