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3端子レギュレータ(三端子レギュレータ)の発熱は、損失=(入力−出力)×電流で計算します。LM7805 で 12V→5V・0.3A なら約2.2W で、放熱板なし・周囲40℃では熱保護で止まる温度になります。計算はSTEP1、損失と放熱の目安は早見表にあります。
3端子レギュレータ(三端子レギュレータ)は、足が3本だけで、決まった電圧を作れる便利な部品です。代表は 7805(5V)で、多くのメーカーが同じ名前の系列を作っています。
ところが、使ってみると「触れないほど熱い」ことがよくあります。この記事では、TI の現行品 LM7805 のデータシートの数字を使い、熱の計算と、熱すぎるときの対策を順に説明します。

なぜ熱くなる? 入力の電力の約6割が熱になる
3端子レギュレータは、入力と出力の電圧の差を熱にして捨てます。12V→5V・0.3A では、入ってくる約3.7W のうち約2.2W が熱になります。
3端子レギュレータの中には、電流の通り道をしぼる部品があります。出力が 5V になるように、しぼり具合を自動で調整します。12V を 5V にするなら、差の 7V 分はしぼる部品の中で熱になります。
入ってくる電力は、12V×(0.3A+0.008A)≒3.7W です。0.008A は、レギュレータ自身が使う電流(静止電流)です。出力へ届くのは 5V×0.3A=1.5W だけで、残りの約2.2W は熱になります。
つまり、3端子レギュレータが熱いのは、こわれているからではなく、仕組みどおりに電圧の差を熱にしているからです。

STEP1 損失を計算する:P=(入力−出力)×電流+入力×静止電流
3端子レギュレータの損失は、電圧の差×電流 に、IC 自身が使う電流の分(入力×静止電流)を足して計算します。
例の条件:入力 Vin=12V(いちばん高いとき)、出力 Vout=5V、電流 I=0.3A(いちばん多いとき)、静止電流 IQ=8mA(LM7805 のデータシートの最大の値、25℃)。
電圧の差の分:(12−5)×0.3=7×0.3=2.1W。
IC 自身の分:12×0.008=0.096W。
合計:P=2.1+0.096=2.196W≒2.2W。
つまり、損失はほとんどが「電圧の差×電流」で、静止電流の分は小さな上乗せです。

熱のオームの法則:温度の上がり=熱×熱抵抗
熱の計算は、電気のオームの法則(V=I×R)と同じ形です。熱 P が電流、熱抵抗 θ が抵抗、温度の差 ΔT が電圧にあたります。
熱抵抗(θ、シータ)は「熱の通りにくさ」です。1W の熱が流れたとき、両はしで何℃の差ができるかを ℃/W で表します。
部品の中(チップ)から周りの空気までの熱抵抗が θJA です。中の温度 TJ は、周りの温度に「熱×θJA」の分だけ上乗せした温度になります。
たとえば θJA が 54℃/W なら、1W で 54℃、2.2W で約119℃ 上がります。
熱抵抗を「熱のオームの法則」で、電気の回路と同じように理解できる
つまり、損失(W)がわかれば、θJA をかけるだけで温度の上がり方がわかります。

θJA はデータシートのどこを見る? 条件に注意
LM7805 の TO-220 では、放熱板なしで立てて使うときの θJA は 54℃/W(絶対最大定格の注)です。熱の情報の表の 23.9℃/W は、決まった基板にのせたときの値で、条件がちがいます。
| 名前 | TO-220 の値 | 条件・使い方 |
|---|---|---|
| θJA(放熱板なし) | 54℃/W | 絶対最大定格の注。空中に立てたときの計算に使う |
| θJC(中→ケース) | 4℃/W | 同じ注。放熱板をつけるときの計算に使う |
| RθJA(熱の情報の表) | 23.9℃/W | JEDEC という規格の決まった基板で測った値 |
| ψJT(中→表面) | 3.2℃/W | 表面の温度から中の温度を見積もるときに使う |
同じ TO-220 でも、θJA が 54℃/W と 23.9℃/W の2つあります。足を基板にさしこんで空中に立てて使うなら、54℃/W で計算するのが安全です。小さい値を使うと、温度を低く見積もってしまいます。
θJC・θCS・θSA がそれぞれ「どこからどこまで」の熱抵抗なのかがわかる
つまり、θJA は「条件つきの数字」です。値を選ぶときは、条件を自分の使い方と照らし合わせます。

STEP2 中の温度 TJ を計算する
放熱板なし(θJA 54℃/W)で 2.2W を出すと、周囲25℃ でも TJ は約144℃、周囲40℃ では約159℃ になり、熱保護(150℃)で止まります。
周囲25℃:TJ=25+2.196×54=25+118.6≒144℃。
周囲40℃(箱の中を想定):TJ=40+2.196×54=40+118.6≒159℃。
LM7805 の電気的な特性(出力の電圧の正確さなど)は、TJ が 0〜125℃ の範囲で決まっています。TJ が 150℃ に達すると、熱保護が働いて出力を止めます。冷えると戻るので、出力が切れたりついたりをくり返します。
| TJ の目安 | どうなるか |
|---|---|
| 100℃ 以下 | 余裕あり(この記事の目標。筆者の目安) |
| 100〜125℃ | 特性の範囲内だが余裕が少ない。対策を考える |
| 125〜150℃ | 特性が保証されない。対策が必要 |
| 150℃ | 熱保護で出力が止まる |
つまり、例の条件は放熱板なしでは使えません。次の節から、熱いときの判断と対策を説明します。

触れないほど熱いときの判断:4つの手順
触れないほど熱いときは、①温度計で表面を測る、②損失を計算する、③中の温度を見積もる、④100℃・125℃ を目安に判断する、の順に進めます。
例:表面が 120℃、損失が 2.2W なら、TJ≒120+3.2×2.2=120+7.0≒127℃。125℃ を超えているので、対策が必要です。
出力が切れたりついたりするなら、熱保護が働いている可能性が高いです。こわれたのではなく、中が 150℃ に達して自分を守っている状態です。
つまり、「熱い」は感覚ではなく数字で判断します。熱くても、中の温度が目標以下なら問題ありません。

熱すぎるときの対策4つ:同じ条件で比べる
12V→5V・0.3A・周囲40℃ では、入力を 8V に下げる(約92℃)か、20℃/W の放熱板をつける(約95℃)と、目標の 100℃ 以下になります。基板の銅だけでは足りません。
| 対策 | 損失 | TJ(周囲40℃) | 判定 |
|---|---|---|---|
| 何もしない(立てて使う) | 2.2W | 約159℃ | ×(熱保護で止まる) |
| 入力を 8V に下げる | 0.96W | 約92℃ | ○ |
| 放熱板(θSA 20℃/W)をつける | 2.2W | 約95℃ | ○ |
| 表面実装の形(TO-263)にして基板の銅 6.5cm² | 2.2W | 約121℃ | △(足りない) |
| DC-DC に替える(効率90% と仮定) | 約0.17W | — | ○(熱がほとんど出ない) |
どれを選ぶかは、入力の電圧を変えられるか、放熱板を置く場所があるか、基板を作り直せるか、で決まります。次の節から1つずつ説明します。
つまり、熱を減らすには「損失そのものを減らす(入力を下げる・DC-DC)」か「熱を逃がす(放熱板・基板)」の2つの方向があります。

対策1:入力の電圧を下げる
損失は電圧の差に比例するので、入力を 12V から 8V に下げると、損失は 2.2W から 0.96W に減り、放熱板なしでも TJ は約92℃ になります。
入力 9V:P=(9−5)×0.3+9×0.008=1.2+0.072=1.27W。TJ=40+1.27×54≒109℃。
入力 8V:P=(8−5)×0.3+8×0.008=0.9+0.064=0.96W。TJ=40+0.96×54≒92℃。
入力を下げる方法には、電源の電圧そのものを変える、レギュレータの前に抵抗を入れて熱を分ける、などがあります。抵抗を入れる場合は、電流が変わると入力の電圧も変わるので、いちばん電流が多いときに 7.5V 以上あるかを確かめます。
つまり、入力の電圧は「出力を保てる範囲で、できるだけ低く」が熱には有利です。

対策2:放熱板をつける(熱抵抗を足し算する)
放熱板をつけたときの θJA は、θJC(中→ケース)+θCS(ケース→放熱板)+θSA(放熱板→空気)の足し算です。例の条件では、θSA が 22℃/W 以下の放熱板を選びます。
STEP 1:TJ を 100℃ にしたいので、全体の θJA は(100−40)÷2.196≒27.3℃/W 以下にします。
STEP 2:θJC は LM7805 の TO-220 で 4℃/W。θCS は、放熱板との間に入れるシートやグリスの熱抵抗で、ここでは例として 1℃/W とします。放熱板に許せる θSA は 27.3−4−1=22.3℃/W 以下です。
STEP 3:カタログの θSA が 20℃/W の放熱板を選ぶと、TJ=40+2.196×(4+1+20)=40+54.9≒95℃。目標の 100℃ 以下に入ります。
放熱板の仕組みと種類、必要な熱抵抗から放熱板を選ぶ手順がわかる
つまり、放熱板は「許せる θSA」を計算してから、カタログでそれより小さい品を選びます。

対策3:基板のベタ(銅)で逃がす
表面実装の形(TO-263・SOT-223)は、基板の銅を放熱板の代わりに使います。ただし、銅を 1 平方インチ(約6.5cm²)より広げても、θJA はあまり下がりません。
LM7805 のデータシートには、TO-263 の形で、タブをはんだ付けした銅の面積と θJA の関係が載っています。0.5 平方インチ(約3.2cm²)で 50℃/W、1 平方インチ(約6.5cm²)で 37℃/W、1.6 平方インチ(約10cm²)以上で 32℃/W です。
周囲40℃ で TJ を 100℃ 以下にできる損失は、(100−40)÷θJA で、3.2cm² で 1.2W、6.5cm² で 1.6W、10cm² で 1.9W です。例の 2.2W にはどれも足りません。
SOT-223 の形では、データシートの図は銅 1oz(厚さ約35µm)で 74℃/W、2oz で 51℃/W として計算しています。100℃ 以下にできるのは 0.8W・1.2W までです。
基板の銅で熱を逃がせる限界が、どこで決まるのかがわかる
表面実装の部品の熱を、ビアで裏の銅へ逃がす設計がわかる
つまり、基板のベタは小さな損失には有効ですが、銅を広げるだけでは限界があります。

入力・出力のコンデンサと保護ダイオード
LM7805 のデータシートでは、入力に 0.22µF(電源のコンデンサから離れているとき)、出力に 0.1µF を、足のすぐ近くにつける例が示されています。
入力のコンデンサは、レギュレータが電源の大きなコンデンサから離れているときに、動きを安定させるためのものです。データシートは、6インチ(約15cm)以上離れるなら入力に 0.1µF 以上が必要としています。
出力のコンデンサは、電流が急に変わったときの電圧の落ちこみを小さくするためのものです。LM7805 は出力のコンデンサがなくても安定して動く品ですが、0.1µF をつけることがすすめられています。
入力が GND に短絡(ショート)するおそれがある回路では、出力から入力へ電流を流すダイオードをつけます。出力のコンデンサにたまった電気が、レギュレータの中を逆に流れるのを防ぐためです。
コンデンサを IC の足のすぐ近くに置く理由を、電流の通り道から理解できる
つまり、コンデンサは「値」より「足のすぐ近く」が大切です。使う品のデータシートの推奨の値を守ります。

足の並び:同じ TO-220 でも品番で変わる
LM7805 の TO-220 は、文字の面から見て左から 1 入力・2 GND・3 出力で、タブは GND です。同じ形の LM1117 は 1 ADJ/GND・2 出力・3 入力で、タブは出力です。
3端子レギュレータは、同じ TO-220 の形でも、品番によって足の並びとタブのつながりがちがいます。LM7805 の場所に LM1117 をそのまま差しかえると、入力と出力が入れかわってしまいます。
また、タブがどの足につながっているかで、放熱板の扱いも変わります。タブが出力につながる品を、GND の金属の板にそのままねじで止めると、出力が GND とショートします。
足の並びや熱の値が、データシートのどの章に載っているかがわかる
つまり、差しかえや放熱板の取りつけの前に、データシートの足の図とタブのつながりを確かめます。

早見表:LM7805 の損失と放熱の目安(周囲40℃)
LM7805 で放熱板なしでよいのは、損失が約1.1W までです。9V・12V 入力なら 0.1A まで。15V 以上の入力では、0.1A でも放熱板が要ります。
| 入力\電流 | 0.1A | 0.3A | 0.5A | 1A |
|---|---|---|---|---|
| 9V | 0.47W 放熱板なしで可 | 1.27W 放熱板 42℃/W 以下 | 2.07W 放熱板 24℃/W 以下 | 4.07W 放熱板 10℃/W 以下 |
| 12V | 0.80W 放熱板なしで可 | 2.20W 放熱板 22℃/W 以下 | 3.60W 放熱板 12℃/W 以下 | 7.10W DC-DC を考える |
| 15V | 1.12W 放熱板 49℃/W 以下 | 3.12W 放熱板 14℃/W 以下 | 5.12W DC-DC を考える | 10.12W DC-DC を考える |
| 24V | 2.09W 放熱板 24℃/W 以下 | 5.89W DC-DC を考える | 9.69W DC-DC を考える | 19.19W DC-DC を考える |
損失は P=(入力−5)×電流+入力×0.008 で計算しました。「放熱板なしで可」は TJ=40+P×54 が 100℃ 以下のものです。放熱板の値は、TJ を 100℃ にするのに許せる θSA(θJC 4℃/W・θCS 1℃/W として)です。
必要な θSA が 8℃/W より小さいもの(大きな放熱板が要るもの)は、「DC-DC を考える」としました。この 8℃/W は、手に入りやすい TO-220 用の放熱板を念頭に置いた筆者の目安です。
つまり、表で自分の条件のマスを見れば、放熱板が要るか・どのくらいの放熱板か・DC-DC にすべきかの見当がつきます。

実物で確かめる:4か所を測る
試作の基板で、最大の電流を流しながら、入力の電圧・出力の電圧・電流・表面の温度の4つを測ります。
入力と出力の電圧は、レギュレータの足の根元でテスターで測ります。電流は、出力の線にテスターを直列に入れるか、電源装置の表示で読みます。表面の温度は、熱電対をケースの表面に耐熱テープで貼って測ります。
測った値で損失を計算し、TJ≒表面の温度+3.2×損失 で中の温度を見積もります。箱に入れて使う機器なら、ふたを閉めて動かし続け、温度が上がりきって落ち着いてから測ります(目安として30分ほど)。
つまり、計算は見当、測定が答え合わせです。特に TJ が 100℃ に近い設計は、必ず実物で確かめます。

よくある失敗4つ
3端子レギュレータの発熱計算で多い失敗は、表の θJA で計算する・周囲を 25℃ にする・ふだんの入力で計算する・足の並びを確かめない、の4つです。
失敗1:表の θJA(23.9℃/W)で計算する
立てて使うのに 23.9℃/W で計算すると、TJ=40+2.196×23.9≒93℃ となり、「大丈夫」に見えます。実際は 54℃/W に近く、約159℃ です。
失敗2:周囲の温度を 25℃ にする
箱の中は、ほかの部品の熱で外より暑くなります。周囲が 40℃ なら、TJ も 25℃ のときより 15℃ 高くなります。
失敗3:ふだんの入力の電圧で計算する
入力の電圧は、電源の種類やばらつきで高めになることがあります。損失は電圧の差に比例するので、いちばん高い値で計算します。
失敗4:足の並びを確かめずに差しかえる
同じ TO-220 でも、LM1117 は 1・2・3 が ADJ/GND・出力・入力です。品番を変えるときは、足の図を必ず確かめます。
つまり、計算は「立てて使う θJA」「箱の中の温度」「いちばん高い入力」で行い、品番を変えたら足の図を見ます。


