回路設計

平滑コンデンサとは?役割と容量の決め方、リップル電圧の計算を図解|計算ツール付き

平滑コンデンサとは何かを表すアイキャッチ。波打つ電圧が大きな電解コンデンサを通ってなめらかな直流になる

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お悩み
こんなふうに思っていませんか?
  • 整流したのに、なぜまだコンデンサが要るの?
  • 平滑コンデンサの容量は、何μFにすればいいの?
  • リップル電圧の計算式の意味がわからない
この記事でわかること
  • 平滑コンデンサの役割と仕組み(ダムのたとえ)
  • リップル電圧の計算と容量の決め方
  • 耐圧・リップル電流・突入電流・寿命の注意点
  • 電圧と電流を入れるだけの計算ツール
結論|まず30秒でわかる答え

平滑コンデンサとは、整流したあとの波打つ電圧(脈流)を、なめらかな直流に近づけるためのコンデンサです。電圧の山で充電し、谷で放電して、電圧が下がりきる前に次の山で充電し直します。残る波打ち(リップル電圧)はVr≒I÷(f×C)で見積もれ、容量はC≒I÷(f×Vr)で逆算します(全波整流なら f は電源周波数の2倍)。

平滑(へいかつ)は「なめらかにすること」、脈流は向きは一定でも大きさが波打つ電圧・電流、リップル(リプル)は平滑したあとに残る小さな波打ちのことです。残った波打ちの大きさを直流の電圧に対する割合で表したものをリップル率といいます(波打ちを山と谷の差で測るか実効値で測るかは、資料によって違います)。

平滑コンデンサとは?整流しただけでは直流にならない

ダイオードで整流すると、電流は一方向になりますが、電圧は0Vと山のあいだを波打ったままです。これを脈流といいます。マイコンやICにとって、電源が一瞬でも0V近くまで下がるのは、電源が切れたのと同じです。

段階電圧の形回路
① 交流プラスとマイナスを行き来するコンセント・トランス
② 脈流プラスだけだが、0Vまで落ちて波打つ整流(ダイオード)
③ 直流に近い電圧ほぼ一定。小さな波(リップル)が残る平滑(コンデンサ)

整流は「交流を脈流にする」ところまでで、脈流を直流に近づけるのが平滑コンデンサの役割です。そのあとにレギュレータを置いて、電圧を一定にそろえるのが電源回路の定番の流れです。

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整流にダイオードブリッジを使う理由

交流、脈流、平滑後の電圧の比較の図。交流を整流すると0Vまで落ちて波打つ脈流になり、平滑コンデンサでほぼ一定の直流になる

平滑コンデンサには、充電と放電をくり返すぶん「リプル電流」が流れ、これがコンデンサの寿命を縮めます。

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平滑の仕組み|山で充電し、谷を放電で埋める

平滑コンデンサは「電気のダム」です。雨(脈流の山)が来たときに水をためて、晴れの日(谷)は放水して川の水量を保ちます。

ステップ電圧コンデンサ
① 山に向かって上がる脈流の電圧がコンデンサより高いダイオードから電流が流れこみ、充電
② 山のてっぺんピーク電圧ほぼ満充電
③ 山から下がる脈流の電圧がコンデンサより低いダイオードは止まり、コンデンサが負荷に放電
④ 次の山下がりきる前に次の山が来るふたたび充電

充電は山の近くの短い時間だけで、そのあいだに次の山までの放電分をまとめて取り返します。そのため、ダイオードとコンデンサには短く大きなパルス電流が流れます。これがあとで出てくるリップル電流の正体です。

平滑コンデンサの充電と放電の図。整流した波の山の近くで短く充電し、山から谷までは放電して電圧をゆっくり下げる。ダムが雨の日に水をため、晴れの日に放水するのと同じ

リップル電圧の計算|Vr≒I÷(f×C)

放電しているあいだも負荷は電気を使うので、電圧は少し下がります。この上下の差がリップル電圧Vrです。放電する時間をほぼ「次の山までの時間 1/f」とみなすと、次の式で見積もれます。

リップル電圧の近似式

Vr[V]≒ I[A]÷(f[Hz]× C[F])
f:充電の回数。全波整流は電源周波数の2倍(50Hzなら100Hz)、半波整流は電源周波数と同じ

要素ダムでいうとリップルへの影響
容量Cダムの大きさ大きいほど小さい
負荷電流I放水の量大きいほど大きい
充電の回数f雨の回数多いほど小さい(全波は半波の半分)

この式は、リップルがピーク電圧にくらべて小さいときの近似です。計算でリップルがピーク電圧に近い値になるときは、容量が足りず、ほぼ脈流のままだと考えてください。

リップル電圧の図。平滑後に残る山と谷の差がリップル電圧Vrで、Vr≒I÷(f×C)。容量が大きいほど小さく、全波整流は充電の回数が2倍なので半分になる

平滑コンデンサの容量の決め方|例題で逆算する

容量は、許せるリップルから逆算します。式を変形すると C≒I÷(f×Vr) です。

例題:トランスの出力12V(実効値)、50Hz、ブリッジで全波整流、負荷電流0.5A。リップルを1.5V以下にしたい。

ステップ計算答え
① ピーク電圧12×√2 − 1.4(ダイオード2個ぶん)約15.6V
② 充電の回数50Hz×2(全波)100Hz
③ 必要な容量0.5÷(100×1.5)約3,333μF
④ 部品を選ぶ3,300μFは少し足りない4,700μF(Vr≒1.06V)
⑤ 最低電圧15.6−1.06約14.5V
容量リップル電圧(0.5A・100Hz)評価
1,000μF約5.0V大きく波打つ
2,200μF約2.3Vまだ大きい
4,700μF約1.1V後ろにレギュレータを置けば十分
10,000μF約0.5Vなめらか。ただし大きく高い

後ろにレギュレータを置くときは、最低電圧がレギュレータの必要な入力電圧(出力電圧+ドロップアウト電圧)を下回らないように決めます。たとえば5VのLDOでドロップアウトが1Vなら、最低電圧は6V以上が必要です。

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平滑コンデンサの容量の決め方の例題の図。ピーク電圧は約15.6V、充電は100Hz、リップル1.5Vに必要な容量は約3,333μFなので4,700μFを選び、リップルは約1.06Vになる

容量だけでは決まらない|耐圧・リップル電流・突入電流・寿命

項目注意点例題では
耐圧電源電圧が上がったとき(+10%など)の最大電圧に、余裕をもたせる最大約17.3V → 25V品
リップル電流短いパルスで充電するため、コンデンサに流れる電流(実効値)は負荷電流より大きくなることが多い。許容リップル電流を超えると発熱するデータシートの許容値と比べる
突入電流電源を入れた瞬間、空のコンデンサに大きな電流が流れ、ヒューズやダイオードをいためるサーミスタなどで抑える
寿命電解コンデンサは温度が10℃上がると寿命がおよそ半分になる(メーカーの目安)熱い部品から離して置く

「リップルを減らしたいから、とにかく大きな容量に」は、突入電流とリップル電流が増え、大きさと値段も上がります。必要な最低電圧を守れる、いちばん小さな容量を選び、残りの波はレギュレータに任せるのが現実的です。

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耐圧・ESR・リップル電流の読み方

平滑コンデンサの計算ツール

交流電圧・周波数・負荷電流などを入れてください。リップル電圧と、目標のリップルに必要な容量を出します。最初は例題の数字が入っています。

入力すると、その場で計算し直します。入力した数字は画面の中で計算するだけで、どこにも送信されません。リップルは一定電流で放電するとみなした近似です。部品の選定では、データシートの耐圧・許容リップル電流・寿命も確かめてください。

半波整流と全波整流のちがい|リップルは半分になる

半波整流全波整流(ブリッジ)
使う波プラス側だけプラスもマイナスも
充電の回数(50Hz)50回/秒100回/秒
同じ容量でのリップル大きい半波の約半分
ダイオード1個4個(電圧降下は2個ぶん)

同じリップルにするなら、全波整流は半波整流の約半分の容量ですみます。そのため、電源回路ではブリッジによる全波整流が主流です。

平滑回路の種類|コンデンサ入力形とチョーク入力形

種類つなぎ方特徴
コンデンサ入力形整流のすぐあとにコンデンサ部品が少なく、出力電圧は山(ピーク)に近い。突入電流とリップル電流が大きい。小〜中くらいの電源で多い
チョーク入力形整流のあとにコイル(チョーク)、その後にコンデンサ出力電圧は平均値(全波なら交流の実効値の約0.9倍)に近い。電流がなめらかで大きな電流向き
π(パイ)形コンデンサ → コイル → コンデンサリップルがさらに小さい。部品が多く大きい
RC形コンデンサ → 抵抗 → コンデンサ小さな電流の回路向き。抵抗で電圧が下がり、熱になる

この記事で計算しているのは、いちばんよく使うコンデンサ入力形です。

平滑コンデンサのよくある間違い

よくある間違い正しい考え方
整流すれば直流になる整流だけでは脈流。平滑して直流に近づける
全波整流でも f=50Hz で計算する全波は充電が2倍。f=100Hz(60Hz地域は120Hz)
ピーク電圧=交流の実効値実効値×√2。そこからダイオードの電圧降下を引く
容量は大きいほどよい突入電流・リップル電流・大きさ・値段が増える
耐圧はふだんの電圧ぎりぎり電源電圧の変動まで見て余裕をもたせる
平滑コンデンサのよくある間違いの図。整流だけでは脈流、全波整流の充電は100Hz、ピーク電圧は実効値×√2からダイオードの降下を引く、容量が大きすぎると突入電流や発熱が増える

整流回路の出力電圧(単相半波0.45・全波0.9・三相1.35)の計算は次の記事で。

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よくある質問

Q. 平滑コンデンサの役割は?

A. 整流したあとの波打つ電圧(脈流)を、なめらかな直流に近づけることです。山で充電し、谷を放電で埋めます。

Q. 平滑コンデンサの容量はどう決める?

A. 許せるリップル電圧Vrから C≒I÷(f×Vr) で逆算し、少し大きい標準値を選びます。全波整流なら f は電源周波数の2倍です。

Q. リップル電圧とは?

A. 平滑したあとに残る電圧の上下の差です。負荷電流が大きいほど大きく、容量と充電の回数が多いほど小さくなります。

Q. なぜ電解コンデンサを使うの?

A. 数百〜数千μFの大きな容量を、小さく安くつくれるからです。高い周波数のノイズはセラミックコンデンサと分担します。

Q. 平滑コンデンサが劣化するとどうなる?

A. 容量が減ってリップルが大きくなり、電源電圧が下がったり、ノイズや誤動作の原因になったりします。

Q. 平滑とは(平滑化とは)?

A. 電気では、整流したあとの波打つ電圧を、コンデンサなどでなめらかな直流に近づけることです。データの分野では、細かいゆれをならすこと(移動平均など)も平滑化と呼びます。

Q. 平滑回路とは?

A. 整流回路のあとに置き、脈流をなめらかな直流に近づける回路です。コンデンサだけのコンデンサ入力形、コイルを先に置くチョーク入力形、π形などがあります。

まとめ
  • 整流だけでは脈流。平滑コンデンサで直流に近づける
  • 山で充電し、谷を放電で埋める(電気のダム)
  • リップル Vr≒I÷(f×C)。全波は f が2倍
  • 容量は C≒I÷(f×Vr) で逆算する
  • 耐圧・リップル電流・突入電流・寿命も確かめる
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シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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