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回路が動かないとき、いきなり出力の波形を見たり、部品を交換したりしたくなります。ところが、原因が電源にあると、どれだけ出力を調べても見つかりません。
この記事では、タイマー IC「NE555」で LED を点滅させる回路を例に、どこを・どの順番で・何で測ればいいかを7ステップで説明します。体験談ではなく、どの回路にも使える一般的な手順です。

回路が動かない時の切り分け:7ステップのフローチャート
回路が動かない時の切り分けは、上から順に7つのステップを確かめ、NG が出たところで止まって直す、のくり返しです。上のステップほど、ほかのすべてに効く「上流」です。
STEP 6 は発振・クロックの確認、STEP 7 は信号を入口から出口へ追う作業です。STEP 1〜5 で「IC が動ける状態か」を確かめ、STEP 6・7 で「IC が正しく動いているか」を確かめます。
つまり、切り分けは「上から順に、1つずつ OK を積み上げる」作業です。

この記事で使う例:NE555 で LED を点滅させる回路
例に使うのは、タイマー IC の NE555 で、LED を約1秒に1回点滅させる回路です。動かないときに比べるため、先に「本来どう動くか」を知っておきます。
| 部品 | 値 | 役目 |
|---|---|---|
| NE555 | 8本足のタイマー IC | 決まった時間で H と L をくり返す |
| RA・RB | 10kΩ・68kΩ | C と組んで、点滅の時間を決める |
| C | 10µF | 電気をためたり出したりして時間を作る |
| CONT のコンデンサ | 0.01µF | 5番ピンを安定させる |
| 1kΩ と LED | 赤色 LED | 出力が H のとき光る |
| パスコン | 0.1µF | 電源の電圧のゆれを吸収する |
TI のデータシートでは、H の時間は tH≒0.693×(RA+RB)×C、L の時間は tL≒0.693×RB×C です。
tH=0.693×(10kΩ+68kΩ)×10µF=0.693×78000×0.00001≒0.54秒。tL=0.693×68000×0.00001≒0.47秒。合わせて約1.0秒で1回点滅します。
つまり、切り分けを始める前に「本来の値」を用意しておく。この記事の正常値の表が、その地図です。

なぜ「電源→GND→リセット→信号」の順に確かめるのか
電源・GND・リセットのどれかが NG だと、その先の信号はすべて止まります。下流の信号から調べると、原因が上流にあっても気づけないので、上流から確かめます。
IC は、電源が来て、GND(電流の帰り道)があって、リセットで止められていないときに、はじめて動きます。この3つは、回路のすべての部分の土台です。
出力に波形が出ないとき、原因は出力の部分だけとは限りません。電源の線が1本抜けているだけでも、同じ「波形が出ない」になります。
上流から1つずつ「ここまでは OK」と確かめると、原因のある範囲がどんどんせまくなります。これが切り分けです。
つまり、上流の確認は短い時間でできて、外れても損がない。だから最初に確かめます。

STEP1 電源を入れる前に、目で見て確かめる
電源を入れる前に、IC の向き・向きのある部品・ショート・抜けの4つを目で確かめます。電源を入れてからでは、部品が壊れてしまうことがあります。
| 見る所 | 確かめること |
|---|---|
| IC の向き | 切り欠き・丸印の左が1番ピン。回路図のピン番号と合っているか |
| 向きのある部品 | LED・ダイオード・電解コンデンサの+と−が、回路図と同じ向きか |
| ショート | はんだが隣の足とつながっていないか。むき出しの線どうしが触れていないか |
| 抜け・ずれ | 足が穴に入っているか。ブレッドボードで1列ずれていないか |
IC を逆向きに挿すと、電源が本来と別のピンに入ります。NE555 なら、8番(VCC)に入るはずの5V が4番に、1番(GND)に入るはずの0V が5番に入り、壊れることがあります。
ブレッドボードでは、縦に並んだ5つの穴が中でつながっています。部品の足が1列ずれると、つながるはずの部品とつながりません。
はんだのブリッジやイモはんだを、見た目で見分けるコツがわかる
つまり、STEP1 は「電源を入れる前の最後の確認」。ここで見つかる失敗が、実はいちばん多いです。

STEP2 電流制限をかけて電源を入れ、電流を見る
電源装置の電流制限を、正常な電流より少し上に決めてから電源を入れます。電流が多すぎればショートや部品の逆向き、ほぼ0なら断線です。
電流制限つきの電源装置は、決めた電流より多く流れないようにする機能があります。ショートしていても、大きな電流が流れ続けないので、部品を守れます。
例の回路の正常な電流を見積もる
NE555 の電源電流(出力 L・無負荷)は、データシートで typ 3mA・max 6mA です。
LED の電流は、多くても(5V−2V)÷1kΩ=3mA です。RA に流れる電流は、多くても5V÷10kΩ=0.5mA です。
合わせて、6+3+0.5=9.5mA 以下。電流制限は、少し上の50mA にしておきます。
| 電源の表示 | 考えられること | 次にすること |
|---|---|---|
| 約10mA 以下 | 正常 | STEP3 へ |
| 制限値に張り付く・電圧が下がる | ショート・部品が逆向き | すぐ電源を切り、STEP1 に戻る |
| ほぼ0mA | 電源の線が切れている・抜けている | STEP3 で、どこまで電圧が来ているか測る |
つまり、STEP2 は「電流で健康診断」。数字1つで、ショートと断線のどちらかがわかります。

STEP3 IC のピンの根元で電源電圧を測る
テスターを直流電圧(DCV)のレンジにして、黒を IC の GND ピン、赤を VCC ピンに当てます。NE555 なら1番と8番の間が、推奨の4.5〜16V に入っていれば OK です。
大事なのは、電源装置の端子ではなく、IC の足の根元で測ることです。電源の端子で5V でも、途中の線が切れていれば、IC の足では0V になります。
電圧が低いときは、電源から IC までの線のどこかで電圧が下がっています。電源の端子、線の途中、IC の足と、順に測ると、どこで下がったかがわかります。
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つまり、電源電圧は「IC の足で」測る。部品が受け取っている電圧が、本当の電源電圧です。

STEP4 GND がつながっているかを確かめる
GND は電流の帰り道です。電源を入れたまま電源の−と IC の GND の間の電圧が0V に近いか、電源を切って導通(ブザー)が鳴るかで確かめます。
GND が切れていると、電流が電源へ戻れず、IC は動けません。STEP3 で VCC と GND の間を測ったのに、なぜもう一度確かめるのかというと、GND の線が別の場所で切れていることがあるからです。
| 方法 | 当て方 | OK の目安 |
|---|---|---|
| A:電源を入れたまま(DCV) | 黒→電源の−、赤→IC の1番 | 0V に近い(0.1V 未満が目安) |
| B:電源を切って(導通) | 電源の−の線と、IC の1番 | ピーと鳴る |
基板やブレッドボードでは、GND の線が何本にも分かれています。IC だけでなく、LED や C の GND 側も同じように確かめます。
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つまり、GND は「電圧0V」と「導通」の2つで確かめる。帰り道が切れていれば、どれだけ電源が正しくても動きません。

STEP5 リセット・イネーブルの端子を確かめる
IC には、動きを止める端子(リセット・イネーブル)があります。NE555 の4番 RESET は、0V 付近だと出力がずっと L のままになるので、5V につながっているかを測ります。
NE555 のデータシートでは、RESET の電圧は min 0.3V・typ 0.7V・max 1V です。0.3V より低ければ必ず止まり、1V より高ければ必ず動く、という意味です。
| 4番の電圧 | どうなるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 約5V | 動く(例の回路は VCC につないでいる) | STEP6 へ |
| 約0V | 出力がずっと L のまま | GND 側につながっていないか配線を見る |
| 決まらない(つながっていない) | 動いたり止まったりする | VCC につなぐ |
TI のデータシートには「使わない入力は、誤動作を防ぐために適切な電圧につなぐ」と書かれています。どこにもつながっていない入力は、電圧が決まらず、さわっただけで動きが変わることがあります。
マイコンのリセット端子や、電源 IC のイネーブル(EN)端子も同じ考え方です。止める電圧が H 側か L 側かは IC ごとに違うので、データシートで確かめます。
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つまり、STEP5 は「止められていないか」の確認。電源が正しくても、リセットが効いていれば IC は動きません。

STEP6 発振・クロックをオシロで確かめる
オシロで、時間を作る部分と出力の波形を見ます。例の回路なら、コンデンサ(2番・6番)が1.67V と3.33V の間を上がり下がりし、出力(3番)が約0.54秒 H・約0.47秒 L をくり返せば正常です。
テスターは、1つの数字しか表示できません。電圧が時間で変わる信号は、テスターでは「なんとなく真ん中の値」に見えてしまいます。
NE555 の無安定発振では、コンデンサが電源電圧の約3分の1(5V なら約1.67V)と約3分の2(約3.33V)の間で、ためたり出したりをくり返します。
| 見る所 | 本来の波形 | 出ていないとき |
|---|---|---|
| CH1:2番・6番(コンデンサ) | 1.67V〜3.33V を往復 | C・RA・RB の配線を見る |
| CH2:3番(出力) | H 約0.54秒・L 約0.47秒 | CH1 が正常なら出力より後ろ |
コンデンサの波形が止まっているなら、時間を作る部分(C・RA・RB・7番 DISCH)の配線を疑います。コンデンサは動いているのに出力が変わらないなら、IC の出力より後ろか、IC そのものです。
マイコンなら、ここで見るのは水晶発振子のクロックです。クロックが出ていないと、プログラムは1行も動きません。
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つまり、発振は「波形で」確かめる。動きの元が止まっていれば、その先は全部止まります。

STEP7 信号を入口から出口へ追う:半分ずつ確かめる
信号の通り道を入口から出口へ順にたどり、OK から NG に変わる場所を探します。部品が多いときは、真ん中から測って範囲を半分ずつせまくすると早く見つかります。
例の回路では、3番の出力 → 1kΩ → LED → GND が信号の通り道です。3番で波形が出ているのに LED が点かないなら、原因は1kΩ か LED か、その配線にあります。
部品が6つ並んでいても、真ん中から測れば3回ほどで原因の場所がわかります。入口から1つずつ測るより、測る回数が少なくてすみます。
LED の場合は、向きが逆になっていないか、抵抗の値が大きすぎて暗すぎないかを確かめます。
LED の抵抗の値と向きの確かめ方、テスターで電流を確かめる方法がわかる
つまり、信号を追うときは「OK と NG の境目」を探す。原因は、必ずその間にあります。

テスターとオシロで測る場所:例の回路の①〜⑦
例の回路で測る場所は、①8番 VCC・②1番 GND・③4番 RESET・④5番 CONT・⑤2番と6番・⑥3番 OUT・⑦LED の+側の7か所です。番号の順に測ると、上流から下流へ自然に進めます。
| 番号 | 場所 | 道具 | 本来の値 |
|---|---|---|---|
| ① | 8番 VCC(1番との間) | テスター DCV | 約5V |
| ② | 1番 GND(電源の−との間) | テスター DCV | 約0V |
| ③ | 4番 RESET | テスター DCV | 約5V |
| ④ | 5番 CONT | テスター DCV | 約3.3V |
| ⑤ | 2番・6番(コンデンサ) | オシロ | 1.67V〜3.33V を往復 |
| ⑥ | 3番 OUT | オシロ | H と L をくり返す |
| ⑦ | LED の+側 | オシロ・目で見る | 約1秒ごとに点滅 |
①〜④はテスターで測れる「止まった電圧」、⑤⑥はオシロで見る「動く電圧」です。⑦は、LED が点滅していれば目で見るだけでもかまいません。
つまり、測る場所は「電源・GND・止める端子・動きの元・出力」の順。どの IC でも、この並びは同じです。

正常値の表:例の回路で、本来はどうなるか
切り分けでは、測った値を「本来の値」と比べます。本来の値は、データシートの表と計算で、測る前に作っておきます。
| 場所 | 本来の値 | 根拠 |
|---|---|---|
| ① 8番 VCC | 約5V(4.5〜16V なら動く) | データシートの推奨動作条件 |
| ② 1番 GND | 約0V | 電源の−と同じ |
| ③ 4番 RESET | 約5V | VCC につないでいる |
| ④ 5番 CONT | 約3.3V(2.6〜4.0V) | 電気的特性(VCC=5V) |
| ⑤ 2番・6番 | 1.67V〜3.33V を往復 | しきい値 約1/3・2/3 VCC |
| ⑥ 3番 OUT | H 0.54秒・L 0.47秒 | tH・tL の式 |
| 電源の電流 | 9.5mA 以下 | 電源電流 max+LED+RA |
CONT の2.6〜4.0V は、データシートの min〜max です。手元の1個が3.0V でも3.6V でも、この範囲なら正常です。
本来の値を知らないまま測ると、3.0V が正しいのかどうか判断できません。新しい回路を組むときは、組む前にこの表を作っておくと、動かないときにすぐ使えます。
つまり、正常値の表は切り分けの「答え合わせの紙」。データシートの min・max から作ります。

テスターとオシロの使い分け:止まった値か、動く値か
変わらない電圧(電源・GND・リセット)はテスター、時間で変わる信号(発振・出力・ノイズ)はオシロで測ります。
| 測りたいもの | 道具 | 理由 |
|---|---|---|
| 電源電圧・GND・リセット | テスター | 数字1つで判定できる |
| 断線・ショート(電源を切って) | テスター(導通) | 鳴るか鳴らないかでわかる |
| 発振・クロック・出力の時間 | オシロ | 時間の変化が見える |
| ノイズ・電源のゆれ・一瞬の信号 | オシロ | テスターでは平均の値になる |
テスターは安く、電池で動き、どこへでも持っていけます。STEP1〜5 はテスターだけでできます。オシロが必要なのは、STEP6・7 の「動き」を見るときです。
ワニ口クリップの長い GND 線が、うその波形を作る理由がわかる
つまり、テスターで土台(電源・GND・リセット)を固め、オシロで動きを見る。2つを順番に使います。

症状別の早見表:まず疑う場所
症状がはっきりしているときは、早見表で疑う場所を決め、そのステップから測り始めてもかまいません。
| 症状 | まず疑う所 | 戻る STEP |
|---|---|---|
| 電源の電流が制限値に張り付く | ショート・部品が逆 | STEP1・2 |
| 電流がほぼ0mA | 電源の線の断線・スイッチ | STEP2・3 |
| 電源は正常でも動かない | GND・リセット | STEP4・5 |
| 触ると動く・ときどき止まる | 接触不良・つながっていない入力 | STEP1・5 |
| 出力がずっと H か L のまま | 発振していない・リセット | STEP5・6 |
| 波形は出るが LED が点かない | 出力より後ろ(抵抗・LED) | STEP7 |
| 波形がギザギザ・ゆれる | パスコン・プローブの当て方 | STEP6 |
「触ると動く」ときは、接触不良か、どこにもつながっていない入力を疑います。手を近づけただけで動きが変わるなら、つながっていない入力の可能性が高くなります。
早見表で見当がつかないときは、フローチャートの STEP1 に戻って、上から順に確かめます。
つまり、症状から近道をしてもよい。ただし、迷ったら必ず上流に戻ります。

よくある失敗4つ:測り方で、かえって壊す・見誤る
切り分けで多い失敗は、電流レンジのまま電圧を測る・電源を入れたまま導通を測る・棒が隣の足に触れる・一度に何か所も変える、の4つです。
失敗1:電流レンジのまま電圧を測る
テスターの電流レンジは、中がほぼつながった状態です。そのまま電源の+と−に当てると、テスターの中で電源がショートします。測る前に、レンジと棒の差し込み口を確かめます。
失敗2:電源を入れたまま導通・抵抗を測る
導通と抵抗のレンジは、電源を切って測ります。電源を入れたままでは正しく測れず、テスターを傷めることもあります。
失敗3:当てた棒が隣の足に触れる
IC の足は2.54mm おきに並んでいます。棒が隣の足に触れると、測っている最中にショートさせてしまいます。細い棒先を使い、足の根元に当てます。
失敗4:一度に何か所も変える
何か所も同時に直すと、動いたとしても、どれが原因だったかわかりません。1か所直したら、そのつど確かめます。直したことをメモしておくと、あとで同じ失敗を防げます。
つまり、測る前に「レンジ・電源の入切・当てる場所」を確かめる。切り分けの道具で回路を壊さないことが、いちばん大事です。


