回路設計

回路図レビューのチェックリスト20項目|電源・GND・未接続ピン

赤いチェックが入ったチェックリストの紙とクリップボード、赤ペン、光る赤いLEDとリレーが載った小さな基板の写真に、回路図レビューのチェックリスト20項目の文字

※本記事にはプロモーション(広告)が含まれています。

回路図レビューは、電源とGND → ICのピン → 部品の向きと値 → 保護 → 図面の順に、20項目を上から見ます。印刷して使える1枚のチェックリストと、誤りを12か所しこんだ練習の回路図を用意しました。

結論|まず30秒でわかる答え

回路図レビューは、次の5グループ・20項目を上から順に見ます。
①電源とGND ②ICのピン ③部品の向きと値 ④保護 ⑤図面
電源とGNDがおかしいと、ほかがどれだけ正しくても回路は動きません。だから電源から見ます。この記事では、誤りを12か所しこんだ回路図で、1つずつ見つける練習をします。

この記事に出てくる言葉

わからない言葉が出てきたら、ここに戻ってきてください。本文でも、初めて出たところで言い換えます。

回路図レビュー回路図を、作る前にほかの人と見直して誤りを探すこと
ネット(線の名前)回路図の線につける名前。同じ名前どうしは、線を描かなくてもつながる
GND(グランド)電流の帰り道になる0Vの線
耐圧部品にかけてよい電圧の上限
パスコンIC の電源ピンの近くに置く小さなコンデンサ。0.1µF が多い
プルアップ入力ピンを抵抗で電源につなぎ、何もつながらないときを H に決めること
逆起電力リレーのコイルの電流を切った瞬間に出る、高い電圧
部品番号R1・C2 のように部品につける名前。部品表(BOM)と基板で同じものを指す

回路図レビューは、回路図を描き終えて、基板を作る前にやる点検です。ここで見つけた誤りは、線を1本描き直すだけで直せます。

この記事では、新人がつまずきやすい所を20項目のチェックリストにしました。読み終えたら、自分の回路図に当てはめて点検できます。

赤いチェックが入ったチェックリストの紙とクリップボード、赤ペン、光る赤いLEDとリレーが載った小さな基板の写真に、回路図レビューのチェックリスト20項目の文字

回路図レビューとは?作る前に誤りを見つける場

回路図レビューは、回路図・部品表・データシートを見比べて、作る前に誤りを探す点検です。見つけるのが早いほど、直す手間は小さくなります。

回路図の誤りは、基板ができてから見つかると、基板を作り直すことになります。量産のあとなら、製品の回収にもつながります。回路図の段階なら、直すのは線1本です。

レビューでは、回路図だけでなく、部品表(BOM)とデータシートも横に置きます。部品の耐圧やピン番号は、回路図だけでは確かめられないからです。

たとえると

回路図レビューは「家を建てる前の図面の確認」です。図面で窓の位置を直すのは消しゴムで済みますが、建ててから直すと壁を壊すことになります。

つまり、レビューは「直すのがいちばん安い時」に誤りを見つける作業。図は手間の大きさを表したイメージです。

直す手間のイメージの棒グラフ。回路図(線を描き直す)・基板の設計・試作の基板(作り直す)・量産のあと(回収)の順に高くなる。レビューで見るのは回路図・部品表・データシート・電流の見積もり

回路図レビューのチェックリスト20項目:5つのグループ

20項目は、電源とGND・ICのピン・部品の向きと値・保護・図面の5つに分かれます。上から順に見るのがコツです。

順番には理由があります。電源とGNDが正しくないと、ICは動きません。ICが動く前提が整ってから、ピンの処理や部品の向きを見ます。最後に、図面として読める形になっているかを見ます。

番号確かめること見る所・目安
A-1電源の線の名前がそろっている「+5V」と「5V」は別の線になる
A-2すべての IC の GND ピンがつながっているGND は電流の帰り道
A-3電源の入口に逆接続の保護がある+と−を逆に挿しても壊れない
A-4部品の耐圧に余裕がある使う電圧は耐圧の80%以下が目安
A-5消費電流と発熱を見積もった電源とレギュレータが足りるか
B-6IC ごとにパスコン 0.1µF がある電源ピンのすぐ近くに置く
B-7使わない入力ピンをつないだVCC か GND へ。浮かせない
B-8リセットなどの端子を処理したデータシートの指示どおりに
B-9入力にプルアップがあるスイッチ・I2C・オープンドレイン
B-10ピン番号をデータシートと照合したパッケージ違いでピンが変わる
C-11向きのある部品の向きが正しいLED・ダイオード・電解コンデンサ
C-12LED とベースに電流を決める抵抗抵抗なしは大きな電流が流れる
C-13抵抗の電力は定格の50%以下P=I×I×R で確かめる
C-14トランジスタ・IC は定格の中電流・電圧・温度
C-15つなぐ信号の電圧がそろっている3.3V の IC に5V を入れない
D-16コイルにダイオードがあるリレー・モータの逆起電力
D-17外につながる端子に保護がある静電気・過電圧・ショート
E-18部品番号に重複・抜けがないR1 が2つあると部品表が狂う
E-19全部品に値・耐圧・型番がある値のない部品は買えない
E-20版数・日付・変更点を書いたどの版をレビューしたか残す
POINT|数字の目安は会社の決まりを優先

耐圧の80%・抵抗の電力の50%は、この記事の目安です。会社や製品の分野ごとに決まりがあれば、そちらに従います。

つまり、20項目は「電源 → ピン → 向き → 保護 → 図面」の順。下の印刷用の1枚にも同じ順で並べました。

5つの帯。A電源とGND(項目1〜5)、B ICのピン(6〜10)、C部品の向きと値(11〜15)、D保護(16〜17)、E図面(18〜20)と、それぞれのキーワード

例題:誤りを12か所しこんだ回路図

ここからは、12Vのアダプタで動くマイコンの回路図を使って練習します。この回路図には、誤りが12か所あります。

回路の中身は次のとおりです。12V を5V のレギュレータで下げてマイコンに入れ、マイコンの端子で LED・スイッチ・リレーを使います。リレーは12V のコイル(Omron G5V-1 12VDC、コイルの電流12.5mA)です。

まずは答えを見ずに、自分で探してみてください。ヒントは「電源 → GND → ピン → 向き → 保護 → 図面」の順に見ることです。

回路図の読み方|記号より先に電源・GND・信号の流れを追う4ステップ

つまり、レビューは「探す練習」で上達します。見つけた数を数えてから、次の答えに進みましょう。

12VのDCジャックJ1、C1 100µF 10V、5VレギュレータU1、C2、マイコンU2(VCCは5V、RSTにR1 10kΩ、P3にSW1、P4は未接続、GNDは未接続)、P1からR1 330Ωと上向きのLED D2、P2からQ1 2N3904とリレーK1の回路図

答え:12か所の誤りとチェックリストの項目

12か所の誤りは、すべて20項目のどれかに当てはまります。チェックリストを上から順に当てれば、見落としにくくなります。

番号誤りチェックリスト
1C1 の耐圧が10V(12V の線)項目4
2電源の名前が「+5V」と「5V」で別の線項目1
3マイコンの GND ピンがつながっていない項目2
4マイコンにパスコンがない項目6
5スイッチの入力にプルアップがない項目9
6使わない入力ピン P4 が浮いている項目7
7LED の向きが逆項目11
8トランジスタにベース抵抗がない項目12
9リレーのコイルにダイオードがない項目16
10部品番号 R1 が2つある項目18
11電源の入口に逆接続の保護がない項目3
12C2 に値が書いていない項目19

いくつ見つかりましたか。電源の名前(②)・GND(③)・未使用ピン(⑥)は、図の上では「何かが足りない」だけなので、見落としやすい誤りです。描かれているものより、描かれていないものを探すのがコツです。

つまり、誤りは「間違って描いた所」と「描き忘れた所」の2種類。後者はチェックリストがないと見つけにくいのです。

例の回路図に赤い丸1〜12。1 C1の耐圧(項目4)、2 電源の名前(1)、3 GNDピン(2)、4 パスコン(6)、5 プルアップ(9)、6 P4が浮く(7)、7 LEDが逆(11)、8 ベース抵抗(12)、9 ダイオード(16)、10 R1が2つ(18)、11 逆接続の保護(3)、12 C2の値(19)

項目1・2:電源の線の名前と、GNDのつながり

電源の線は、名前が1文字違うだけで別の線になります。GND ピンは、IC にいくつあっても全部つなぎます。

項目1:電源の名前がそろっているか(誤り②)

回路図では、離れた所の線を、同じ名前の記号でつなぎます。例の回路図では、レギュレータの出口が「+5V」、マイコンの VCC が「5V」になっていました。CAD は2つを別の線として扱うので、マイコンに電源が届きません。

確かめ方は、CAD で線の名前(ネット名)の一覧を出し、似た名前がないかを見ることです。「+5V」「5V」「VCC」「5V0」のように、同じつもりの名前が混ざっていないかを確かめます。

項目2:GND ピンがつながっているか(誤り③)

例の回路図では、マイコンの GND ピンがどこにもつながっていませんでした。GND は電流の帰り道です。帰り道がないと、電源をつないでも電流が流れず、IC は動きません。

GNDとは?0Vの線ではなく電流の帰り道|GNDバウンスと分ける理由を図解
あわせて読みたい
GNDとは?0Vの線ではなく電流の帰り道|GNDバウンスと分ける理由を図解

GND を「0Vの線」ではなく「電流の帰り道」として理解できる

つまり、電源は「名前」、GND は「本数」を確かめる。どちらも、描かれていない所に誤りがあります。

+5Vと5Vの電源記号の間に≠、マイコンのGNDピンが何にもつながっていないNGと、GND記号につないだOKの比較

項目3〜5:逆接続の保護・耐圧・消費電流

電源の入口には逆接続の保護を入れ、部品の耐圧は使う電圧に余裕を持たせます。例の C1 は、耐圧10V に12V がかかっていました(使用率120%)。

項目3:逆接続の保護(誤り⑪)

AC アダプタの+と−を逆に挿すと、回路に逆向きの電圧がかかります。例の回路図には、それを止める部品がありませんでした。直した版では、入口にダイオード D1(1N4001)を入れました。逆向きの電圧は、ダイオードが止めます。

ダイオードを入れると、その分だけ電圧が下がります。1N4001 は、1A 流したとき最大1.0V です。12V が約11V になっても、5V を作るには十分です。

逆接続保護回路の3方式|損失の比べ方と突入電流の抑え方
あわせて読みたい
逆接続保護回路の3方式|損失の比べ方と突入電流の抑え方

逆接続の保護3方式(ダイオード・FET・ブリッジ)を損失で比べる

項目4:耐圧に余裕があるか(誤り①)

使用率
使う電圧 ÷ 耐圧 × 100 = 12V ÷ 10V × 100 = 120%

使用率が100% を超えると、耐圧を超えています。この記事では80% 以下を目安にします。耐圧25V のコンデンサなら、12V ÷ 25V = 48% で余裕があります。

【最重要】ディレーティングとは?|部品を定格ギリギリで使ってはいけない理由
あわせて読みたい
【最重要】ディレーティングとは?|部品を定格ギリギリで使ってはいけない理由

部品を定格ギリギリで使わない「ディレーティング」の考え方と目安がわかる

項目5:消費電流と発熱を見積もったか

回路図には、電流の大きさは描かれていません。レギュレータが足りるか、熱くならないかは、部品ごとの電流を足して確かめます。手順は連載の別の記事にまとめました。

消費電流の見積もり|部品表から電源の容量を決める5ステップ
あわせて読みたい
消費電流の見積もり|部品表から電源の容量を決める5ステップ

部品表から電流を足して、電源とレギュレータの発熱を確かめる5ステップ

つまり、電源の入口は「逆に挿しても壊れないか」、部品は「使う電圧が耐圧の80%以下か」で見る。

+12VからD1 1N4001とC1 100µF 25Vの回路図。使用率の棒グラフで耐圧10Vは120%(NG)、25Vは48%(OK)、80%の目安線

項目6:ICの電源ピンごとにパスコン0.1µF

IC の電源ピンのすぐ近くには、パスコン(0.1µF のセラミックコンデンサ)を置きます。例のマイコンには、パスコンがありませんでした(誤り④)。

IC は、動くたびに一瞬だけ多くの電流を使います。電源から遠いと、この一瞬の電流が間に合わず、電圧が下がります。マイコンでは、電圧が下がるとリセットすることがあります。

パスコンは、IC のすぐ横で電気をためておき、一瞬の電流を出す役目です。たとえば TI のロジック IC 74HC04 のデータシートは、VCC のピンごとに0.1µF を推奨しています。

POINT|回路図では「どの IC のパスコンか」を書く

パスコンは回路図の隅にまとめて描かれることがあります。どの IC の電源ピンのものかがわかるように、近くに描くか、番号で対応させます。

ICの横にセラミックコンデンサを置く理由|パスコンの役割を物理で理解する
あわせて読みたい
ICの横にセラミックコンデンサを置く理由|パスコンの役割を物理で理解する

パスコンが IC のすぐ横に必要な理由を、電流の流れから理解できる

つまり、IC が1つあればパスコンも1つ以上。電源ピンが複数ある IC は、ピンごとに置きます。

+5Vからマイコンへの線と、VCCのすぐ横からGNDへのC3 0.1µF。ないと電圧が一瞬下がりリセットすることがある

項目7・8:使わない入力ピンとリセット端子

使わない入力ピンは、VCC か GND につなぎます。浮いたままだと、電圧が H と L のあいだをさまよい、誤動作や電流の増加の原因になります(誤り⑥)。

入力ピンは、ほとんど電流が流れません。そのため、何もつながないと、周りのノイズで電圧がふらふら動きます。これを「浮いている(フローティング)」と呼びます。

TI の 74HC04 のデータシートにも、「使わない入力は VCC か GND につなぐ。浮かせてはいけない」と書かれています。マイコンの場合は、データシートに書かれた未使用ピンの扱い(内部のプルアップを使う・出力にする など)に従います。

項目8:リセットなどの端子

リセット(RST)・イネーブル(EN)・チップセレクト(CS)のように、IC の動きを止める端子は、どちらの電圧で動くかが決まっています。データシートの指示どおりに、抵抗でつなぎます。例の回路図では、RST は10kΩ でプルアップしてありました。

つまり、入力ピンは1本ずつ「どこにつながっているか」を確かめる。答えが「どこにも」なら、それが誤りです。図の電圧の動きはイメージです。

浮いた入力ピンの電圧のイメージのグラフ(H・どちらでもない・Lの帯をさまよう赤い線)と、直し方・リセットなどの端子のカード

項目9:スイッチの入力にはプルアップ抵抗

スイッチを GND につなぐ入力には、プルアップ抵抗(例では10kΩ)が要ります。押していないときの電圧を5V に決めるためです(誤り⑤)。

例の回路図では、スイッチ SW1 が P3 と GND のあいだにだけ入っていました。押すと0V になりますが、離すと P3 は何にもつながらず、浮いてしまいます。

直した版では、P3 と +5V のあいだに R2(10kΩ)を入れました。離しているときは5V(H)、押すと0V(L)になります。押したときに流れる電流は、5V ÷ 10kΩ = 0.5mA です。

POINT|I2C やオープンドレインの出力も同じ

I2C の通信線や、オープンドレイン(L にしか引けない)出力も、プルアップがないと H になりません。回路図で、どこかの抵抗につながっているかを確かめます。

フローティングとは?「浮いている」状態とプルアップ・プルダウンの選び方|計算ツール付き
あわせて読みたい
フローティングとは?「浮いている」状態とプルアップ・プルダウンの選び方|計算ツール付き

プルアップとプルダウンの選び方と、抵抗値の決め方がわかる

つまり、スイッチの入力は「押していないときに何V か」を答えられるかで確かめる。答えられなければ、プルアップが足りません。

+5VからR2 10kΩでP3へ、P3からSW1でGNDへの回路図2つ(離しているとき・押したとき)。離すとP3=5V、押すとP3=0Vで5V÷10kΩ=0.5mA

項目10・11:ピン番号と、向きのある部品

ピン番号はデータシートと1本ずつ照らし合わせ、LED・ダイオード・電解コンデンサ・トランジスタは向きを確かめます。例の LED D2 は、向きが逆でした(誤り⑦)。

項目10:ピン番号

同じ型番でも、パッケージ(形)が違うとピン番号が変わることがあります。回路図の部品(シンボル)のピン番号を、使うパッケージのデータシートのピン表と見比べます。

項目11:向きのある部品

LED は、三角の向き(アノードからカソード)にだけ電流が流れます。例の回路図では、D2 の三角が上(電流が来る R1 の側)を向いていました。これでは電流が流れず、LED は点きません。

部品回路図で見る所
LED・ダイオード三角の向き。三角の先の線がカソード
電解コンデンサ+の側が、電圧の高い側につながっているか
トランジスタC(コレクタ)と E(エミッタ)が入れ替わっていないか
IC1番ピンの位置と、ピン番号

つまり、向きのある部品は「電流が流れる向き」を指でなぞって確かめる。逆向きの部品は、動かないか、壊れます。

三角が上向きのLED(NG)と下向きのLED(OK)の回路図と、LED・ダイオード・電解コンデンサ・トランジスタ・ICの見る所の表

項目12〜15:電流を決める抵抗・抵抗の電力・定格・信号の電圧

LED とトランジスタのベースには、電流を決める抵抗が要ります。例の Q1 には、ベース抵抗がありませんでした(誤り⑧)。

項目12:電流を決める抵抗

トランジスタのベースとエミッタのあいだは、ダイオードと同じ形をしています。抵抗なしでマイコンの端子につなぐと、電流を決める部品がなく、マイコンの端子とトランジスタに大きな電流が流れます。

ベース電流(R3 4.7kΩ のとき)
(5V − 0.7V)÷ 4.7kΩ ≒ 0.91mA

リレーのコイルの電流は12.5mA です。2N3904 の hFE を小さめの60 とすると、ぎりぎりのベース電流は 12.5 ÷ 60 ≒ 0.21mA。0.91mA はその約4.4倍で、連載のベース抵抗の記事の目安(3倍以上)に入ります。

ベース抵抗の計算|トランジスタでLED・リレーを動かす3ステップ
あわせて読みたい
ベース抵抗の計算|トランジスタでLED・リレーを動かす3ステップ

マイコンでトランジスタを動かすときの、ベース抵抗の決め方を3ステップで

項目13・14:抵抗の電力と、部品の定格

抵抗には、使ってよい電力(定格電力)があります。LED の R1 は、電流が(5 − 2.0)÷ 330 ≒ 9.1mA、電力が 0.0091² × 330 ≒ 0.027W です。1/8W(0.125W)の抵抗なら、定格の約22% で、目安の50% 以下に入ります。トランジスタや IC も、電流・電圧・温度が定格の中かを確かめます。

項目15:信号の電圧

3.3V で動く IC の入力に、5V の信号を入れてよいかは、データシートの入力電圧の上限で決まります。電源の違う IC どうしをつなぐ線は、1本ずつ確かめます。

つまり、「電流を決める部品はあるか」「電力は定格の50%以下か」「電圧は上限の中か」の3つを、数字で確かめる。

P2からトランジスタのベースへ直接つないだNGと、R3 4.7kΩを入れたOKの回路図。ベース電流(5−0.7)÷4.7k≒0.91mA、LEDのR1は9.1mA・0.027W

項目16・17:コイルのダイオードと、外の端子の保護

リレーやモータのコイルには、逆向きのダイオードを並べます。例の K1 には、ダイオードがありませんでした(誤り⑨)。

コイルは、流れている電流を急に止められると、高い電圧を出します。これを逆起電力と呼びます。トランジスタが OFF になった瞬間、この電圧がトランジスタにかかり、壊すことがあります。

直した版では、コイルと並べてダイオード D3(1N4001)を入れました。向きは、カソード(線の側)を +12V に、アノードをトランジスタの側にします。OFF の瞬間の電流は、ダイオードを通ってコイルに戻り、電圧は12V の少し上で止まります。

注意|ダイオードの向きを逆にしない

向きを逆に付けると、トランジスタが ON になるたびに、ダイオードを通って12V と GND がショートします。三角の先の線(カソード)が +12V の側です。

フリーホイールダイオードとは?モータ・リレーの逆起電力を逃がす仕組み
あわせて読みたい
フリーホイールダイオードとは?モータ・リレーの逆起電力を逃がす仕組み

リレーやモータの逆起電力を、ダイオードで逃がす仕組みがわかる

項目17:外につながる端子

コネクタのように外とつながる端子には、静電気・高い電圧・ショートが入ってくることがあります。保護の部品(抵抗・ダイオード・TVS ダイオードなど)が入っているかを確かめます。

つまり、保護は「コイル」と「外とつながる端子」の2か所を見る。どちらも、なくても最初は動くので見落としやすい所です。図の電圧はイメージです。

トランジスタのコレクタの電圧のイメージ。ダイオードなしはOFFの瞬間に高い電圧、ありは12Vの少し上で止まる。K1のコイルと並べたD3(カソードが+12V)の回路図

項目18〜20:部品番号・値・版数

部品番号に重複や抜けがないか、すべての部品に値・耐圧・型番が書いてあるか、どの版の回路図かを確かめます。例では R1 が2つあり(誤り⑩)、C2 に値がありませんでした(誤り⑫)。

部品表(BOM)は、回路図から作ります。同じ番号が2つあると、部品表や組み立ての指示で、どちらの R1 かわからなくなります。値のない部品は、そもそも買えません。

コンデンサは値だけでなく耐圧、抵抗は電力、IC は型番まで書きます。レビューでは「この部品を、この回路図だけで注文できるか」を考えると、書き忘れに気づけます。

項目20:版数・日付・変更点

回路図には、版数(Rev.)と日付、前の版からの変更点を書きます。レビューで指摘を受けて直したら版を上げ、「どの版をレビューしたか」を記録に残します。

つまり、図面は「ほかの人が読んで、注文して、組み立てられるか」で確かめる。番号・値・版数の3つです。

直す前の部品表(R1 10kΩとR1 330Ωが重複、C2の値が空欄)と直したあと(R4 10kΩ、R1 330Ω、C2 10µF)

12か所を直した回路図

12か所を直すと、部品が5つ増え(D1・C3・R2・R3・D3)、名前・向き・番号・値・つなぎ方が直ります。

誤り直したこと
① C1 の耐圧10V → 25V(使用率48%)
② 電源の名前「5V」を「+5V」にそろえた
③ GND ピンマイコンの GND を GND につないだ
④ パスコンC3 0.1µF をマイコンの VCC の横に足した
⑤ プルアップR2 10kΩ を P3 と +5V のあいだに足した
⑥ 未使用ピンP4 を GND につないだ
⑦ LED の向き三角を下向き(R1 → GND)にした
⑧ ベース抵抗R3 4.7kΩ を足した
⑨ コイルのダイオードD3 1N4001 をコイルと並べた
⑩ 部品番号RST の抵抗を R1 → R4 にした
⑪ 逆接続の保護D1 1N4001 を入口に足した
⑫ C2 の値10µF と書いた

つまり、レビューの結果は「直した版の回路図」と「指摘表」の2つで残す。次の節の進め方につながります。

直した回路図。J1からD1 1N4001、C1 100µF 25V、U1、C2 10µF、+5V。マイコンU2にC3 0.1µF、R4 10kΩ、R2 10kΩとSW1、P4とGNDはGNDへ、R1 330Ωと下向きのLED、R3 4.7kΩとQ1、K1にD3 1N4001

印刷して使える1枚のチェックリスト

20項目を、A4 の1枚にまとめました。レビューの前に、自分の回路図に当てはめて、□ にチェックを入れていきます。

上の欄に、回路名・版・日付・確認した人を書きます。NG だった項目は、次の節の指摘表に書き写します。

最初は時間がかかりますが、何度か使うと、どの項目で自分が引っかかりやすいかがわかってきます。その項目を、自分用に太字にしておくのもよい方法です。

つまり、チェックリストは「毎回、同じ順で見る」ための道具。順番が決まっていれば、見落としが減ります。

A4たての印刷用チェックリスト。回路名・版・日付・確認した人の欄と、A〜Eの5グループ・20項目のチェック欄

回路図レビューの進め方:4ステップと指摘表

回路図レビューは、①前日に資料を配る②チェックリストで上から見る③指摘表に書く④直して版を上げる、の4ステップで進めます。

STEP 1:前日に配る

回路図・部品表・主な部品のデータシートを、レビューの前に配る

STEP 2:上から順に見る

このチェックリストの順に、1項目ずつ確かめる

STEP 3:指摘表に書く

番号・場所・どこが(なぜ)・どう直すを1行に書く

STEP 4:直して確かめる

直したら版を上げ、指摘表の状態を「済」にする

指摘は「どこが・なぜ・どう直す」の3つをそろえて書きます。「C1 がおかしい」ではなく「C1 の耐圧10V が12V より低い(項目4)→ 25V 品に変える」と書くと、直す人も確かめる人も迷いません。

レビューの進め方の全体(誰が・いつ・何を決めるか)は、品質管理の DR(デザインレビュー)の考え方と同じです。基板の段階の点検は、パワエレ基板のチェックリストにまとめています。

つまり、レビューは「見つける → 書く → 直す → 閉じる」で1回。指摘表が残れば、次の設計にも生かせます。

前日に配る・上から順に見る・指摘表に書く・直して確かめるの4ステップと、指摘表の例(C1の耐圧・U2のVCCの名前・K1のダイオード)

よくある質問(FAQ)

Q. 回路図レビューでは何をチェックする?

A. 電源とGND、ICのピン、部品の向きと値、保護、図面の5グループ・20項目を、上から順に確かめます。

Q. 回路図レビューのチェックリストはどの順で見る?

A. 電源とGNDから見ます。電源とGNDが正しくないとICは動かないので、ピンや部品の確認が無駄になるからです。

Q. 使わない入力ピンはどうする?

A. VCCかGNDにつなぎます。浮いたままだと電圧が定まらず、誤動作や電流の増加の原因になります。

Q. パスコンはいくつ必要?

A. ICの電源ピンごとに1つ以上です。0.1µFのセラミックコンデンサを、電源ピンのすぐ近くに置くのが基本です。

Q. コンデンサの耐圧はどれくらい余裕を見る?

A. この記事では、使う電圧が耐圧の80%以下を目安にしています。12Vの線なら25V品が目安です。

Q. 回路図レビューの指摘はどう書く?

A. 番号・場所・どこが(なぜ)・どう直すを1行にまとめます。直したら版を上げ、状態を済にします。

まとめ
  • 回路図レビューは、作る前に誤りを見つける点検。直すのは線1本で済む
  • 20項目は「電源とGND → ICのピン → 向きと値 → 保護 → 図面」の順に見る
  • 見落としやすいのは「描き忘れ」:電源の名前・GND・未使用ピン・パスコン・プルアップ
  • 数字で確かめる:耐圧の使用率(12V÷10V=120% は NG)、抵抗の電力(50%以下)
  • コイルには逆向きのダイオード、外の端子には保護
  • 指摘は「どこが・なぜ・どう直す」を1行に。直したら版を上げて閉じる

次の一歩として、印刷用のチェックリストを手元に置き、いま描いている回路図を上から順に点検してみてください。1回目は時間がかかっても、2回目からは自分の引っかかりやすい項目が見えてきます。

参考にした資料

法令・規格・資料は改訂されることがあります。実務で使うときは、発行元の最新版で確かめてください。

この記事の理解を深める本と道具
おすすめの本

半導体を使った回路を、トランジスタ回路の設計の基本から理解したい人に向いています。トランジスタを使った増幅回路の設計を、実験を通して解説した本です(CQ出版、鈴木雅臣 著)。

おすすめの本

電源回路の設計を、要求仕様から短時間でまとめる実務の考え方まで知りたい人に向いています。要求仕様どおりの電源を短時間で設計するための、電源回路設計の本です(CQ出版、馬場清太郎 著)。

おすすめの道具

回路の電圧や導通を自分の手で確かめるなら、手元にテスターが1台あると便利です。三和電気計器のデジタルマルチメータ(テスター)CD772です。電圧や抵抗などを測れます。

S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

テーマ別に、もっと深く学ぶ

気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめて学ぶ人向けにやさしく書いています。

つまずきやすい「違い」を一気に解決
回路図とアートワーク(基板図)の違いと関係|「線」が「銅箔」に変わるまでを図解
違いがわかる
回路図とアートワーク(基板図)の違いと関係|「線」が「銅箔」に変わるまでを図解

回路図の線が、基板の銅箔になるまでの関係を図で整理できる

違いを確かめる →
FG・SG・LG・PGNDの違い|なぜグランドを分けないと機器が壊れるのか
違いがわかる
FG・SG・LG・PGNDの違い|なぜグランドを分けないと機器が壊れるのか

GND の名前がいくつもある理由と、分けないと何が起きるか

違いを確かめる →
【完全図解】デカップリングコンデンサとは?|パスコン・バイパスとの違いと「ICの近くに置く理由」
違いがわかる
【完全図解】デカップリングコンデンサとは?|パスコン・バイパスとの違いと「ICの近くに置く理由」

パスコン・デカップリング・バイパスの呼び方の違いがすっきりする

違いを確かめる →
ショットキーと整流ダイオードの違い|置き換えの判断と使い分けを図解
違いがわかる
ショットキーと整流ダイオードの違い|置き換えの判断と使い分けを図解

保護に使うダイオードを、ショットキーと整流用で選び分けられる

違いを確かめる →
計算力アップ・資格対策
LED抵抗の計算|何Ω・何Wかを3ステップで、早見表つき
計算力アップ
LED抵抗の計算|何Ω・何Wかを3ステップで、早見表つき

LED の抵抗を何Ω・何W にするかを3ステップで計算できる

計算してみる →
抵抗値の決め方|電流・電圧・時間の3つの型で迷わない
計算力アップ
抵抗値の決め方|電流・電圧・時間の3つの型で迷わない

電流・電圧・時間の3つの型で、抵抗値を迷わず決められる

計算してみる →
抵抗値Ω(オーム)とは?1Ωの意味とkΩ・MΩ、オームの法則の計算例
計算力アップ
抵抗値Ω(オーム)とは?1Ωの意味とkΩ・MΩ、オームの法則の計算例

プルアップやベース電流の計算に使う、オームの法則の例題

計算してみる →
抵抗器のデータシートの読み方|抵抗値・許容差・定格電力・TCR・サイズの見方
計算力アップ
抵抗器のデータシートの読み方|抵抗値・許容差・定格電力・TCR・サイズの見方

抵抗の定格電力・許容差を、データシートで確かめられる

計算してみる →

-回路設計
-