回路設計

LDOとDC-DCの違いと選び方|5V→3.3Vを電流と熱で決める判断表

基板にのった小さなLDOと、コイルのついたDC-DCの写真に、LDOとDC-DCの選び方・熱で決める・損失=(Vin−Vout)×Iの文字

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LDO(エルディーオー、低ドロップアウトレギュレータ)は入力と出力の差の電圧を熱にして捨てる部品、DC-DC コンバータはスイッチの ON・OFF で電圧を変える部品です。どちらにするかは損失=(入力−出力)×電流で決まり、5V→3.3V の判断は早見表と3ステップで確かめられます。

結論|まず30秒でわかる答え

LDOとDC-DCの選び方は、まず熱で決めます。LDO は入力と出力の差の電圧を熱にして捨てるので、損失=(入力−出力)×電流 が0.3W 以下なら LDO、1W を超えるなら DC-DC が目安です。
5V→3.3V なら、100mA は LDO(損失 0.17W)、1A は DC-DC(LDO だと 1.7W)。その間は、IC の形と基板で温度を計算して決めます。

この記事に出てくる言葉

わからない言葉が出てきたら、ここに戻ってきてください。本文でも、初めて出たところで言い換えます。

LDO(エルディーオー)電圧を下げる部品の1つ。差の電圧を熱にして捨てる。リニアレギュレータの仲間
DC-DC(ディーシーディーシー)スイッチを速く入れたり切ったりして電圧を変える部品。むだが少ない
損失電源の中で使われずに熱になる電力。単位は W(ワット)
効率入ってきた電力のうち、出力に届いた割合。100% に近いほどむだが少ない
ドロップアウト電圧LDO が出力を保つために、入力と出力の間に最低限いる電圧の差
θJA(シータ ジェイエー)1W の熱で IC の中が周りより何℃上がるか。℃/W で表す
TJ(接合温度)IC の中のチップの温度。上限(例:125℃)を超えてはいけない
リプルDC-DC の出力に乗る、スイッチの速さで上下する小さなゆれ

マイコンやセンサーを動かすとき、USB の 5V から 3.3V を作る場面はとても多くあります。そのとき最初に迷うのが、LDO と DC-DC のどちらを使うかです。

この記事では、5V→3.3V を例に、どちらを選ぶかを「熱の計算」で決める手順を説明します。部品の数字は、TI の LDO「TLV755P」と DC-DC「TLV62569」のデータシートの値を使います。

基板にのった小さなLDOと、コイルのついたDC-DCの写真に、LDOとDC-DCの選び方・熱で決める・損失=(Vin−Vout)×Iの文字

LDO と DC-DC は、電圧の下げ方がちがう

LDO は電流の通り道をしぼって電圧を下げ、しぼった分を熱で捨てます。DC-DC はスイッチを速く入れたり切ったりして、コイルとコンデンサで平らにならします。

LDO:しぼって、差を熱で捨てる

LDO の中には、電流の通り道をしぼるトランジスタ(電気の流れを調整する部品)があります。出力が 3.3V になるように、しぼり具合を自動で調整し続けます。

5V を 3.3V にするなら、差の 1.7V 分はトランジスタの中で熱になります。部品が少なく、出力も静かですが、差の分は必ず熱になります。

DC-DC:速く ON/OFF して、ならす

DC-DC(ここでは電圧を下げる「降圧型」)は、スイッチを1秒間に何十万回〜何百万回も入れたり切ったりします。TLV62569 なら約150万回(1.5MHz)です。

スイッチが入っている時間の割合で、平均の電圧が決まります。そのでこぼこを、コイル(電流の変化をなまらせる部品)とコンデンサ(電気をためる部品)で平らにします。差を熱で捨てないので、むだが少なくなります。

たとえると

LDO は「蛇口をしぼって水の勢いを弱める」方法です。しぼった分の勢いは熱になって消えます。DC-DC は「バケツで少しずつ水をくんで運ぶ」方法で、運ぶ回数で量を調整するので、こぼれる水(むだ)が少なくて済みます。

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つまり、LDO は「簡単だけど差を熱で捨てる」、DC-DC は「部品は多いがむだが少ない」方式です。

LDOはトランジスタでしぼって差の1.7Vを熱にする図、DC-DCはスイッチ2つとコイルとコンデンサでならす図と、蛇口とバケツのたとえ

LDO の損失=(入力 − 出力)× 電流

LDO で熱になる電力は、損失=(入力の電圧−出力の電圧)×電流 で計算できます。5V→3.3V なら 1.7V×電流 です。

LDO の損失の式
損失 P〔W〕=(入力 − 出力)〔V〕× 電流〔A〕

LDO では、入ってきた電流と出ていく電流はほぼ同じです(IC 自身が使う電流はとても小さい)。電流は同じで、電圧だけが 5V から 3.3V に下がります。電力は電圧×電流なので、下がった電圧の分の電力が熱になります。

100mA(0.1A)のとき:損失=(5−3.3)×0.1=1.7×0.1=0.17W。

1A のとき:損失=(5−3.3)×1=1.7×1=1.7W。電流が10倍になると、熱も10倍になります。

TLV755P は IC 自身も電流を使います(静止電流、標準で 25µA)。この分の熱は 5V×0.000025A=0.000125W で、100mA のときの 0.17W と比べると無視できるほど小さい値です。

注意|1.7W は小さく見えて大きい

豆電球のような感覚だと 1.7W は小さく感じます。ところが、米粒ほどの IC の中で 1.7W が熱になると、中の温度は数百℃の計算になります。次の節以降で、温度に直して確かめます。

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つまり、LDO の熱は「電圧の差」と「電流」のかけ算で決まります。どちらかが大きいと、熱が大きくなります。

5Vの柱を3.3V分の負荷と1.7V分の熱に分けた棒。100mAで熱0.17W・負荷0.33W、1Aで熱1.7W・負荷3.3W

効率で比べる:LDO は約66%、DC-DC は90%を超える

LDO の効率は、出力÷入力の電圧の比が上限です。5V→3.3V なら 3.3÷5=66% で、電流を変えてもほぼ変わりません。DC-DC は約90〜95%です。

効率は「入ってきた電力のうち、出力に届いた割合」です。LDO は入力と出力の電流がほぼ同じなので、効率=(3.3V×電流)÷(5V×電流)=3.3÷5=0.66(66%)になります。

DC-DC の効率は、データシートのグラフで確かめます。TLV62569 の 3.3V 出力(入力5V)のグラフを読むと、100mA〜1A で約95%、2A で約92%です(グラフの読み取りなので目安です)。

POINT|電流がとても小さいときは話が変わる

DC-DC は、スイッチを動かすための電力がいつもかかります。数 mA 以下のとても小さな電流では、効率が下がる品もあります。TLV62569 は軽い負荷で動き方を変える機能(パワーセーブモード)で、1mA でも約90%です。品によってちがうので、データシートの効率のグラフで確かめます。

つまり、5V→3.3V の LDO は入力の約3分の1を熱で捨て、DC-DC は5%前後しか捨てません。

出力電流1mA〜2Aの効率のグラフ。LDOは約66%で平ら、DC-DC(TLV62569の図の読み取り)は約90〜95%

熱で決める:TJ=周囲の温度+損失×θJA

LDO が使えるかどうかは、IC の中の温度(TJ)が上限を超えないかで決めます。TJ=周囲の温度+損失×θJA で計算します。

IC の中の温度の式
TJ〔℃〕= 周囲の温度 TA〔℃〕+ 損失 P〔W〕× θJA〔℃/W〕

θJA は「1W の熱で、IC の中が周りより何℃上がるか」を表す数字です。データシートの「Thermal Information(熱の情報)」の表に載っています。

TLV755P の θJA は、ふつうの SOT-23(5本足の小さな形)で 231.1℃/W、裏に放熱用の金属がついた形(放熱パッドつき)を TI の評価基板にのせたときで 60.3℃/W です。

周囲50℃ の箱の中で計算する

100mA・SOT-23:TJ=50+0.17×231.1=50+39.3=約89℃。推奨の上限 125℃ より低いので使えます。

300mA・SOT-23:TJ=50+0.51×231.1=50+117.9=約168℃。上限を大きく超えるので使えません。

300mA・放熱パッドつき:TJ=50+0.51×60.3=50+30.8=約81℃。同じ LDO でも、形と基板を変えれば使えます。

POINT|目標は上限より低めに置く

上限 125℃ ぎりぎりで設計すると、部品のばらつきや夏の暑さで超えてしまいます。この記事では、余裕を見て 100℃ 以下を目標にしています(筆者の目安。会社や製品の決まりがあればそちらに従います)。

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つまり、同じ電流でも、IC の形と基板で温度は大きく変わります。損失を出したら、必ず温度に直して確かめます。

周囲50℃でのTJの棒グラフ。100mA・SOT-23は89℃、300mA・SOT-23は168℃、300mA・放熱パッドつきは81℃。125℃と100℃の線

LDO と DC-DC の比較:効率・熱・ノイズ・部品の数

熱と効率では DC-DC が有利、ノイズと部品の少なさでは LDO が有利です。どちらが良いかではなく、条件で使い分けます。

比べる点LDODC-DC
効率(5V→3.3V)約66%(出力÷入力が上限)約90〜95%(TLV62569 の例)
熱(入力−出力)×電流1A の例で LDO の約10分の1
ノイズ(出力のゆれ)小さいスイッチの速さのゆれ(リプル)が出る
部品の数(基本の回路)IC+コンデンサ2個IC+コイル+コンデンサ2個+抵抗2本
基板・設計小さく、配置も簡単部品の置き方でノイズが変わる
向く場面小さな電流・小さな電圧の差大きな電流・大きな電圧の差・電池

値段は品や買う数で変わるので、この記事では比べません。ただ、DC-DC はコイルと部品が増える分、部品代と基板の面積は増えるのがふつうです。

つまり、迷ったら「熱が問題にならないなら LDO、熱が問題なら DC-DC」と考えると、ほとんどの場面で決まります。

LDOとDC-DCの比較表。効率、熱、ノイズ、部品の数、基板・設計、向く場面

ノイズ:DC-DC の出力には、スイッチのゆれが乗る

DC-DC の出力には、スイッチの速さ(TLV62569 なら約1.5MHz)で上下する小さなゆれ(リプル)が乗ります。LDO はスイッチがないので、このゆれがありません。

DC-DC は、スイッチを入れたり切ったりしてできたでこぼこを、コイルとコンデンサでならします。ならしても、完全には平らになりません。この残りのゆれがリプルです。

マイコンやデジタルの回路なら、少しのゆれは問題になりにくいことが多いです。一方で、小さな電圧を測るセンサーや、音声の回路、A/D 変換(電圧を数字に変える回路)の基準の電圧には、ゆれが測定値のばらつきとして出てきます。

LDO は入力のゆれをある程度おさえる力もあります。データシートでは PSRR(電源のゆれをどれだけ減らせるか)として載っていて、TLV755P は 100kHz で 46dB(ゆれを約200分の1)です。

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つまり、ノイズに弱い回路には LDO、ノイズに強い回路には DC-DC が向きます。

LDOの出力はほぼ平ら、DC-DCの出力は1.5MHz(約0.67µsごと)の三角のゆれ。大きさを誇張したイメージ

部品の数:データシートの基本の回路で比べる

データシートの基本の回路では、LDO は IC とコンデンサ2個の3個、DC-DC は IC・コイル・コンデンサ2個・抵抗2本の6個です。

TLV755P は、入力と出力に 1µF のセラミックコンデンサをつけるだけで動きます。EN(動かす・止めるを決める端子)は入力につなげば、いつも動きます。

TLV62569 は、入力に 4.7µF、出力に 10µF のコンデンサ、2.2µH のコイル、出力の電圧を決める抵抗2本(R1・R2)が要ります。R1 と R2 の比を変えると、出力の電圧を変えられます。

注意|DC-DC は置き方も設計のうち

DC-DC は、入力のコンデンサとコイルを IC のすぐ近くに置き、大きな電流が流れる輪をできるだけ小さくします。離して置くと、ノイズが増えたり、動きが不安定になったりします。データシートの「レイアウト(部品の置き方)」の例をまねるのが近道です。

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つまり、DC-DC は部品が倍になるうえ置き方にも気をつかいます。熱の問題がないなら、LDO のほうが手軽です。

TLV755Pの回路(入力1µF・出力1µF・ENはINへ)と、TLV62569の回路(4.7µF・2.2µH・10µF・R1・R2)

LDO か DC-DC かを決める3ステップ

STEP1 で損失を計算し、STEP2 で温度を計算し、温度が大丈夫なら STEP3 でノイズ・電池・大きさを見て決めます。

STEP 1

損失を計算する:P=(入力−出力)×最大の電流。平均ではなく、いちばん多く流れるときの電流で計算します。

STEP 2

温度を計算する:TJ=周囲の温度+P×θJA。θJA は使う IC の形のデータシートの値。100℃ 以下(目安)なら LDO の候補に残ります。

STEP 3

ほかの条件で決める:ノイズに弱い回路なら LDO、電池で長く動かしたいなら DC-DC。基板の面積が小さいなら LDO が有利です。

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入力の電圧が変わる場合は、いちばん高いときで損失を計算します。たとえば、ふだんは 5V でも、ときどき 5.5V まで上がるなら、(5.5−3.3)×電流 です。

つまり、まず熱で「LDO が使えるか」をふるいにかけ、残ったら使いやすさで決めます。

STEP1 損失を計算、STEP2 温度を計算して100℃以下か、STEP3 ノイズに弱いならLDO・電池で長くならDC-DC

電流と電圧差で決めるマップ(目安)

横を電流、縦を電圧の差にすると、損失が同じ所は斜めの線になります。損失 0.3W の線より下なら LDO、1W の線より上なら DC-DC が目安です。

損失=電圧の差×電流 なので、電流が10倍になれば、同じ損失になる電圧の差は10分の1です。マップの斜めの線は、損失 0.3W と 1W の線です。

0.3W は、SOT-23 の LDO(θJA 231℃/W)を周囲50℃ で使うときの上限((125−50)÷231≒0.32W)から決めました。1W は、放熱パッドつき(60℃/W)でも上限が約1.2W になることから決めた目安です。

場所損失選び方
青(左下)0.3W 以下LDO でよい(小さな形でも熱は問題になりにくい)
オレンジ(真ん中)0.3〜1W温度を計算して決める(形と基板しだい)
緑(右上)1W を超えるDC-DC が基本

この目安は、周囲の温度や基板で変わります。境目の近くでは、必ず STEP2 の温度の計算をします。

つまり、「電流×電圧の差」を出して、マップのどこに入るかを見れば、最初の見当がつきます。

横が電流、縦が電圧差の両対数のマップ。損失0.3Wと1Wの線で青・オレンジ・緑に分け、5V→3.3Vの100mA・300mA・1Aと12V→3.3Vの100mAの点

5V→3.3V の具体例:100mA・300mA・1A

5V→3.3V では、100mA は LDO、300mA は IC の形と基板しだい、1A は DC-DC です。

例1:100mA(センサーと小さなマイコン)

損失=1.7×0.1=0.17W。SOT-23 の TLV755P で、周囲50℃ のとき TJ=50+0.17×231.1≒89℃。100℃ 以下なので、LDO で決まりです。

例2:300mA(無線の送信があるマイコン)

損失=1.7×0.3=0.51W。SOT-23 では TJ≒168℃ で使えません。放熱パッドつきの形にして、裏の金属を基板の広い銅箔(どうはく:基板の上の銅の膜)につなげば TJ≒81℃ です。

この 60.3℃/W は TI の評価基板での値なので、自分の基板では変わります。基板が小さいなら、DC-DC にしたほうが安心です。

例3:1A(表示器やモーターの制御もある基板)

LDO なら損失は 1.7W。TLV755P は 500mA までなので、そもそも使えません。仮に 1A 以上流せる LDO でも、1.7W の熱を逃がすには大きな形と放熱の工夫が要ります。

DC-DC なら、効率を約95%として、損失=3.3W×(1÷0.95−1)=3.3×0.0526≒0.17W。LDO の約10分の1です。DC-DC を選びます。

つまり、同じ 5V→3.3V でも、電流で答えが変わります。「何 mA 流れるか」を先に決めることが大切です。

100mAは損失0.17WでLDO、300mAは0.51WでSOT-23は168℃・放熱パッドつき81℃、1AはLDOなら1.7W・DC-DCは約0.17W

1A では、熱が約10倍ちがう

5V→3.3V・1A では、LDO の損失は 1.7W、DC-DC は約 0.17W です。熱の量が約10倍ちがいます。

DC-DC の損失は、出力の電力と効率から計算します。出力の電力は 3.3V×1A=3.3W。効率95% なら入力の電力は 3.3÷0.95≒3.47W。差の 3.47−3.3=0.17W が損失です。

この 0.17W には、IC だけでなくコイルの熱も入っています。仮に全部が IC の熱になっても、TLV62569(SOT-23、θJA 188.2℃/W)の温度上昇は 0.174×188.2≒33℃(丸める前の 0.174W で計算)で、周囲50℃ なら約83℃ です。

入力の電流も変わります。LDO は入力も 1A ですが、DC-DC は 3.47W÷5V≒0.69A で済みます。電池や USB の電流の上限が気になるときにも、DC-DC が有利です。

つまり、電流が大きいほど DC-DC の良さが効いてきます。1A を超えるなら、まず DC-DC で考えます。

5V→3.3V・1Aの熱になる電力の棒グラフ。LDO 1.70W、DC-DC(効率約95%)0.17W

電圧差が大きいとき・ノイズも嫌うとき

12V→3.3V のように電圧の差が大きいと、小さな電流でも LDO の損失が大きくなります。静かさも要るときは、DC-DC で少し上まで下げてから、最後に LDO で整えます。

12V→3.3V・100mA の LDO の損失は、(12−3.3)×0.1=0.87W。効率は 3.3÷12≒28% で、入力の7割以上が熱になります。マップではオレンジの帯で、大きな形と放熱が必要です。

この場合は DC-DC を使います。TLV62569 は入力が 5.5V までなので使えません。12V なら、たとえば入力 4.5〜17V の TPS563201 のような品を選びます。

DC-DC のあとに LDO を足す(2段にする)

センサーのようにゆれを嫌う回路では、DC-DC で 3.8V まで下げ、最後を LDO で 3.3V にする方法があります。LDO の損失は(3.8−3.3)×0.5A=0.25W で済みます。

このとき、LDO の入力(3.8V)が出力(3.3V)+ドロップアウト電圧より高いことを確かめます。TLV755P は 500mA で最大 0.238V なので、3.3+0.238=3.538V 以上が必要で、3.8V なら足ります。

つまり、電圧の差が大きいときは DC-DC が先。静かさも要るなら、DC-DC と LDO を組み合わせます。

12V→3.3V・100mAをLDOで作ると損失0.87W・効率28%の帯、12V→DC-DC→3.8V→LDO→3.3VでLDOの損失0.25W

早見表:5V→3.3V の LDO で大丈夫か(周囲50℃)

5V→3.3V で SOT-23 の LDO を使うなら、約120mA までが安心です。放熱パッドつきでも 300mA までが目安で、500mA なら DC-DC です。

電流LDO の損失TJ(SOT-23)TJ(放熱パッドつき)判断
50mA0.09W70℃55℃LDO でよい
100mA0.17W89℃60℃LDO でよい
200mA0.34W129℃71℃放熱パッドつきなら LDO
300mA0.51W168℃81℃放熱パッドつきなら LDO
500mA0.85W246℃101℃DC-DC
1A1.70W——DC-DC(この LDO は 500mA まで)
2A3.40W——DC-DC(この LDO は 500mA まで)

θJA は TLV755P の値(SOT-23 231.1℃/W、放熱パッドつき 60.3℃/W〈TI の評価基板〉)。TJ=50+損失×θJA で計算しました。判断は TJ 100℃ 以下を目安にしています。

SOT-23 で TJ が 100℃ になる電流は、(100−50)÷231.1÷1.7≒0.127A(約127mA)です。

注意|ほかの LDO では数字が変わる

θJA・最大の電流・ドロップアウト電圧は品と形ごとにちがいます。この表は考え方の例です。使う品のデータシートの値で計算し直してください。

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つまり、5V→3.3V なら「100mA は LDO、500mA 超は DC-DC、その間は形と基板しだい」と覚えておけば、まず外しません。

50mA〜2Aの損失とTJ(SOT-23・放熱パッドつき)と判断の表

確かめ:計算のあと、実物で測る

計算で決めたら、試作の基板で、最大の電流を流したときの IC の表面の温度と、出力の電圧を測ります。

最低限ここだけ(2つ)

1つ目は温度です。いちばん多く電流が流れる動きをさせて、IC の上に温度計(熱電対など)を当て、表面の温度を測ります。中の温度は、表面の温度+ψJT×損失 で見積もれます。ψJT(プサイ ジェイティー)は表面と中の温度差の目安で、TLV755P の SOT-23 は 28.4℃/W です。

2つ目は出力の電圧です。入力がいちばん低くなる条件(電池が減ったときなど)で、出力が 3.3V を保てているかを測ります。

余裕があれば

DC-DC なら、出力のゆれ(リプル)をオシロスコープで見ます。プローブの GND のクリップは短くし、出力のコンデンサのすぐそばで測ります。ふたを閉めた箱の中でもう一度温度を測ると、本番に近い確かめになります。

注意|熱い IC にさわらない

計算で 100℃ 近くになる IC は、指で触ると、やけどをします。温度は温度計で測ります。

つまり、計算は「見当」、実物の測定が「答え合わせ」です。特に境目の近くでは、必ず測ります。

最低限は最大電流でICの表面温度と入力が低いときの出力電圧、中の温度は表面+ψJT×損失。余裕があればリプル・箱の中の温度・電流を急に変えたときの落ち込み

よくある失敗4つ

LDO と DC-DC の選び方で多い失敗は、電圧差が足りない・平均の電流で計算する・θJA の条件を見ない・DC-DC を離して置く、の4つです。

失敗1:LDO の電圧の差が足りない

LDO は、入力が出力+ドロップアウト電圧より高くないと、出力を保てません。たとえば、電池の電圧が 3.5V まで下がる機器で 3.3V を作ると、差は 0.2V しかありません。500mA のときの最大 0.238V に足りず、出力が下がります。

失敗2:平均の電流で計算する

熱は、いちばん多く電流が流れるときで決まります。無線の送信やモーターの動き出しなど、一瞬でも大きな電流が流れる時間が長いなら、その電流で計算します。

失敗3:θJA の条件を見ない

θJA は、基板の大きさや銅の量で大きく変わります。同じ TLV755P でも、231℃/W と 60℃/W の値があります。データシートの表の下の注(どんな基板で測ったか)を必ず読みます。

失敗4:DC-DC の部品を離して置く

入力のコンデンサとコイルを IC から離すと、大きな電流が流れる輪が大きくなり、ノイズが増えます。データシートのレイアウトの例をまねて置きます。

つまり、計算は「最大の電流」「使う形の θJA」で行い、LDO は電圧の差、DC-DC は置き方に気をつけます。

よくある失敗4つ。電圧差が足りない、平均の電流で計算、θJAの条件を見ない、DC-DCを離して置く

よくある質問(FAQ)

Q. LDOとDC-DCはどちらを選べばいい?

A. 損失=(入力−出力)×電流が0.3W以下ならLDO、1Wを超えるならDC-DCが目安です。間は温度を計算して決めます。

Q. 5Vから3.3Vを作るにはLDOとDC-DCのどっち?

A. 100mA程度ならLDO、1A程度ならDC-DCです。LDOは1Aで1.7Wの熱が出るため、小さなICでは逃がせません。

Q. LDOの損失はどう計算する?

A. 損失=(入力の電圧−出力の電圧)×電流で計算します。5V→3.3V・100mAなら1.7V×0.1A=0.17Wです。

Q. LDOの効率は何%?

A. LDOの効率の上限は出力÷入力の電圧の比です。5V→3.3Vなら3.3÷5で約66%になり、残りは熱になります。

Q. DC-DCのデメリットは?

A. 部品が多く、置き方に気をつかうことと、出力にスイッチの速さのゆれ(リプル)が乗ることです。

Q. LDOとDC-DCを組み合わせるのはなぜ?

A. DC-DCで効率よく少し上まで下げ、最後をLDOで整えると、熱を抑えつつ出力のゆれも小さくできるからです。

まとめ
  • LDO は差の電圧を熱で捨てる。損失=(入力−出力)×電流
  • 5V→3.3V の LDO の効率は約66%。DC-DC は約90〜95%
  • 温度は TJ=周囲の温度+損失×θJA。100℃ 以下を目安に
  • 目安:損失 0.3W 以下なら LDO、1W を超えたら DC-DC
  • 5V→3.3V なら 100mA は LDO、1A は DC-DC、その間は形と基板しだい
  • ノイズに弱い回路は LDO、電池で長く動かすなら DC-DC。両方なら2段に

次の一歩として、手元の回路の「入力の電圧・出力の電圧・最大の電流」の3つを書き出し、損失を計算してみてください。0.3W より小さければ、LDO で始めて大丈夫です。

参考にした資料

法令・規格・資料は改訂されることがあります。実務で使うときは、発行元の最新版で確かめてください。

この記事の理解を深める本と道具
おすすめの本

電源回路の設計を、要求仕様から短時間でまとめる実務の考え方まで知りたい人に向いています。要求仕様どおりの電源を短時間で設計するための、電源回路設計の本です(CQ出版、馬場清太郎 著)。

おすすめの本

「LDOとDC-DCの選び方」は、回路シミュレータで電圧や電流の波形を見ながら確かめると理解が深まります。無料の回路シミュレータLTspiceを使って、電子回路を学べる本です(オーム社、渋谷道雄 著)。

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シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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