- 「EMCとは」と調べたら、EMI・EMS・エミッション・イミュニティ……と、カタカナとアルファベットがあふれて混乱した
- EMIとEMSの違いを、ひとことで説明できない
- CISPR、IEC 61000、VCCI……規格の名前がたくさんあって、どれが何の役割なのか全体像が見えない
- 「EMC試験」と言われても、何をどうやって試すのか想像がつかない
- EMCとは何か(EMC=EMI+EMSというシンプルな式)
- EMIとEMSの違いと、ややこしい用語の交通整理
- EMC試験を「4つのマス」で整理した全体マップ
- CISPR・IEC 61000などの規格がどう積み上がっているかという全体像
「EMCとは何なのか」——回路や基板の仕事を始めると、ほぼ必ずこの言葉に出会います。そして多くの人が、似た用語の多さでつまずきます。
はじめは戸惑って当然です。でも、全体の形はとてもシンプルです。この記事は「EMCの地図」として、定義と、規格・試験の全体像だけに絞って、やさしく解説します。
EMC(電磁両立性)とは、電子機器が「ノイズを出して周りに迷惑をかけない(EMI対策)」ことと、「周りのノイズを受けても正しく動き続ける(EMS対策)」ことを同時に満たす性質です。つまり、EMC=EMI+EMSです。EMCの規格は、試験のやり方を決める「基本規格」(IEC 61000-4シリーズなど)と、製品ごとの合格ラインを決める「製品群規格」(CISPR 32など)の2段構えで成り立っています。
🌐 そもそもEMCとは?「電気のマナー」を守れること
EMCとは、電子機器が電磁ノイズの面で「周りと仲よく共存できる」ことです。英語の Electromagnetic Compatibility(エレクトロマグネティック・コンパチビリティ)の頭文字で、日本語では「電磁両立性(でんじりょうりつせい)」と訳されます。
📖 言葉を分解してみよう
| 英語 | 日本語 | やさしく言うと |
|---|---|---|
| Electromagnetic | 電磁(でんじ) | 電気と磁気の。電線を伝わるノイズも、空中を飛ぶ電波もふくみます |
| Compatibility | 両立性 | 2つのことが同時に成り立つこと。「ケンカせずに一緒にいられる」 |
ここで出てくる「ノイズ」とは、機器が本当は出したくない・受けたくない、余計な電気の揺れのことです。スマホを近づけたスピーカーから「ジジジ…」と音が出るのが、身近なノイズの例です。ノイズの正体は、こちらの記事でくわしく解説しています。
ノイズがどこから生まれるのかを、ゼロから知りたい人へ
満員電車を想像してください。乗客みんなが気持ちよく過ごすには、2つのマナーが必要です。
①大声で電話をしない(=周りに迷惑をかけない)
②多少ガヤガヤしていても、読書や考えごとに集中できる(=周りの音に負けない)
EMCは、この2つを電子機器に求めるルールです。
EMCは「ノイズゼロ」を目指すことではありません。「周りと仲よく共存できるレベルに収めること」です。ノイズを完全になくすことはできないので、「ここまでならOK」という線を規格で決めているのです。

⚖️ EMIとEMSの違い|「出す側」と「受ける側」
EMIは「ノイズを出して迷惑をかける側」の話、EMSは「ノイズを受けて困る側」の話です。同じノイズを、出す側から見るか、受ける側から見るかの違いだけです。
EMC = EMI(出さない)+ EMS(負けない)
📢 EMI(イー・エム・アイ)
- Electromagnetic Interference(電磁妨害)
- 自分の機器がノイズを出す問題
- 立場:加害者
- 例:電子レンジを動かすとWi-Fiが遅くなる(このとき電子レンジがEMIの発生源)
- 守るルール:「これ以上ノイズを出してはいけない」
🛡️ EMS(イー・エム・エス)
- Electromagnetic Susceptibility(電磁感受性)
- 自分の機器がノイズを受けて誤動作する問題
- 立場:被害者
- 例:冬にパソコンに触れて「バチッ」となり、画面が固まる
- 守るルール:「このくらいのノイズには耐えなさい」
🔁 1台の機器が「両方の立場」になる
ここで混乱しやすいのですが、EMIとEMSは「機器の種類」ではありません。1台の機器が、加害者にも被害者にもなります。
たとえばスマホは、電波やノイズを出す加害者であると同時に、静電気で誤動作するかもしれない被害者でもあります。だからEMCは、どの製品にも「出さない」と「負けない」の両方を求めるのです。
| 比べるポイント | EMI | EMS |
|---|---|---|
| ノイズの向き | 自分 → 外へ | 外 → 自分へ |
| 電車のたとえ | 大声で話さない | 騒がしくても集中できる |
| 試験の呼び名 | エミッション試験 | イミュニティ試験 |
| 測るもの | 出ているノイズの大きさ | ノイズを当てても正常に動くか |
EMIは「迷惑をかけない力」、EMSは「迷惑に負けない力」。両方そろって、はじめて「EMCがある」と言えます。

🧭 用語の交通整理|エミッション・イミュニティとの関係
EMC関係の用語は多く見えますが、実は「出す側グループ」と「受ける側グループ」の2つに分けるだけで整理できます。似た言葉は、同じグループの言い換えです。
| グループ | よく見る言葉 | 言葉のニュアンス |
|---|---|---|
| 📢 出す側 | EMI(電磁妨害) | ノイズで迷惑をかける「現象」 |
| エミッション(Emission) | 「放出」。出ているノイズそのもの、またはその試験 | |
| 妨害波(ぼうがいは) | 日本の規格でよく使う呼び方 | |
| 🛡️ 受ける側 | EMS(電磁感受性) | ノイズの「影響の受けやすさ」 |
| イミュニティ(Immunity) | 「免疫」。ノイズへの「強さ・耐性」 | |
| 耐性・イミュニティ試験 | 受ける側の試験の呼び方 |
⚠️ 初心者が一番つまずく「EMSとイミュニティ」
ここが最大の混乱ポイントです。EMSの「感受性(サセプティビリティ)」は「影響の受けやすさ」。イミュニティは「影響への強さ」。言葉の意味としては、実は正反対です。
「風邪のひきやすさ(感受性)」と「風邪への免疫力(イミュニティ)」は、逆の言い方です。でも、どちらも「風邪をうつされる側」の話ですよね。EMSとイミュニティも同じで、指している立場は同じ「受ける側」です。
「EMS対策」と「イミュニティ向上」は、同じことを指しています。会話や資料で両方の言葉が出てきても、別のものだと思わなくて大丈夫です。
迷ったら「この言葉は出す側?受ける側?」とだけ考えてください。EMI・エミッション・妨害波は出す側。EMS・イミュニティ・耐性は受ける側。これで用語の8割は片づきます。

🔗 EMCの問題は「3つの登場人物」で起きる
ノイズのトラブルは「発生源」「伝わり道」「受け手」の3つがそろったときにだけ起きます。EMCの話は、すべてこの3つのどこかについての話です。
ノイズを生み出すもの。電圧や電流を高速でON・OFFするスイッチング電源や、モーター、クロック信号(ICを動かすための一定リズムの信号)などが代表です。
ノイズが移動するルート。電線を伝わる「伝導(でんどう)」と、空中を飛ぶ「放射(ほうしゃ)」の2つに大きく分かれます。隣の配線に飛び移る「クロストーク」も、伝わり道の一種です。
ノイズを受けて困る機器や回路。ラジオ、センサー、マイコン(小さなコンピュータ)などが代表です。
風邪がうつるには、①くしゃみをする人、②しぶきが飛ぶ空気、③うつされる人、の3つが必要です。どれか1つが欠ければ、風邪はうつりません。ノイズも同じで、3つのどれか1つでも断ち切れば、トラブルは起きません。
🗺️ 3要素ごとの「くわしい行き先」
この記事は地図の役割なので、それぞれのくわしい中身は専門の記事にお任せします。気になるところから読んでみてください。
| 要素 | くわしい解説記事 |
|---|---|
| ① 発生源 | なぜスイッチング電源はノイズの塊なのか? |
| ② 伝わり道(線と空) | 伝導ノイズと放射ノイズの違い |
| ② 伝わり道(流れ方) | コモンモードノイズとノーマルモードノイズの違い |
| ② 伝わり道(隣の配線) | クロストークとは?隣の配線にノイズが飛び移るメカニズム |
EMCの勉強で迷子になったら、「今の話は、発生源・伝わり道・受け手のどれ?」と考えてみてください。それだけで、話の位置がわかります。

🗂️ EMC試験の全体マップ|4つのマスで整理する
EMC試験は「出す側か受ける側か」と「電線経由か空中経由か」の2つの軸で、4つのマスに整理できます。名前の多い試験も、どれかのマスに必ず入ります。
電源ケーブルなどを伝わって外へ出ていくノイズを測る。
例:家のコンセントを通じて、隣の家電にノイズが伝わらないか
機器から空中へ飛び出すノイズを測る。
例:テレビやラジオの電波をじゃましていないか
電線から入ってくるノイズに耐えられるか試す。
例:雷による電圧の急上昇(サージ)や、瞬間的な停電
空中から飛んでくる電波に耐えられるか試す。
例:すぐ横でトランシーバーやスマホを使われても誤動作しないか
伝導は「水道管や壁を伝わって響く音」。放射は「窓から外に漏れる声」。エミッションは「自分の家がうるさくないか」、イミュニティは「外がうるさくても眠れるか」のチェックです。
⚡ もう1つの仲間「過渡(かと)現象」
受ける側の試験には、ほんの一瞬だけ起きる大きなショックに耐えられるかを試すものもあります。冬の静電気「バチッ」や、雷の影響、スイッチを切った瞬間のノイズなどです。
こうした「一瞬の出来事」も、伝わり方で見ればマス3(電線経由)かマス4(空中経由)のどちらかに入ります。静電気だけは機器に直接バチッと当てるので少し特別ですが、受ける側の試験の仲間です。
EMC試験は「出す・受ける」×「線・空」=4マス。初めて聞く試験の名前が出てきても、「どのマスかな?」と考えれば落ち着いて理解できます。

📢 エミッション試験とは?出ているノイズを測る試験
エミッション試験は、製品から出るノイズが決められた上限(限度値)より小さいかを測る試験です。周波数(ノイズが1秒間に何回揺れるか)によって、伝導と放射で測り方を分けるのが基本です。
「周波数」は単位Hz(ヘルツ)で表します。1MHz(メガヘルツ)は1秒に100万回、1GHz(ギガヘルツ)は1秒に10億回の揺れです。
| 試験 | 周波数の範囲の例 | どこで・どう測る? |
|---|---|---|
| 伝導エミッション | 150kHz〜30MHz | 電源ケーブルにつないだ専用の測定器(擬似電源回路網、LISNとも呼ぶ)で、線に乗ったノイズを測る |
| 放射エミッション | 30MHz〜1GHz(機器によっては6GHzまで) | 外の電波を遮断した部屋(電波暗室)で、3mや10m離したアンテナで受信して測る |
※周波数の範囲は、マルチメディア機器の規格CISPR 32の代表例です。製品の種類や規格によって変わるので、具体的な値は適用する規格で確認してください。
🏠 クラスAとクラスB|家庭用のほうが厳しい
エミッションの上限は、使う場所によって2種類に分かれます。クラスAは主に工場やオフィスなど住宅以外で使う機器、クラスBは家庭で使う機器です。
家庭ではテレビやラジオがすぐ近くにあるので、クラスBのほうが上限が厳しく決められています。差はおおむね10dB(デシベル)ほどです。10dBが何倍にあたるのかは、このあとの計算ブロックで実際に確かめます。
工場の中なら多少大きな声でもOK(クラスA)。でも、住宅街の夜はもっと小さな声で話すのがマナー(クラスB)。同じ「声を出す」でも、場所によって許される大きさが違うのです。
エミッション試験は「低い周波数は線で、高い周波数は空中で」測る。そして家庭用(クラスB)のほうが厳しい。この2つを押さえれば十分です。

🛡️ イミュニティ試験とは?「わざとノイズを当てる」試験
イミュニティ試験は、現実に起こりうるノイズを機器にわざと当てて、正常に動き続けるかを確かめる試験です。やり方の多くは、国際規格「IEC 61000-4(アイ・イー・シー ろくまんせんの4)」シリーズで決められています。
IECは、電気の国際ルールを決める組織(国際電気標準会議)です。番号の最後の数字で、どのノイズの試験かがわかります。
| 規格番号 | 試験の名前 | 現実ではどんな場面? | マス |
|---|---|---|---|
| IEC 61000-4-2 | 静電気放電(ESD) | ⚡ 冬に指先から「バチッ」 | 直接 |
| IEC 61000-4-3 | 放射イミュニティ | 📻 近くで無線機やスマホを使う | マス4 |
| IEC 61000-4-4 | ファストトランジェント/バースト(EFT) | 🔧 近くの機械のスイッチを入れたり切ったりしたときの「パチパチ」とした細かいノイズ | マス3 |
| IEC 61000-4-5 | サージ | ⛈️ 近くに雷が落ちて、電線に大きな電圧が入る | マス3 |
| IEC 61000-4-6 | 伝導イミュニティ | 📶 ケーブルが電波を拾い、ノイズとして入ってくる | マス3 |
| IEC 61000-4-8 | 電源周波数の磁界 | 🧲 大きな電流が流れるケーブルや変圧器のそば | マス4 |
| IEC 61000-4-11 | 電圧ディップ・瞬時停電 | 💡 照明が一瞬暗くなる「瞬低(しゅんてい)」 | マス3 |
冬の「バチッ」の仕組みは冬に静電気がバチッとくるのはなぜ?で、雷については雷はなぜ落ちる?で解説しています。
車は、わざと壁にぶつけて乗る人が守られるかを確かめますよね。イミュニティ試験も同じで、「わざとノイズをぶつけて、壊れたり止まったりしないか」を確かめる、電子機器の衝突試験です。
IEC 61000-4シリーズが決めているのは「試し方」です。「何ボルトまで耐えれば合格か」という合格ラインは、製品ごとの規格で決まります。この「試し方」と「合格ライン」の分担は、このあとの規格ピラミッドで整理します。
イミュニティ試験は「生活の中で起きるノイズの再現ドラマ」です。バチッ、雷、スイッチのパチパチ、瞬間的な停電、近くの電波。どれも身近な出来事を、決まった強さで再現しています。

🧮 具体例で計算してみる|「30MHz」と「10dB」の意味
EMCの地図に出てくる「30MHzの境目」と「クラスBは約10dB厳しい」は、かんたんな計算で実感できます。途中式をひとつも飛ばさずに進めます。
📏 計算①:なぜ30MHzで「線」と「空」を分けるの?
ヒントは波長(はちょう)です。波長とは、ノイズの波1つ分の長さのこと。波長は次の式で求められます。
波長λ(m)= 光の速さ(3億m/秒)÷ 周波数(Hz)
単位をそろえます。30MHz(メガヘルツ)の「メガ」は100万なので、30MHz=30×1,000,000=30,000,000Hzです。
公式に入れます。λ=300,000,000÷30,000,000。両方の数字から0を7個ずつ消すと、30÷3になります。
30÷3=10m。30MHzのノイズは、波1つ分が10mもあるということです。
| 周波数 | 計算 | 波長 | 身近なサイズ |
|---|---|---|---|
| 150kHz | 300,000,000÷150,000 | 2,000m | 歩いて約25分 |
| 30MHz | 300,000,000÷30,000,000 | 10m | 3階建ての建物くらい |
| 1GHz | 300,000,000÷1,000,000,000 | 0.3m | 30cmの定規1本分 |
電線や配線は、自分の長さが波長に近いほど「アンテナ」としてよく働き、電波を出しやすくなります。製品のケーブルは1〜2mほどなので、波長が10m以上ある低い周波数では電波をあまり出せず、ノイズは主に線を伝わって広がります。周波数が上がって波長が短くなると、ケーブルや基板が上手なアンテナになり、空中へ飛び出すノイズが主役になります。
30MHzより下でも電波はゼロではなく、上でも線を伝わるノイズはあります。「どちらが主役か」で線を引いた、とイメージしてください。
🔢 計算②:「クラスBは約10dB厳しい」は何倍?
dB(デシベル)は、大きさを「倍率」で比べる単位です。EMCで電圧の大きさを比べるときは、次の式を使います。
dB = 20 × log₁₀(倍率)
log₁₀(倍率)は「10を何回かけ算すると、その倍率になるか」を表す数です
差が10dBなので、10=20×log₁₀(倍率)と置きます。
両辺を20で割ります。10÷20=0.5なので、log₁₀(倍率)=0.5。つまり倍率は「10の0.5乗」です。
「10の0.5乗」は、2回かけると10になる数です。0.5+0.5=1なので、10の0.5乗を2回かけると10の1乗=10になります。2回かけて10になる数は√10(ルート10)です。
√10は約3.16です(確かめると、3.16×3.16=9.9856で、ほぼ10)。倍率は約3.16倍です。
家庭用(クラスB)の製品は、工場用(クラスA)にくらべてノイズの電圧を約1/3に抑えなければならない、ということです。「たった10dB」に見えて、実はかなり厳しい差なのです。(差の大きさは周波数や規格によって変わるので、具体的な値は適用する規格で確認してください)

🏛️ EMC規格の全体像|4段のピラミッドで理解する
EMC規格は「試し方の規格」の上に「製品ごとの合格ラインの規格」が積み上がる、ピラミッドのような構造です。規格の名前が多いのは、この役割分担があるからです。
特定の製品だけのルール。例:医療機器のEMC規格(IEC 60601-1-2)
例:CISPR 32/35(パソコン・テレビなどのマルチメディア機器)、CISPR 14-1(家電・電動工具)、CISPR 11(工業・科学・医療用の機器)、CISPR 25(車載部品)
IEC 61000-6シリーズ。「住宅・商業環境向け」と「工業環境向け」に分かれる
IEC 61000-4シリーズ(イミュニティ試験の方法)、CISPR 16(測定器と測定方法)
CISPR(シスプル)は「国際無線障害特別委員会」の略で、IECの中にあるEMC専門のグループです。主に「出す側」のルールを作ってきた組織で、名前に「無線」と入っているのは、ラジオやテレビの電波を守るところから始まったためです。
①基本規格は「味の測り方(塩分計の使い方)」。②共通規格は「部門が決まっていない料理の採点基準」。③製品群規格は「ラーメン部門」「ケーキ部門」の採点基準。④製品規格は「〇〇県名物そば」だけの特別ルール。測り方は共通で、合格ラインは部門ごと、という仕組みです。
📌 どの規格を使う?選ぶ順番のルール
自分の製品だけの製品規格があるか探す。あればそれを使う。
なければ、製品グループの製品群規格(CISPR 32など)を使う。
それもなければ、受け皿の共通規格(IEC 61000-6シリーズ)を使う。どの場合も、試し方は①の基本規格を参照する。
🌏 国ごとのルールはピラミッドの「外側」
日本のVCCIや電気用品安全法、EUのCEマーキング、アメリカのFCCといった各国のルールは、このピラミッドの国際規格をもとに作られています。国ごとの違いや「なぜ規格をクリアしないと売れないのか」は、次の記事にまとめています。
国ごとの規格の違いと、試験に落ちたときのリアルなコスト
「IEC 61000-4=試し方」「CISPR 32など=合格ライン」。この2つの役割の違いがわかれば、規格の名前に振り回されなくなります。

🚧 よくある誤解とつまずきポイント
EMCの初心者が間違えやすいのは、主に次の4つです。はじめは誰でも一度は勘違いするので、ここで一気に整理してしまいましょう。
出す側(EMI)だけを考えてしまう。
受ける側(EMS)も同じくらい大切。片方だけでは不十分です。
「工場の機械はプロ用だから厳しそう」というイメージ。
家庭はテレビやラジオが近くにあるため。差は約10dB(電圧で約1/3)です。
言葉の意味が逆なので、別のものだと思ってしまう。
「受けやすさ」と「強さ」という、同じものの裏表です。
「VCCIは自主規制」という話だけが広まっている。
コンセントにつなぐ家電の多くは、法律(電気用品安全法、PSEマーク)で「雑音の強さ」の基準を守る必要があります。
電気用品安全法の「雑音の強さ」の基準は、2025年8月31日に国際規格をもとにした基準(J55014-1など)へ一本化されました。古い基準が使える猶予期間は2028年8月30日までです。どの製品がどの基準の対象になるかは、最新の公的情報や試験機関で確認してください。
誤解の多くは「EMCの片側しか見ていない」ことから生まれます。いつも「出す・受ける」の両方をセットで考えるのがコツです。

❓ よくある質問
📝 まとめ|EMCは「出さない+負けない」の地図
- EMC(電磁両立性)=EMI(出さない)+EMS(負けない)。電車でのマナーと同じ考え方です。
- 用語は「出す側(EMI・エミッション・妨害波)」と「受ける側(EMS・イミュニティ・耐性)」の2グループに分ければ整理できます。
- ノイズのトラブルは「発生源・伝わり道・受け手」の3つがそろうと起きます。
- EMC試験は「出す・受ける」×「線・空」の4マスで整理できます。
- 伝導と放射の境目の目安は30MHz(波長10m)。クラスBはクラスAより約10dB(電圧で約1/3)厳しいです。
- 規格は「基本規格(試し方)→共通規格→製品群規格(合格ライン)→製品規格」の4段ピラミッドです。
🚪 次の一歩:地図から「現地」へ
EMCの全体像がつかめたら、次は気になるマスを1つ選んで、くわしい記事に進んでみてください。ノイズを「家の入口で止める」考え方を知りたいなら、電源の入口に置くフィルタの記事がおすすめです。
ノイズを「玄関で止める」考え方と、フィルタの中にある部品
EMCは、はじめは用語の多さに圧倒されます。でも中身はいつも「出さない・負けない」の2つだけです。迷ったら、この記事の地図に戻ってきてください。

📚 次に読むべき記事|EMCの地図から「現地」へ
EMCの全体像がわかったら、次は気になる場所を1つ選んで「現地」に行ってみましょう。ノイズの「発生源 → 伝わり道 → 止め方」の順に並べてあります。迷ったら、まずは⭐の3本からどうぞ。
⭐ まずはこの3本(この記事の次の一歩)
🔥 ① ノイズの「発生源」をのぞいてみる
🛤️ ② ノイズの「伝わり道」を追いかける
🌀 ③ ノイズ問題の黒幕「GND」の誤解をとく
🧩 ④ 基板設計でノイズを「出さない」
🛡️ ⑤ 部品でノイズを「止める・吸収する」
🏁 ⑥ 規格と、試験の「元ネタ」になった身近な現象
⭐の3本 → ①発生源 → ④基板設計 → ⑤部品、の順がおすすめです。「なぜノイズが出るのか」がわかってから対策を読むと、理解がぐっと深まります。