※本記事にはプロモーション(広告)が含まれています。
平滑コンデンサとは?整流しただけでは直流にならない
ダイオードで整流すると、電流は一方向になりますが、電圧は0Vと山のあいだを波打ったままです。これを脈流といいます。マイコンやICにとって、電源が一瞬でも0V近くまで下がるのは、電源が切れたのと同じです。
| 段階 | 電圧の形 | 回路 |
|---|---|---|
| ① 交流 | プラスとマイナスを行き来する | コンセント・トランス |
| ② 脈流 | プラスだけだが、0Vまで落ちて波打つ | 整流(ダイオード) |
| ③ 直流に近い電圧 | ほぼ一定。小さな波(リップル)が残る | 平滑(コンデンサ) |
整流は「交流を脈流にする」ところまでで、脈流を直流に近づけるのが平滑コンデンサの役割です。そのあとにレギュレータを置いて、電圧を一定にそろえるのが電源回路の定番の流れです。
整流にダイオードブリッジを使う理由

平滑コンデンサには、充電と放電をくり返すぶん「リプル電流」が流れ、これがコンデンサの寿命を縮めます。
電解コンデンサの寿命を縮める電流の正体
平滑の仕組み|山で充電し、谷を放電で埋める
平滑コンデンサは「電気のダム」です。雨(脈流の山)が来たときに水をためて、晴れの日(谷)は放水して川の水量を保ちます。
| ステップ | 電圧 | コンデンサ |
|---|---|---|
| ① 山に向かって上がる | 脈流の電圧がコンデンサより高い | ダイオードから電流が流れこみ、充電 |
| ② 山のてっぺん | ピーク電圧 | ほぼ満充電 |
| ③ 山から下がる | 脈流の電圧がコンデンサより低い | ダイオードは止まり、コンデンサが負荷に放電 |
| ④ 次の山 | 下がりきる前に次の山が来る | ふたたび充電 |
充電は山の近くの短い時間だけで、そのあいだに次の山までの放電分をまとめて取り返します。そのため、ダイオードとコンデンサには短く大きなパルス電流が流れます。これがあとで出てくるリップル電流の正体です。

リップル電圧の計算|Vr≒I÷(f×C)
放電しているあいだも負荷は電気を使うので、電圧は少し下がります。この上下の差がリップル電圧Vrです。放電する時間をほぼ「次の山までの時間 1/f」とみなすと、次の式で見積もれます。
| 要素 | ダムでいうと | リップルへの影響 |
|---|---|---|
| 容量C | ダムの大きさ | 大きいほど小さい |
| 負荷電流I | 放水の量 | 大きいほど大きい |
| 充電の回数f | 雨の回数 | 多いほど小さい(全波は半波の半分) |
この式は、リップルがピーク電圧にくらべて小さいときの近似です。計算でリップルがピーク電圧に近い値になるときは、容量が足りず、ほぼ脈流のままだと考えてください。

平滑コンデンサの容量の決め方|例題で逆算する
容量は、許せるリップルから逆算します。式を変形すると C≒I÷(f×Vr) です。
例題:トランスの出力12V(実効値)、50Hz、ブリッジで全波整流、負荷電流0.5A。リップルを1.5V以下にしたい。
| ステップ | 計算 | 答え |
|---|---|---|
| ① ピーク電圧 | 12×√2 − 1.4(ダイオード2個ぶん) | 約15.6V |
| ② 充電の回数 | 50Hz×2(全波) | 100Hz |
| ③ 必要な容量 | 0.5÷(100×1.5) | 約3,333μF |
| ④ 部品を選ぶ | 3,300μFは少し足りない | 4,700μF(Vr≒1.06V) |
| ⑤ 最低電圧 | 15.6−1.06 | 約14.5V |
| 容量 | リップル電圧(0.5A・100Hz) | 評価 |
|---|---|---|
| 1,000μF | 約5.0V | 大きく波打つ |
| 2,200μF | 約2.3V | まだ大きい |
| 4,700μF | 約1.1V | 後ろにレギュレータを置けば十分 |
| 10,000μF | 約0.5V | なめらか。ただし大きく高い |
後ろにレギュレータを置くときは、最低電圧がレギュレータの必要な入力電圧(出力電圧+ドロップアウト電圧)を下回らないように決めます。たとえば5VのLDOでドロップアウトが1Vなら、最低電圧は6V以上が必要です。
電解コンデンサとセラコンの役割分担

容量だけでは決まらない|耐圧・リップル電流・突入電流・寿命
| 項目 | 注意点 | 例題では |
|---|---|---|
| 耐圧 | 電源電圧が上がったとき(+10%など)の最大電圧に、余裕をもたせる | 最大約17.3V → 25V品 |
| リップル電流 | 短いパルスで充電するため、コンデンサに流れる電流(実効値)は負荷電流より大きくなることが多い。許容リップル電流を超えると発熱する | データシートの許容値と比べる |
| 突入電流 | 電源を入れた瞬間、空のコンデンサに大きな電流が流れ、ヒューズやダイオードをいためる | サーミスタなどで抑える |
| 寿命 | 電解コンデンサは温度が10℃上がると寿命がおよそ半分になる(メーカーの目安) | 熱い部品から離して置く |
「リップルを減らしたいから、とにかく大きな容量に」は、突入電流とリップル電流が増え、大きさと値段も上がります。必要な最低電圧を守れる、いちばん小さな容量を選び、残りの波はレギュレータに任せるのが現実的です。
耐圧・ESR・リップル電流の読み方
平滑コンデンサの計算ツール
交流電圧・周波数・負荷電流などを入れてください。リップル電圧と、目標のリップルに必要な容量を出します。最初は例題の数字が入っています。
入力すると、その場で計算し直します。入力した数字は画面の中で計算するだけで、どこにも送信されません。リップルは一定電流で放電するとみなした近似です。部品の選定では、データシートの耐圧・許容リップル電流・寿命も確かめてください。
半波整流と全波整流のちがい|リップルは半分になる
| 半波整流 | 全波整流(ブリッジ) | |
|---|---|---|
| 使う波 | プラス側だけ | プラスもマイナスも |
| 充電の回数(50Hz) | 50回/秒 | 100回/秒 |
| 同じ容量でのリップル | 大きい | 半波の約半分 |
| ダイオード | 1個 | 4個(電圧降下は2個ぶん) |
同じリップルにするなら、全波整流は半波整流の約半分の容量ですみます。そのため、電源回路ではブリッジによる全波整流が主流です。
平滑回路の種類|コンデンサ入力形とチョーク入力形
この記事で計算しているのは、いちばんよく使うコンデンサ入力形です。
平滑コンデンサのよくある間違い
| よくある間違い | 正しい考え方 |
|---|---|
| 整流すれば直流になる | 整流だけでは脈流。平滑して直流に近づける |
| 全波整流でも f=50Hz で計算する | 全波は充電が2倍。f=100Hz(60Hz地域は120Hz) |
| ピーク電圧=交流の実効値 | 実効値×√2。そこからダイオードの電圧降下を引く |
| 容量は大きいほどよい | 突入電流・リップル電流・大きさ・値段が増える |
| 耐圧はふだんの電圧ぎりぎり | 電源電圧の変動まで見て余裕をもたせる |

整流回路の出力電圧(単相半波0.45・全波0.9・三相1.35)の計算は次の記事で。
単相半波・全波・三相の出力電圧。計算ツールつき

