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オペアンプを 5V の単電源で使うと、0V より下が出せず、交流の下半分が消えます。基準を 2.5V に上げる仮想GND(かそうジーエヌディー)を作れば上下に振れ、作り方はフォロワを入れる方法、全体の回路は11倍にする回路にあります。
オペアンプの教科書や昔の回路図には、±15V や ±5V の「両電源」がよく出てきます。ところが、マイコンの回路では 5V や 3.3V の電源が1つしかないことがほとんどです。
この記事では、両電源と単電源で何が変わるのかを波の図で確かめてから、5V だけでマイクのような交流の信号を大きくする回路を、部品の値まで決めていきます。

結論:5Vだけで交流を扱うには、基準を2.5Vに上げる
5V の単電源で交流の信号を扱う手順は、①2.5V を作る ②入力をコンデンサでつなぐ ③GND につないでいた所を 2.5V につなぎ替える、の3ステップです。
この3つで、出力は 2.5V を中心に上下に動くようになります。理由と部品の値は、このあと順に説明します。
オペアンプの基本の使い方(フォロワ・非反転増幅・5V での組み方)は、連載の前の記事にまとめています。
フォロワと非反転増幅の組み方、5V で反転増幅を使うときに+入力を2.5V にする話がわかる
つまり、仮想GND は「信号の真ん中を、0V から電源の半分にずらす」ための工夫です。

両電源と単電源の違い:電源ピンのつなぎ方
両電源は V+ に +5V、V− に −5V をつなぎます。単電源は V+ に +5V、V− に GND(0V)をつなぎます。オペアンプから見て大事なのは、V+ と V− の差(合計の電圧)です。
オペアンプ自身は「0V」を知りません。見ているのは、V+ と V− の2本の電源ピンの電圧だけです。±5V は、V− を 0V と見れば「10V の単電源」と同じです。
そのため、品種を選ぶときは合計の電圧で見ます。LM358 のデータシートにも、2つの電源の差が推奨の範囲に入れば両電源でも使える、と書かれています。
| 品種 | 電源の範囲(V+ − V−) | ±5V(合計10V) | 5V |
|---|---|---|---|
| LM358(TI) | 3〜30V | 使える | 使える |
| MCP6002(Microchip) | 1.8〜6.0V | 使えない | 使える |
| TLV9062(TI) | 1.8〜5.5V | 使えない | 使える |
MCP6002 や TLV9062 のような低い電圧向けの品種は、±5V では合計が範囲を超えます。この品種で両電源にするなら、±2.5V(合計5V)までです。
つまり、両電源と単電源は「電源ピンの片方を −にするか、GND にするか」の違い。品種は合計の電圧で選びます。

出力の振れ幅:単電源のままだと、交流の下半分が消える
オペアンプの出力は、V− と V+ の間しか動けません。単電源(0〜5V)で 0V を中心にした波を出そうとすると、0V より下の半分が切れて消えます。
同じ ±2.2V の波(イメージ)を、3つの電源で出したときを比べます。
| 電源と基準 | 出したい波 | 結果 |
|---|---|---|
| 両電源 ±5V・基準 0V | −2.2〜+2.2V | 電源の中に入る → そのまま出る |
| 単電源 5V・基準 0V | −2.2〜+2.2V | 0V より下が出ない → 半分が消える |
| 単電源 5V・基準 2.5V | 0.3〜4.7V | 電源の中に入る → そのまま出る |
マイクの音・振動センサー・交流の電流を測る回路など、基準より上と下にゆれる信号は、単電源のままだとこの失敗が起きます。
つまり、単電源で交流を扱うには、波の真ん中(基準)を電源の中に持ち上げる必要があります。

基準を真ん中に置く理由:上と下のゆとりをそろえる
基準を持ち上げるなら、電源のちょうど真ん中(5V なら 2.5V)が基本です。波は、上と下のゆとりの小さい側から先に切れるからです。
| 基準 | 上のゆとり | 下のゆとり | 上下に同じだけ振れる幅 |
|---|---|---|---|
| 2.5V | 2.5V | 2.5V | ±2.5V |
| 1V | 4V | 1V | ±1V(下で切れる) |
| LM358 で 2.5V | 1.0V(上限 約3.5V) | 2.5V | ±1.0V(上で切れる) |
出力が電源の端まで届かない品種では、届く範囲の真ん中が最適になります。LM358 を5V で使うと、出力の上限は約3.5V(データシートの値。電源から約1.5V 下)なので、一番広く振れる基準は 1.75V です。ただ、部品を増やさず扱いやすいのは 2.5V なので、ふつうは「2.5V + 出力が端まで届く品種」の組み合わせにします。

仮想GND(かそうジーエヌディー)とは:基準を0Vから2.5Vにずらすこと
仮想GND は、単電源の回路の中に作る「信号の基準の電圧」です。両電源の回路で GND につないでいた所を、全部この 2.5V につなぎ替えます。
左右の回路は、同じ「交流を11倍にする回路」です。違うのは、Rb(+入力の抵抗)と R1 の下の端の行き先と、電源だけです。
| 両電源の回路 | 単電源+仮想GND の回路 | |
|---|---|---|
| 電源 | +5V と −5V | +5V と GND |
| Rb・R1 の行き先 | GND(0V) | 仮想GND(2.5V) |
| 出力の真ん中 | 0V | 2.5V |
電源の GND(0V)は、オペアンプの V− ピンや、パスコンの片側など「電源としての GND」にはそのまま使います。信号の基準だけを 2.5V に移す、と考えると混乱しません。
つまり、仮想GND は「信号用の 0V の代わり」。電源の GND とは役目を分けて使います。

仮想GNDの作り方1:抵抗2本で分けて、コンデンサで安定させる
一番かんたんなのは、5V を同じ値の抵抗2本で分ける方法です。10kΩ+10kΩ なら 2.5V。流れる電流は 5V÷20kΩ=0.25mA です。下の抵抗と並べて10μF のコンデンサを入れ、電源のゆれを吸わせます。
コンデンサは、電源の 5V にのったノイズが 2.5V に伝わるのをおさえます。分圧を外から見た抵抗(10kΩ と 10kΩ の並列で 5kΩ)と 10μF で、約3.2Hz より速いゆれを落とす計算です。
抵抗の値を大きくすると電流は減りますが、次に説明する「ずれ」が大きくなります。抵抗の値の決め方は、分圧の記事にくわしく書いています。
分圧の抵抗を大きくすると何が困るのか、つなぐ先の影響と E24 での選び方がわかる
つまり、分圧+コンデンサは部品3つで作れる一番安い仮想GND。ただし、電流をほとんど取らない所にしか使えません。

分圧だけの弱点:電流が流れ込むと、2.5Vがずれる
分圧で作った 2.5V は、外から見ると「2.5V の電池に 5kΩ の抵抗がつながったもの」と同じです。そこに電流が流れ込むと、5kΩ で電圧がずれます。
+入力のバイアス(Rb)のように、オペアンプの入力にしかつながらない所なら、流れる電流はほぼ0なので問題ありません。一方、R1 や、つなぐ先の回路を 2.5V に戻すと、信号の電流がそのたびに出入りします。基準がゆれて、出力の波がひずんだり、ゲインがずれたりします。
| 流れ込む電流 | 分圧だけ | 分圧+フォロワ |
|---|---|---|
| 0mA | 2.50V | 2.50V |
| 0.1mA 入る | 3.00V | ほぼ 2.50V |
| 0.1mA 出る | 2.00V | ほぼ 2.50V |

仮想GNDの作り方2:分圧のあとにフォロワを入れる(おすすめ)
分圧の 2.5V をフォロワ(ボルテージフォロワ)で受けると、電流が出入りしても 2.5V のままになります。2回路入りのオペアンプの余った側を使えば、部品はほとんど増えません。
フォロワの入力は電流をほとんど取らないので、分圧は 2.5V のまま保たれます。信号の電流の出し入れは、フォロワの出力が引き受けます。
つまり、迷ったら「分圧+フォロワ」。R1 やつなぐ先を戻しても、基準がずれません。

仮想GNDの作り方3つのくらべ:専用ICという方法もある
仮想GND 専用の IC もあります。TI の TLE2426 は「レールスプリッタ」と呼ばれる3本足の IC で、入力の電圧(4〜40V)のちょうど半分を出し、標準で20mA まで電流を出し入れできます(データシートの値)。
| 分圧+コンデンサ | 分圧+フォロワ | 専用IC(TLE2426) | |
|---|---|---|---|
| 部品 | 抵抗2本+C | 抵抗2本+C+オペアンプ | IC 1個+C |
| 電流の出し入れ | ほぼできない | 数mA までできる(目安) | 約20mA(標準) |
| 基準のずれ | 流れる電流でずれる | ほぼずれない | ほぼずれない |
| 向く所 | +入力のバイアスだけ | R1・つなぐ先の基準 | 部品を減らしたい時 |
| 注意 | 内部抵抗に気をつける | 出力の容量に Riso | 電源 4V 以上が必要 |
5V の回路でオペアンプを1個使うなら、2回路入り(MCP6002 など)の A 側をアンプ、B 側を仮想GND にするのが、部品も費用も少なくて済みます。

入力はコンデンサでつなぐ:直流を止めて、波だけを通す
交流の信号源(マイクなど)は 0V を中心にゆれ、オペアンプの+入力は 2.5V にしたい。この2つを、コンデンサ(Cin)でつなぎます。コンデンサは直流を通さず、波は通すからです。
Cin の入力側は 0V 中心、オペアンプ側は Rb(100kΩ)で 2.5V に引っぱられています。Cin が直流の差(2.5V)を受け持つので、オペアンプの+入力には「2.5V を中心にゆれる波」が届きます。
この fc(カットオフ周波数)より十分に速い波は、ほぼそのまま通ります。人の声は数百Hz 以上なので、約1.6Hz なら十分です。反対に、直流(0Hz)やゆっくり変わる信号は通らないので、温度センサーのような直流の信号には使えません。
抵抗とコンデンサの組み合わせで周波数を決める考え方は、RC 時定数の記事でくわしく扱っています。
抵抗とコンデンサの値から、何Hz より速い・遅いを分けるかを実例で決められる
つまり、コンデンサ結合は「直流の高さのちがいをコンデンサに預けて、波だけを渡す」つなぎ方です。

5Vだけで交流を11倍にする回路:部品の値を決める
非反転増幅の Rb と R1 の行き先を 2.5V にすれば、5V だけで交流を大きくできます。R1=10kΩ・R2=100kΩ ならゲインは 1+100÷10=11倍です。
直流(基準)はどうなるでしょうか。+入力は Rb で 2.5V、R1 の下の端も 2.5V です。オペアンプは+と−をそろえるので、出力の直流も 2.5V に落ち着きます。直流は1倍のまま、波だけが11倍になるわけです。
GB積(ゲインと周波数のかけ算がほぼ一定になる性質)が1MHz の MCP6002 なら、11倍で使えるのはおよそ 1MHz÷11≒91kHz までが目安です。音の信号には十分です。

各点の波形:A入力 → B+入力 → C出力
回路図の A・B・C の3か所で、波がどう変わるかを見ます(大きさは説明のためのイメージ)。
| 場所 | 波の中心 | 波の大きさ |
|---|---|---|
| A 入力(Cin の前) | 0V | ±50mV |
| B +入力(Cin の後) | 2.5V | ±50mV |
| C 出力 | 2.5V | ±0.55V(1.95〜3.05V) |
次の回路に 0V 中心の波を渡したいときは、出力のあとにもコンデンサ(例:10μF)を入れます。つなぐ先が10kΩ なら、下限の周波数は約1.6Hz です。マイコンの A/D 変換にそのまま入れるなら、2.5V 中心のままの方が、0〜5V の目盛りを上下に使えて好都合です。

レールtoレールとの関係:大きな波を出すなら、出力が端まで届く品種
基準を 2.5V にしても、出力が電源の端まで届かない品種では、大きな波の頭が切れます。LM358 は5V で出力の上限が約3.5V なので、±2.2V の波は上が切れます。
| 品種(5V で) | 出力が届く範囲(データシートの条件) | ±0.55V の波 | ±2.2V の波 |
|---|---|---|---|
| MCP6002 | 約0.025〜4.975V | OK | OK |
| TLV9062 | 電源から約0.02V の所まで | OK | OK |
| LM358 | 0V 近く〜約3.5V | OK | 上が切れる(4.7V > 3.5V) |
数字は、データシートに書かれた条件(電源電圧・つなぐ先の抵抗)での値です。つなぐ先の抵抗が小さい(電流をたくさん取る)ほど、端まで届きにくくなります。
入力側も同じで、LM358 の入力は電源から1.5V 下まで、MCP6002 と TLV9062 は電源の外側まで少し使えます。2.5V を中心に小さく振れる信号なら、どの品種でも入力は問題ありません。
レールtoレール・GB積など、オペアンプを品番で選ぶときに見る5つの項目がわかる
つまり、5V の単電源で大きく振りたいなら「仮想GND + レールtoレール」がセットです。

パスコンの位置:電源ピンのすぐ横に。両電源なら2つ
パスコンは、オペアンプの電源ピンのすぐ横に置きます。単電源なら V+(8番)と GND の間に1つ、両電源なら V+ と GND、V− と GND の間に1つずつ置きます。
MCP6002 のデータシートでは、0.01〜0.1μF のコンデンサを電源ピンから2mm 以内に、1μF 以上のコンデンサを100mm 以内に置くように書かれています。
| 単電源(5V) | 両電源(±5V) | |
|---|---|---|
| パスコンの数 | 1つ(8番と GND の間) | 2つ(8番と GND・4番と GND) |
| 4番(V−) | GND に直接 | −5V。ここにもパスコン |
仮想GND の 10μF は、基準のゆれを吸うためのものです。電源のパスコンの代わりにはならないので、両方とも入れます。パスコンをなぜ IC のすぐ近くに置くのかは、デカップリングコンデンサの記事にまとめています。
パスコンをなぜ IC のすぐ近くに置くのか、離すと何が起きるのかがわかる
つまり、パスコンは「電源ピンの数だけ、ピンのすぐ横に」。仮想GND のコンデンサとは別に入れます。

MCP6002 1個で組む:A側でアンプ、B側で仮想GND
2回路入りの MCP6002 なら、A 側(1〜3番)を11倍のアンプ、B 側(5〜7番)を仮想GND のフォロワにして、IC 1個で組めます。
| ピン | つなぐもの | ピン | つなぐもの |
|---|---|---|---|
| 1 出力A | C 出力・R2 の片側 | 8 V+ | +5V(0.1μF のパスコン) |
| 2 −入力A | R1(10kΩ)・R2(100kΩ) | 7 出力B | 仮想GND(R1・Rb の下の端へ) |
| 3 +入力A | Cin(1μF)・Rb(100kΩ) | 6 −入力B | 7番とつなぐ(フォロワ) |
| 4 V− | GND | 5 +入力B | 分圧(10kΩ+10kΩ)の 2.5V・10μF |
組んだら、テスターの黒を 4番(GND)に当て、直流の電圧を測ります。7番が 2.50V、1番も 2.50V 近くなら、基準ができています。1番がほぼ 0V や 5V に張り付いているときは、R1 と Rb の行き先(7番になっているか)と、6番と7番のつなぎを見直します。
| 測る所 | 例 | 道具 |
|---|---|---|
| 7番(仮想GND) | 2.50V | テスター(直流) |
| 1番(出力A) | 2.50V | テスター(直流) |
| 1番(出力A) | 2.5V を中心に ±0.55V の波 | オシロスコープ |
数値は計算から出したイメージです。抵抗のばらつきで、2.5V は少しずれます。

よくある失敗4つ:GNDに戻す・分圧だけ・容量で発振・合計の電圧
仮想GND の回路で多い失敗は、R1 を GND に戻す・分圧だけで電流を流す・フォロワに大きなコンデンサを直結する・合計の電圧が範囲外の品種を選ぶ、の4つです。
失敗1:R1 を GND に戻した
Rb は 2.5V なのに R1 が GND だと、2.5V の直流まで11倍されて、出力が5V に張り付きます。R1 も仮想GND へ戻します。
失敗2:分圧だけで R1 を戻した
信号の電流が分圧に流れ込み、基準がゆれます。R1 やつなぐ先を戻す所は、フォロワで支えた仮想GND にします。
失敗3:フォロワに大きなコンデンサを直結した
μF のコンデンサをフォロワの出力に直接つなぐと、発振やリンギング(波のゆれ)が起きやすくなります。Riso をはさむか、コンデンサを分圧の側に置きます。
失敗4:±5V に、6V までの品種を使った
MCP6002 は合計 6.0V までなので、±5V(合計10V)では範囲外です。両電源にするなら合計の電圧で品種を選びます。
つまり、動かないときは「7番の 2.5V → R1・Rb の行き先 → 電源の合計」の順に確かめると、早く原因にたどり着けます。


