回路設計

オペアンプの選び方|データシートの5項目と定番品の比較表

ブレッドボードに並んだ4つの8本足のオペアンプのICとピンセットの写真に、迷わないオペアンプの選び方・5つの項目・電源・レール・オフセット・GB積・入力電流の文字

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オペアンプの選び方は、電源電圧・レールtoレール・オフセット電圧・GB積・入力バイアス電流の5項目を、用途で効く順に見ることです。定番の5品番を並べた比較表と、用途別の選び方の例から読むと早く決まります。

結論|まず30秒でわかる答え

①電源電圧:使う電源で動くか
②レールtoレール:電源の端まで入力・出力を使えるか
③オフセット電圧:出力のずれ=オフセット×ゲイン
④GB積:使える周波数=GB積÷ゲイン
⑤入力バイアス電流:電圧のずれ=電流×入力側の抵抗
値はデータシートの「電気的特性」の表で、自分の電源電圧の条件の最大値を見ます。

この記事に出てくる言葉

わからない言葉が出てきたら、ここに戻ってきてください。本文でも、初めて出たところで言い換えます。

動作電源電圧そのオペアンプが動く電源の電圧の範囲。例 1.8〜5.5V
レールtoレール入力や出力が、電源の端(0V や 5V)のすぐ近くまで使える性質
オフセット電圧(Vos)入力を0にしても残る、+と−の小さなずれ。数µV〜数mV
GB積(GBW)ゲイン×使える周波数の上限。単位は Hz。例 1MHz
入力バイアス電流(Ib)入力の端子に流れ込む(流れ出る)小さな電流。pA〜nA
データシートメーカーが出す部品の説明書。数字と条件が表で載っている
標準値・最大値標準はばらつきの真ん中の目安、最大は保証されている上限
CMOS(シーモス)入力にトランジスタの一種(MOSFET)を使う作り。入力の電流が pA と小さい

オペアンプの品番は、1つのメーカーだけでも数百あります。全部を比べるのは無理なので、選ぶときは「この回路で効いてくる項目」から順に候補をしぼります。

この記事では、5つの項目をそれぞれ「出力が何V ずれるか」「何Hz まで使えるか」という計算に直し、定番の5品をデータシートの数字で比べます。オペアンプのつなぎ方そのものは、連載の前の記事や理論の記事で扱っています。

ブレッドボードに並んだ4つの8本足のオペアンプのICとピンセットの写真に、迷わないオペアンプの選び方・5つの項目・電源・レール・オフセット・GB積・入力電流の文字

オペアンプの選び方:データシートで見る5つの項目

オペアンプを選ぶときに見るのは、電源電圧・レールtoレール・オフセット電圧・GB積・入力バイアス電流の5つです。上から順に確かめると、候補が数個にしぼれます。

項目確かめること効いてくる場面
① 電源電圧使う電源(3.3V・5V・12V…)で動くかどの回路でも最初に
② レールtoレール0V や電源の近くまで入力・出力を使えるか5V・3.3V の片電源
③ オフセット電圧入力0でも出る、出力のずれ小さい信号を大きく増幅する
④ GB積何倍で、何Hz まで増幅できるか音などの速い信号
⑤ 入力バイアス電流入力の端子に流れる電流による電圧のずれ抵抗の大きい所の電圧を受ける

ほかにも、消費電流・スルーレート(出力の電圧が変われる速さ)・ノイズなどの項目があります。はじめは5つで候補をしぼり、残った2〜3品で必要な項目を見比べれば十分です。

オペアンプのつなぎ方(フォロワ・非反転増幅・反転増幅)や「+と−をそろえる」ルールは、ここでは使う前提で進めます。組み方は連載の前の記事(記事の最後の「次に読むべき記事」)で扱っています。

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つまり、オペアンプは「5つの項目を、効く順に」見て選びます。全部を最高にする必要はありません。

5枚のカード。電源電圧・レールtoレール・オフセット電圧・GB積・入力バイアス電流と、効く場面、データシートでの名前、この記事の5品番の値の範囲

用途から、効いてくる項目を決める

どの項目が大事かは、用途で変わります。この記事では、よくある3つの用途を例に、効く項目から確かめていきます。

用途の例条件とくに効く項目
センサーの増幅5V の片電源で、10mV の信号を100倍して1V に電源・レールtoレール・オフセット
電圧の監視3.3V で、電池(最大4.2V)を1MΩ と1MΩ で半分にして受ける電源・レールtoレール・入力バイアス電流
音の増幅20kHz までの信号を10倍に電源・GB積

電源電圧は、どの用途でも最初に確かめます。動かない電源で比べても意味がないからです。そのあと、用途ごとに効く項目を、計算で「何V ずれるか」「何Hz まで使えるか」に直して比べます。

たとえると

車を選ぶとき、通勤なら燃費、引っ越しなら荷室、山道なら馬力を先に見るのと同じです。全部の性能が最高の車はなく、オペアンプも用途で見る順番が変わります。

つまり、まず用途を言葉にして「◎の項目」を決める。それから品番を比べます。

センサーの増幅・電圧の監視・音の増幅の3つの用途と、5項目の大事さを◎○△で示した表

項目1 電源電圧:使う電源が「動作電源電圧」の範囲に入るか

データシートの「推奨動作条件(Recommended Operating Conditions)」の電源電圧の範囲に、使う電源が入っているかを見ます。3.3V・5V なら1.8〜5.5V 前後の CMOS の品種、12V 以上なら LM358 や NJM4558 のような品種です。

品番電源電圧の範囲3.3V5V12V
LM3583〜30V○○○
MCP60021.8〜6.0V○○×
TLV90621.8〜5.5V○○×
OPA23331.8〜5.5V○○×
NJM4558±4〜±18V(合計8〜36V)××○

±の表記に注意します。NJM4558 の「±4V」は、+4V と −4V の2つの電源、つまり合計8V のことです。5V の片電源では範囲に入りません。

範囲の端ぎりぎりで使うのは避けます。電池のように電圧が下がっていく電源なら、いちばん低くなったときにも範囲に入っているかを確かめます。

つまり、項目1は「使う電源の最低と最高が、範囲に入るか」。ここで候補の半分くらいが消えます。

5品番の電源電圧の範囲の横棒グラフ。LM358 3〜30V、MCP6002 1.8〜6V、TLV9062とOPA2333 1.8〜5.5V、NJM4558 8〜36V(±4〜±18V)。3.3V・5V・12V・24Vの線

項目2 レールtoレール:入力と出力が、電源の端まで使えるか

レールtoレールは、入力や出力が電源の端(0V や 5V)のすぐ近くまで使える性質です。5V や3.3V の片電源で、信号を電源いっぱいまで使うなら必要です。

「レール」は電源の線(0V と 5V)のことです。レールtoレールでない品種は、入力や出力が電源の端から少し離れた所までしか届きません。

5V で使うと入力に入れられる範囲出力が届く範囲
LM3580V〜約3.5V(電源−1.5V)約0V〜約3.5V
MCP6002−0.3V〜5.3V約0.025V〜約4.975V

入力と出力は別の項目です。データシートでは、入力は「同相入力電圧範囲(Common-mode voltage range)」、出力は「出力電圧振幅(Voltage output swing)」の行に載っています。品種によっては「出力だけレールtoレール」のものもあるので、両方を確かめます。

注意|レールtoレールでも「ぴったり0V・5V」ではない

MCP6002 でも、出力は電源の端から約0.025V 離れます。負荷の抵抗が小さい(電流を多く取る)ほど、さらに離れます。0V ぴったりの出力が要る回路では、この差も見込みます。

つまり、項目2は「入力の範囲」と「出力の範囲」の2行を見る。片電源なら、入出力レールtoレールの品種が使いやすい選択です。

5Vで使うときの入力と出力の範囲。LM358は入力0〜3.5V・出力0.005〜3.5V、MCP6002は入力−0.3〜5.3V・出力0.025〜4.975V

項目3 オフセット電圧:入力が0でも、出力がずれる元

オフセット電圧は、入力を0にしても残る+と−の小さなずれです。増幅すると、ずれも同じ倍率で大きくなります。出力のずれ=オフセット電圧×ゲインで見積もります。

出力のずれ
出力のずれ = オフセット電圧(最大値)× ゲイン

オペアンプの中の部品は、左右でわずかに違います。そのため、+と−が「ぴったり同じ」ではなく、少しずれたところで落ち着きます。入力に小さな電池がつながっているのと同じで、その電圧がオフセット電圧です。

1倍で使うなら、7mV のずれは気になりません。ところが100倍にすると、7mV×100=0.7V になります。センサーの小さい信号を大きく増幅する回路では、ここが選び方の決め手になります。

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つまり、オフセットは「ゲインが大きいほど効く」。ゲイン1〜数倍なら、どの品種でもたいてい足ります。

入力0Vのオペアンプの+入力に小さな電池がつながったイメージ図と、Vos 7mV×100倍=0.7V、10μV×100倍=0.001Vの計算

計算例:10mVの信号を100倍するとき、出力はどれだけずれる?

5V の片電源で、センサーの10mV を100倍して1V にする回路で比べます。オフセット電圧はデータシートの25°C の最大値です。

品番オフセット電圧(最大)×100 の出力のずれ信号1V に対して
LM3587mV0.7V70%
MCP60024.5mV0.45V45%
TLV90621.6mV0.16V16%
OPA233310µV0.001V(1mV)0.1%
NJM45586mV(±15V のとき)0.6V60%

この用途では、OPA2333 のような「ゼロドリフト」と呼ばれる低オフセットの品種でないと、信号よりずれの方が目立ちます。ずれは温度でも変わる(ドリフト)ので、データシートの「オフセット電圧の温度ドリフト」の行も見ます。

POINT|ずれは校正で引ける場合もある

ずれが一定なら、入力0のときの出力を測って、マイコンで引き算すると打ち消せます。ただし温度で変わる分は残るので、小さいほど安心です。

5品番のオフセット電圧の最大値×100の横棒グラフ(対数)。LM358 700mV、MCP6002 450mV、TLV9062 160mV、OPA2333 1mV、NJM4558 600mV。信号1Vの線

項目4 GB積:ゲイン×周波数が、ほぼ一定

GB積(ゲイン帯域幅積)は、ゲインと使える周波数の掛け算の上限です。GB積1MHz の品種なら、10倍で約100kHz、100倍で約10kHz まで使えます。

使える周波数の目安
使える周波数 ≒ GB積 ÷ ゲイン

オペアンプの増幅の力は、周波数が高くなるほど弱くなります。高いゲインで使うほど、早く力が足りなくなります。この関係が「ゲイン×周波数=ほぼ一定」で、その値が GB積です。

GB積÷ゲインの周波数では、ゲインはすでに約0.7倍(−3dB)に下がっています。だから、使いたい周波数より十分に上に、この点が来るように選びます。

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つまり、GB積は「速い信号を大きく増幅するときの上限」。センサーのようなゆっくりした信号なら、小さい GB積でも足ります。

GB積1MHzのオペアンプのゲインと周波数のグラフ(イメージ)。1倍は約1MHz、10倍は約100kHz、100倍は約10kHzでゲインが約0.7倍に下がる

計算例:音(20kHz)を10倍にするなら、何MHz 要る?

STEP 1 ぎりぎりの値

ゲイン10倍×20kHz=200kHz。これだと20kHz でゲインが約0.7倍に下がる

STEP 2 余裕をかける

目安として10倍の余裕をかけて、200kHz×10=2MHz 以上

STEP 3 品番と比べる

TLV9062(10MHz)・NJM4558(3MHz)は目安以上。MCP6002(1MHz)・LM358(0.7MHz)・OPA2333(0.35MHz)は目安未満

10倍の余裕をとると、20kHz でのゲインの下がりは約0.5% に収まります(計算)。余裕の倍率は回路の求める精度で変わるので、「10倍」は出発点の目安です。

NJM4558 は GB積は足りますが、電源は±4V 以上(合計8V 以上)が要ります。5V だけで組むなら、5V で動いて GB積も足りる TLV9062 が残ります。

注意|大きな振幅ではスルーレートも見る

出力の電圧が変われる速さ(スルーレート)が遅いと、大きな振幅の速い信号で波の形がくずれます。データシートの「Slew rate」の行も、音の回路では確かめます。

計算 10倍×20kHz=200kHz、余裕10倍で2MHz以上。5品番のGB積の横棒グラフで、TLV9062 10MHzとNJM4558 3MHzが目安以上、LM358・MCP6002・OPA2333は目安未満

項目5 入力バイアス電流:入力の端子に流れる小さな電流

入力バイアス電流は、オペアンプの入力の端子に流れる小さな電流です。この電流が入力側の抵抗を流れると、電圧がずれます。電圧のずれ=入力バイアス電流×入力側の抵抗で見積もります。

電圧のずれ
電圧のずれ = 入力バイアス電流(最大値)× 入力側から見た抵抗

例として、3.3V で動くマイコンで、リチウムイオン電池(最大4.2V)の電圧を測る回路を考えます。電池をむだに減らさないよう、1MΩ と1MΩ の分圧で半分にし、フォロワで受けます。分圧に流れる電流は 4.2V÷2MΩ=2.1µA だけです。

オペアンプの入力から見ると、上の1MΩ と下の1MΩ が並列に見えて、500kΩ です。入力バイアス電流がここを流れると、そのぶん電圧がずれます。

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つまり、入力バイアス電流は「入力側の抵抗が大きいほど効く」。kΩ の回路なら気にならなくても、MΩ では効いてきます。

電池(最大4.2V)を1MΩと1MΩで分けてフォロワで受ける回路。入力側から見た抵抗は500kΩで、LM358の最大250nAなら0.125V、MCP6002の標準1pAなら0.5μVずれる

計算例:500kΩの所で、何V ずれる?

品番入力バイアス電流×500kΩ のずれ
LM358標準20nA・最大250nA標準10mV・最大125mV
MCP6002標準1pA標準0.5µV
TLV9062標準0.5pA標準0.25µV
OPA2333標準70pA・最大200pA標準35µV・最大100µV
NJM4558標準25nA・最大500nA(±15V)標準12.5mV・最大250mV

LM358 の最大値では0.125V ずれ、測りたい2.1V(4.2V の半分)に対して約6% の誤差です。MCP6002 のような CMOS 入力の品種なら、ずれはほぼ0です。

さらに、LM358 は3.3V で使うと入力の上限が 3.3−1.5=1.8V なので、2.1V はそもそも入れられません。この用途では MCP6002 が残ります。

注意|CMOS の入力の電流は温度で大きく増える

MCP6002 の入力バイアス電流は、25°C で標準1pA ですが、125°C では標準1100pA です。高温で使う機器では、使う温度の行で見積もります。

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5品番の入力バイアス電流の標準と最大、500kΩでの電圧のずれの表。LM358 10mV・125mV、MCP6002 0.5μV、TLV9062 0.25μV、OPA2333 35μV・100μV、NJM4558 12.5mV・250mV

データシートのどこを見る? 5項目の場所

5項目は、データシートの1ページ目(特長)・推奨動作条件・電気的特性の表に載っています。1ページ目で候補を選び、電気的特性の表で条件と最大値を確かめます。

項目1ページ目(Features)表の行の名前(例)
電源電圧Supply voltage: 1.8V to 5.5V などSupply voltage(VS・VDD)
レールtoレールRail-to-rail input/outputCommon-mode voltage range、Voltage output swing
オフセット電圧Low offset voltage などInput offset voltage(VOS・VIO)
GB積Gain bandwidth: 1MHz などGain bandwidth product(GBW・GBP・GB)
入力バイアス電流Low input bias current などInput bias current(IB)

日本のメーカーのデータシートは日本語で、「電気的特性」「入力オフセット電圧」「利得帯域幅積」のように書かれています。名前が少し違っても、記号(VIO・IB・GB)で探せます。

1ページ目の数字は「いちばん良い条件での標準値」のことが多いので、比べる最初の目安にとどめます。

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つまり、1ページ目で候補を選び、電気的特性の表で決める。表の見方は次の節です。

データシートの4つの場所のイメージ。1ページ目の特長、ピン配置、推奨動作条件、電気的特性(オフセット・バイアス電流・GB積・出力の振れ)

電気的特性の表の読み方:「条件」と「最大値」を見る

電気的特性の表には、項目ごとに「条件」「最小」「標準」「最大」「単位」が並んでいます。読むときのポイントは2つです。

① 条件を見る

電源電圧・温度・負荷の抵抗が、自分の回路と同じ行を使う。同じ項目でも条件ごとに行が分かれていることがある

② 最大値で見積もる

標準値はばらつきの真ん中の目安。何百個作っても動く回路にするなら、最大(最悪)の値で計算する

たとえば LM358 の入力オフセット電圧は、標準3mV・最大7mV です。標準で見積もると、最大に近い部品に当たったとき、ずれが2倍以上になります。

「標準」しか書かれていない項目(GB積など)は、ばらつきを見込んで余裕を多めにとります。

LM358の値で作った電気的特性の表のイメージ。入力オフセット電圧 標準3・最大7mV、入力バイアス電流 標準−20・最大−250nA、GB積0.7MHz、同相入力電圧範囲 (V−)〜(V+)−1.5V。条件を青、最大を赤で強調

定番品の比較表:5つの品番を5項目で

よく使われる5つのオペアンプを、5項目で比べました。数字は各メーカーのデータシートの25°C の値です。

品番(メーカー)電源電圧レールtoレールオフセット(最大)GB積入力バイアス電流向いている用途
LM358(TI)3〜30Vなし7mV0.7MHz20nA(最大250nA)12V・24V の電源、ゆっくりした信号
MCP6002(Microchip)1.8〜6.0V入力・出力4.5mV1MHz1pA3.3V・5V の一般用、電圧の監視
TLV9062(TI)1.8〜5.5V入力・出力1.6mV10MHz0.5pA5V で速い信号(音など)
OPA2333(TI)1.8〜5.5V入力・出力10µV0.35MHz70pA(最大200pA)小さいセンサーの信号の増幅
NJM4558(日清紡マイクロデバイス)±4〜±18Vなし6mV3MHz25nA(最大500nA)±の電源の音の回路

条件はデータシートごとに違います(LM358 は5V、MCP6002 は1.8〜5.5V、TLV9062・OPA2333 は5V、NJM4558 は±15V の値)。設計に使う前に、元の表で自分の条件の行を確かめてください。

POINT|ブレッドボードで試すならパッケージも見る

MCP6002 と LM358 には足の長い DIP-8 があり、ブレッドボードにそのまま挿せます。TLV9062・OPA2333 は SOIC などの表面実装だけなので、変換基板が要ります。NJM4558 の DIP8 は生産終了品です。

LM358・MCP6002・TLV9062・OPA2333・NJM4558の比較表。電源電圧、レールtoレール、オフセットの最大、GB積、入力バイアス電流

用途別の選び方の例:3つの場面で、どれを選ぶ?

3つの用途を、◎の項目から順に確かめると、残る品番は1〜2個です。

センサーの増幅(5V・10mV を100倍)→ OPA2333

電源5V で動くのは MCP6002・TLV9062・OPA2333・LM358。オフセット×100 のずれは OPA2333 が1mV で、ほかは0.16〜0.7V。信号はゆっくりなので、GB積0.35MHz(100倍で約3.5kHz まで)で足ります。

電圧の監視(3.3V・1MΩ の分圧)→ MCP6002

3.3V で動き、入力に2.1V を入れられるのは、入力レールtoレールの品種。入力バイアス電流×500kΩ のずれは CMOS 入力ならほぼ0。DIP があってブレッドボードで試しやすい MCP6002 が候補になります。

音の増幅(5V・20kHz を10倍)→ TLV9062

GB積の目安は2MHz 以上。5V で動く品種で目安以上なのは TLV9062(10MHz)です。±の電源が使えるなら、NJM4558(3MHz)も候補になります。

つまり、選び方は「電源で消す → ◎の項目で計算して消す → 残った中から、手に入りやすさ・パッケージで決める」の順です。

3つの用途と選ぶ品番。センサーの増幅はOPA2333、電圧の監視はMCP6002、音の増幅はTLV9062。理由と外れた候補

よくある失敗4つ:標準値・条件ちがい・片方だけ・ぎりぎり

オペアンプの選び方の失敗は、標準値で設計する・条件のちがう値を使う・片方だけのレールtoレールを見落とす・GB積をぎりぎりで選ぶ、の4つが代表です。

失敗1:標準値で設計する

LM358 のオフセットを標準3mV で見積もると、最大7mV の部品に当たったとき、ずれは2倍以上になります。保証されている最大値で見積もります。

失敗2:条件のちがう値を使う

±15V で測った値を、5V の回路にそのまま当てはめると、入力や出力の範囲が合いません。自分の電源電圧・温度の行を探します。

失敗3:片方だけのレールtoレールを見落とす

「レールtoレール」と書いてあっても、出力だけ、入力だけの品種があります。入力と出力の両方の範囲を表で確かめます。

失敗4:GB積をぎりぎりで選ぶ

10倍・20kHz に GB積200kHz の品種を選ぶと、20kHz でゲインが約0.7倍に下がります。目安として10倍の余裕をとります。

つまり、迷ったら「最大値」「自分の電源電圧の条件」「余裕10倍」の3つで見直すと、選び間違いを防げます。

4つの失敗。標準値で設計する、条件のちがう値を使う、片方だけのレールtoレール、GB積がぎりぎり

よくある質問(FAQ)

Q. オペアンプの選び方は?

A. 電源電圧・レールtoレール・オフセット電圧・GB積・入力バイアス電流の5項目を、用途で効く順に確かめます。

Q. 5Vの片電源ではどのオペアンプを選ぶ?

A. 入出力レールtoレールでCMOS入力の品種が使いやすいです。例はMCP6002やTLV9062です。

Q. オフセット電圧はどう見積もる?

A. データシートの最大値にゲインを掛けると出力のずれになります。7mVを100倍すると0.7Vです。

Q. GB積はどれくらい必要?

A. ゲイン×使う最高の周波数に、目安として10倍の余裕を掛けます。10倍・20kHzなら2MHz以上です。

Q. 入力バイアス電流はいつ気にする?

A. 入力側の抵抗が大きいときです。電流×抵抗で電圧がずれ、MΩの分圧ではnAの電流でも効きます。

Q. データシートの標準値と最大値はどちらを使う?

A. 設計には最大値を使います。標準値はばらつきの真ん中で、全部の部品がその値になるわけではありません。

まとめ
  • オペアンプは5項目(電源電圧・レールtoレール・オフセット・GB積・入力バイアス電流)で選ぶ
  • 用途で効く項目が変わる。電源電圧はどの用途でも最初に確かめる
  • オフセット:出力のずれ=オフセット(最大)×ゲイン
  • GB積:使える周波数≒GB積÷ゲイン。目安として10倍の余裕
  • 入力バイアス電流:電圧のずれ=電流×入力側の抵抗。MΩ の回路では CMOS 入力
  • データシートは「電気的特性」の表で、自分の条件の行の最大値を見る

次の一歩として、手元の回路のオペアンプの品番でデータシートを開き、5項目の数字を表から探してみてください。数字の場所がわかれば、ほかの品番との比べ方も同じです。

参考にした資料

法令・規格・資料は改訂されることがあります。実務で使うときは、発行元の最新版で確かめてください。

この記事の理解を深める本と道具
おすすめの本

「オペアンプの選び方」は、回路シミュレータで電圧や電流の波形を見ながら確かめると理解が深まります。無料の回路シミュレータLTspiceを使って、電子回路を学べる本です(オーム社、渋谷道雄 著)。

おすすめの道具

回路の電圧や導通を自分の手で確かめるなら、手元にテスターが1台あると便利です。三和電気計器のデジタルマルチメータ(テスター)CD772です。電圧や抵抗などを測れます。

おすすめの道具

波形を自分の目で確かめるなら、手元にオシロスコープが1台あると便利です。RIGOLのデジタル・オシロスコープ DHO804です。周波数帯域70MHz・4チャンネルで、12ビットの垂直分解能をもちます。

S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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ブリッジ回路の種類と平衡条件|ホイートストンから交流ブリッジまで測るものを図解|計算ツール付き
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ブリッジ回路の種類と平衡条件|ホイートストンから交流ブリッジまで測るものを図解|計算ツール付き

センサーの小さな電圧を作るブリッジ回路の、平衡と不平衡の計算

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真の値・誤差率・補正率|「100%正確な測定」が存在しない理由
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真の値・誤差率・補正率|「100%正確な測定」が存在しない理由

オフセットで出たずれを「誤差率」で表す計算ができる

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オームの法則 V=IR とは?電圧・電流・抵抗の関係を「水道管」で図解|例題つき
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オームの法則 V=IR とは?電圧・電流・抵抗の関係を「水道管」で図解|例題つき

「電流×抵抗=電圧のずれ」の土台、オームの法則を確かめられる

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合成抵抗の求め方|直列・並列・和分の積からブリッジ回路まで例題で図解(計算ツール付き)
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合成抵抗の求め方|直列・並列・和分の積からブリッジ回路まで例題で図解(計算ツール付き)

1MΩ と1MΩ が並列で500kΩ になる計算を、例題で練習できる

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RC時定数の決め方|フィルタ・遅延・チャタリング除去の部品値を実例で
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RC時定数の決め方|フィルタ・遅延・チャタリング除去の部品値を実例で

オペアンプの前に置くことが多い、RC のノイズ落としの値の決め方

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抵抗値の決め方|電流・電圧・時間の3つの型で迷わない
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抵抗値の決め方|電流・電圧・時間の3つの型で迷わない

オペアンプのまわりの抵抗を、電流・電圧・時間の3つの型で決められる

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-回路設計
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