回路設計

オペアンプの単電源と両電源|5Vで交流を扱う仮想GNDの作り方

ブレッドボードに挿した8本足のオペアンプとマイク・抵抗・コンデンサ、奥に光る正弦波の写真に、オペアンプの電源・単電源と両電源・2.5Vが基準・仮想GND=分圧+フォロワの文字

※本記事にはプロモーション(広告)が含まれています。

オペアンプを 5V の単電源で使うと、0V より下が出せず、交流の下半分が消えます。基準を 2.5V に上げる仮想GND(かそうジーエヌディー)を作れば上下に振れ、作り方はフォロワを入れる方法、全体の回路は11倍にする回路にあります。

結論|まず30秒でわかる答え

オペアンプの単電源と両電源の違いは、出力の基準(真ん中)がどこにあるかです。
①両電源(±5V など):0V を中心に上下に振れる
②単電源(5V)のまま:0V より下が出せず、交流の下半分が消える
③単電源+仮想GND:基準を 2.5V に上げれば、5V だけで上下に振れる
仮想GND は、抵抗2本で作った 2.5V をフォロワで支えて作ります。入力はコンデンサでつなぎ、GND につないでいた抵抗の行き先を 2.5V に替えます。

この記事に出てくる言葉

わからない言葉が出てきたら、ここに戻ってきてください。本文でも、初めて出たところで言い換えます。

両電源+5V と −5V のように、+と−の2つの電源でオペアンプを動かすこと
単電源+5V と GND(0V)の2本だけで動かすこと。片電源とも呼ぶ
基準(きじゅん)信号の「真ん中」にする電圧。両電源なら 0V
仮想GND単電源の回路の中で、基準として使う電源の半分の電圧(5V なら 2.5V)
交流(こうりゅう)の信号マイクの音のように、基準より上と下にゆれる信号
コンデンサ結合コンデンサを間にはさんで、直流を止めて波だけを通すつなぎ方
フォロワ出力が入力と同じ電圧になるオペアンプの回路。電流を出し入れできる
レールtoレール出力(や入力)が、電源の端(0V や 5V)のすぐ近くまで届く性質
パスコンIC の電源ピンのすぐ近くに置くコンデンサ。電源のゆれを吸う

オペアンプの教科書や昔の回路図には、±15V や ±5V の「両電源」がよく出てきます。ところが、マイコンの回路では 5V や 3.3V の電源が1つしかないことがほとんどです。

この記事では、両電源と単電源で何が変わるのかを波の図で確かめてから、5V だけでマイクのような交流の信号を大きくする回路を、部品の値まで決めていきます。

ブレッドボードに挿した8本足のオペアンプとマイク・抵抗・コンデンサ、奥に光る正弦波の写真に、オペアンプの電源・単電源と両電源・2.5Vが基準・仮想GND=分圧+フォロワの文字

結論:5Vだけで交流を扱うには、基準を2.5Vに上げる

5V の単電源で交流の信号を扱う手順は、①2.5V を作る ②入力をコンデンサでつなぐ ③GND につないでいた所を 2.5V につなぎ替える、の3ステップです。

STEP 1 2.5V を作る

5V を同じ値の抵抗2本で半分にし、オペアンプのフォロワで支える。これが「仮想GND」

STEP 2 入力をコンデンサでつなぐ

コンデンサは直流を通さないので、入力の 0V と、オペアンプ側の 2.5V を切りはなせる。波は通る

STEP 3 GND の代わりに 2.5V へ

両電源の回路で GND に落としていた抵抗(R1 や +入力の抵抗)を、2.5V につなぎ替える

この3つで、出力は 2.5V を中心に上下に動くようになります。理由と部品の値は、このあと順に説明します。

オペアンプの基本の使い方(フォロワ・非反転増幅・5V での組み方)は、連載の前の記事にまとめています。

オペアンプの使い方入門|フォロワと非反転・反転増幅を5Vで組む
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フォロワと非反転増幅の組み方、5V で反転増幅を使うときに+入力を2.5V にする話がわかる

つまり、仮想GND は「信号の真ん中を、0V から電源の半分にずらす」ための工夫です。

3つのステップ。STEP1は10kΩ2本で5Vを分けて2.5Vを作る、STEP2は入力をコンデンサCinでつなぎRbで2.5Vへ、STEP3はR1の下の端を2.5Vへ

両電源と単電源の違い:電源ピンのつなぎ方

両電源は V+ に +5V、V− に −5V をつなぎます。単電源は V+ に +5V、V− に GND(0V)をつなぎます。オペアンプから見て大事なのは、V+ と V− の差(合計の電圧)です。

オペアンプ自身は「0V」を知りません。見ているのは、V+ と V− の2本の電源ピンの電圧だけです。±5V は、V− を 0V と見れば「10V の単電源」と同じです。

そのため、品種を選ぶときは合計の電圧で見ます。LM358 のデータシートにも、2つの電源の差が推奨の範囲に入れば両電源でも使える、と書かれています。

品種電源の範囲(V+ − V−)±5V(合計10V)5V
LM358(TI)3〜30V使える使える
MCP6002(Microchip)1.8〜6.0V使えない使える
TLV9062(TI)1.8〜5.5V使えない使える

MCP6002 や TLV9062 のような低い電圧向けの品種は、±5V では合計が範囲を超えます。この品種で両電源にするなら、±2.5V(合計5V)までです。

つまり、両電源と単電源は「電源ピンの片方を −にするか、GND にするか」の違い。品種は合計の電圧で選びます。

両電源±5V(合計10V)と単電源5V(合計5V)のオペアンプの電源のつなぎ方と、LM358 3〜30V、MCP6002 1.8〜6.0V、TLV9062 1.8〜5.5Vの表。±5VはMCP6002とTLV9062では使えない

出力の振れ幅:単電源のままだと、交流の下半分が消える

オペアンプの出力は、V− と V+ の間しか動けません。単電源(0〜5V)で 0V を中心にした波を出そうとすると、0V より下の半分が切れて消えます。

同じ ±2.2V の波(イメージ)を、3つの電源で出したときを比べます。

電源と基準出したい波結果
両電源 ±5V・基準 0V−2.2〜+2.2V電源の中に入る → そのまま出る
単電源 5V・基準 0V−2.2〜+2.2V0V より下が出ない → 半分が消える
単電源 5V・基準 2.5V0.3〜4.7V電源の中に入る → そのまま出る

マイクの音・振動センサー・交流の電流を測る回路など、基準より上と下にゆれる信号は、単電源のままだとこの失敗が起きます。

つまり、単電源で交流を扱うには、波の真ん中(基準)を電源の中に持ち上げる必要があります。

3つのグラフ。両電源±5Vでは±2.2Vの波がそのまま出る、単電源5Vで基準0Vでは下半分が消える、基準2.5Vでは0.3〜4.7Vでそのまま出る

基準を真ん中に置く理由:上と下のゆとりをそろえる

基準を持ち上げるなら、電源のちょうど真ん中(5V なら 2.5V)が基本です。波は、上と下のゆとりの小さい側から先に切れるからです。

基準上のゆとり下のゆとり上下に同じだけ振れる幅
2.5V2.5V2.5V±2.5V
1V4V1V±1V(下で切れる)
LM358 で 2.5V1.0V(上限 約3.5V)2.5V±1.0V(上で切れる)

出力が電源の端まで届かない品種では、届く範囲の真ん中が最適になります。LM358 を5V で使うと、出力の上限は約3.5V(データシートの値。電源から約1.5V 下)なので、一番広く振れる基準は 1.75V です。ただ、部品を増やさず扱いやすいのは 2.5V なので、ふつうは「2.5V + 出力が端まで届く品種」の組み合わせにします。

0〜5Vの帯で基準の位置と上下のゆとりを比べた図。基準2.5Vは上下2.5Vずつ、基準1Vは下が1V、LM358(上限約3.5V)で基準2.5Vは上が1V、基準1.75Vなら上下1.75Vずつ

仮想GND(かそうジーエヌディー)とは:基準を0Vから2.5Vにずらすこと

仮想GND は、単電源の回路の中に作る「信号の基準の電圧」です。両電源の回路で GND につないでいた所を、全部この 2.5V につなぎ替えます。

左右の回路は、同じ「交流を11倍にする回路」です。違うのは、Rb(+入力の抵抗)と R1 の下の端の行き先と、電源だけです。

両電源の回路単電源+仮想GND の回路
電源+5V と −5V+5V と GND
Rb・R1 の行き先GND(0V)仮想GND(2.5V)
出力の真ん中0V2.5V

電源の GND(0V)は、オペアンプの V− ピンや、パスコンの片側など「電源としての GND」にはそのまま使います。信号の基準だけを 2.5V に移す、と考えると混乱しません。

たとえると

シーソーの支点を、地面(0V)から台の上(2.5V)に上げるようなものです。支点が地面にあると、下に振れる側が地面にぶつかります。台の上に支点を置けば、上にも下にも同じだけ振れます。

つまり、仮想GND は「信号用の 0V の代わり」。電源の GND とは役目を分けて使います。

同じ交流の非反転増幅回路を2つ並べた回路図。左は両電源±5VでRbとR1がGNDへ、右は単電源5VでRbとR1が2.5Vへ

仮想GNDの作り方1:抵抗2本で分けて、コンデンサで安定させる

一番かんたんなのは、5V を同じ値の抵抗2本で分ける方法です。10kΩ+10kΩ なら 2.5V。流れる電流は 5V÷20kΩ=0.25mA です。下の抵抗と並べて10μF のコンデンサを入れ、電源のゆれを吸わせます。

分圧の電圧
2.5V = 5V × 10kΩ ÷(10kΩ + 10kΩ)

コンデンサは、電源の 5V にのったノイズが 2.5V に伝わるのをおさえます。分圧を外から見た抵抗(10kΩ と 10kΩ の並列で 5kΩ)と 10μF で、約3.2Hz より速いゆれを落とす計算です。

抵抗の値を大きくすると電流は減りますが、次に説明する「ずれ」が大きくなります。抵抗の値の決め方は、分圧の記事にくわしく書いています。

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つまり、分圧+コンデンサは部品3つで作れる一番安い仮想GND。ただし、電流をほとんど取らない所にしか使えません。

+5Vを10kΩと10kΩで分けて2.5Vを作り、下の抵抗と並べて10μFのコンデンサを入れた回路図。流れる電流0.25mA、約3.2Hzより速いゆれを落とす

分圧だけの弱点:電流が流れ込むと、2.5Vがずれる

分圧で作った 2.5V は、外から見ると「2.5V の電池に 5kΩ の抵抗がつながったもの」と同じです。そこに電流が流れ込むと、5kΩ で電圧がずれます。

ずれの大きさ
5kΩ × 0.1mA = 0.5V(2.5V → 3.0V)

+入力のバイアス(Rb)のように、オペアンプの入力にしかつながらない所なら、流れる電流はほぼ0なので問題ありません。一方、R1 や、つなぐ先の回路を 2.5V に戻すと、信号の電流がそのたびに出入りします。基準がゆれて、出力の波がひずんだり、ゲインがずれたりします。

流れ込む電流分圧だけ分圧+フォロワ
0mA2.50V2.50V
0.1mA 入る3.00Vほぼ 2.50V
0.1mA 出る2.00Vほぼ 2.50V
2.5Vの電源に内部抵抗5kΩがつながった等価回路と表。0.1mA入ると3.00V、出ると2.00V。フォロワならほぼ2.50V

仮想GNDの作り方2:分圧のあとにフォロワを入れる(おすすめ)

分圧の 2.5V をフォロワ(ボルテージフォロワ)で受けると、電流が出入りしても 2.5V のままになります。2回路入りのオペアンプの余った側を使えば、部品はほとんど増えません。

フォロワの入力は電流をほとんど取らないので、分圧は 2.5V のまま保たれます。信号の電流の出し入れは、フォロワの出力が引き受けます。

① 分圧

5V を 10kΩ+10kΩ で 2.5V に。10μF を並べてゆれを吸う

② フォロワ

2.5V を+入力に入れ、出力を−入力にそのまま戻す

③ 仮想GND

フォロワの出力が仮想GND。R1・Rb・つなぐ先の基準をここにつなぐ

注意|フォロワの出力に、大きなコンデンサを直接つながない

MCP6002 のデータシートでは、容量の負荷はオペアンプの動きを不安定にし、ゲイン1のフォロワが一番弱いと書かれています。100pF を超える容量をつなぐときは、出力に小さな直列の抵抗(Riso)をはさみます。値はデータシートのグラフで選びます。ゆれを吸うコンデンサは、フォロワの入力側(分圧の所)に置くと安心です。

つまり、迷ったら「分圧+フォロワ」。R1 やつなぐ先を戻しても、基準がずれません。

10kΩ2本と10μFの分圧をオペアンプのフォロワで受け、出力に直列抵抗Risoをはさんで仮想GND 2.5Vを出す回路図

仮想GNDの作り方3つのくらべ:専用ICという方法もある

仮想GND 専用の IC もあります。TI の TLE2426 は「レールスプリッタ」と呼ばれる3本足の IC で、入力の電圧(4〜40V)のちょうど半分を出し、標準で20mA まで電流を出し入れできます(データシートの値)。

分圧+コンデンサ分圧+フォロワ専用IC(TLE2426)
部品抵抗2本+C抵抗2本+C+オペアンプIC 1個+C
電流の出し入れほぼできない数mA までできる(目安)約20mA(標準)
基準のずれ流れる電流でずれるほぼずれないほぼずれない
向く所+入力のバイアスだけR1・つなぐ先の基準部品を減らしたい時
注意内部抵抗に気をつける出力の容量に Riso電源 4V 以上が必要

5V の回路でオペアンプを1個使うなら、2回路入り(MCP6002 など)の A 側をアンプ、B 側を仮想GND にするのが、部品も費用も少なくて済みます。

分圧+コンデンサ、分圧+フォロワ、専用IC TLE2426の比較表。部品、電流の出し入れ、基準のずれ、向く所、注意

入力はコンデンサでつなぐ:直流を止めて、波だけを通す

交流の信号源(マイクなど)は 0V を中心にゆれ、オペアンプの+入力は 2.5V にしたい。この2つを、コンデンサ(Cin)でつなぎます。コンデンサは直流を通さず、波は通すからです。

Cin の入力側は 0V 中心、オペアンプ側は Rb(100kΩ)で 2.5V に引っぱられています。Cin が直流の差(2.5V)を受け持つので、オペアンプの+入力には「2.5V を中心にゆれる波」が届きます。

どこまで低い波が通るか(下限の周波数)
fc = 1 ÷(2π × Rb × Cin)= 1 ÷(2π × 100kΩ × 1μF)≒ 1.6Hz

この fc(カットオフ周波数)より十分に速い波は、ほぼそのまま通ります。人の声は数百Hz 以上なので、約1.6Hz なら十分です。反対に、直流(0Hz)やゆっくり変わる信号は通らないので、温度センサーのような直流の信号には使えません。

抵抗とコンデンサの組み合わせで周波数を決める考え方は、RC 時定数の記事でくわしく扱っています。

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抵抗とコンデンサの値から、何Hz より速い・遅いを分けるかを実例で決められる

つまり、コンデンサ結合は「直流の高さのちがいをコンデンサに預けて、波だけを渡す」つなぎ方です。

Cinの前は0V中心の±50mV、Cinの後は2.5V中心の±50mVになる2つのグラフと、fc=1÷(2π×100kΩ×1μF)≒1.6Hzの計算

5Vだけで交流を11倍にする回路:部品の値を決める

非反転増幅の Rb と R1 の行き先を 2.5V にすれば、5V だけで交流を大きくできます。R1=10kΩ・R2=100kΩ ならゲインは 1+100÷10=11倍です。

STEP 1 ゲインを決める

入力の波を ±50mV(イメージ)とします。出力を ±0.5V くらいにしたいので、約10倍

STEP 2 抵抗を決める

非反転増幅のゲインは 1+R2÷R1。R1=10kΩ・R2=100kΩ で 11倍

STEP 3 確かめる

±50mV×11=±0.55V。出力は 1.95〜3.05V で、0〜5V の中に入る → OK

直流(基準)はどうなるでしょうか。+入力は Rb で 2.5V、R1 の下の端も 2.5V です。オペアンプは+と−をそろえるので、出力の直流も 2.5V に落ち着きます。直流は1倍のまま、波だけが11倍になるわけです。

POINT|R1 の行き先を GND にしない

Rb を 2.5V にしたのに R1 を GND につなぐと、2.5V の直流まで11倍されて、出力が電源の5V に張り付きます。Rb と R1 は、必ず同じ 2.5V(仮想GND)に戻します。

GB積(ゲインと周波数のかけ算がほぼ一定になる性質)が1MHz の MCP6002 なら、11倍で使えるのはおよそ 1MHz÷11≒91kHz までが目安です。音の信号には十分です。

単電源5Vの非反転増幅回路図。A入力からCin 1μF、B点でRb 100kΩを2.5Vへ、R1 10kΩの下を2.5Vへ、R2 100kΩで出力から戻し、C出力

各点の波形:A入力 → B+入力 → C出力

回路図の A・B・C の3か所で、波がどう変わるかを見ます(大きさは説明のためのイメージ)。

場所波の中心波の大きさ
A 入力(Cin の前)0V±50mV
B +入力(Cin の後)2.5V±50mV
C 出力2.5V±0.55V(1.95〜3.05V)

次の回路に 0V 中心の波を渡したいときは、出力のあとにもコンデンサ(例:10μF)を入れます。つなぐ先が10kΩ なら、下限の周波数は約1.6Hz です。マイコンの A/D 変換にそのまま入れるなら、2.5V 中心のままの方が、0〜5V の目盛りを上下に使えて好都合です。

3つの波形。A入力は0V中心±50mV、B +入力は2.5V中心±50mV、C出力は2.5V中心±0.55V。波の大きさはイメージ

レールtoレールとの関係:大きな波を出すなら、出力が端まで届く品種

基準を 2.5V にしても、出力が電源の端まで届かない品種では、大きな波の頭が切れます。LM358 は5V で出力の上限が約3.5V なので、±2.2V の波は上が切れます。

品種(5V で)出力が届く範囲(データシートの条件)±0.55V の波±2.2V の波
MCP6002約0.025〜4.975VOKOK
TLV9062電源から約0.02V の所までOKOK
LM3580V 近く〜約3.5VOK上が切れる(4.7V > 3.5V)

数字は、データシートに書かれた条件(電源電圧・つなぐ先の抵抗)での値です。つなぐ先の抵抗が小さい(電流をたくさん取る)ほど、端まで届きにくくなります。

入力側も同じで、LM358 の入力は電源から1.5V 下まで、MCP6002 と TLV9062 は電源の外側まで少し使えます。2.5V を中心に小さく振れる信号なら、どの品種でも入力は問題ありません。

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つまり、5V の単電源で大きく振りたいなら「仮想GND + レールtoレール」がセットです。

5Vで出力が届く範囲の棒グラフ。MCP6002 0.025〜4.975V、TLV9062 0.02〜4.98V、LM358 0〜約3.5V。±2.2Vの波(0.3〜4.7V)はLM358で上が切れる

パスコンの位置:電源ピンのすぐ横に。両電源なら2つ

パスコンは、オペアンプの電源ピンのすぐ横に置きます。単電源なら V+(8番)と GND の間に1つ、両電源なら V+ と GND、V− と GND の間に1つずつ置きます。

MCP6002 のデータシートでは、0.01〜0.1μF のコンデンサを電源ピンから2mm 以内に、1μF 以上のコンデンサを100mm 以内に置くように書かれています。

単電源(5V)両電源(±5V)
パスコンの数1つ(8番と GND の間)2つ(8番と GND・4番と GND)
4番(V−)GND に直接−5V。ここにもパスコン

仮想GND の 10μF は、基準のゆれを吸うためのものです。電源のパスコンの代わりにはならないので、両方とも入れます。パスコンをなぜ IC のすぐ近くに置くのかは、デカップリングコンデンサの記事にまとめています。

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つまり、パスコンは「電源ピンの数だけ、ピンのすぐ横に」。仮想GND のコンデンサとは別に入れます。

DIP-8のオペアンプ2つ。単電源は8番+5VとGNDの間に0.1μF、両電源は8番+5VとGND、4番−5VとGNDの間にそれぞれ0.1μF

MCP6002 1個で組む:A側でアンプ、B側で仮想GND

2回路入りの MCP6002 なら、A 側(1〜3番)を11倍のアンプ、B 側(5〜7番)を仮想GND のフォロワにして、IC 1個で組めます。

ピンつなぐものピンつなぐもの
1 出力AC 出力・R2 の片側8 V++5V(0.1μF のパスコン)
2 −入力AR1(10kΩ)・R2(100kΩ)7 出力B仮想GND(R1・Rb の下の端へ)
3 +入力ACin(1μF)・Rb(100kΩ)6 −入力B7番とつなぐ(フォロワ)
4 V−GND5 +入力B分圧(10kΩ+10kΩ)の 2.5V・10μF

組んだら、テスターの黒を 4番(GND)に当て、直流の電圧を測ります。7番が 2.50V、1番も 2.50V 近くなら、基準ができています。1番がほぼ 0V や 5V に張り付いているときは、R1 と Rb の行き先(7番になっているか)と、6番と7番のつなぎを見直します。

測る所例道具
7番(仮想GND)2.50Vテスター(直流)
1番(出力A)2.50Vテスター(直流)
1番(出力A)2.5V を中心に ±0.55V の波オシロスコープ

数値は計算から出したイメージです。抵抗のばらつきで、2.5V は少しずれます。

MCP6002のピンの割り当て。1出力A、2−入力A(R1・R2)、3+入力A(Cin・Rb)、4 GND、5+入力B(2.5V)、6−入力B(7番へ)、7出力B(仮想GND)、8 +5Vと、測る所の表

よくある失敗4つ:GNDに戻す・分圧だけ・容量で発振・合計の電圧

仮想GND の回路で多い失敗は、R1 を GND に戻す・分圧だけで電流を流す・フォロワに大きなコンデンサを直結する・合計の電圧が範囲外の品種を選ぶ、の4つです。

失敗1:R1 を GND に戻した

Rb は 2.5V なのに R1 が GND だと、2.5V の直流まで11倍されて、出力が5V に張り付きます。R1 も仮想GND へ戻します。

失敗2:分圧だけで R1 を戻した

信号の電流が分圧に流れ込み、基準がゆれます。R1 やつなぐ先を戻す所は、フォロワで支えた仮想GND にします。

失敗3:フォロワに大きなコンデンサを直結した

μF のコンデンサをフォロワの出力に直接つなぐと、発振やリンギング(波のゆれ)が起きやすくなります。Riso をはさむか、コンデンサを分圧の側に置きます。

失敗4:±5V に、6V までの品種を使った

MCP6002 は合計 6.0V までなので、±5V(合計10V)では範囲外です。両電源にするなら合計の電圧で品種を選びます。

つまり、動かないときは「7番の 2.5V → R1・Rb の行き先 → 電源の合計」の順に確かめると、早く原因にたどり着けます。

4つの失敗。R1をGNDに戻すと出力が5Vに張り付く、分圧だけでR1を戻すと基準がゆれる、フォロワに大きなコンデンサを直結すると発振、±5VにMCP6002は範囲外

よくある質問(FAQ)

Q. オペアンプの単電源と両電源の違いは?

A. 両電源は0Vを中心に上下に振れ、単電源は0V〜電源の間だけ振れます。単電源で交流を扱うには基準を上げます。

Q. 仮想GNDとは何ですか?

A. 単電源の回路で、信号の基準として使う電源の半分の電圧です。5Vなら2.5Vを分圧とフォロワで作ります。

Q. 仮想GNDは抵抗2本だけで作れますか?

A. 電流をほぼ取らない+入力のバイアスなら作れます。R1などを戻すなら、フォロワで支えて基準のずれを防ぎます。

Q. 単電源で交流を入れるときのコンデンサの値は?

A. 下限の周波数は1÷(2π×R×C)です。100kΩと1μFなら約1.6Hzで、音の信号には十分です。

Q. MCP6002は±5Vで使えますか?

A. 使えません。MCP6002の電源は合計6.0Vまでなので、±5V(合計10V)は範囲外です。±2.5Vまでなら使えます。

Q. 両電源のときパスコンはいくつ必要?

A. V+とGNDの間、V−とGNDの間に1つずつ、電源ピンのすぐ横に置きます。単電源なら1つです。

まとめ
  • 両電源と単電源の違いは、出力の基準(真ん中)の位置。オペアンプが見ているのは V+ と V− の差
  • 単電源のまま交流を出すと、0V より下の半分が消える。基準を真ん中の 2.5V に上げる
  • 仮想GND は「分圧+フォロワ」。分圧だけなら、電流をほぼ取らない+入力のバイアスにだけ使う
  • 入力はコンデンサでつなぐ。1μF・100kΩ なら約1.6Hz より速い波が通る
  • Rb と R1 は、両方とも仮想GND に戻す。直流は1倍、波だけがゲイン倍になる
  • 大きく振るならレールtoレールの品種。パスコンは電源ピンのすぐ横に(両電源なら2つ)

次の一歩として、手元の回路図で GND の記号を探し、「電源としての GND」か「信号の基準」かを分けてみてください。信号の基準になっている所が、単電源にするときに 2.5V へつなぎ替える場所です。

参考にした資料

法令・規格・資料は改訂されることがあります。実務で使うときは、発行元の最新版で確かめてください。

この記事の理解を深める本と道具
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波形を自分の目で確かめるなら、手元にオシロスコープが1台あると便利です。RIGOLのデジタル・オシロスコープ DHO804です。周波数帯域70MHz・4チャンネルで、12ビットの垂直分解能をもちます。

おすすめの本

「オペアンプの単電源と仮想GND」は、回路シミュレータで電圧や電流の波形を見ながら確かめると理解が深まります。無料の回路シミュレータLTspiceを使って、電子回路を学べる本です(オーム社、渋谷道雄 著)。

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シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

テーマ別に、もっと深く学ぶ

気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめて学ぶ人向けにやさしく書いています。

つまずきやすい「違い」を一気に解決
直流と交流の違いとは?なぜ家のコンセントは交流なのか
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直流と交流の違い。「基準より上と下にゆれる信号」の意味がわかる

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インピーダンスとは?抵抗との違いと求め方を図解|計算ツール付き
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抵抗とインピーダンスの違い。コンデンサが周波数で通しやすさを変える理由につながる

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抵抗・コンデンサ・コイルの違い|受動部品3兄弟を図解
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抵抗・コンデンサ・コイル、オペアンプのまわりに置く部品の役目の違い

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GNDとは?0Vの線ではなく電流の帰り道|GNDバウンスと分ける理由を図解
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GND は「0V の線」ではなく電流の帰り道。電源の GND と信号の基準を分けて考える土台

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計算力アップ・資格対策
分圧・分流の法則|公式と覚え方、分圧回路・分流器の計算を例題で図解
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仮想GND の 2.5V を作る分圧の式を、例題で練習できる

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リアクタンス(XL・XC)とは?|周波数で変わる交流抵抗
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コンデンサが「直流を通さず、速い波を通す」理由を、リアクタンスの式で確かめられる

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周波数伝達関数とボード線図|ゲイン[dB]と位相[°]のグラフを読む・書く
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ゲインと周波数の関係をボード線図で読めるようになる

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オームの法則 V=IR とは?電圧・電流・抵抗の関係を「水道管」で図解|例題つき
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分圧の内部抵抗 5kΩ に電流が流れたときの「ずれ」の計算の土台

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抵抗値の決め方|電流・電圧・時間の3つの型で迷わない
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R1・R2・Rb の抵抗値を、電流・電圧・時間のどの型で決めるかが整理できる

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