※本記事にはプロモーション(広告)が含まれています。
回路の試作は、ブレッドボードで動くかを確かめ、ユニバーサル基板で使えるかを確かめ、必要なときにプリント基板へ進む3段階です。ユニバーサル基板の配線は配置図を先に描く節、発注前の点検はチェック8つへ。
回路を考えたら、次は「形にする」です。ところが、ブレッドボードで動いた回路を、そのままの感覚でユニバーサル基板やプリント基板にすると、配線の間違いや部品の向きの間違いが起きやすくなります。
この記事では、マイコンの信号でLEDを点ける小さな回路を例に、3つの段階で「何を確かめるか」「どう作るか」を順に説明します。

結論:試作は3段階、段階ごとに確かめることが違う
試作は、ブレッドボード(動くか)→ユニバーサル基板(使えるか)→プリント基板(何枚も作れるか)の3段階で進めます。前の段階で答えが出てから、次へ進みます。
| 段階 | 確かめること | かかる時間(目安) |
|---|---|---|
| 1 ブレッドボード | 回路が動くか。抵抗などの値を決める | 数分〜 |
| 2 ユニバーサル基板 | しばらく動かし続けても・持ち運んでも大丈夫か | 半日〜1日 |
| 3 プリント基板 | 同じものを何枚も作れるか。小さく・じょうぶにできるか | 数日〜2週間ほど |
いきなりプリント基板を作ると、回路の間違いが見つかったときに作り直しになります。ブレッドボードなら差し替えるだけ、ユニバーサル基板なら線を1本直すだけで済みます。
反対に、ブレッドボードのままずっと使うと、部品が抜けたり、接点が緩んだりして、動いたり止まったりします。段階ごとに得意なことが違うので、順に進めるのが近道です。
つまり、試作は「直しやすい形で確かめてから、じょうぶな形にする」順番で進めます。

3つの試作の形:差す・線をはんだ付け・銅のパターン
同じ回路でも、ブレッドボードは部品を差してつなぎ、ユニバーサル基板は線をはんだ付けしてつなぎ、プリント基板は最初から銅のパターンでつながっています。
ブレッドボードは、穴の中のばねの金具が部品の足をはさみます。はんだごては要りません。
ユニバーサル基板は、2.54mmごとに穴があいた板です。穴の周りに銅の丸(ランド)があり、部品の足や線をはんだ付けしてつなぎます。となりの穴とはつながっていないので、つなぎ方は自分で決めます。
プリント基板は、回路図から作った銅のパターンで、部品どうしが最初からつながっています。自分で作ることもできますが、今はデータを作ってメーカーに発注するのがふつうです。
プリント基板の中がどんな層でできていて、どう作られるのかを図で確かめられる
つまり、3つは「つなぎ方」が違います。つなぎ方が変わると、変更のしやすさとじょうぶさが変わります。

ブレッドボードの中:縦5つの穴が1枚の金属の板でつながる
ブレッドボードは、縦に並んだ5つの穴が中の金属の板でつながっています。手軽な代わりに、つなぎ目が多く、となりの列どうしが近いのが弱点です。
中央の溝をはさんだ上と下は、別の板です。抵抗やICは、溝をまたいで差すと、それぞれの足が別の列になります。
となりの列の金属の板どうしは、すき間をはさんで向かい合っているので、小さなコンデンサになります。DigiKey の測定では、となりの列の間で約2pF、回路によっては約5pFという例があり、100kHz〜1MHz あたりから影響が出始めるとされています。
流せる電流にも上限があります。BusBoard の BB830 のデータシートでは、36V・2A、差せる線は直径0.4〜0.7mm です。商品ごとに違うので、使う品のデータシートで確かめます。
つまり、ブレッドボードは「動くか・値は合っているか」を手早く確かめる道具です。そのまま長く使う道具ではありません。

3つの試作の向き・不向き:電流・速い信号・振動
変更のしやすさはブレッドボードが一番、じょうぶさ・速い信号・電流の扱いはプリント基板が一番です。ユニバーサル基板はその中間です。
| ブレッドボード | ユニバーサル基板 | プリント基板 | |
|---|---|---|---|
| 変更のしやすさ | 抜いて差すだけ | はんだを外す | 作り直し |
| 電流 | 接点で決まる(例 2A) | 線の太さで決まる | パターンの幅で設計する |
| 速い信号 | 1MHz 前後から苦手 | 線を短くすれば扱える | GNDの面を作れて強い |
| 振動・持ち運び | 部品が抜けやすい | はんだで固定 | いちばん強い |
| 何台作るか | 1台(その場で) | 1〜数台 | 数枚〜(同じもの) |
ユニバーサル基板の電流は、使う線の太さで決まります。細いスズめっき線で大きな電流を流すと、線が熱くなります。電流の大きい所だけ太い線にするか、線を2本並べます。
速い信号に強いかどうかは、線の長さとGNDの取り方で決まります。プリント基板では、一面を銅で覆ったGND(ベタGND)を作れるので、信号の帰り道が短くなり、ノイズにも強くなります。
つまり、「電流が大きい」「信号が速い」「振動がある」ほど、早めにプリント基板へ進む理由になります。

この記事で試作する回路:マイコンの信号でLEDを点ける
例は、マイコンの3.3Vの信号でトランジスタ(2N3904)をON・OFFし、5VでLEDを点ける回路です。部品は5つです。
入力(IN)に3.3Vが来ると、2.4kΩを通ってトランジスタのベースに電流が流れ、トランジスタがONになります。すると、5V→150Ω→LED→トランジスタ→GND の道に約19mAが流れ、LEDが光ります。
| 記号 | 部品 | 役目 |
|---|---|---|
| J1 | ピンヘッダ 3本 | 5V・IN・GND をつなぐ口 |
| R1 | 2.4kΩ | ベースに流す電流を決める |
| R2 | 150Ω | LEDの電流を約19mAに決める |
| Q1 | 2N3904 | LEDをON・OFFするスイッチ |
| LED | 赤 5mm | 光れば成功 |
値の決め方は、前の記事で説明しています。この記事では、値が決まった回路を「どう形にするか」に集中します。
この回路の 2.4kΩ と 150Ω を、3ステップで計算した手順がわかる
つまり、ブレッドボードでこの回路が動き、値が決まったら、ユニバーサル基板に進む準備ができています。

ユニバーサル基板の基本:2.54mmの穴と、銅の丸(ランド)
ユニバーサル基板は、2.54mmごとに穴があき、穴の周りに銅の丸(ランド)がある板です。部品は表から差し、裏でランドと線をはんだ付けしてつなぎます。
一番よく使うのは、片面だけにランドがあり、ランドどうしが1つずつ離れている形です。となりの穴とはつながっていないので、つなぎたい所に自分で線を引きます。
つなぐ線は3種類を使い分けます。
| 線 | 使う所 |
|---|---|
| スズめっき線(裸の線) | まっすぐ短い所。5V・GNDの外周の線(バス) |
| 被覆線(ビニールで覆った線) | 線どうしが交わる所、長く引く所 |
| 部品の足 | 切る前に曲げて、となりのランドまでそのまま使う |
例として、秋月電子通商の「片面ガラス・ユニバーサル基板 Cタイプ」は 72×47.5mm・ガラスエポキシで、税込140円です(執筆時の販売ページ。価格は変わることがあります)。
つまり、ユニバーサル基板は「穴は並んでいるが、つながりは自分で作る」板です。だから配線の前の計画が大事になります。

配置図を先に描く:部品面から見た穴の位置
はんだ付けを始める前に、方眼に部品の位置を全部描きます。例の回路なら、14×9 の穴に収まります。
例では、J1 を1列目の3〜5行、R1 を4行目の4〜8列、トランジスタを6行目の7〜9列(左から E・B・C、平らな面が下)、R2 を12列目の1〜5行、LED を12列目の6〜7行(長い足が上)に置きました。
回路図を、電源・GND・信号の流れの順に読む手順がわかる
つまり、配置図は「部品の位置・向き・線の道すじ」を全部決めてから描き終えます。はんだごてを持つのはそのあとです。

裏(はんだ面)から見ると、左右が反対になる
配線は裏で作業するので、表の図を左右反転した「裏から見た図」を作ってから配線します。そうしないと、左右が逆につながります。
基板をひっくり返すと、表で左にあった J1 は右に来ます。トランジスタの足も、表から見て E・B・C だったものが、裏から見ると C・B・E の順に並びます。
表の図を見ながら裏で配線すると、頭の中で左右を入れ替え続けることになり、どこかで間違えます。紙に描いた配置図を裏から透かして写すか、ソフトで左右反転した図を印刷しておきます。
つまり、配線するときは必ず「裏から見た図」を手元に置きます。

裏の配線のコツ:5VとGNDは外周の線(バス)にまとめる
裏の配線は、5V と GND を外周の線(バス)にまとめ、信号の線は短くまっすぐ引きます。線が交わる所だけ被覆線にします。
例の回路の裏の配線は、赤が5V、青がGND、緑が入力からベースまで、橙が R2→LED→コレクタ です(色は説明のため。実物はスズめっき線)。裏から見ているので、列の番号は右から1です。
つまり、配線は「電源とGNDを先に、信号は短く、交わる所は被覆線」の順で考えます。

はんだ付けの順と、テスターでの確かめ
はんだ付けは、背の低い部品から順に付けます。電源を入れる前に、5V と GND の間がつながっていない(ショートしていない)ことをテスターで確かめます。
背の低い部品から付けると、基板を裏返したときに部品が浮かず、押さえやすくなります。
テスターの導通のレンジで 5V と GND の間を当て、鳴らなければ大丈夫です。鳴ったら、どこかでショートしています(大きなコンデンサがある回路では、一瞬鳴ってから止まることがあります)。電源を入れずに、となりのランドどうしがはんだでつながっていないかを探します。
ブリッジ・イモはんだなど、はんだ付けの失敗の見分け方が図でわかる
つまり、「低い部品から付ける」「電源の前に導通を確かめる」の2つで、失敗の多くを防げます。

プリント基板を作る流れ:回路図から発注まで7ステップ
プリント基板は、回路図→部品の形(フットプリント)→配置・配線→ルールの確認→ガーバー→発注→届いたら確かめる、の流れで作ります。
回路図を描くソフト(基板設計のソフト)で、部品ごとにフットプリント(穴やランドの形)を選びます。ここで足の番号や穴の大きさを間違えると、回路図が正しくても部品が付きません。
配置・配線をしたら、ソフトのルールの確認(DRC)で、線の太さや線どうしの間隔が、メーカーで作れる範囲に入っているかを確かめます。最後に、製造データ(ガーバー)を出力し、ビューアで開いて見てから発注します。
フットプリント・ランド・パッドの違いと、間違えやすい所がわかる
メーカーに渡すガーバーデータの中身と、発注前に見る所がわかる
つまり、プリント基板は「回路図が正しい」だけでは足りず、「部品の形が正しい」まで確かめて初めて使えます。

プリント基板を発注する前のチェック8つ
発注の前に、回路図レビューと、基板の形の確認をセットで行います。直すのが一番安いのは発注の前です。
| 確かめること | |
|---|---|
| 1 | 回路図レビュー(電源・GND・未接続ピン) |
| 2 | フットプリントの足の番号と、部品の向きの印(シルク) |
| 3 | 穴の大きさ(部品の足が入るか) |
| 4 | 電流の大きい線の太さ |
| 5 | パスコンが IC の電源ピンのすぐ横にあるか |
| 6 | 基板の大きさ・取り付け穴・コネクタの位置 |
| 7 | テストポイント(テスターやオシロを当てる所)を残したか |
| 8 | ガーバーをビューアで開いて、層と穴を見る |
1つ目の回路図レビューは、項目が多いので、チェックリストを使うと漏れが減ります。2〜8は基板ならではの確認です。
回路図の段階で見る20項目を、電源・GND・未接続ピンの順に確かめられる
つまり、発注前は「回路図」と「基板の形」の2つを確かめます。どちらか片方では足りません。

届く前にできる確かめ:原寸で印刷して部品を当てる
基板の図を原寸(100%)で紙に印刷し、手元の部品を当てると、足の間隔・並び・向きの間違いを発注前に見つけられます。
たとえば、抵抗の穴の間隔を 7.62mm(2.54mm×3)にしたのに、手元の抵抗の足を 10.16mm(2.54mm×4)で曲げるつもりなら、紙の上で合わないことがすぐわかります。トランジスタの E・B・C の並びや、LED の平らな側(カソード)の向きも、紙の上で確かめられます。
つまり、紙1枚で「付けられない基板」を防げます。費用はほぼかかりません。

費用と日数の目安
基板の費用は、ブレッドボードは本体が数百円から(目安)、ユニバーサル基板は小さいもので百数十円、プリント基板は注文画面の見積もりで確かめます。日数は、数分〜・半日〜1日・数日〜2週間ほどが目安です。
| 段階 | 基板の費用 | 日数 |
|---|---|---|
| ブレッドボード | 本体 数百円〜(目安。部品は使い回せる) | 数分〜 |
| ユニバーサル基板 | 140円(秋月 Cタイプ)+線・はんだ | 半日〜1日(目安) |
| プリント基板 | 基板代+送料(注文画面の見積もりで確かめる) | 製造24時間〜+輸送(目安で数日〜2週間ほど) |
プリント基板の製造日数の例として、JLCPCB のヘルプでは、1〜2層・10cm角以内・5枚なら製造24時間、50枚未満なら1〜2日、4層なら2〜5日とされています。届くまでには輸送の日数が足され、配送方法で変わります。
回路図からガーバーを作るまでにも、慣れないうちは数日かかります(目安)。急ぐときほど、ブレッドボードとユニバーサル基板で回路を固めてから発注すると、作り直しの日数を減らせます。
つまり、プリント基板は「製造は早いが、届くまでと作り直しに日数がかかる」と考えて計画します。

次の段階へ進む合図
「回路の値が決まって差し替えなくなった」ら、ユニバーサル基板へ。「同じものを2台以上作る・速い信号や大きな電流で配線が苦しい」ら、プリント基板へ進みます。
ブレッドボード → ユニバーサル基板
回路の値が決まり、もう差し替えない。持ち運んだり、しばらく動かし続けたりしたい。接触不良で動いたり止まったりする。どれか1つでも当てはまれば、ユニバーサル基板に進む合図です。
ユニバーサル基板 → プリント基板
同じものを2台以上作る。速い信号や大きな電流で、ユニバーサル基板の配線では苦しい。小さく、じょうぶにしたい。このどれかに当てはまれば、プリント基板に進みます。
逆に、1台だけで、信号も遅く、電流も小さいなら、ユニバーサル基板のまま完成にしてもかまいません。
つまり、次へ進むかどうかは「何を確かめたいか・何台いるか」で決めます。

よくある失敗3つ:裏表の取り違え・線のまま・部品を当てずに発注
試作の失敗は、裏表の左右を取り違える、ブレッドボードの長い線をそのまま写す、部品を当てずに発注する、の3つが代表です。
失敗1:裏表の左右を取り違える
表の配置図を見ながら裏で配線すると、左右が逆につながります。トランジスタでは E と C が入れ替わり、ほとんど動きません。裏から見た図を作ってから配線します。
失敗2:ブレッドボードの線のまま写す
ブレッドボードでは長いジャンパー線で遠回りしていても、そのまま基板に写すと、線が長いぶんノイズを拾いやすくなります。基板にするときは、線を短く、GND を太く引き直します。
失敗3:部品を当てずに発注する
フットプリントの足の間隔や並びが、手元の部品と合わないと、届いた基板に部品が付きません。原寸で印刷して、部品を当ててから発注します。
つまり、失敗の多くは「確かめる前に次の段階へ進んだ」ことから起きます。


