回路設計

Hブリッジでモーターを正転・逆転|しくみとDRV8833の配線・真理値表

黄色いタイヤを付けた小型DCモーターと、ブレッドボードに差した紫のモータードライバ基板の写真に、モーターを正転・逆転・Hブリッジ・4つの文字

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Hブリッジは、スイッチ4つを「H」の形に並べ、モーターに流す電流の向きを入れ替える回路です。対角の2つを ON にすると正転・逆転、下の2つでブレーキになり、DRV8833 の入力の組み合わせは真理値表の節、ドライバ IC の選び方は早見表へ。ハーフブリッジとの違いと貫通電流はハーフブリッジとフルブリッジの違いで扱っています。

結論|まず30秒でわかる答え

対角の S1+S4 を ON にすると正転、S3+S2 で逆転、下の2つでブレーキ、全部 OFF で空転です。
同じ側の上下を同時に ON にするとショートします。マイコンで小さなモーターを回すなら、それを防ぐしくみと保護が入ったドライバ IC(例:DRV8833)を使います。

この記事に出てくる言葉

わからない言葉が出てきたら、ここに戻ってきてください。本文でも、初めて出たところで言い換えます。

H ブリッジスイッチ4つを H の形に並べ、モーターの電流の向きを変える回路
正転・逆転モーターがふつうの向きに回ること・逆向きに回ること
ハイサイド・ローサイド電源の+側にあるスイッチ・GND 側にあるスイッチ
貫通電流同じ側の上下のスイッチが同時に ON になり、+から−へ素通りする大きな電流
ブレーキ・空転モーターの2本の線をつないで止める・何もつながず惰性で止める
ドライバ ICスイッチ4つと、それを安全に動かすしくみをまとめた部品
逆起電力回っているモーターが自分で出す電圧
UVLO電源の電圧が低すぎるときに IC を止める守り(低電圧ロックアウト)
デッドタイム上下を切り替えるとき、両方 OFF にしておく短い時間

Hブリッジは、ラジコンの車やロボットのように、モーターを前にも後ろにも回したいときに使う回路です。名前はむずかしそうですが、中身はスイッチ4つだけです。

この記事では、スイッチの絵で向きが変わるしくみを見たあと、マイコンから使えるドライバ IC の DRV8833 で、模型用のモーター(マブチ FA-130)を回す配線と計算まで進みます。

黄色いタイヤを付けた小型DCモーターと、ブレッドボードに差した紫のモータードライバ基板の写真に、モーターを正転・逆転・Hブリッジ・4つの文字

この記事で作るもの:マイコン2本の線でモーターの向きを変える

マイコンの2本の線(IN1・IN2)を DRV8833 につなぎ、0 と 1 の組み合わせで、正転・逆転・ブレーキ・空転を切り替える回路です。電源は単3電池2本(3V)です。

マイコンは、IN1 と IN2 に 3.3V(1)か 0V(0)を出すだけです。モーターに流れる電流は、電池から DRV8833 の中のスイッチを通って流れます。

IN1IN2モーターの動き
00空転(惰性で止まる)
10正転
01逆転
11ブレーキ(すぐ止まる)

モーターを1方向に回すだけなら、MOSFET 1つで足ります。ON/OFF だけの回路は、トランジスタと MOSFET を比べた記事の回路が出発点です。この記事は、その「向きも変えたい」版です。

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つまり、マイコンから見ると「2本の線で4通りの命令」を出すだけの回路です。

マイコン3.3VのIN1・IN2からDRV8833、OUT1・OUT2からモーター、単3電池2本からVM、GND共通のブロック図と、IN1・IN2と動きの表

DC モーターは、電池の向きを逆にすると逆に回る

DC モーター(ブラシ付き)の回る向きは、モーターに流れる電流の向きで決まります。電池の+と−をつなぎ替えれば逆に回ります。H ブリッジは、このつなぎ替えをスイッチで行う回路です。

FA-130 のような模型用のモーターは、2本の端子に電池をつなぐと回ります。電池の向きを逆にしてつなぐと、逆向きに回ります。モーターの中で、磁石と電流が押し合う力の向きが、電流の向きで決まるからです。

どちら向きの電流で右回りになるかは、モーターによって決まります。この記事では、端子 A から B へ流れるときを右回り(正転)の例にします。

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つまり、向きを変えたければ「モーターに流す電流の向き」を変えればよい、ということです。

電池をつなぐ向きでモーターに流れる電流がA→BとB→Aに変わり、右回りと左回りになる2つの図(例)

Hブリッジとは:スイッチ4つを「H」の形に並べた回路

左右2本の柱に、上(+側)と下(GND 側)のスイッチを1つずつ。合わせて4つのスイッチの真ん中を、モーターでつなぎます。縦の柱と横のモーターが H に見えるので、H ブリッジと呼びます。

この記事では、4つのスイッチを S1〜S4 と呼びます。左の上が S1、左の下が S2、右の上が S3、右の下が S4 です。モーターは、左の柱の真ん中(A)と、右の柱の真ん中(B)の間につなぎます。

スイッチ場所つながる先
S1左の上(ハイサイド)電池の+ と A
S2左の下(ローサイド)A と GND
S3右の上(ハイサイド)電池の+ と B
S4右の下(ローサイド)B と GND

電力の分野では、上下2つのスイッチの組を「ハーフブリッジ」、それを2組並べたものを「フルブリッジ」と呼びます。H ブリッジは、フルブリッジと同じ形です。

つまり、H ブリッジは「モーターの両端を、それぞれ+にも GND にもつなげる」スイッチの組です。

電池の+とGNDの間に左右2本の柱があり、上にS1・S3、下にS2・S4、真ん中の点AとBの間にモーターMをつないだHブリッジの図

正転と逆転のしくみ:対角の2つを ON にする

S1 と S4 を ON にすると、電流は+→S1→A→モーター→B→S4→GND と流れて正転します。S3 と S2 を ON にすると、+→S3→B→モーター→A→S2→GND と、モーターの中を逆向きに流れて逆転します。

正転のとき、モーターの左の端子 A は S1 で+に、右の端子 B は S4 で GND につながります。電流はモーターの中を A から B へ流れます。

逆転のとき、B が S3 で+に、A が S2 で GND につながります。電池はそのままなのに、モーターから見ると電池をつなぎ替えたのと同じになります。

たとえると

川の両岸にある水門のようなものです。左上と右下の水門を開けると水は左から右へ、右上と左下を開けると右から左へ流れます。真ん中の水車(モーター)は、水の向きで回る向きが変わります。

つまり、「どの対角を ON にするか」で、モーターの中の電流の向き=回る向きが決まります。

S1とS4をONにしてA→Bへ流れる正転と、S3とS2をONにしてB→Aへ流れる逆転の電流の道を色で示した2つのHブリッジ

やってはいけない:同じ側の上と下を同時に ON にする

S1 と S2(または S3 と S4)を同時に ON にすると、電流はモーターを通らずに+から GND へ素通りします。これを貫通電流と呼び、スイッチや電池を壊します。

S1 と S2 が両方 ON だと、電池の+→S1→S2→GND という道ができます。この道にあるのは、スイッチの小さな抵抗だけです。

貫通電流のイメージ(上下の抵抗の合計を 0.1Ω と仮定)
I = 3V ÷ 0.1Ω = 30A

実際には電池の内部の抵抗などで少し小さくなりますが、モーターの起動の電流よりずっと大きな電流です。プログラムのまちがいで一瞬でも起きると、スイッチが壊れることがあります。

やっかいなのは、正転から逆転に切り替える途中でも起きることです。S1 を OFF にしてから S2 を ON にするつもりでも、スイッチが切れるのには少し時間がかかります。そのすき間に両方 ON の瞬間ができるので、切り替えのときは、上下とも OFF の短い時間(デッドタイム)を入れます。

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つまり、H ブリッジの一番のルールは「同じ側の上下は、絶対に同時に ON にしない」です。

S1とS2が同時にONで電池の+からGNDへモーターを通らずに流れる貫通電流の道と、3V÷0.1Ω=30Aの計算上のイメージ

止め方は2つ:ブレーキと空転

下の2つ(S2・S4)を ON にするとブレーキで、モーターの2本の線がつながり、すぐ止まります。全部 OFF にすると空転で、モーターは惰性でゆっくり止まります。

回っているモーターは、発電機のように自分で電圧(逆起電力)を出しています。ブレーキでモーターの両端をつなぐと、その電圧で回転と逆向きの力を生む電流が流れ、モーターは急に止まります。

ブレーキの瞬間の電流(目安)
約2.8V ÷(1.43Ω + 下2つ 0.40Ω)≒ 1.5A

約2.8V は、無負荷で回っている FA-130 の逆起電力の見積もり(3.0V−0.15A×1.43Ω)です。電流は回転が落ちるにつれて減ります。

空転では、電流の道がないので、モーターは軸の重さとまさつだけでゆっくり止まります。ただし OFF にした直後の一瞬は、モーターの電流がドライバ IC の中のダイオードを通って消えます。

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つまり、すぐ止めたいならブレーキ、なめらかに止めたいなら空転、と使い分けます。

S2とS4をONにしてモーターの逆起電力で電流が回るブレーキの図と、全部OFFの空転の図

DRV8833 の真理値表:IN1・IN2 の4通りを読む

DRV8833 は、IN1・IN2 が 1・0 で正転、0・1 で逆転、1・1 でブレーキ、0・0 で空転です。データシートの表の H は+、L は GND、Z は「どこにもつながない」の意味です。

IN1IN2OUT1OUT2動きH ブリッジでは
00ZZ空転全部 OFF
10HL正転S1+S4
01LH逆転S3+S2
11LLブレーキS2+S4

データシートの真理値表(Table 1. H-Bridge Logic)は、IN の組み合わせと、そのときの OUT の状態を並べた表です。OUT1 が H(+)で OUT2 が L(GND)なら、電流は OUT1 から OUT2 へ流れます。

DRV8833 の入力には、IC の中に約150kΩ のプルダウン(GND へ引く抵抗)が入っています。マイコンがリセット中で端子が浮いていても、入力は 0・0 になり、モーターは勝手に回りません。

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入力の電圧は、2V 以上で 1、0.7V 以下で 0 と見なされます(VIH・VIL)。3.3V のマイコンなら、そのままつなげます。

つまり、真理値表は「IN の組み合わせ → OUT の+と GND → 電流の向き」の順に読めば迷いません。

IN1・IN2が0・0で空転、1・0で正転、0・1で逆転、1・1でブレーキになるDRV8833の真理値表とOUT1・OUT2の状態

なぜドライバ IC を使うのか:スイッチ4つを自分で組まない理由

上のスイッチ(ハイサイド)を 3.3V で動かすのがむずかしい、同時 ON を防ぐデッドタイム(450ns)が要る、過電流・過熱・低電圧の守りが要る、の3つが理由です。ドライバ IC なら、入力2本でこれが全部そろいます。

1. 上のスイッチを動かせる

上のスイッチは、電源の+とモーターの間にあります。N チャネルの MOSFET で作ると、ON にするにはゲートを電源よりさらに高い電圧にする必要があり、3.3V の合図では ON できません。DRV8833 は IC の中で高い電圧を作り(VCP ピンの 0.01µF はそのため)、上のスイッチを ON にします。

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2. 同時 ON を防ぐ

DRV8833 は、切り替えのときに上下とも OFF の時間(デッドタイム、450ns)を IC の中で自動で入れます。データシートにも「外で作る必要はない」と書かれています。

3. 守りが入っている

電流が 2〜3.3A(ばらつきの範囲)を超えると出力を止め、1.35ms 後にもう一度動かします(過電流保護)。熱くなりすぎたとき(過熱保護)と、VM が約2.6V より下がったとき(低電圧ロックアウト)も止まります。

4. 入力2本で済む

IN1・IN2 の2本で4通りの動きを選べます。OFF の瞬間のモーターの電流も、IC の中のダイオードが逃がしてくれます。

つまり、マイコンで小さなモーターを正転・逆転させるなら、スイッチ4つを組むより、ドライバ IC が安全で簡単です。

上のスイッチの駆動、デッドタイム450ns、過電流2〜3.3A・過熱・低電圧の保護、入力2本で済む、の4枚のカード

DRV8833 の配線:A 側の H ブリッジだけ使う

DRV8833 には H ブリッジが2つ(A と B)入っています。モーター1個なら A 側だけを使い、AIN1・AIN2 をマイコンへ、AOUT1・AOUT2 をモーターへ、VM を電池の+へつなぎます。コンデンサは VM に 10µF、VINT に 2.2µF、VCP と VM の間に 0.01µF です。

ピン(番号)つなぐ先メモ
AIN1(16)・AIN2(15)マイコンの IN1・IN23.3V のマイコンでそのまま
AOUT1(2)・AOUT2(4)モーターの2本の線どちらがどちらでもよい(向きが逆になるだけ)
VM(12)電池の+・10µF で GND へ10µF 以上のセラミックを IC の近くに
GND(13)GND(電池の−・マイコンの GND)裏の放熱パッドも GND へ
nSLEEP(1)マイコンの 3.3VL だと IC が眠ったまま
AISEN(3)・BISEN(6)GND電流の検出を使わないとき
VINT(14)2.2µF で GND へIC の中の電源用
VCP(11)0.01µF で VM へ上のスイッチを動かす電圧用

ピンの番号は、HTSSOP(PWP)と TSSOP(PW)のものです。WQFN(RTY)は番号が違います。また、通販で売られている DRV8833 のモジュール(小さな基板)は、ピンの名前や並びがモジュールごとに違い、コンデンサがすでに載っていることもあります。必ずモジュールの説明書と回路図で確かめます。

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つまり、マイコン側2本・モーター側2本・電源2本と、コンデンサ3つ・nSLEEP を押さえれば配線は終わりです。

DRV8833の16ピンの配置(HTSSOP・TSSOP)と、AIN1・AIN2・AOUT1・AOUT2・VM・GND・nSLEEP・AISEN・BISEN・VINT・VCPのつなぎ先

計算:FA-130 を DRV8833 で回すと、起動の電流は保護に引っかからないか

DRV8833 の中の抵抗(上 250mΩ+下 200mΩ)を足すと、起動の電流は 3.0÷(1.43+0.45)=1.60A で、過電流保護の 2A より小さくなります。ふだんの損失は 0.14W、温度の上がりは PWP で約6℃です。

STEP 1 IC の中の抵抗

電流は上のスイッチ1つと下のスイッチ1つを通ります。VM 2.7V・25℃ の表の値で、250mΩ+200mΩ=0.45Ω です(3V に近い低い電圧の行を使った目安)。

STEP 2 起動の電流

モーターの抵抗の見積もり 1.43Ω(3.0V÷停動 2.10A)に足して、3.0÷(1.43+0.45)=1.60A。過電流保護の 2〜3.3A より小さいので、起動のたびに止まることはありません。

STEP 3 損失と温度

ふだん(最高効率 0.56A)の損失は 0.56²×0.45=0.14W。熱抵抗をかけると、PWP(40.5℃/W)で約6℃、PW(103.1℃/W)で約15℃ の上がりです。

モーターにかかる電圧は、IC の中で少し下がって 3.0−0.56×0.45=2.75V ほどです。MOSFET 1つで回すときより、回転が少しだけ遅くなります。

注意

PW(TSSOP)パッケージは、流しつづけられる電流が 500mA です。FA-130 を 0.56A で回すなら、1.5A の PWP(HTSSOP)を選びます。データシートには「VM が 5V より低いと IC の中の抵抗が増え、流せる電流が減る」とも書かれているので、電池2本で使うときは余裕を見ます。

つまり、FA-130 と単3電池2本なら、DRV8833(PWP)で起動も保護に引っかからず、熱も小さく回せます。

ICの中の抵抗0.45Ω、起動の電流1.60A、損失0.14W、温度の上がりPWP約6℃・PW約15℃、モーターの電圧2.75Vの計算の表

回っているモーターを、いきなり逆転させない

正転で回っているところから急に逆転にすると、電池の 3V とモーターの逆起電力 約2.8V が足し算になり、約3.1A 流れます。過電流保護の範囲(2〜3.3A)に入るので、IC が止まることがあります。間にブレーキを入れてから逆転します。

回っているモーターは、回転の向きに応じた電圧(逆起電力)を出しています。正転で回っているとき、その電圧は電池の電圧を打ち消す向きです。そこで逆転につなぎ替えると、今度は電池の電圧と同じ向きになり、足し算になります。

いきなり逆転したときの電流(目安)
(3.0V + 2.8V)÷(1.43Ω + 0.45Ω)≒ 3.1A

DRV8833 の過電流保護は、2〜3.3A を超えた状態が 4µs 続くと出力を止め、1.35ms 後にもう一度動かします。止まっても壊れはしませんが、モーターの動きがガタガタになります。

プログラムでは、正転 → ブレーキ(1・1)→ 止まるまで待つ → 逆転、の順にします。ブレーキの瞬間の電流は約1.5A、止まってからの逆転の起動の電流は 1.60A で、どちらも保護の範囲より小さくなります。

つまり、向きを変えるときは「いったん止めてから」が基本です。

いきなり逆転すると約3.1Aまで流れ、ブレーキを挟むと約1.5Aと1.6Aにおさまる電流のグラフ(イメージ)と計算

PWM で速さを変える:電圧をかけないあいだを空転にするか、ブレーキにするか

DRV8833 で速さを変えるときは、IN の片方に PWM(速い ON/OFF)を入れます。正転なら「PWM・0」か「1・PWM」の2通りがあり、モーターに電圧をかけないあいだが空転になるかブレーキになるかが違います。

向きIN1IN2電圧をかけないあいだ
正転PWM0空転(電流が速く減る)
正転1PWMブレーキ(電流がゆっくり減る)
逆転0PWM空転(電流が速く減る)
逆転PWM1ブレーキ(電流がゆっくり減る)

データシートでは、空転側を fast decay(速く減る)、ブレーキ側を slow decay(ゆっくり減る)と呼びます。空転側は電圧をかけないあいだ電流が IC の中のダイオードを通って速く減り、ブレーキ側はモーターが下の2つでつながって電流がゆっくり減ります。

「1・PWM」では、IN2 の PWM が 1 のあいだがブレーキ、0 のあいだが正転です。PWM が 1 の割合(デューティ比)が大きいほど遅くなるので、「PWM・0」とは逆の読み方になります。プログラムで速さの値を作るときに確かめます。どちらが合うかはモーターと用途しだいなので、両方試して決めます。

PWM の周波数をいくつにするかは、連載の「PWM 制御とは」の記事でくわしく扱います。

つまり、速さは IN の片方を PWM にするだけで変えられ、OFF のあいだの止め方を2通りから選べます。

正転・逆転それぞれでIN1・IN2のどちらにPWMを入れるかと、電圧をかけないあいだが空転かブレーキかの表

早見表:小さなモーター用のドライバ IC の選び方

単3電池2〜4本くらいのモーターなら DRV8833(2.7〜10.8V)、12V・24V のモーターなら東芝の TB67H450 系(4.5〜44V)が目安です。モーターの電圧と起動の電流で選びます。

DRV8833(TI)TB67H450FNG(東芝)
モーターの電圧2.7〜10.8V4.5〜44V
流せる電流1.5A(PWP)/0.5A(PW)3A 以下で使う
H ブリッジの数2つ(モーター2個)1つ
止まる電圧(UVLO)約2.6V4.0V±0.2V
入力AIN1・AIN2(+nSLEEP)IN1・IN2
入力の 1・1ブレーキブレーキ
入力の 0・0空転OFF(1ms ほどでスタンバイ)

選ぶ順番は、①モーターの電圧が IC の動作範囲に入るか、②起動の電流が過電流保護より小さいか(足りなければ大きな IC へ)、③パッケージで流せる電流と熱、です。

POINT

TB67H450FNG は、通販サイト(DigiKey)で「新規設計向けに不適合」と表示され、後継の TB67H450AFNG が案内されています。買う前に、品番の末尾まで製品の状態を確かめます。

つまり、電池で動く模型なら DRV8833、12V 以上なら TB67H450 系、と電圧で大まかに分けてから、電流と熱で確かめます。

DRV8833とTB67H450FNGのモーターの電圧、流せる電流、Hブリッジの数、UVLO、入力の比較表

ブレッドボードで組む:DIP 変換基板にのせた DRV8833

DRV8833(HTSSOP)は小さいので、DIP の変換基板にのせて、溝をまたぐように差します。上の段に AIN1・AIN2・VINT・GND・VM・VCP、下の段に nSLEEP・AOUT1・AISEN・AOUT2 が並びます。

1. 電源のレール

電池の+を+レール、−を GND レールへ。上と下の GND レールを右端の線でつなぎ、マイコンの GND も GND レールへ。

2. IC のまわり

VM(12)を+レール、GND(13)を GND レールへ。VM と GND の間に 10µF、VINT と GND の間に 2.2µF、VCP と VM の間に 0.01µF を、IC のすぐ近くに差します。

3. 入力

AIN1・AIN2 をマイコンの出力へ、nSLEEP をマイコンの 3.3V へ。AISEN・BISEN は GND レールへ。

4. モーター

AOUT1・AOUT2 の列からモーターの2本の線へ。回る向きが逆なら、プログラムで IN1・IN2 を入れ替えるか、線を入れ替えます。

変換基板には1番ピンの印があります。差す向きを逆にすると、VM と GND の位置がずれて IC を壊すので、電源を入れる前に必ず確かめます。

つまり、電源 → コンデンサ → 入力 → モーターの順に差していけば、配線の数は10本ほどです。

DIP変換基板にのせたDRV8833をブレッドボードに差し、マイコン・単3電池2本・モーター・10µF・2.2µF・0.01µFをつないだ配線図とピンの表

テスターで確かめる:OUT1 と OUT2 の間の電圧で向きを見る

テスターの赤を OUT1、黒を OUT2 に当てると、正転で約+2.7V、逆転で約−2.7V、ブレーキで 0V です。符号で向き、大きさで IC の中の電圧の下がりがわかります。

最低限ここだけ

1. 電池(VM と GND)

止まっているときと回っているときに測ります。回っているあいだに約2.6V に近づくなら、電池が弱いか線が細すぎます。

2. OUT1 と OUT2

IN1・IN2 を 1・0 にして約+2.7V、0・1 にして約−2.7V なら、H ブリッジは正しく切り替わっています。

余裕があれば

0・0(空転)にした直後は、回っているモーターが出す電圧(逆起電力)が少し残り、回転が落ちるにつれて 0V に近づきます。1・1(ブレーキ)では、すぐ 0V になります。2つの止め方の違いを、電圧の残り方で見られます。

つまり、OUT1−OUT2 の符号が IN の組み合わせどおりに変われば、配線もプログラムも合っています。

IN1・IN2の4通りでのOUT1−OUT2の電圧(約+2.7V・約−2.7V・0V・逆起電力が残る)とモーターの動きの表

よくある失敗4つ:DRV8833 でモーターを正転・逆転させるとき

nSLEEP をつながない・電池の電圧が足りない・GND をつながない・いきなり逆転させる、の4つがよくある失敗です。

1. nSLEEP をつながない

nSLEEP は IC の中で GND へ引かれていて(約500kΩ)、つながないと IC は眠ったままです。マイコンの 3.3V へつなぐか、マイコンの端子で H にします。

2. 電池が弱い・本数が少ない

DRV8833 の VM の動作範囲は 2.7V からで、約2.6V を下回ると止まります。アルカリ電池2本でも、減ってくると起動のたびに電圧が下がって止まることがあります。ニッケル水素電池2本(公称 2.4V)は、動作範囲の外です。

3. GND をつながない

マイコンの GND と電池の−がつながっていないと、マイコンの 1・0 が IC に正しく届かず、動いたり動かなかったりします。

4. いきなり逆転

約3.1A 流れて過電流保護で止まることがあります。ブレーキを入れて止まってから逆転します。

つまり、配線(nSLEEP・GND)・電源(電池の電圧)・プログラム(ブレーキを挟む)の3か所を確かめます。

nSLEEPをつながない、電池が弱い、GNDをつながない、いきなり逆転の4つの失敗と対策のカード

よくある質問(FAQ)

Q. Hブリッジとは?

A. スイッチ4つを H の形に並べ、モーターに流す電流の向きを入れ替えて、正転・逆転させる回路です。

Q. Hブリッジで同時にONしてはいけないのは?

A. 同じ側の上と下のスイッチです。同時に ON だと電源がショートし、大きな貫通電流で壊れます。

Q. モーターのブレーキと空転の違いは?

A. ブレーキはモーターの両端をつないですぐ止め、空転は何もつながずに惰性でゆっくり止めます。

Q. DRV8833は3.3Vのマイコンで使える?

A. 使えます。入力は 2V 以上で H と見なされます。モーター側の電源 VM は 2.7〜10.8V です。

Q. DRV8833のnSLEEPはどうつなぐ?

A. マイコンの 3.3V など H につなぎます。中で GND に引かれているので、つながないと動きません。

Q. モーターをいきなり逆転させるとどうなる?

A. 逆起電力が電池の電圧に足され、大きな電流が流れます。ブレーキで止めてから逆転させます。

まとめ
  • H ブリッジはスイッチ4つ。対角の S1+S4 で正転、S3+S2 で逆転
  • 下の2つでブレーキ(すぐ止まる)、全部 OFF で空転(惰性で止まる)
  • 同じ側の上下を同時に ON にすると貫通電流でショートする
  • ドライバ IC は上のスイッチの駆動・デッドタイム(450ns)・保護をまとめて持つ
  • DRV8833 は IN1・IN2 の 1・0/0・1/1・1/0・0 で4通り。FA-130 の起動は 1.60A で保護より小さい
  • 向きを変えるときはブレーキで止めてから。nSLEEP と GND を忘れない

まずは IN1・IN2 を手でつなぎ替えて4通りを試し、OUT1−OUT2 の電圧の符号を測ってみてください。表どおりに動けば、次はマイコンの PWM で速さも変えてみましょう。

参考にした資料

法令・規格・資料は改訂されることがあります。実務で使うときは、発行元の最新版で確かめてください。

この記事の理解を深める本と道具
おすすめの本

半導体を使った回路を、トランジスタ回路の設計の基本から理解したい人に向いています。トランジスタを使った増幅回路の設計を、実験を通して解説した本です(CQ出版、鈴木雅臣 著)。

おすすめの道具

回路を実際に組んで、電流や電圧を確かめてみたいときに向いています。サンハヤトのブレッドボード SAD-101です。408個の穴に部品を差し込むだけで、はんだ付けをせずに回路を組めます。

マルツオンライン
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おすすめの道具

回路の電圧や導通を自分の手で確かめるなら、手元にテスターが1台あると便利です。三和電気計器のデジタルマルチメータ(テスター)CD772です。電圧や抵抗などを測れます。

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S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

テーマ別に、もっと深く学ぶ

気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめて学ぶ人向けにやさしく書いています。

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