※本記事にはプロモーション(広告)が含まれています。
オペアンプの選び方は、電源電圧・レールtoレール・オフセット電圧・GB積・入力バイアス電流の5項目を、用途で効く順に見ることです。定番の5品番を並べた比較表と、用途別の選び方の例から読むと早く決まります。
オペアンプの品番は、1つのメーカーだけでも数百あります。全部を比べるのは無理なので、選ぶときは「この回路で効いてくる項目」から順に候補をしぼります。
この記事では、5つの項目をそれぞれ「出力が何V ずれるか」「何Hz まで使えるか」という計算に直し、定番の5品をデータシートの数字で比べます。オペアンプのつなぎ方そのものは、連載の前の記事や理論の記事で扱っています。

オペアンプの選び方:データシートで見る5つの項目
オペアンプを選ぶときに見るのは、電源電圧・レールtoレール・オフセット電圧・GB積・入力バイアス電流の5つです。上から順に確かめると、候補が数個にしぼれます。
| 項目 | 確かめること | 効いてくる場面 |
|---|---|---|
| ① 電源電圧 | 使う電源(3.3V・5V・12V…)で動くか | どの回路でも最初に |
| ② レールtoレール | 0V や電源の近くまで入力・出力を使えるか | 5V・3.3V の片電源 |
| ③ オフセット電圧 | 入力0でも出る、出力のずれ | 小さい信号を大きく増幅する |
| ④ GB積 | 何倍で、何Hz まで増幅できるか | 音などの速い信号 |
| ⑤ 入力バイアス電流 | 入力の端子に流れる電流による電圧のずれ | 抵抗の大きい所の電圧を受ける |
ほかにも、消費電流・スルーレート(出力の電圧が変われる速さ)・ノイズなどの項目があります。はじめは5つで候補をしぼり、残った2〜3品で必要な項目を見比べれば十分です。
オペアンプのつなぎ方(フォロワ・非反転増幅・反転増幅)や「+と−をそろえる」ルールは、ここでは使う前提で進めます。組み方は連載の前の記事(記事の最後の「次に読むべき記事」)で扱っています。
オペアンプの仕組みと、仮想短絡・増幅度の式の導き方を理論から確かめられる
つまり、オペアンプは「5つの項目を、効く順に」見て選びます。全部を最高にする必要はありません。

用途から、効いてくる項目を決める
どの項目が大事かは、用途で変わります。この記事では、よくある3つの用途を例に、効く項目から確かめていきます。
| 用途の例 | 条件 | とくに効く項目 |
|---|---|---|
| センサーの増幅 | 5V の片電源で、10mV の信号を100倍して1V に | 電源・レールtoレール・オフセット |
| 電圧の監視 | 3.3V で、電池(最大4.2V)を1MΩ と1MΩ で半分にして受ける | 電源・レールtoレール・入力バイアス電流 |
| 音の増幅 | 20kHz までの信号を10倍に | 電源・GB積 |
電源電圧は、どの用途でも最初に確かめます。動かない電源で比べても意味がないからです。そのあと、用途ごとに効く項目を、計算で「何V ずれるか」「何Hz まで使えるか」に直して比べます。
つまり、まず用途を言葉にして「◎の項目」を決める。それから品番を比べます。

項目1 電源電圧:使う電源が「動作電源電圧」の範囲に入るか
データシートの「推奨動作条件(Recommended Operating Conditions)」の電源電圧の範囲に、使う電源が入っているかを見ます。3.3V・5V なら1.8〜5.5V 前後の CMOS の品種、12V 以上なら LM358 や NJM4558 のような品種です。
| 品番 | 電源電圧の範囲 | 3.3V | 5V | 12V |
|---|---|---|---|---|
| LM358 | 3〜30V | ○ | ○ | ○ |
| MCP6002 | 1.8〜6.0V | ○ | ○ | × |
| TLV9062 | 1.8〜5.5V | ○ | ○ | × |
| OPA2333 | 1.8〜5.5V | ○ | ○ | × |
| NJM4558 | ±4〜±18V(合計8〜36V) | × | × | ○ |
±の表記に注意します。NJM4558 の「±4V」は、+4V と −4V の2つの電源、つまり合計8V のことです。5V の片電源では範囲に入りません。
範囲の端ぎりぎりで使うのは避けます。電池のように電圧が下がっていく電源なら、いちばん低くなったときにも範囲に入っているかを確かめます。
つまり、項目1は「使う電源の最低と最高が、範囲に入るか」。ここで候補の半分くらいが消えます。

項目2 レールtoレール:入力と出力が、電源の端まで使えるか
レールtoレールは、入力や出力が電源の端(0V や 5V)のすぐ近くまで使える性質です。5V や3.3V の片電源で、信号を電源いっぱいまで使うなら必要です。
「レール」は電源の線(0V と 5V)のことです。レールtoレールでない品種は、入力や出力が電源の端から少し離れた所までしか届きません。
| 5V で使うと | 入力に入れられる範囲 | 出力が届く範囲 |
|---|---|---|
| LM358 | 0V〜約3.5V(電源−1.5V) | 約0V〜約3.5V |
| MCP6002 | −0.3V〜5.3V | 約0.025V〜約4.975V |
入力と出力は別の項目です。データシートでは、入力は「同相入力電圧範囲(Common-mode voltage range)」、出力は「出力電圧振幅(Voltage output swing)」の行に載っています。品種によっては「出力だけレールtoレール」のものもあるので、両方を確かめます。
つまり、項目2は「入力の範囲」と「出力の範囲」の2行を見る。片電源なら、入出力レールtoレールの品種が使いやすい選択です。

項目3 オフセット電圧:入力が0でも、出力がずれる元
オフセット電圧は、入力を0にしても残る+と−の小さなずれです。増幅すると、ずれも同じ倍率で大きくなります。出力のずれ=オフセット電圧×ゲインで見積もります。
オペアンプの中の部品は、左右でわずかに違います。そのため、+と−が「ぴったり同じ」ではなく、少しずれたところで落ち着きます。入力に小さな電池がつながっているのと同じで、その電圧がオフセット電圧です。
1倍で使うなら、7mV のずれは気になりません。ところが100倍にすると、7mV×100=0.7V になります。センサーの小さい信号を大きく増幅する回路では、ここが選び方の決め手になります。
ひずみゲージなどのセンサーで使うブリッジ回路の、mV の小さな電圧が出るしくみがわかる
つまり、オフセットは「ゲインが大きいほど効く」。ゲイン1〜数倍なら、どの品種でもたいてい足ります。

計算例:10mVの信号を100倍するとき、出力はどれだけずれる?
5V の片電源で、センサーの10mV を100倍して1V にする回路で比べます。オフセット電圧はデータシートの25°C の最大値です。
| 品番 | オフセット電圧(最大) | ×100 の出力のずれ | 信号1V に対して |
|---|---|---|---|
| LM358 | 7mV | 0.7V | 70% |
| MCP6002 | 4.5mV | 0.45V | 45% |
| TLV9062 | 1.6mV | 0.16V | 16% |
| OPA2333 | 10µV | 0.001V(1mV) | 0.1% |
| NJM4558 | 6mV(±15V のとき) | 0.6V | 60% |
この用途では、OPA2333 のような「ゼロドリフト」と呼ばれる低オフセットの品種でないと、信号よりずれの方が目立ちます。ずれは温度でも変わる(ドリフト)ので、データシートの「オフセット電圧の温度ドリフト」の行も見ます。

項目4 GB積:ゲイン×周波数が、ほぼ一定
GB積(ゲイン帯域幅積)は、ゲインと使える周波数の掛け算の上限です。GB積1MHz の品種なら、10倍で約100kHz、100倍で約10kHz まで使えます。
オペアンプの増幅の力は、周波数が高くなるほど弱くなります。高いゲインで使うほど、早く力が足りなくなります。この関係が「ゲイン×周波数=ほぼ一定」で、その値が GB積です。
GB積÷ゲインの周波数では、ゲインはすでに約0.7倍(−3dB)に下がっています。だから、使いたい周波数より十分に上に、この点が来るように選びます。
ゲインを dB で表し、周波数でどう下がるかをボード線図で読めるようになる
つまり、GB積は「速い信号を大きく増幅するときの上限」。センサーのようなゆっくりした信号なら、小さい GB積でも足ります。

計算例:音(20kHz)を10倍にするなら、何MHz 要る?
10倍の余裕をとると、20kHz でのゲインの下がりは約0.5% に収まります(計算)。余裕の倍率は回路の求める精度で変わるので、「10倍」は出発点の目安です。
NJM4558 は GB積は足りますが、電源は±4V 以上(合計8V 以上)が要ります。5V だけで組むなら、5V で動いて GB積も足りる TLV9062 が残ります。

項目5 入力バイアス電流:入力の端子に流れる小さな電流
入力バイアス電流は、オペアンプの入力の端子に流れる小さな電流です。この電流が入力側の抵抗を流れると、電圧がずれます。電圧のずれ=入力バイアス電流×入力側の抵抗で見積もります。
例として、3.3V で動くマイコンで、リチウムイオン電池(最大4.2V)の電圧を測る回路を考えます。電池をむだに減らさないよう、1MΩ と1MΩ の分圧で半分にし、フォロワで受けます。分圧に流れる電流は 4.2V÷2MΩ=2.1µA だけです。
オペアンプの入力から見ると、上の1MΩ と下の1MΩ が並列に見えて、500kΩ です。入力バイアス電流がここを流れると、そのぶん電圧がずれます。
分圧の抵抗を大きくしたときに、つなぐ先の影響でどれだけずれるかを見積もれる
つまり、入力バイアス電流は「入力側の抵抗が大きいほど効く」。kΩ の回路なら気にならなくても、MΩ では効いてきます。

計算例:500kΩの所で、何V ずれる?
| 品番 | 入力バイアス電流 | ×500kΩ のずれ |
|---|---|---|
| LM358 | 標準20nA・最大250nA | 標準10mV・最大125mV |
| MCP6002 | 標準1pA | 標準0.5µV |
| TLV9062 | 標準0.5pA | 標準0.25µV |
| OPA2333 | 標準70pA・最大200pA | 標準35µV・最大100µV |
| NJM4558 | 標準25nA・最大500nA(±15V) | 標準12.5mV・最大250mV |
LM358 の最大値では0.125V ずれ、測りたい2.1V(4.2V の半分)に対して約6% の誤差です。MCP6002 のような CMOS 入力の品種なら、ずれはほぼ0です。
さらに、LM358 は3.3V で使うと入力の上限が 3.3−1.5=1.8V なので、2.1V はそもそも入れられません。この用途では MCP6002 が残ります。
計算で出した「ずれ」が、測定の誤差のどの種類にあたるかを整理できる

データシートのどこを見る? 5項目の場所
5項目は、データシートの1ページ目(特長)・推奨動作条件・電気的特性の表に載っています。1ページ目で候補を選び、電気的特性の表で条件と最大値を確かめます。
| 項目 | 1ページ目(Features) | 表の行の名前(例) |
|---|---|---|
| 電源電圧 | Supply voltage: 1.8V to 5.5V など | Supply voltage(VS・VDD) |
| レールtoレール | Rail-to-rail input/output | Common-mode voltage range、Voltage output swing |
| オフセット電圧 | Low offset voltage など | Input offset voltage(VOS・VIO) |
| GB積 | Gain bandwidth: 1MHz など | Gain bandwidth product(GBW・GBP・GB) |
| 入力バイアス電流 | Low input bias current など | Input bias current(IB) |
日本のメーカーのデータシートは日本語で、「電気的特性」「入力オフセット電圧」「利得帯域幅積」のように書かれています。名前が少し違っても、記号(VIO・IB・GB)で探せます。
1ページ目の数字は「いちばん良い条件での標準値」のことが多いので、比べる最初の目安にとどめます。
データシートを読む順番と、min・typ・max の意味を NE555 の表で練習できる
つまり、1ページ目で候補を選び、電気的特性の表で決める。表の見方は次の節です。

電気的特性の表の読み方:「条件」と「最大値」を見る
電気的特性の表には、項目ごとに「条件」「最小」「標準」「最大」「単位」が並んでいます。読むときのポイントは2つです。
たとえば LM358 の入力オフセット電圧は、標準3mV・最大7mV です。標準で見積もると、最大に近い部品に当たったとき、ずれが2倍以上になります。
「標準」しか書かれていない項目(GB積など)は、ばらつきを見込んで余裕を多めにとります。

定番品の比較表:5つの品番を5項目で
よく使われる5つのオペアンプを、5項目で比べました。数字は各メーカーのデータシートの25°C の値です。
| 品番(メーカー) | 電源電圧 | レールtoレール | オフセット(最大) | GB積 | 入力バイアス電流 | 向いている用途 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| LM358(TI) | 3〜30V | なし | 7mV | 0.7MHz | 20nA(最大250nA) | 12V・24V の電源、ゆっくりした信号 |
| MCP6002(Microchip) | 1.8〜6.0V | 入力・出力 | 4.5mV | 1MHz | 1pA | 3.3V・5V の一般用、電圧の監視 |
| TLV9062(TI) | 1.8〜5.5V | 入力・出力 | 1.6mV | 10MHz | 0.5pA | 5V で速い信号(音など) |
| OPA2333(TI) | 1.8〜5.5V | 入力・出力 | 10µV | 0.35MHz | 70pA(最大200pA) | 小さいセンサーの信号の増幅 |
| NJM4558(日清紡マイクロデバイス) | ±4〜±18V | なし | 6mV | 3MHz | 25nA(最大500nA) | ±の電源の音の回路 |
条件はデータシートごとに違います(LM358 は5V、MCP6002 は1.8〜5.5V、TLV9062・OPA2333 は5V、NJM4558 は±15V の値)。設計に使う前に、元の表で自分の条件の行を確かめてください。

用途別の選び方の例:3つの場面で、どれを選ぶ?
3つの用途を、◎の項目から順に確かめると、残る品番は1〜2個です。
センサーの増幅(5V・10mV を100倍)→ OPA2333
電源5V で動くのは MCP6002・TLV9062・OPA2333・LM358。オフセット×100 のずれは OPA2333 が1mV で、ほかは0.16〜0.7V。信号はゆっくりなので、GB積0.35MHz(100倍で約3.5kHz まで)で足ります。
電圧の監視(3.3V・1MΩ の分圧)→ MCP6002
3.3V で動き、入力に2.1V を入れられるのは、入力レールtoレールの品種。入力バイアス電流×500kΩ のずれは CMOS 入力ならほぼ0。DIP があってブレッドボードで試しやすい MCP6002 が候補になります。
音の増幅(5V・20kHz を10倍)→ TLV9062
GB積の目安は2MHz 以上。5V で動く品種で目安以上なのは TLV9062(10MHz)です。±の電源が使えるなら、NJM4558(3MHz)も候補になります。
つまり、選び方は「電源で消す → ◎の項目で計算して消す → 残った中から、手に入りやすさ・パッケージで決める」の順です。

よくある失敗4つ:標準値・条件ちがい・片方だけ・ぎりぎり
オペアンプの選び方の失敗は、標準値で設計する・条件のちがう値を使う・片方だけのレールtoレールを見落とす・GB積をぎりぎりで選ぶ、の4つが代表です。
失敗1:標準値で設計する
LM358 のオフセットを標準3mV で見積もると、最大7mV の部品に当たったとき、ずれは2倍以上になります。保証されている最大値で見積もります。
失敗2:条件のちがう値を使う
±15V で測った値を、5V の回路にそのまま当てはめると、入力や出力の範囲が合いません。自分の電源電圧・温度の行を探します。
失敗3:片方だけのレールtoレールを見落とす
「レールtoレール」と書いてあっても、出力だけ、入力だけの品種があります。入力と出力の両方の範囲を表で確かめます。
失敗4:GB積をぎりぎりで選ぶ
10倍・20kHz に GB積200kHz の品種を選ぶと、20kHz でゲインが約0.7倍に下がります。目安として10倍の余裕をとります。
つまり、迷ったら「最大値」「自分の電源電圧の条件」「余裕10倍」の3つで見直すと、選び間違いを防げます。


