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非反転増幅回路のゲインは 1+R2÷R1、反転増幅回路は −R2÷R1 です。5V だけで組む手順は非反転増幅回路と反転増幅回路の節、出力=入力のボルテージフォロワは回路1にあります。
オペアンプは、センサーの小さな電圧を大きくしたり、抵抗の大きい回路の電圧をそのまま次へ渡したりする、アナログ回路の主役の部品です。ところが、理屈の説明から入ると「仮想短絡」「負帰還」といった言葉で止まりがちです。
この記事では、理屈は1つのルールだけにしぼり、5V で動く実物の部品(MCP6002・LM358)を使って、回路を組んで測るところまで進みます。

この記事で作るもの:センサーの0〜0.5Vを、0〜4.6Vに大きくする
この記事のゴールは、0〜0.5V しか出ないセンサーの電圧を、5V のマイコンで読みやすい0〜4.6V に大きくする回路です。部品はオペアンプ1個と抵抗2本です。
マイコンの A/D 変換(電圧を数字に変える機能)は、5V の幅を細かく区切って読みます。0〜0.5V の信号をそのまま入れると、使える目盛りは全体の1割だけです。
そこで、オペアンプで信号を約9倍にして、目盛りの9割以上を使えるようにします。これが「非反転増幅」という回路で、この記事の後半で値を決めます。
マイコンの A/D 変換が、電圧をどう数字に変えているかがわかる
つまり、オペアンプは「小さい信号を、次の回路が扱いやすい大きさにそろえる」部品です。

オペアンプの記号と5本の端子:入力2本・出力1本・電源2本
オペアンプの記号は三角形です。左に入力が2本(+と−)、右の先に出力が1本、上下に電源が2本あります。
| 端子 | 役目 |
|---|---|
| +入力(非反転入力) | 比べる電圧の1つ。電流はほとんど流れ込まない |
| −入力(反転入力) | 比べる電圧のもう1つ。ふつうは出力から戻す線をつなぐ |
| 出力 | 比べた結果で電圧を出す。ここから電流を取り出せる |
| V+(電源の+) | 片電源なら +5V など |
| V−(電源の−) | 片電源なら GND(0V) |
回路図では、電源の2本(V+・V−)が省かれていることがよくあります。図に描かれていなくても、実物のオペアンプには必ず電源をつなぎます。
もう1つ大事なのは、出力は電源の間(片電源なら0V〜5V)しか動けないことです。計算で −1V や 6V が出ても、その電圧は出せません。
つまり、オペアンプは「入力2本・出力1本・電源2本」の5本の端子の部品で、出力は電源の範囲の中でしか動きません。

実物のピン配置:8本足に2回路入っている品種が多い
ブレッドボードでよく使う8本足(DIP-8)のオペアンプは、中に2回路入っています。MCP6002 と LM358 は、ピンの並びが同じです。
| ピン | 名前 | ピン | 名前 |
|---|---|---|---|
| 1 | 出力A | 8 | V+(電源) |
| 2 | −入力A | 7 | 出力B |
| 3 | +入力A | 6 | −入力B |
| 4 | V−(GND) | 5 | +入力B |
IC の上の面には、半円の切り欠きか丸い印があります。切り欠きを上にして見たとき、左上が1番で、反時計回りに8番まで続きます。
1回路だけ使うときも、残りのBを放っておかないでください。TI の資料では、使わない回路の入力や出力を浮かせると予想しない動きにつながるとして、フォロワ(後で説明)につないで+入力を電源の中間(同じ値の抵抗2本で分けた電圧)に置く方法を示しています。
つまり、ピン配置は「切り欠きの左上が1番」。品番を変えたら、データシートの図を見直します。

基本のルール:オペアンプは「+と−を同じにしよう」と出力を動かす
オペアンプは、+入力と−入力の電圧の差を、およそ10万倍にして出力します。出力を−入力に戻しておくと、差がほぼ0になるところで出力が落ち着きます。
たとえば、+入力に2.0V を入れ、出力を−入力にそのまま戻したとします。
差を10万倍するのに、出力が無限に大きくならないのは、出力が上がると−入力も一緒に上がり、差が縮むからです。LM358 のデータシートでは、この倍率(開ループ利得)が標準で100V/mV、つまり約10万倍です。
つまり、どの回路も「出力を動かして、−入力を+入力にそろえる」。このルール1つで、この記事の回路はすべて計算できます。

ルールが効くのは、出力を−入力に戻したときだけ
「+と−がそろう」のは、出力を−入力に戻す線(負帰還)があるときだけです。戻す線がないと、わずかな差でも出力は電源の端に張り付きます。
戻す線がない回路で、+入力が1.001V、−入力が1.000V だとします。差は0.001V ですが、10万倍すると100V です。電源は5V しかないので、出力は電源の端(約5V)に張り付きます。
このように「差だけを見て、出力を上か下に振り切る」使い方は、コンパレータ(比較器)と呼ばれる別の使い方です。この記事の3つの回路は、すべて戻す線がある使い方です。
+と−の電圧がほぼ同じになることを、教科書では「仮想短絡(イマジナリーショート)」と呼びます。式での導き方は、理論の記事にまとめています。
仮想短絡の考え方と、反転・非反転増幅の増幅度の式の導き方が、計算ツールつきで確かめられる
つまり、戻す線は −入力へ。+入力に戻すと、ルールが効かず出力が端に張り付きます。

回路1 ボルテージフォロワ:出力=入力(ゲイン1倍)
ボルテージフォロワは、出力を−入力にそのまま戻した回路です。出力は入力と同じ電圧になります。大きくしないのに使うのは、入力から電流をほとんど取らないからです。
なぜ出力=入力になるかは、ルールで説明できます。−入力は出力と線でつながっているので「−入力=出力」。+入力は「入力」。オペアンプが+と−をそろえるので、出力=入力になります。
うれしいのは、入力側から電流をほとんど取らないことです。MCP6002 の入力バイアス電流(入力の端子に流れる電流)は、標準で1pA(1兆分の1A)です。一方、出力からは数mA の電流を出せます。
つまり、ボルテージフォロワは電圧を大きくしない代わりに、「前の回路に負担をかけずに、同じ電圧を渡す」回路です。

フォロワの効き目:つなぐ先が電圧を下げなくなる
5V を100kΩ と100kΩ で分けて、2.5V を作ったとします。電池の電圧を測るときなど、電流をむだにしないために大きな抵抗を使う場面です。
ここに10kΩ の回路を直接つなぐと、下の100kΩ と10kΩ が並列になり、約9.1kΩ になります。電圧は 5V×9.1÷(100+9.1)≒0.42V まで下がってしまいます。
間にフォロワをはさむと、オペアンプの入力はほとんど電流を取らないので、分圧は2.5V のまま。10kΩ に流れる0.25mA は、オペアンプの出力が出します。出力は2.5V です。
| つなぎ方 | つなぐ先にかかる電圧 |
|---|---|
| 10kΩ を直接つなぐ | 約0.42V(狙いの2.5V から大きくずれる) |
| フォロワをはさむ | 2.5V(狙いどおり) |
分圧の抵抗を大きくすると何が困るのか、つなぐ先の影響の見積もり方が例題でわかる

回路2 非反転増幅回路:ゲイン=1+R2÷R1
非反転増幅は、出力を抵抗2本(R2 と R1)で分けて、その一部を−入力に戻す回路です。入力と同じ向きで、1+R2÷R1 倍に大きくなります。
式は、ルールと分圧の式の2つだけで出せます。
たとえば R1=10kΩ、R2=82kΩ なら、ゲインは 1+82÷10=9.2倍です。R2 を0Ω(線)にして R1 を外すとゲインは1倍になり、ボルテージフォロワと同じになります。
つまり、非反転増幅は「分圧の式を逆に使う」回路。出力の一部(R1÷(R1+R2))が入力と同じになるように、出力が大きくなります。

計算例:センサーの0〜0.5Vを、5Vのマイコンで読む
| センサーの電圧 | 出力(×9.2) |
|---|---|
| 0V | 0V(実際は出力の下限の数十mV 浮く) |
| 0.10V | 0.92V |
| 0.25V | 2.30V |
| 0.50V | 4.60V |
R1 を10kΩ にしたのは、出発点としてよく使われる値だからです。目安として1kΩ〜100kΩ の間で選びます。小さすぎると出力から R1・R2 に流れる電流が増え、大きすぎるとノイズや入力の電流の影響を受けやすくなります。この例では、4.6V÷92kΩ=0.05mA しか流れません。

5Vだけで使うときの落とし穴:出力が電源いっぱいまで振れない品種がある
オペアンプの出力は、品種によって電源の端まで届きません。LM358 を5V で使うと、出力の上限は約3.5V です。5V だけで使うなら、出力が電源の端まで振れる「レールtoレール」の品種を選びます。
LM358 は昔からある定番のオペアンプで、3〜30V の広い電源で使えます。ただし TI のデータシートでは、出力の上限が電源より約1.5V 低く(5V・負荷2kΩ以上)、入力の上限も電源より1.5V 低い((V+)−1.5V)と書かれています。
さきほどの9.2倍の回路を LM358 で組むと、出力は約3.5V で頭打ちになります。3.5V÷9.2≒0.38V なので、センサーが0.38V を超えた分は読めません。
| 品種(5V で使う) | 出力が届く範囲 | 入力に入れられる範囲 |
|---|---|---|
| LM358(TI) | 約0V〜約3.5V | 0V〜約3.5V |
| MCP6002(Microchip) | 約0.025V〜約4.975V | −0.3V〜5.3V |
数字はデータシートの条件(温度25°C・負荷の抵抗など)での値です。負荷が重い(抵抗が小さい)ほど、出力は端まで届きにくくなります。
つまり、5V の片電源で出力を4V 以上まで使うなら、「出力レールtoレール」と書かれた品種を選びます。オペアンプの選び方は、連載の次の記事でくわしく扱います。

回路3 反転増幅回路:入力を−入力側から入れると、向きが逆になる
反転増幅は、入力を R1 を通して−入力に入れ、R2 で出力から−入力に戻す回路です。ゲインは −R2÷R1 で、出力の向きが入力と逆になります。
R1=10kΩ、R2=20kΩ、入力0.5V で考えます。+入力は GND(0V)につないでいます。
出力がマイナスになるので、この形のままでは ±の電源(例:+5V と −5V)で使います。
つまり、反転増幅は「R1 で電流を作り、R2 で電圧に戻す」回路。向きが逆になり、入力から Vin÷R1 の電流を取ります。

5Vだけで反転増幅を使うには:+入力を2.5Vにする
+入力を GND のまま5V だけで動かすと、計算では −1.0V でも、出力は GND より下に出せません。出力はほぼ0V に張り付きます。
そこで、+入力を電源の真ん中の2.5V にします。2.5V は、5V を10kΩ と10kΩ で分けて作れます。こうすると、出力は2.5V を中心に上下に動けます。
| 入力 | 計算 | 出力 |
|---|---|---|
| 2.5V | 2.5 − 2 × 0 | 2.5V |
| 2.7V | 2.5 − 2 × 0.2 | 2.1V |
| 2.3V | 2.5 − 2 ×(−0.2) | 2.9V |
音の信号のように、0V を中心に上下にゆれる信号を5V だけで扱うときにも、同じように真ん中の電圧を基準にします。

3つの回路のくらべ:迷ったらフォロワと非反転増幅から
3つの回路は、ゲイン・向き・入力から取る電流・5V だけで使えるかが違います。5V の片電源なら、まずフォロワと非反転増幅から使います。
| フォロワ | 非反転増幅 | 反転増幅 | |
|---|---|---|---|
| ゲイン | 1倍 | 1+R2÷R1 | −R2÷R1 |
| 出力の向き | 入力と同じ | 入力と同じ | 逆 |
| 入力から取る電流 | ほぼ0 | ほぼ0 | Vin÷R1 |
| 5V だけで | そのまま使える | そのまま使える | +入力に中間の電圧 |
| よく使う場面 | つなぐ先の影響を消す | 小さい信号を大きく | 向きを逆に・足し算 |
反転増幅は、入力を複数つなぐと足し算(加算回路)にできるなど、応用の広い形です。加算・減算・積分・微分の回路は、応用の記事にまとめています。
つまり、「渡すだけ」ならフォロワ、「大きくする」なら非反転増幅、「逆にする・足す」なら反転増幅、と目的で選びます。

ブレッドボードで組む:非反転増幅(MCP6002)
ブレッドボードでは、IC を中央の溝をまたぐように挿し、8番を5V、4番を GND につなぎます。8番のすぐ近くに0.1µF のパスコンを入れます。
パスコンは、電源のゆれを吸い取るコンデンサです。MCP6002 のデータシートでは、0.01〜0.1µF を電源ピンから2mm 以内に置き、1µF 以上のコンデンサを100mm 以内に置くように書かれています。
使わない B 側(5・6・7番)は、7番と6番をつないでフォロワにし、5番を5V と GND の中間(同じ値の抵抗2本で分けた電圧)につないでおきます。
パスコンをなぜ IC のすぐ近くに置くのか、離すと何が起きるのかがわかる

組んだら測って確かめる:3番・2番・1番の電圧
テスターの黒を GND に当てたまま、赤で3か所の電圧を測ります。
| 測る所 | 例(センサー0.300V のとき) | 見る点 |
|---|---|---|
| ① 3番(+入力) | 0.300V | センサーの電圧 |
| ② 2番(−入力) | 0.300V | ①と同じなら、ルールどおり動いている |
| ③ 1番(出力) | 2.76V | 0.3×9.2=2.76V になっているか |
②が①とずれるときは、多くの場合、出力が電源の端に張り付いています。戻す線(R2)が2番につながっているか、R1 と R2 が入れ替わっていないか、8番と4番に電源が来ているかを見直します。数値は計算から出したイメージで、実際は部品のばらつきで少しずれます。

よくある失敗4つ:振れない・ピン違い・+と−が逆・電源なし
オペアンプの回路が動かないときの原因は、出力が上まで振れない品種・ピンの取り違え・+と−の取り違え・電源のつなぎ忘れの4つが代表です。
失敗1:出力が上まで出ない
LM358 を5V で使い、出力を4V 以上まで出そうとすると、約3.5V で止まります。5V だけで使うなら、出力レールtoレールの品種を選びます。
失敗2:ピンの取り違え
ピンの並びは品番ごとに決まっています。8本足の2回路入りは多くが同じ並びですが、1回路入りの5本足では、MCP6001 と MCP6001R のように電源のピンが入れ替わる例があります。
失敗3:+と−を逆につなぐ
戻す線を+入力につなぐと、出力が少し動いただけで差が広がり、電源の端に張り付きます。戻す線は必ず−入力へ。
失敗4:電源・パスコンを忘れる
回路図に V+・V− が描かれていないと、配線を忘れがちです。8番と4番に電源が来ているかをテスターで確かめ、8番のすぐ近くにパスコンを入れます。
つまり、動かないときは「電源のピン → 出力の上限 → +と−の向き」の順に確かめると、早く原因にたどり着けます。


